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保守党議員、12月を「キリスト教文化遺産月」とする法案を提出 [人権]

 保守党のマリリン・グラデュ議員は12月5日、12月を「キリスト教文化遺産月」とするC-369号法案を下院に提出した。
「カナダは、全ての信仰を祝福する国である。」
「最近の国勢調査によると、カナダには何百万人(筆者注※正確には1930万人)ものキリスト教徒がいるから、我々にキリスト教文化遺産月があることは公平で正しい。」
 そう言ってグラデュ議員は、ヒンズー教徒、シーク教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒などカナダの他の宗教には彼らの文化遺産月がある事実を挙げた。

 この法案は、保守党幹部会で採択され党議拘束がかかったものではなく、自由投票となる個人法案なので成立する見込みは薄いが、カナダの祝日にキリスト教の祭日のみが含まれているのは制度的人種差別だとするカナダ人権委員会の答申を意識した動きと思われる。これを受けて保守党は「クリスマスのキャンセル反対」キャンペーンを開始した。
 答申には、こう記されていた。
「カナダの宗教的な少数民族に対する差別は、カナダの植民地主義の歴史に基づいている。明らかな例は、カナダの法定休日である。キリスト教に関連した祝日、クリスマスとイースターは、宗教に基づく唯一のカナダの法定休日となっている。」
 2001年の国勢調査では、キリスト教徒は国民の77.1%だったのが、2021年には53.3%にまで減少した。いっぽう宗教に関係していないと回答した人の数は、2001年には16.5%だったのが、2021年には34.6%まで増加した。同様に2001年から2021年にかけて、イスラム教徒は2.0%から4.9%に、ヒンズー教徒は1.0%から2.3%に、シーク教徒は0.9%から2.1%に増加した。

 ケベック連合のブランシェ党首は先週、下院でカナダ人権委員会の答申を茶化す発言をした。
「カナダ人権委員会によると、ツリー、音楽、プレゼントでクリスマスを祝うのは制度的人種差別だそうだ。」
「私は、サンタクロースが人種差別主義者だろうかと思う。私は、雪が人種差別主義者だろうかと思う。トルドー首相によると、クリスマスは人種差別なのか?」
 ファーガス議長が呆れて「誰の答弁を求めているのか」ときくと、ブランシェ党首はトルドー首相を名指しした。
 トルドー首相は起立して、次のように答弁した。
「私は起立して、全く馬鹿げた質問に答えることを大変光栄に思う。」
「明らかに、クリスマスは人種差別ではない。ここは多様性の国である。単に個人的信仰を祝うだけでなく、隣人のイベントも共有して祝う国である。」
「ケベック連合は、喧嘩をふっかける馬鹿な方法を、常に探している。私には、それをやめさせることはできない。」
 首相はそれから、保守党の「温暖化否定論」が未来のホワイトクリスマスを危機にさらしていると語った。
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ナショナリスト党元党首、ヘイトスピーチで有罪 [人権]

 カナダ・ナショナリスト党のトラビス・パトロン元党首は10月5日、ヘイトスピーチで有罪を宣告された。量刑は20日に言い渡される。
 パトロン被告は2019年にyoutubeに公開した動画において、ユダヤ人について「金融やマスコミを操る『内部の操作者』は国から追い出されるべき」「寄生種族に警戒せよ」「詐欺師」「蛇」「サタンの教会」などと語っていた。
 また2019年にリジャイナで二人の女性に暴行した容疑で、今年8月に禁錮18か月を宣告されている。
 なおカナダ・ナショナリスト党は、今年3月に解散した。

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カナダの中絶事情 [人権]

 アメリカで連邦最高裁が、1973年に妊娠中絶を合法化した「ロー対ウェイド」判決を覆す原案を起草していることが5月2日にリークされ、カナダ政界にも影響を与えている。
 カリナ・グールド家庭・子供・社会開発大臣は3日、CBCテレビで「もしアメリカがロー対ウェイド判決を覆したら、アメリカの女性はカナダで中絶することができる」と語った。トルドー首相も同日「カナダではあらゆる女性に、安全で合法な妊娠中絶を受ける権利がある」と語った。
 だがオタワ大学で法学を教えるダフニ・ギルバート教授は、首相の発言を批判する。カナダにおける最近の判例は、1988年のモーゲンテイラー裁判で、連邦最高裁は中絶を規制する全ての法律は違憲と判断したが、これまで最高裁は「中絶する権利」について言及したことはないからである。
 トロント大学のバーナード・ディケンズ名誉教授も、これに同意する。
「それは、中絶権を真に確立するものではなかった。それは単に、刑事罰を廃止したに過ぎない。」
 だがギルバート教授は、88年以降の判例は、中絶する権利を事実上支持していると考えることができると指摘する。彼女は安楽死幇助を例に挙げ、「意思決定、管理、身体の自治、良心の自由」を中絶に当てはめれば、同じ結論になるだろうと言う。また保健は州の管轄であるから、連邦政府が刑法によって妊娠中絶を管理する試みは、違憲立法となる疑いがある。
 保守党のキャンディス・バーゲン党首は10日、連邦議会で「妊娠中絶を受ける機会は(保守党の)ハーパー政権で制限されなかった。保守党は妊娠中絶について、法案を提出しないし、議論を再燃させない」と述べ、「議論を再開しているのは自由党だけ」と批判した。
 だが彼女は知らなかったが、それより2時間早く議事堂で保守党のアーノルド・ビアセン議員が、記者たちによる囲み取材で「私は、議論は終わっていないと考えている」と語っている。
 カナダの二大政党である自由党と保守党には、伝統的に中絶賛成派と反対派が混在しており、自由党には賛成派が、保守党には反対派が多いと考えられてきた。だが自由党は、2013年にジャスティン・トルドーが党首に就任したとき「中絶反対派は公認しない」と公言したため、今では反対派はいないと思われる。
 それに対し、保守党の立場はいくぶん複雑である。カナダ保守党は、2003年に右翼のカナダ同盟と中道右派の進歩保守党が合併して成立したことから、初代党首のハーパーは分裂を回避するため、個人的信条とはうらはらに「保守党政権は、妊娠中絶を規制するいかなる法律も支持しない」という綱領を採択した。保守党は現在党首選の最中だが、本命視されているピエール・ポワリエーブル議員も対抗馬と見られるジャン・シャレー元州首相も、同様のコメントをしている。だがそのいっぽうで保守党は「医師・看護士・その他の医療従事者が妊娠中絶、自殺幇助または安楽死に加担し、あるいはそれらに彼らの患者を照会することを拒否する良心の権利を支持する」「妊娠中絶は、カナダの母子保健プログラムから明確に除外されなければならない」とも盛り込んだ。
 幹部会で採択された議案には党議拘束がかかるので、違反すると党から罰せられる。だが個々の議員は中絶を規制する法案を個人提出でき、この場合党議拘束はなく自由投票となる。最近の例では2021年、保守党のキャセイ・ウェイゲントール議員が性選択的中絶を禁止する法案を提出したが、保守党議員81名と元保守党議員1名の賛成のみで、否決された。

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トリーチャー・コリンズ症候群の歌手をからかったコメディアン、逆転無罪に [人権]

 トリーチャー・コリンズ症候群(下顎顔面異骨症)の歌手をからかうジョークを連発したコメディアンが告発された件で、連邦最高裁は10月29日、下級審の判決を覆し、被告を無罪とした。
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 ジェレミー・ガブリエル氏(24歳)はトリーチャー・コリンズ症候群を患っているが、少年時代から歌手として活動し、教皇ベネディクト十六世の前や、モントリオール・カナディアンズの試合などで歌ってきた。これに対しコメディアンのマイク・ウォード氏が「サブウーファが頭の上にある」「病状が末期的なので(※実際には誤り)溺れさせて死なせてあげよう」などと繰り返しジョークのネタにした。ガブリエル氏はそれから学校などでいじめられるようになり、自殺も考えたという。
 本件は、人権とコメディアンの表現の自由が争われたカナダ史上初のケースとして、法律家やコメディアンに注目された。ウォード被告は、ケベック州のセレブたちは「神聖にして不可侵」であり、あまりに金持ちであまりに権力を持ちすぎているため、からかいの的にはならないのだと語った。そして、もし最高裁で敗訴が確定した場合は「シリアかサウジアラビアか、カナダと同じくらい表現の自由が尊重されている国に引っ越すつもりだ」とジョークを飛ばした。
 ケベック人権裁判書は2016年7月20日、ガブリエル氏に3万5000ドルとその母親に7000ドルを支払うよう、ウォード被告に命じた。被告は控訴したが、ケベック控訴裁判所は2019年11月28日、一審判決を支持し、被告にガブリエル氏への3万5000ドルの支払いを命じた。差別の被害者ではないという理由で、母親への支払いについては退けた。
 今回の最高裁の判決は、5対4の僅差となった。判決文は、ケベック人権憲章のもとに保護されている尊厳と、言論の自由とのバランスを考慮するとき、2段階のテストが行われなければならないと述べた。第一のテストでは、ウォード被告の発言が被害者をその障害に基づき中傷するよう刺激することを意図したかどうか、そして第二のテストでは、発言が被害者の差別を導いたかどうかが検証された。そして「我々の見解では、ウォード氏によってなされたコメントは、これらの2つの要件のどちらも満たさない」、また同級生や誰かが彼のジョークを真似て言ったことについて被告に責任を問うことはできない、と判断した。
「非難されたコメントは、この種のユーモアで知られている職業コメディアンによって作られた。それらは、正しくまたは誤って、楽しませるために不快の感覚を利用したが、それ以上のものではなかった。」
 多発性・先天性の骨格筋異常を患っているコメディアンのマイケル・リフシッツ氏は、本件訴訟について次のように述べた。
「私の障害にまつわる私のジョークは、ポリティカル・コレクトネスに合致しないから、自分で自分を訴えるつもりだ。」
「この訴訟が実際にどうやってインクルージョン(包摂性)の問題を前進させるのか、どうやっていじめの被害者を減らすのか、わからない。」
 判決を受けてガブリエル氏は、もしウォード被告と話す機会があれば、彼のジョークがどれほど彼の人生に影響を与えたかについて語るだろうと述べた。
「私が初めてジョークを聞いたとき、どう感じたかを彼に話したい。私は、自ら命を絶とうとした。」
「13歳の私がどう思ったか・・・40歳の人があなたは死ぬべきだと言い、それを正しい行為だと考えたことについて。」
 いっぽうウォード被告は、裁判についてこう述べた。
「勝ってもうれしくない。ほっとしている。」
「ジェレミー、もし聞いているなら、君の人生の幸運を祈ってるよ。」


写真:ジェレミー・ガブリエル氏(左)とマイク・ウォード被告(右)。
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プラウドボーイズ・カナダ解散 [人権]

 極右団体プラウドボーイズ・カナダは5月2日、解散を宣言した。
「本当のところ、我々は決してテロリストや白人優越主義グループではなかった。」
「我々は電気工、大工、財務顧問、修理工である。それ以上に我々は、父であり、兄弟であり、おじであり、息子である(筆者注※メンバーは白人男性のみ)。」

 プラウドボーイズは2016年、アメリカ在住カナダ人ギャビン・マッキンズにより、ポリティカル・コレクトネスに抗議する団体として結成された。白人優位主義・ミソジニー・暴力賛美を特徴とし、近年ではBLM運動を妨害してアンティファら左翼団体と乱闘を繰り返していた。1月6日の米連邦議会襲撃事件ではメンバーが多数逮捕され、カナダで2月2日テロ組織に指定された。
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ナショナリスト党党首、ヘイトスピーチで逮捕 [人権]

602dcab1240000bc02cbc366.jpg カナダ・ナショナリスト党(Canadian Nationalist Party/Parti Nationaliste Canadien)(※Nationalist Party of Canadaとは別)のトラビス・パトロン党首(29歳)が2月15日、ヘイトスピーチ容疑で逮捕された。
 パトロン党首は2019年にyoutubeに公開した動画において、彼自身がユダヤ人について「金融やマスコミを操る『内部の操作者』は国から追い出されるべき」「寄生種族に警戒せよ」「詐欺師」「蛇」「サタンの教会」などと語っていた。

 パトロン党首はサスカチュワン大学を卒業し、2017年にカナダ・ナショナリスト党を結成した。その目的は「有色人種に対し、白人カナダ人の多数を維持することで彼らの社会的・経済的状況を促進する」ことで、政策は移民の制限、ヨーロッパとキリスト教の価値に基づく国家的義務教育の導入(筆者注※教育は州が行うと憲法に規定されており、国は行わない)、多文化主義法の廃止、プライド・パレードへの公金援助中止、妊娠中絶の制限などである。2019年9月に政党登録された。
 パトロン党首は2018年9月、人民党のベルニエ党首と会談し、近いうち実施される総選挙において何らかの協力・提携ができないかと打診したが、一切の提携を拒否された。2019年総選挙でパトロン党首は、在住するサスカチュワン州ソウリス-ムースマウンテン選挙区に出馬したものの、得票率0.4%で最下位に敗れている。ほかに二人の候補が同党から出馬したが、ケベック州の候補は得票率0.05%、オンタリオ州の候補は0.2%で落選した。

 フレンズ・オブ・サイモン・ウィーゼンタール・センターのジェイム・カーズナー=ロバーツ理事は、次のように述べた。
「彼は、ユダヤ人のカナダからの除去を呼びかけた。これは民族浄化であり、人道に反する罪である。」
 カナダ・アンチ・ヘイト・ネットワークのイバン・バルゴード事務局長は、起訴はもっと早くされなければならなかったと述べた。
「この罪のための起訴が601日・・・あまりにも長い。彼が独房で腐敗していてもいいころだろう。」
Canadian_Nationalist_Party_ensign.jpg 彼は同党を「カナダ初のネオナチ政党」と言い、政党登録されたことでパトロン容疑者が特権を得たことを問題視した。
「それは、連邦政府が公金で彼の党を補助したことを意味する。そしてもう一つは、選挙管理委員会がパトロン氏に有権者名簿の写しを渡したことを意味する。彼は、あらゆるカナダ人の氏名・住所・生年月日を知り得たのだ。」

 法律上、党首の逮捕あるいは投獄は党の活動に影響しないが、獄中にいる人は立候補はできない。パトロン容疑者は2019年、リジャイナで二人の女性に暴行した容疑で起訴されている。


写真上:youtubeに出演するトラビス・パトロン党首。
図下:カナダ・ナショナリスト党のロゴ。ケルト十字に似ている。
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ホールフーズ・マーケット、ポピー着用禁止を撤回 [人権]

 ホールフーズ・マーケットは、従業員にポピー着用を禁止した件についての批判を受け、11月6日にこれを撤回した。
 退役軍人会は、寄付した人へのお礼としてポピー(芥子)の花を提供している。この習慣は、カナダの詩人ジョン・マクレーの詩「フランダースの野に」に基づくものである。第一次大戦休戦を記念するリメンバランス・デーの11月11日が近づくと、寄付者が増え、街中至るところでポピーを着用した人を見かけるのが、この時期の風物詩となっている。寄付金は退役軍人の福利厚生に用いられるが、新型コロナウィルスの影響で収益の低下が懸念されていた。
 ホールフーズ・マーケットはアメリカの食料雑貨店で、カナダには14店舗ある。同社は退役軍人会に8000ドル以上寄付し、毎年11月11日午前11時には、従業員が黙祷することを認めている。
 オタワの店舗に勤める匿名の従業員は「一つの主義・主張の表明を認めたら、他の主義・主張の表明への門を開くことになる」と言われたと語った。会社は、制服はエプロン・コートまたはベスト・帽子・名札と決められていて、ポピーは含まれないと説明したという。

 カナダのトルドー首相は6日、これを「愚かな間違いだ」と批判した。
 保守党のオトゥール党首は、ツイッターでこう述べた。
「かつてのカナダ人の犠牲は、アメリカの食料雑貨店が愚かになる自由をもたらした。ポピーは主義・主張ではない。それは敬意の印である。」
 新民主党のシン党首も、次のように述べた。
「従業員に『ブラック・ライブス・マター』と表明するのを禁止しながら、ポピーを禁止するのは間違っている。カナダ人が仕事に行くとき、軍人たちの犠牲を顕彰する権利を失ってはならない。」
 連邦議会はこの日、11月5日から11日まで従業員のポピー着用を認めるよう雇用者に呼びかける決議を、満場一致で採択した。またオンタリオ州ではダグ・フォード首相が、ポピーの着用を禁止する行為を違法化する法案を提出すると発表した。
 オタワの匿名従業員は、こう語った。
「私たちは、命と家族を、夫や妻や父や母や息子や娘たちを犠牲にした人々について話しています。彼らは、我が国の自由と安全を守るために死んだのです。そして今は、私たちが彼らを憲章しありがとうと言う時期なのです。」
 これらの批判を受け同社は、従業員のポピー着用を認めると発表した。

 アレックス・ルシフェロ弁護士は、ポピーなどの着用は政治的信条の表明とみなされることがありえ、それゆえその権利はオンタリオ人権憲章で保護されないと説明した。またポピーには針がついているため、会社には安全のため禁止する正当性がないとは言えないと語った。
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SNSに“All Lives Matter”と書いて大臣罷免 [人権]

5f8071721f000071230c19eb.jpeg ヌナブート準州のパターク・ネッツァー住宅大臣兼ヌナブート北極大学担当大臣は、10月7日フェイスブックに“All Lives Matter”と書き、黒人女性が妊娠中絶することを批判したことが原因で、翌日罷免された。
 彼は、特定の団体・個人を攻撃する意図はなく、言論の自由について練習していたので、後悔していないと語った。
「私はBlack Lives Matter運動を支持している。私は彼らに敬意を表するが、私はただ、中絶された赤子のことを考えていた。」
「私は平等を尊重する。そして、女性とその選択する権利を支持する現行法が、誰にでも等しく適用されることを尊重する。宗教的価値に基づく私の見解は異なるが、それは私見だ。」
「私はカナダ市民として、憲法で保証されている言論の自由について練習した。我々の言論の自由は、少しずつ侵食されている。我が国は、中国やロシアのような国になりつつある。」
 ジョー・サビカターク首相は大臣に電話し「君には2つの選択肢がある。一つは辞任すること、もう一つは罷免されることだ」と告げると、大臣は後者を選んだという。
 首相は、敬意を欠いた攻撃的な言動に寛容になるつもりはないと述べた。
「そのような投稿が、準州議会議員として、また閣僚として掲示されたことに、私は大きな衝撃を受けた。それらは彼の地位だろうが、内閣閣僚の任務は週7日、1日24時間のものである。」
 大臣の娘でイカルイト市会議員のマレヤ・ルカシ氏も、フェイスブックに“All Lives Matter”と書き、Black Lives Matterに類似する運動がなぜカナダ先住民にはないのかと訴えたが、後に謝罪した。
「私の真意は、イヌイットのための変革要求が高まっていないということだった。我々が直面している制度的人種差別と戦うグループやBLM運動から、何かを取ろうというものではもちろんなかった。」

 ヌナブート準州では、22人の準州議会議員の全員を閣僚に任命する超然内閣を組織する。どの議員をどのポストに就けるかは首相が決めるので、首相はポストからの罷免はできるが、議員を閣僚でないことにはできない。準州議会は21日に召集されるので、そのときネッツァー氏の処遇について投票することになる。それまでネッツァー氏は無任所大臣を務め、住宅大臣はサビカターク首相が、ヌナブート北極大学担当大臣はデビッド・ジョナシー文部大臣が務める。
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シン党首、他議員を「差別主義者」と呼び退場させられる [人権]

 下院で6月17日、新民主党のジャグミート・シン党首が提出した「連邦警察(RCMP)には制度的人種差別が存在すると認める」動議は、賛成多数で可決されたが、彼が目指した全会一致ではなく、ケベック連合のアラン・テリエン議員一人だけが賛成しなかった。
 シン党首がテリエン議員を「差別主義者」と言うと、ケベック連合のクロード・ドベルフェーユ下院院内総務が立ち上がり、反論した。
「今提出された動議に賛成しないという理由で、他の議員を公党の党首が差別主義者呼ばわりしていいとは思わない。ラ・プレーリー選挙区の議員を、新民主党は臆面もなしに差別主義者として扱っている。本院において到底受け容れがたい。」
 キャロル・ヒューズ副議長は「私には聞こえなかった」と言ったが、シン党首は「本当にそう言った。私は彼を差別主義者と呼んだし、そう確信している」と主張した。ヒューズ副議長はシン党首に謝罪するよう依頼したが、拒否されたため、アンソニー・ロタ議長はシン党首に、その日議場から退場するよう命じた。

 議場を出たシン党首は、記者会見で次のように述べた。
「一人の議員は恥知らずなことに、単にノーと言わず大声でノーと言い、このような手振りをした。」
 彼はそう言って、右手で蝿を払うかのような手振りをした。
「それを見て私は、長い年月の間何があったのかを、確かに知った。人々は人種差別を、制度的人種差別を、先住民が殺されるのを、黒人が暴力の被害に遭い殺されるのを、大したことだと思っていなかったのだ。私はまさにその瞬間、人種差別の正体を見た。」
「それはあたかも、人々が体験する現実を誰かが排斥するときに似ている。それを見たとき、私には憤りがあった。」
 議員は院内での発言に関し院外で責任を問われないが、院外でも同じ主張をするかと問われると、彼は次のように述べた。
「はい。私は、明確にそう言った。私は、明確にそれを繰り返す。」
「はい、連邦警察には制度的人種差別があると認め、問題を根本的に是正する動議に反対する人は、人種差別主義者である。」

 ケベック連合のドベルフェーユ下院院内総務もこの日、声明を発表した。
「先住民と少数民族に対する差別は重大な問題だが、下院公安委員会は連邦警察における制度的人種差別について調査中である。調査結果が公表される前に、何かを強要するのは不適切だと我々は考える。我々は、議会のプロセスを尊重したい。」
「新民主党党首は、ケベック連合下院幹事長に根拠のない侮辱を加えた。彼はただちに謝罪すべきである。」
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カナダに「制度的人種差別」はあるか [人権]

 ミネアポリスでジョージ・フロイド氏が5月25日、警官の暴力によって死亡する事件が起きると、行政による「制度的人種差別」に憤る人々が抗議のデモを行い、一部は暴徒と化した。カナダでは3月10日アルバータ州フォートマクマレーで、アサバスカ・チペワイアン・ファーストネーションのアラン・アダム首長が拘束される際、警察に顔面を激しく殴打される様子が動画として公表された。
 連邦警察(RCMP)のブレンダ・ラッキ長官は6月12日、カナダの行政にも人種差別はあり、その解消に取り組んできたと語ったが、後に発言を修正した。
「私は、我が国の行政機関に人種差別があると認めたが、制度的人種差別が連邦警察に存在するとは言っていない。」
 これを受けてリリアン・ディック上院議員(進歩上院の会)は15日、彼女の辞任または解任を要求した。
「彼女の最近の声明は、制度的人種差別が何であるかのかを、完全に理解していないことを示している。連邦警察が制度的人種差別を除去する方法を心に描き、実行することは彼女にはできない。制度的人種差別が、連邦警察に存在するかどうかについての彼女の不可解な転換は、リーダーとして逆説的であり、受け入れがたい。」
 なおディック議員は、クリー・ゴードン・ファーストネーションに属している。

 アバカス・データ社が6月5日から10日まで、18歳以上のカナダ人1750人を対象に実施した世論調査は、制度的人種差別はあると回答した人が61%、ないと回答した人が9%という結果を示した。
 レジェ・マーケティング社が6月5日から7日まで、18歳以上の1523人のカナダ人と1001人のアメリカ人を対象に実施したオンライン世論調査では、「以下の人々のうち誰を支持しますか」という設問に、カナダ人は、差別に抗議する人72%、警察39%、州政府33%、トランプ大統領9%と回答した。対照的にアメリカ人は、差別に抗議する人が63%と少ないのに対し、警察55%、州政府52%、トランプ大統領38%と、行政に対する支持が顕著に高かった。そこでカナダ人回答者に、市民と警察の関係はアメリカに比べて良いかと尋ねたところ、「良い」が77%、「ほぼ同じ」が15%、「悪い」が3%という結果になった。
 また、人種差別は行政において深刻な問題であると回答したカナダ人は、白人で48%だったのに対し、有色人種では61%だった。

 自由党は有色人種の間で強く支持されていて、その基盤であるオンタリオ・ケベック・ブリティッシュコロンビアはいずれも有色人種の多い地域である。有色人種が過半数を占める選挙区が全国で41あり、うち自由党は32議席を持っている。
 アバカス・データ社の統計は、有色人種の有権者の間で自由党支持者が52%、保守党支持者が22%、新民主党支持者が20%であることを示している。これが白人有権者になると、自由党の保守党に対する優位はわずか6ポイントに過ぎない。
 有色人種の有権者では、トルドー首相の支持率が53%なのに対し、不支持率は19%である。2019年秋の総選挙期間中、首相が教師時代に「アラビアン・ナイト」のパーティでブラックフェイスに塗った写真を暴露されたときが最も支持率が低く、43%だったことを思えば、劇的な改善だといえる。人々は首相を、新型コロナウィルス対策に頑張っていると好意的に評価しているようだ。
 今総選挙が実施されれば、自由党が過半数を容易に獲得することに疑いの余地はない。だが新型コロナが完全に制圧されたとは言えない現状において、総選挙を実施すれば、投票所に人々が殺到しクラスターを招きかねない。総選挙が実際に行われるときには、自由党の支持率は下がっていることが考えられる。そこで人種問題は、自由党が総選挙に勝利するための重要なファクターでありえる。

 トルドー首相は人種差別への抗議集会に参加し、膝を屈してこう語った。
「制度的人種差別はまさに、全国的な、警察を含む全ての行政機関の問題である。それは多様な背景を持つカナダ人たちが、世代を超えて直面してきた問題である。これはカナダ人が、我々のシステムには不公平があると認めた瞬間である。」
 対照的に、ケベック連合のイブ=フランソワ・ブランシェ党首は2日、カナダに制度的人種差別があることを否定した。
 ケベック州のフランソワ・ルゴー首相も、制度的人種差別を否定した。
「差別はいくぶん存在する。だが制度的人種差別というものはない。」
 ストックウェル・デイ元国際貿易大臣(元保守党)は2日、レギュラー出演していたCBCのニュース番組で、次のように述べた。
「我々は、カナダの制度が完全ではないと認めなければならない。そう、我々の周囲には少数の愚か者がいるが、カナダは人種差別国ではないし、大多数のカナダ人は人種差別主義者ではない。そして、常に改善される必要のある我々のシステムは、制度的に人種差別主義ではない。」
 彼はスポンサーの意向により、降板させられた。
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選挙管理委員会、投票日を変更せず [人権]

 予定されている総選挙の投票日がユダヤ教の祭日に当たるため、連邦裁判所が日程の見直しを求めていた問題で、選挙管理委員会は7月29日、日程は変更しないと発表した。
 ステファン・ペロー選挙管理委員長は、次のように述べた。
「厳格なユダヤ教徒が投票する権利は、全てのカナダ人の投票機会を確実にすることでつり合いが取られなければならない。」
「カナダほど多様な国において、完璧な投票日などない。投票日に投票できないカナダ人は、常にいる。」
「この遅い時期において選挙の日程を変えることは望ましくないと、私は結論する。」
「これは軽々しく決められる問題ではなく、むしろ多くの人々により広範囲な投票アクセスを提供する視座においての決定である。」
 彼は、投票所を探す準備は2018年初めに始まっていると説明した。全国で13の教育委員会が、学校を投票所として提供し、10月21日を授業のない日と定めている。これらの多くは、投票日が変更された場合、学校を投票所として提供するのは困難だと回答している。
 原告のシャリ・アリエ=ベイン候補とアイラ・ウォルフィッシュさんは、投票日を10月28日に移すよう要請した。だがペロー委員長は、その日はヌナブート準州の投票日だと指摘し、異なる2つの行政区におけるダブル選挙は、有権者に誤解と混同をひき起こすと反論した。
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「投票日が祭日」ユダヤ教徒が変更を要請 [人権]

 連邦議会総選挙は、2019年10月21日に実施される予定になっている。この日がユダヤ教の祭日に当たるため、ユダヤ教徒が日程を変更するよう訴えていた問題で、変更する必要はないとした選挙管理委員会の判断を見直すよう、連邦裁判所は7月23日に要請した。
 選挙法の規定により、総選挙は10月21日までに実施しなければならない。投票日は、首相の助言に基づき総督が公示する。投票日はまだ正式に確定していないが、トルドー首相は10月21日に実施すると公言している。
 投票日はひとたび総督に公示されたら、絶対に変更はできない。選挙管理委員会には投票日を決定する権限はないが、予定を変更するよう勧告はできる。また期日前投票の日程は、決定する権限がある。
 10月21日の投票日は、10月20日から22日にかけて行われるシェミニ・アゼレットと完全に一致する。ユダヤ教正統派は仕事や長距離の移動を禁止されているため、投票はできない。そこでユダヤ教正統派で、オンタリオ州エグリントン-ローレンス選挙区に保守党から出馬するシャリ・アリエ=ベイン候補と、ヨーク・センター選挙区の有権者アイラ・ウォルフィッシュさんは、選挙管理委員会に善処を要請した。また10月11日から14日までに仮設定された期日前投票日は、12日の土曜日が安息日で、14日が仮庵祭に当たる。ユダヤ人の1日は日没から日没までなので、「土曜日の安息日」とは金曜夜から土曜夜までに相当するから、11日の夜も投票できない。ユダヤ系でヨーク・センター選挙区の現職マイケル・レビット議員(自由党)も、予定を変更するよう要請したが、ステファン・ペロー選挙管理委員長は、日程の変更ではなく期日前投票の時間を21時までに延長すると回答したため、アリエ=ベイン候補とウォルフィッシュさんは6月、連邦裁判所に訴えを起こした。
 エグリントン-ローレンス選挙区には、およそ5000人のユダヤ教保守派の有権者がいるが、近年は僅差の勝負になっており、当選者と2位の票差は2015年が3490票差、2011年が4062票差、2008年が2060票差となっている。

 連邦裁判所のアン・マリー・マクドナルド判事は23日、選挙法の規定と、憲法上の権利の侵害との間で、ペロー委員長がつり合いを保とうとした形跡が見られないと判断し、8月1日までに日程を見直すよう要請した。
 ユダヤ人民族団体ブナイ・ブリスのマイケル・モスティン理事長は、判決はカナダのユダヤ人コミュニティにとって「大勝利」だと語った。
「選挙権と被選挙権は、カナダ人の最も基本的な人権の一つである。裁判所が、選挙管理委員会は彼らに適切な配慮をしなければならないと判断したのは正しかった。」
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6人いた女性首相、ゼロに [人権]

 アルバータ州議会総選挙で、与党新民主党が敗北し、レイチェル・ノトリー首相の退陣が決まった。これで、2013年には13行政区に6人いた女性首相は、一人もいなくなることになる。その6人とは、ブリティッシュコロンビア州のクリスティ・クラーク首相、アルバータ州のアリソン・レッドフォード首相、オンタリオ州のキャスリン・ウィン首相、ケベック州のポリーヌ・マロワ首相、ニューファンドランド&ラブラドル州のキャシー・ダンダーデイル首相、ヌナブート準州のエバ・アーリアク首相である。

 オタワ大学で政治学を教えるジュヌビーブ・テリエ教授は、これらの女性リーダーたちも他の女性たちと同様に「ガラスの崖」の犠牲になったと指摘する。
 男性が女性を辛辣に批判し、陥れることには強い抵抗がある。そこで党内で対立が深刻化し、分裂の危機に瀕するとき、女性をリーダーに立てることによって党執行部を保護し、団結と一致をアピールすることで党内抗争を回避しようとする知恵が働くのだという。
 テリエ教授は、カナダの女性党首たちのほとんどはそのような理由でリーダーになったと指摘した。そして女性首相たちの大多数は、野党党首が総選挙勝利によってではなく、首相である与党党首が辞任し権力危機が発生したときに誕生している。前者の例はマロワとノトリーであり、後者の例はクラーク、レッドフォード、ウィン、ダンダーデイルと、唯一の連邦首相であるキム・キャンベルである。
 彼女たちの全員が、与党党首として最初の総選挙に挑んだ。何人かは敗れて退陣し、何人かは勝利して留任した。留任したうちのほとんどはさらに次の総選挙に挑んだが、クラークを除く全員が敗北した(クラークは選挙後に辞職を拒否したため、内閣不信任され辞職)。テリエ教授は、女性リーダーには調和と包容力ばかりが求められているため、党内が安定し政権が長期化すると、今度は決断力の不足を批判されるのだという。
 ウィン前首相は、女性首相が増えるにつれ首相会議には、先住民女性の失踪や暴力などそれまでとは異なった議題がのぼるようになったが、やがて女性首相たちが減るにつれ、それらの議論は形式化・儀礼化していったと述懐する。彼女は、人口の半数を占める人々が代表されなくなった今、それほど遠い昔でない時代には半数近くを代表していたことを思い出し、それを取り戻すために戦い続ける必要があると訴えた。
 ノトリー首相も選挙後の演説で、同様のことを訴えた。
「それはしばしば、前に2歩前進したあと後ろへ1歩後退したように感じられるかもしれない。だが前に進むのを、絶対に止めてはならない。」


【参照】 https://canadianhistor.blog.so-net.ne.jp/2011-10-13
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ミニコミ紙の編集長と発行人、ヘイトスピーチで有罪 [人権]

 トロントのミニコミ紙「ユア・ウォード・ニュース」が女性とユダヤ人への差別記事を掲載した事件で、オンタリオ地裁は1月24日、ジェームズ・シアーズ編集長とリロイ・セントジャーメイン発行人に有罪判決を下した。
 同紙は20ページの印刷物で、トロントで年4回発行される。最も多いときで30万部配達されたが、2016年にカナダ郵政公社が配達を取りやめた。シアーズ編集長によると「世界最大の反共主義ペーパー」だそうだが、巷の評価は「カナダ最大の差別ペーパー」である。同紙は、フェミニストは「妊娠中絶を喜ぶ悪魔崇拝者」で、女性を「穴が3つある家財」と評し、「性交の承諾年齢は性交可能な年齢であるべきだ」として、最終的にはレイプの合法化を主張した。さらに、ホロコーストはユダヤ人が世界支配を容易にするための作り話であり、CBCはフェイク・ニュース、自由党は共産主義者の巣窟と、あらゆるたぐいの差別的言辞と陰謀論に溢れている。
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 両被告は法廷で、記事はただの皮肉だと抗弁した。そして被告側弁護人は、記事は女性とユダヤ人の一部を評したものであってその全体を評したものではない、また反フェミニズムの見解は違法化されるべきでないと主張した。
 だがリチャード・ブルーイン判事は、記事は全くおもしろさを感じさせず、これが刑法の「憎悪の促進」に該当しないなら該当するものなどないと断じた。
「両名は、容赦のない憎悪の促進を完全に認識していた。」
「その憎悪が、他に広まることを意図していた。」
 刑の言い渡しは4月26日に予定されており、5000ドル以下の罰金か6か月以下の禁固刑に処せられる。両被告は控訴する意向を述べた。
 判決を受けて、同紙を批判してきたリサ・キンセラさんは次のように述べた。
「これは、本当に歴史的な判決である。」
「刑法第319条に基づく起訴は、女性への憎悪の促進に対してはこれまでなかった。そして彼らは起訴されただけでなく、有罪と評決された。」


写真:ユア・ウォード・ニュース。左の犬を抱いている人物がジェームズ・シアーズ編集長。肩書きが「ドクター」になっているが、女性に猥褻な行為を働き医師免許を剥奪されている。
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トランプ支持の客にサービスを拒否 [人権]

 トランプ大統領を支持する客がレストランでサービスを拒否された事件で、店員が解雇された。
 バンクーバーのスタンレーパーク内にあるレストラン「ティーハウス」に6月26日、トランプ氏が掲げたモットー“Make America Great Again”(アメリカを再び偉大にしよう)の書かれた赤い帽子をかぶった男性が入店した。ウェイターのダーリン・ホッジ氏がテーブルに行き、帽子を脱ぐよう要求すると、客はそれを被る権利があると答えた。ホッジ氏が「帽子を脱がないとサービスしない」と告げると、客は出て行ったという。
 レストランを経営するセコイア社は、ホッジ氏を28日に解雇した。マネージャーのアンディ・クリンプ氏は、次のように述べた。
「我々は、いかなる種類の非寛容も支持しない。」
「我々は人を、政治的信条に基づいて差別しない。」
 ホッジ氏は、会社の決定は受け容れたものの、解雇の翌29日にフェイスブックで声明を発表した。
「MAGAの帽子は、人種差別・偏狭・イスラムフォビア・女性蔑視・白人優位主義・同性愛嫌悪を象徴している。強いモラルを持つ者として、私の職場において、この客の帽子のセンスに対し明確な態度を示す必要があった。少しも後悔していない。」

 6月22日にはバージニア州レキシントンのレストランで、トランプ政権のサラ・ハッカビー・サンダース報道官が入店を拒否される事件が起きている。店には抗議のデモや嫌がらせが相次ぎ、ネット上でも親トランプ派と反トランプ派が評価の1つ星と5つ星を大量につけ合う「ネットスクラム」が起きる騒ぎに発展した。
 だが今回の事件では、事情はもう少し複雑だ。親トランプ派は、サービス拒否に憤り1つ星をつけるグループと、解雇に賛同し5つ星をつけるグループに両極端に分かれている。そのいっぽう、政治的騒動にうんざりする人々もいる。
「どうして大勢の人々が、食事に関係なく、行ったこともない店に架空のレビューを投稿するのか?」

 アメリカ共和党ブレーンのブレンダン・シュタインハウザー氏は、会社の対応に異議を唱えた。
「もしあなたがゼロ・トレランスの考えを持っていたとしても、ウェイターを無給で2週間自宅待機させるとか、ほかにもっといい方法があったのではないか。この手の人を解雇するのは、教訓になるかもしれないが、より多くの問題を引き起こしかねない。」
 ブリティッシュコロンビア州人権法では、従業員の政治的信条は保護されているが、客はそうではない。
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同性愛禁止のミッション系大学、ロースクール設立取り消しに [人権]

 トリニティー・ウェスタン大学(ブリティッシュコロンビア州ラングレー市)が、異性配偶者以外との性行為を禁じる誓約書を生徒に提出させていることを理由に、ロースクールの設立をブリティッシュコロンビア州とオンタリオ州の法律協会に拒否されていた問題で、連邦最高裁は6月15日、法律協会の措置を認める判決を下した。

 キリスト教に基づく教育を行う同大学は、全ての生徒と教職員に誓約書の提出を求めている。そこには「低俗な言葉の使用、嘘、欺き、盗み、ポルノ等品性を下げるもの、男女間の結婚の神聖さを汚す性行為」を慎むことが記載されている。
 同大学のロースクール設立は、ブリティッシュコロンビア州政府によって2013年に仮認可されたが、後に撤回された。不認可をめぐりオンタリオ州・ブリティッシュコロンビア州・ノバスコシア州で裁判となり、オンタリオ州裁判所ではLGBTに差別的であるという理由で不認可を是としたが、ブリティッシュコロンビア州裁判所では、具体的な危害の証拠がないかぎり大学には信条に従い行動する権利があると認められた。ノバスコシア州裁判所では、誓約書の変更を条件に認可された。
 連邦最高裁は7対2で、不認可措置を認めた。誓約書はLGBT生徒の入学を阻止する効果があるが、彼らのアクセスを確実にするために宗教を制限することは「バランスが取れ合理的である」と判断した。なお少数意見としてスーザン・コート裁判官とラッセル・ブラウン裁判官の2人は、法律協会は大学の管理方針を十分に考慮すべきで、その権限は制限されるべきだと主張した。

 ロースクール認可を進めてきた同大学のジャネット・バッキンガム教授は、大学のプログラムはうまく行っていて、多くの有用な卒業生を社会に送り出して来たと語った。
「我々は、これがカナダの多様性の損失だと思う。カナダは伝統的に、幅広い宗教的見解をもって多様性を支えてきた。今日の最高裁の判決には、非常に失望している。」
 彼女は、大学が取ることのできる対策の一つとして、誓約書の提出をやめることがあると述べた。
 キリスト教系「信教の自由研究所」のアンドリュー・ベネット理事は、最高裁は性的アイデンティティと宗教的アイデンティティの「想像上の対立」を促進したと語った。
「これは宗教的アイデンティティの問題ではなく、性的アイデンティティの問題でもない。これは基本的人権の、そして信仰的に生きる権利についての問題である。」
 彼は、判決は視野が狭く、個人が信仰の自由と良心の自由の間で悩まされることになるだけだと批判した。
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疑惑のムーア議員が写真を公表 [人権]

 新民主党のクリスティン・ムーア議員が、写真を公表した。
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「私は、彼を愛していました。」
「彼は私と、とてもロマンチックな関係でした。それは合意のある関係でした。私はそのことを思い出し、ただ泣くばかりでした。一人の人がどれほど嘘をつけるかを見るのは、恐ろしいことです。彼がなぜこんなことをしたのか、わかりません。」
 彼女は最近、支持者からの励ましのメッセージのほか、いくつか匿名で悪意に満ちたメッセージを受け取ったと語った。

 彼女はそれから、2013年6月5日の行動について詳細に説明した。それによると、彼女はその日オフィスに軍人たちを招き、飲酒した。そのとき、ドアは開けたままだったという。
 18時30分に連邦議会でイベントがあったので、彼女はそれに出席し、軍人たちはスパークス・ストリートのパブに移った。その後カークランド氏に誘われ、彼女もパブに行きそこで再び飲酒した。彼女が「今夜は採決がある」と言うと、彼は彼女をオフィスまで送り、そこで合意のキスをした。それから彼は「服を脱ぐ?」ときいて来たが、彼女は今夜は採決があり、時間がないと答え、連邦議会に向かったという。

 だが、グレン・カークランド氏はCBCの番組で、合意のある関係を否定した。
「彼女は、我々が『関係』を持ったと言っているが、完全に嘘である。9か月間に三度会ったと言うが、歯医者の方がよほど会っている。それは『関係』ではない。その話は、正確ではない。」


写真:スパークス・ストリートのパブで撮影された、クリスティン・ムーア議員所有の写真。右からグレン・カークランド氏、ムーア議員、議会スタッフ。カークランド氏の服装、特に胸にメダルが付けられていることから、2013年6月5日のものと考えられる。
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セクハラ疑惑のムーア議員が反論 [人権]

 新民主党のクリスティン・ムーア議員は5月13日、カナディアン・プレスの独占インタビューに応じ、彼女を告発したグレン・カークランド氏と、それを記事にしたCBCのニール・マクドナルド氏、ナショナルポスト紙のクリスティ・ブラッチフォード氏、トロントスター紙のロージー・ディマンノ氏を相手取り訴訟を起こす意向を明らかにした。
「意見を公表する前に、記事を刊行する前に、矛盾がないかどうか基本的なチェックがあるべきです。」
「私の私生活と性生活は暴露されました。それは、私と家族にとって厳しいことでした。」

 彼女はカークランド氏と、2013年6月から10月まで交際していたと語った。
「私たちは、恋人同士でした。」
「彼はおそらく嘘をついていて、私を愛してはいなかったでしょう。でもそのとき私は、愛し合っていると信じていました。」
image.jpg カークランド氏は2013年6月5日、下院の国防委員会で証言している。二人はその日に出会い、彼の主張によれば、彼女はその夜彼のホテルについて行ったという。だがムーア議員は、彼の主張は全く馬鹿げていると一蹴した。なぜなら彼女はジンを飲まないし、下院の記録は彼女がその夜22時40分には議会に出席していることを示している。その夜は採決があり、約1時間後に終了している。彼女は、彼に電子メールで呼ばれてホテルに行ったのは後のことで、そのとき合意のある性的関係を持ったと説明した。
 彼女の主張によると6月5日、軍人たちをオフィスに招き、飲酒した。夕方には解散したが、カークランド氏に誘われ、彼らと後刻オタワのバーで会った。彼女が「今夜は採決がある」と言うと、彼は彼女をオフィスまで送り、そこで彼女を抱きしめてキスしたという。
「キスしたのは、彼の方でした。私は、彼のキスを受け入れました。でも最初の一歩を踏み出したのは、彼の方でした。」
 彼女は、二人はその後も連絡を取り合い、二度会ったと語った。
 彼は2013年6月21日、彼女の住むケベックへ行くための旅程に関する電子メールを送ったが、この旅行は後に彼がキャンセルした。彼女は二人が交際していた証拠として、電子メールと飛行機のチケットをカナディアン・プレス記者に見せた。
 カークランド氏は、2013年7月、サスカチュワン州ケノシー・レイクに友人たちと滞在しているとき、彼女が呼ばれてもいないのにやって来たと主張する。だが彼女は、カナディアン・プレス記者に「恋人たちの旅行」と称する写真を見せた。どの写真も二人だけで、第三者は写っていなかった。
 カークランド氏は、教えてもいないマニトバの自宅に彼女が押しかけて来たと主張する。だが彼女は、訪問する2日前に予告しており、彼がウィニペグまで迎えに来たと語った。
 彼女は、二人が別れたのは彼の離婚が難しいのと、二人の地理的距離が遠すぎたせいだと説明した。

 カークランド氏はムーア議員の釈明を聞き、自分たちの関係は「交際」などではなく、地位と権限を持つ彼女が、弱い立場の自分につけ込んだだけだと主張した。
「『交際』とは、両者が互いに自発的に関係することだ。」


写真:連邦議会で証言するグレン・カークランド氏。
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男性議員をセクハラで告発した女性議員、自身のセクハラ疑惑が浮上 [人権]

 #MeToo運動の先頭に立ち、男性議員をセクハラで告発した新民主党のクリスティン・ムーア議員(34歳・既婚者)が5月8日、自身のセクハラ疑惑により、新民主党幹部会の資格を停止された。
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 (1) ムーア議員、ウィア議員のハラスメントを告発
 ムーア議員は1月30日、新民主党のエリン・ウィア議員が党の女性職員などに嫌がらせをしていると告発した。
 彼が幹部会の役職に就きたがっているのは、同僚議員の誰もが知っていた。彼は支援を得るため、議員たちに電子メールを送っていた。だがムーア議員は、あなたの日頃のふるまいについては知っている、私にではなく他の女性たちへの、と返信した。
「あなたは幹部会の中で、その地位を得るにふさわしいと思う最後の人である。あまりに多くの女性たち(ほとんどは職員だが)からの苦情が、私に来ている。そして女性として、私はあなたと、独りでは会いたくないと感じている。政界で今起きていることに鑑みれば、あなたは面倒を避けるため役職に就くべきでないと、私は考えている。」
 報告を受けてシン党首は、問題はセクシャルな嫌がらせではないと判断したが、ウィア議員を2月1日、調査報告が終了するまで幹部会の資格を停止すると決定した。
 シン党首は「これ以上のアプローチは不要だと言われたとき、ウィア議員はそれに従った」と擁護した。だがウィア議員がその後、メディアを通して「私は何が問題なのかわからない。嫌がらせを受けた人などいない」「幹部会役職への意欲を表明したことへの応答として攻撃が始まったことからして、それには政治的動機があるように思える」と発言したことを、シン党首は問題視した。彼は、ウィア議員は反省と後悔を表明せず、メディアを使って告発者を攻撃しようとしたと断じた。
「重要な第一は、常に犠牲者を信じることである。第二に、前に出て告発したいと思う犠牲者に、安全と思われる居場所を確保することを私は約束する。」
 調査報告を受けてウィア議員は、5月3日に幹部会から除名された。彼は院内で、1961年に新民主党に合流し消滅した前身のCCF(The Co-operative Commonwealth Federation※一部で「協同連邦党」と訳されているが、某カナダ学会からこの訳語を使用しないよう強く要請されている)の会派を称している。かつてCCFが新民主党に合流した前例を、再度実現させるのだという。
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 (2) もう一人の犠牲者
 ムーア議員がウィア議員のセクハラを断罪するのを、一人の退役軍人は2400キロ離れたマニトバ州ブランドンで見つめていた。
 グレン・カークランド伍長は2008年、アフガニスタンで装甲車を運転していたとき、ロケット弾の攻撃を受けた。彼は膵臓と脊椎と右目と脳を負傷し、視覚と聴覚に障害を負った。PTSDも患った彼は、抗うつ薬・オピオイド鎮痛剤・インシュリン・抗生物質などの毎日の服用を欠かせなくなった。
 彼は、負傷した退役軍人の扱いについて証言するよう下院の国防委員会に依頼され、2013年6月、胸にメダルをつけて議会で証言した。彼は「退役軍人の父が、軍人としての責務を果たせば国が最後まで面倒を見ると言っていたが、それは間違いだった」「私は壊れてしまって、もう役に立つことはできない」と、泣きながら語った。
 委員会が終了すると、ムーア議員にカードを手渡され、聞きたいことがあるのでオフィスに来てほしいと言われた。彼は元軍人で、上官には絶対服従することを教えられていたので、何の疑問も持たず言われたとおりにオフィスに行った。するとムーア議員がジンを出し、飲むよう勧めた。彼は、薬を服用しているからと言って固辞したが、看護士の資格を持つ彼女は「大丈夫よ」と言って、さらにもう2・3杯勧めた。彼は次第に、彼女の関心が自分の健康や福祉ではなく、別のところにあると察した。
 彼はその夜ホテルに戻ったが、彼がメディアに語ったところによれば、彼女はホテルについて来て一夜をともに過ごしたという。これについてCBCは、彼女が「不適切な性的関係を持った」と断定的に報じた。
 彼は、彼女との関係は一度きりのものだと考えた。だが彼女はその後、「露骨なメッセージ」を何度も送り続け、住所を教えていないのにブランドンの自宅まで押しかけて来るようになった。
 カークランド氏は、メディアに次のように語った。
「私は、レイプや何かの被害を訴えているわけではない。」
「だが彼女は、不適切だった。彼女は欲しいものを手に入れるため、地位を利用し権力と権限を行使した。」
「そこには確かに、力の不均衡があった。彼女には地位と権限があった。そして彼女がウィア議員と同じ道徳的立場に置かれているのは、何とも皮肉なことだ。」
 資格停止は一時的な措置であり、ムーア議員は調査報告が出るまで幹部会メンバーのままであるが、委員会と党における全ての役職を解かれている。シン党首は、確かな証拠がなくても「常に犠牲者を信じる」と断言した以上、前例と同じ措置を取らなければならないだろう。
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 (3) もう一つの告発
 ムーア議員は、2015年にももう一人の議員のセクハラを告発し、政治生命を奪っている。
 彼女の主張によれば2014年3月、友人とみなしていた自由党のマッシモ・パチェッティ議員が「オタワの家」と呼んでいたホテルに行き、「明確な同意のないセックス」をする羽目になったと訴えた。このとき彼女は、彼にコンドームを渡したという。
 彼は自由党を永久追放され、政界引退に追い込まれた。
【参照】 http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2015-03-20
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図上:#MeToo運動のブーメランを食らったクリスティン・ムーア議員。
写真中左:クリスティン・ムーア議員。
写真中右:エリン・ウィア議員。
写真下:グレン・カークランド氏(車椅子の人物)。
図下:カナダによくいる捕食者。狐・熊・クーガー・下院議員。下院を英語で“House of Commons”と言うのにかけている。
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グールド民主機構大臣、閣僚で初めて出産・産休へ [人権]

 カリナ・グールド民主機構大臣(30歳)は、出産し産休を取る最初の連邦大臣になろうとしている。
 出産予定日は3月上旬で、それまでは政務を続け、出産後は少なくとも5月まで産休を取る予定である。出産後は、スコット・ブライソン予算庁長官が政務を代行する。
 大臣と議員は雇用保険に加入してないため、産休を取得する当然の権利を有しない。病気休暇なら21日まで取得できるが、これを超える休暇は公の制度ではなく、党の裁量の問題である。

 1921年に初めて女性が連邦議会に立候補して以来、1957年にエレン・フェアクロー(進歩保守党)が大臣になるまで女性閣僚は登場しなかった。グールド大臣は2017年1月、29歳で史上最年少の女性閣僚に任じられている(史上最年少の閣僚はジャン・シャレーの28歳)。
 グールド大臣が生まれた1987年、シーラ・コップス下院議員(自由党)は、現職下院議員として初めて出産した。
 ミシェル・ドックリル下院議員(新民主党)は1999年、投票のため下院議場に赤子を連れ込んだ最初の議員になった。
 クリスティン・ムーア下院議員(新民主党)は、2015年総選挙の選挙期間中に出産し、数日後には選挙運動を再開した。
 ニキ・アシュトン下院議員(新民主党)は2017年、連邦政党党首選に立候補した最初の妊婦となった。投票日は10月1日で、11月に双子を出産し、1月に政務に復帰した。
 ケベック州のポリーヌ・マロワ前首相は、1981年州議会選挙に妊娠中に立候補し、投票日の11日後に出産した。彼女は1985年のケベック党党首選にも、妊娠中に立候補している。
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