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4選挙区で票の数え直し [2011年下院選]

 選挙法は、1位と2位の得票差が投票総数の0.1%以下の場合、裁判所に訴えることなしに、自動的に票の数え直しをするよう定めている。今回総選挙では、以下の4選挙区で票の数え直しが行われた。
 オンタリオ州エトビコークセンター選挙区では当初、テッド・オピッツ候補(保守党)がボリス・ジェズネフスキー候補(自由党)を破って当選と発表されたが、再集計の結果、オピッツ候補が26票差で当選と確定した。
 オンタリオ州ニピシング-ティミスカミング選挙区では当初、ジェイ・アスピン候補(保守党)がアンソニー・ロタ候補(自由党)を破って当選と発表されたが、再集計の結果、アスピン候補が18票差で当選と確定した。
 ケベック州モンマーニュ-リスレ-カムラスカ選挙区では当初、ベルナール・ジェネルー候補(保守党)がフランソワ・ラポワント候補(新民主党)を破って当選と発表されたが、再集計の結果、ラポワント候補が9票差で逆転勝利を収めた。
 マニトバ州ウィニペグノース選挙区では当初、ケビン・ラムルー候補(自由党)がレベッカ・ブレイキー候補(新民主党)を破って当選と発表されたが、再集計の結果、ラムルー候補が44票差で当選と確定した。
 2011年下院選挙は再集計の結果、保守党の1議席減、新民主党の1議席増となり、議席配分は保守党166議席、新民主党103議席、自由党34議席、ケベック連合4議席、緑の党1議席(定数308)と確定した。なお保守党のケベック州における当選者はわずか5人で、うち4人が閣僚ポストを与えられたが、当選が確定していなかったジェネルー候補にはもちろん与えられなかった。
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「ベガスの女」が当選: 「オレンジ旋風」と杉村太蔵たち [2011年下院選]

images.jpg 投票日の一週間前に、有権者と握手(shake hands)もせずラスベガスでサイコロを振って(shake dice)いた「ベガスの女」、ルース・エレン・ブロソー候補(新民主党)が、ベルティエ-マスキノンジュ選挙区で40%の票を獲得し、当選した。予期せず当選したとき杉村太蔵はニートだったが、ルース・エレン・ブロソーはパブに勤める未婚の母であった。
 彼女はオタワの選挙対策本部で自分の当選を知り、衝撃を受けたという。そして5月6日、当選後初めての取材をトロワ・リビエールの新聞「ル・ヌベリスト」から受けた。取材は英語で行われた。
 彼女は、自分は長年の新民主党支持者であり、本来はジュリー・ドメール氏が立候補するはずだったが、ブラサ選挙区で立候補(落選)したため、急遽彼女が第二候補として選ばれたと説明した。そしてベルティエ-マスキノンジュ選挙区で、新民主党は4位より上位に行ったことがなく、当選することは全く予想してなかったので、選挙区には一度も入らなかったと認めた。
「私の立候補は、ただの名義上のもので、それ以上のものではありませんでした。」
 4月26日が彼女の誕生日で、かなり前からパブのマネージャーに休暇を申請しラスベガスへ旅行に行く計画を立てていたところ、突如解散・総選挙が公示され、旅行をキャンセルすることができなかったという。
 また自分のフランス語は十分ではないが、父はフランコフォン(姓がフランス系)で、彼女自身も2年生までケベックの小学校に通ったと語った。

 「オレンジ旋風」はまた、史上最年少19歳の下院議員ピエール=リュク・デュソールを当選させた。彼は興奮してラジオのインタビューで「ケベック独立は必然的なものだ」と口走り、党幹部を慌てさせた。
 「長老議員たちは、新人議員たちを教育する必要がありそうだ」という指摘に対し、レイトン党首は「我々は若者たちをアフガニスタンに送っている。なぜ議会に送ってはいけないのか」と語り、新人議員たちを擁護した。
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「オレンジ旋風」こそ保守党過半数の原因 [2011年下院選]

 5月2日に実施された連邦議会選挙では、保守党が議会侮辱や相次ぐ閣僚のスキャンダルにもかかわらず、連続三選しかも初の過半数安定政権の樹立を実現した。これにより、左派3党が過半数を握り、与党がパーシャル連立を余儀なくされた時代が終わりを告げた。保守党の経済政策は有権者に支持され、自由党とケベック連合の2つの左派政党は壊滅的敗北を喫した。
 だが得票数で見ると、保守党が583万票を獲得したのに対し、新民主党と自由党は729万票を獲得しており、左派票は依然として右派票を上回っている。にもかかわらず、40%にも満たない支持率で、保守党は過半数の獲得に成功している。
 保守党は得票率を2%上昇させるだけで、24議席増加した。得票率1%当たり4.2議席を獲得したことになる。いっぽう「オレンジ旋風」を巻き起こした新民主党は、得票率を12.5%上昇させ議席を3倍以上に増加させたにもかかわらず、得票率1%当たり3.3議席しか獲得していない。得票率が7.4%減少した自由党は、得票率1%あたりわずか1.8議席にとどまっている。緑の党は得票率が2.9%減少したものの、悲願の1議席獲得に成功した。

 今回の選挙結果について、多くの批評家が「カナダ政治の二極化」を指摘する。有権者は、少数政権を繰り返す従来の議会のあり方に危機感を覚え、左右の両極化を志向したというのである。
 左派の有権者が自由党から新民主党に切り替えたことは、「二大政党+2」制の政治力学に思わぬ変動をもたらした。最も劇的な変動が起きたのは、大票田のオンタリオである。90年代には自由党が100議席を占める強固な地盤であったが、過去2回の総選挙で北部を新民主党に、トロントを除く南部と中部を保守党に奪われた。それでも自由党は、最後の牙城であるグレーター・トロント地域の大部分を死守した。
 それが今回総選挙では、保守党の議席増のほとんどがグレーター・トロント地域で起こった。保守党は「農村から都市を包囲せよ」を合言葉に掲げ、グレーター・トロント地域の44議席中30議席を獲得し、州全体では73議席を獲得して、23年ぶりにオンタリオで第一党となった。保守党が今回新たに獲得した24議席のうち、18議席がグレーター・トロント地域(トロント市からは9議席)であり、その全てが自由党から奪った選挙区である。トロントに保守系市長が誕生したことなどから、グレーター・トロント地域ももはや自由党の地盤とは言えなくなっているようだ。

 新民主党の「オレンジ旋風」により、左派票は自由党と新民主党の間で分散され、保守党が多くの選挙区漁夫の利を得た。それは進歩保守党と改革党が右派票を分散させ、自由党に圧勝を許した1993年総選挙の再現であった。
 たとえばオンタリオ州ドン・バレー・ウェスト選挙区で、新民主党候補は2008年総選挙より1182票多く獲得している。その増加分は自由党支持者からと思われ、保守党候補に漁夫の利をもたらした。保守党がわずかな支持率の上昇で、効率的に多くの議席を獲得したのは、このように自由党候補が得票を減らしたことが作用している。
 このような現象を、一部の批評家は中道政治の終焉と位置づける。有権者は本来、多少なりとも右か左に寄っているはずである。しかし二代政党制においては、一つの党が左に寄れば、右派のもう一つの党が中央の票田を占拠してしまう。そのためどの党も、選挙対策として中道に寄ってしまうというのである。
 だが西欧では、中道政党が退潮しているという見方が強い。小規模中道政党は、イギリスとドイツに存在しており、しばしば連立与党を形成するが、彼らが単独で政権を担当することはない。
 左派の有権者は保守党の「隠しアジェンダ」を、右派の有権者は新民主党が基幹産業を国営化することを警戒する。彼らはおそらく、本心ではそうしたいのだろう。だがそうすることで、彼らは中道票の支持を失うことになるから、実際には踏み切れないだろう。本心では死刑復活を支持しながら、それを政治日程に乗せることはしないと明言したハーパー首相の、絶妙のバランス感覚が印象深い。
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保守党過半数、新民主党大躍進、自由党とケベック連合は惨敗 [2011年下院選]

 5月2日に実施された連邦議会選挙は、保守党167議席(143)、新民主党102議席(36)、自由党34議席(77)、ケベック連合4議席(47)、緑の党1議席(0)(定数308、括弧内は解散時勢力)という結果となった。ハーパー首相はこれまで少数政権に甘んじてきたが、三度目の正直でようやく安定政権を得た。
 新民主党は、過去最大だった1988年の43議席を大きく上回り、議席を3桁に伸ばし史上初の野党第一党となった。野党第一党は「公式野党」として、党首には公邸・公用車などが公費で提供される。
 自由党は、過去最低だった1984年の40議席をも下回る惨敗。現存するカナダ最古の政党として、歴史的に二大政党の一角を担ってきたが、与党でも野党第一党でもなくなるのは史上初である。イグナティエフ党首自身もエトビコーク-レイクショア選挙区で落選した。
 ケベック連合は、結党以来常にケベックの第一党だったが、今回は議席の大多数を失った。デュセップ党首自身もローリエ-サンマリ選挙区で新民主党候補に敗れ、党首辞任を発表した。しかし彼は、「今後もケベック独立のために戦い続ける」とコメントした。ケベック州政界では、自由党が相次ぐ汚職で有権者の支持を失ういっぽう、ケベック党が支持を伸ばし、次の総選挙では確実に勝利づるものとみられている。だがマロワ党首が独立路線を打ち出そうとしないため、党内ではマロワ党首を降ろしてデュセップ氏を党首に招聘しようという動きがあり、彼は今後もケベック政界の台風の目であり続けるだろう。
 緑の党は、メイ党首が総選挙で史上初の議席獲得。今回の総選挙ではテレビ討論から締め出されたが、次回は確実に出演できそうだ。
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新民主党、謎の候補について釈明 [2011年下院選]

 新民主党の支持率急上昇に対し、マスコミ各社はいっせいに懐疑的報道を始めた。新民主党は、ケベック新民主党が連邦新民主党との提携を解消し、その後消滅した経緯から、ケベックに支持基盤がない。2008年総選挙において、ケベックで17年ぶり2度目の議席を獲得したことがニュースになったほどである。同党は、ケベックの選挙区で捨て石のような候補を立てたが、最近ケベックで支持率が急上昇したことにより、それらの泡沫候補にも当選の可能性が出てきた。
 ケベックの新民主党候補のうち、十数人が学生である。彼らの多くはフランス語を話さず、地元で全く知られていない。住民の98%がフランス語を話しているベルティエ-マスキノンジュ選挙区のルース・エレン・ブロソー候補は、400キロ離れたオタワにあるカールトン大学構内のパブに勤めている。彼女のマネージャーは、彼女が立候補していることを知らなかった。新聞各社は、彼女にインタビューしようともしなかった。党は彼女が選挙区に入ったかどうか確認もしなかったし、投票日まで半月もない時期に彼女はラスベガスで休暇を過ごしていた。
 選挙区での世論調査の結果は、現職のギ・アンドレ候補(ケベック連合)36%、ルース・エレン・ブロソー候補(新民主党)29%、フランシーヌ・ゴデ候補(自由党)17%、マリ=クロード・ゴデュ候補(保守党)15%と、ブロソー候補にも当選の可能性は十分ありえる状態である。
 ケベックのラジオ局 103.1FM は、ブロソー候補がフランス語のインタビューに出演を依頼されたとき、とても驚いていたようだったと語った。しかし彼女は収録で“Oh oui, yes, yes, je comprends”としか言わなかったため、結局放送はできなかった。局はその後、ブロソー候補と連絡をとることができなくなったという。
 ケベック連合のアンドレ候補は「有権者と対話もできない、選挙区も知らない候補がいるとは、なんと嘆かわしい」と語った。
 新民主党広報のマルク=アンドレ・ビョー氏は、彼女についてこう説明した。
「彼女は興奮して、神経質になっています。彼女のフランス語は、まだ記者会見できる状態にありません。しかしもし彼女が当選することがあれば、フランス語を完璧にする努力は続けていきます。」
 いっぽうレイトン党首は、この件について「私は、我々のチームを誇りに思っている。彼らはあらゆる階層から選りすぐられた、勤勉な人々である」とだけ語った。
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保守党過半数は不可能 [2011年下院選]

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 投票日を4日後に控えた4月28日、保守党幹部の一人が匿名で、過半数獲得は不可能だと認めた。
 ナノス・リサーチ社が4月28日に実施した政党支持率調査(括弧内は解散時)は、保守党36.4%(38.6%)、新民主党31.2%(19.9%)、自由党22.0%(27.6%)、ケベック連合5.7%(10.1%)、緑の党4.0%(3.8%)という結果となった。保守党は解散時から支持率が上がっていないが、新民主党は支持率が19.9%から31.2%まで上昇し、全国的に旋風を巻き起こしている。
 下院定数は308議席で、過半数は155議席、保守党の解散時勢力は143議席で、オンタリオ州106議席のうち51議席を有している。ケベック州は特に新民主党の支持率が高く、保守党はそこではさほど多くの議席を有していないが、若干の議席を新民主党に譲ることになるだろう。ブリティッシュコロンビア州でも数議席を新民主党に奪われるため、保守党が過半数を達成するには、オンタリオ州で74議席の獲得が必要と考えられる。
 カナダで最も人口の多い州で23議席も上積みすることは、現実には非常に難しい。保守党による票読みでは、トロント市内ではエグリントン-ローレンス選挙区とヨーク・センター選挙区の2議席、トロント郊外では5議席の計7議席増がやっとのようだ。
 保守党はここにきて、レイトン党首(新民主党)へのネガティブ・キャンペーンを始めたが、オンタリオで彼を攻撃することは、自由党を助ける結果を招きかねない。1990年のオンタリオ州議会選挙では、進歩保守党が与党自由党を攻撃し、その議席を大きく減少させることに成功した。だがそれらの議席は全部新民主党に奪われてしまい、新民主党政権樹立を手助けしただけに終わった。今回の選挙で自由党が大きく議席を減らし、新民主党と拮抗するようなことになれば、両党の連立がかえって促進されることにもなりかねない。

 ハーパー首相はセントキャサリンでの演説で、オンタリオにおける新民主党政権が多大な混乱をもたらした過去について触れた。
「ここオンタリオにおいて20年前、新民主党政権が何をもたらしたか、あなたたちに思い出させる必要があるとは思わない。私も、あなたたちも、そんなことはしたくない。」
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新民主党が3桁議席獲得か [2011年下院選]

 EKOSリサーチ社が4月22日から24日の間に、2783人の有権者を対象に実施した世論調査は、急速に支持率を上げている新民主党が初の3桁議席を獲得し、野党第一党に踊り出るという驚くべき予想を示した。
 全国での政党支持率は、保守党33.7%、新民主党28%、自由党23.7%、緑の党7.2%、ケベック連合6.2%という結果となった。ここから獲得議席をシミュレートすると、保守党131議席、新民主党100議席、自由党62議席、ケベック連合14議席という結果が示された。
 ケベック州での政党支持率は、新民主党38.7%、ケベック連合25.2%、保守党14.7%、自由党13.1%となった。ケベック連合は1990年の結党以来、常にケベックの第一党だったが、今回その地位を新民主党に脅かされている。自由党はかつてケベックを支持基盤としていたが、今回は4位とかつての栄光は見る影もない。
 新民主党が獲得する議席の半分以上は、ケベック州からである。かつてケベック新民主党が独立路線を採択したことで、連邦新民主党との提携関係を解消し、その後消滅した経緯から、同党はケベック州に基盤がなかった。2008年総選挙においてケベックで1議席を獲得したのが、史上2度目かつ17年ぶりだったことが話題になったほどで、隔世の感を覚える。また新民主党は過去最多でも43議席しか獲ったことがなく、3桁議席は前例がない。自由党は、野党第一党の地位を失う大敗を喫する。
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党首たちのフランス語 [2011年下院選]

 英仏二ヶ国語による党首討論が終わった。かつてはフランス語を話せない党首が討論をボイコットすることもあったが、現在の主要政党党首たちは、みな流暢に英仏二ヶ国語を話している。

 新民主党のレイトン党首は、モントリオールに生まれた。彼はおそらく、学校で体系的にではなく街でフランス語を学んだと思われる。彼のフランス語は、しばしば文法的に誤っていることがある。また彼のフランス語には、ケベック労働者階級のアクセントがあることがよく知られている。それはマスメディアで放送されるフランス語とは異なっているが、親しみを感じる人も多いようだ。
 保守党のハーパー首相は、トロントに生まれ、アルバータで教育を受けた。少年時代はフランス語とは全く縁がなく、彼がフランス語を学び始めたのは、30代後半になってからである。
 だがケベック州ジョンキエールでフレンチ・イマージョンを経験した彼は、今では正しいフランス語を話すことができる。ハーパー首相が無難にフランス語党首討論をこなす姿は、フランス語の取得に苦しむ多くの国民に希望を与えることだろう。
 デュセップ党首(ケベック連合)、レイトン党首、ハーパー首相がケベックのフランス語を話すのに対し、自由党のイグナティエフ党首のフランス語はいくぶん異なっている。代々外交官を務めたロシア貴族の家に生まれた彼は、幼いころから外交語としてのフランス語に触れていた。
 家柄やハーバード大学教授という経歴から、彼にはどうしてもお高いイメージがつきまとうが、彼のフランス語がよく「パリジャンのフランス語」と言われるのは、誤りである。彼のフランス語には母音やRに英語訛が見られ、フランス人なら彼をフランス人と間違えることはないだろう。
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下院を解散、総選挙は5月2日 [2011年下院選]

 ハーパー首相は3月26日朝、総督公邸リドー・ホールを訪問し、デビッド・ジョンストン総督に下院の解散を奏上した。総督はただちにこれに同意し、5月2日の総選挙を公示した。
 ハーパー首相は9時15分ころ、リドー・ホールを出て以下のように述べた。
「国民が安定した多数派政権を選ばなければ、イグナティエフ党首は新民主党・ケベック連合とともに連立政権を築くだろう。中央集権主義者と分離主義者が何をしようとしているか、考えてほしい。彼らが合意できる唯一のことは、より多くの財政支出を使い、その支払いのために増税することである。」
 だがハーパー首相は、そのわずか前にイグナティエフ党首が連立を否定する声明を発表したことを知らなかった。彼は、こう述べていた。
「我々は、他党と連立しない。我が国の制度では、連立は合憲的オプションである。だが私は、他党との案件ごとの協力が、少数政権に最も適した習慣だと思う。我々は、ケベック連合との連立を除外すると断言する。」
「誰が党首であろうと、総選挙で最も多くの議席を得た党が、政権に就かなければならない。もしそれが自由党なら、私は議会から信任を求められるだろう。そして我々の政権が下院の支持を得られなければ、ハーパー党首が政権に就いて、同じ問題に直面することになるだろう。それが、我々の憲法である。それが、この国の法である。」
 だがハーパー首相は、イグナティエフ党首の発言を知っても、それは「隠しアジェンダ」だとして受け容れなかった。
「彼らは、以前そうした。彼らは以前にも、事前に否定しておいてあとで実行した。」
 それからハーパー首相は、保守党は一貫して連立を嫌い、野党と案件ごとの協力を続けてきたと自負した。
 だがケベック連合のデュセップ党首は、この発言は嘘だと強く非難した。彼は、2004年にモントリオールのホテルで野党3党首が会談したとき、野党3党がマーチン内閣を打倒し、ハーパー首班の連立政権を築くなら、所信表明演説にケベック連合が盛り込んでほしいことは何かと、ハーパー党首がデュセップ党首に尋ねたと暴露した。
 新民主党のレイトン党首も、ハーパー首相は信頼を裏切ったと非難した。
「ハーパー首相は、自由党のスキャンダルを一掃すると約束した。それから彼は、保守党の新しいスキャンダルを導入した。」

 保守党のジョン・ベアード下院院内総務は、次の総選挙には4億ドルの費用がかかると語った。2008年総選挙では、2億8820万ドルの費用がかかっている。
 アンガス・リード社が3月23日に、2365人のカナダ人を対象に実施したオンライン政党支持率調査の結果は、保守党39%、自由党25%、新民主党19%、ケベック連合10%、緑の党7%となった。
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内閣不信任案可決、総選挙へ [2011年下院選]

 3月25日、下院で自由党提出の内閣不信任案が採決され、野党3党の賛成により156対145で可決された。内閣不信任案が可決されるのは、2005年11月30日のマーチン内閣以来、史上2度目。ハーパー首相はこれを受けて26日朝、ジョンストン総督に下院の解散を要請する。
 野党が多数を占める下院手続委員会は今週、法人税減税やステルス戦闘機購入計画の詳細について、政府は十分説明していないとして「議会侮辱」を認定した。ほかにも、オダ国際協力大臣による文書偽造問題や、ハーパー首相の元側近ブルース・カーソン氏が婚約者のため公共事業の口利きをした問題などがあり、今回の内閣不信任案可決は、政府による議会侮辱が採択されたという点において特筆すべきである。

 不信任案可決を受けてハーパー首相は、26日朝にジョンストン総督を訪問し「残された唯一の選択肢を取る」と述べた。
「予算案の中には、野党が支持できないようなものは本当になかった。残念なことに、イグナティエフ党首とその同盟者である新民主党とケベック連合が、国民が望まない7年間で4度目の総選挙をひき起こすことをすでに決めていたことは明らかだ。」
 自由党のイグナティエフ党首は、新民主党との連立政権を樹立するつもりはあるかと尋ねられたが、それには答えず、「民主主義を侮辱する政権ではなく、民主主義を尊重する自由党の政権を作るために戦う」とのみ回答した。
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新民主党が予算不信任へ、春の総選挙は必至の情勢 [2011年下院選]

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 新民主党のレイトン党首は3月22日、自党の要求が容れられていない予算案を不信任すると発表した。自由党とケベック連合はすでに不信任を表明しており、早ければ今週にも連邦議会が解散され、総選挙が5月2日か9日に実施される見込みである。
 予算案は23日に審議され、早ければ24日にも最初の信任投票が行われる。ただし政府は、投票日を延期することができる。
 これとは別に、自由党とケベック連合はそれぞれ、23日までに予算の修正案を上程する。この投票は予算関連のため、内閣信任投票と見なされる。ケベック連合の修正案は、24日に投票が行われる。ただしここでも政府は、投票日を延期することができる。
 また自由党内には、相次ぐ閣僚の不祥事に対し内閣不信任案を提出する動きがある。提出する場合は、23日である。そして政府は「野党の日」を設定しなければならず、自由党の「野党の日」は25日なので、ここで内閣不信任される可能性もある。
 なおハーパー首相には、これらの案件とは関係なく、ジョンストン総督に解散・総選挙を奏上することができる。しかし首相は、野党の動向を見守る考えのようである。

 最近の世論調査によれば、政党支持率は保守党38.3%、自由党27.4%、新民主党15.8%、ケベック連合9.8%、緑の党7.6%となった。過半数獲得には35%以上が必要とされるが、保守党の議席シミュレートの結果は149議席(現有143)となり、相次ぐ不祥事にもかかわらず、過半数に迫る議席を得ることになる。
 保守党は、自由党の大票田オンタリオでも支持率1位で、106議席中54議席と過半数を獲得する。また、ダニー・ウィリアムズ首相が「ABCキャンペーン」(Anything But Conservative/保守党以外誰でも)を行ってきたニューファンドランド&ラブラドル州は、前回総選挙で保守党は1議席も取れなかったが、彼の引退により俄然有望な地域に変わり、7議席中2議席を獲得する見込みである。
 いっぽう野党は自由党75議席、新民主党32議席(現有36)、ケベック連合52議席、緑の党0議席(現有0)となる見込みである。想定される議席配分は、現在のものとほとんど変わらない。だが議席配分の変わらない選挙は、必ずしも無駄とばかりは言えない。
 この結果は、自由党と新民主党の党首更迭を惹き起こすだろう。自由党は伝統的に党首には2度のチャンスを与えてきたが、惨敗した前回を下回る敗北から来る責任問題に、イグナティエフ党首は抗しきれなくなるだろう。新民主党のレイトン党首は歴代で最も成功しかつ人気のある党首で、前立腺癌と戦い、最近も腰の手術を終えたばかりの病みあがりだが、選挙運動で全国を駆け巡ったあげく、4議席減でその政治歴を終えることになる。
 自由党の党首が辞任し暫定党首に変われば、野党は倒閣ができなくなるので、与党保守党は怖いものなしとなることだろう。
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ハーパー首相とレイトン党首が会談、予算承認を要請か [2011年下院選]

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 次年度予算案は、3月22日に上程される。だが与党保守党は過半数割れしており、予算成立のためには一つの野党の支持を必要とする。
 自由党は、法人税減税を含む予算案は絶対に承認しないと明言している。保守党政権が過半数割れしているにもかかわらず、2年間選挙を戦おうとしなかったイグナティエフ党首は、ここで戦う意志を見せなければ、党首を降ろされることにもなりかねない。だが今総選挙を行えば、15議席は上積みできそうだ。ケベック連合も、今総選挙を行えば議席の上積みが期待できるため、ハーパー政権がとうてい受け容れられないような法外な要求をしている。よって予算成立のため協力を要請できるのは、新民主党だけである。
 新民主党のレイトン党首は2月18日、ハーパー首相と会談し、予算案を承認するための具体的条件を4つ提示した。そのうち2つはただちに対処できるもので、家庭暖房用燃料のGST(連邦消費税)非課税およびエコエナジー導入プログラムの復活と、低所得高齢者のための補足年金(GIS)増額だった。残りの2つは実現までには時間のかかりそうなもので、年金制度拡張と、ファミリードクター不足への対処だった。
 レイトン党首は会談を振り返り、こう語った。
「これらは、全ての党が賛成できると自信を持って言える、具体的かつ合理的な対処である。」
「首相は保証はしなかったものの、私の提案は相当に理解されたものと確信している。そしてハーパー首相からの私へのメッセージは、今は政治ゲームを脇に置いて、家計を扶助する即時の対処に焦点を合わせようというものだった。」
  新民主党はまた、これらの4つの提案と引き換えに、法人税減税撤回の要求を引き下げた。これはトーマス・マルケア副党首がこれまで、法人税減税を含む予算案は絶対に承認しないとしてきた方針からの転換である。

 予算案上程の2・3日後に、最初の信任投票が行われる。ここで不信任されれば下院は解散となり、選挙期間が6週間程度と考えれば、投票日は通常月曜日だから、おそらく5月2日かもしくは9日となろう。
 2か月ほど前には、保守党には総選挙を望む理由はなかった。だがここ2週間で保守党の支持率が上昇し、37.0%に達した。一般に過半数獲得には35%以上が必要とされており、現在の議席シミュレート結果は144議席(現有の1議席増)だが、風向き次第では過半数の155議席も視野に入ってきた。
 いっぽう自由党は支持率をわずかに下げ、保守党より約9ポイント下の28.1%である。だが議席シミュレート結果は92議席となり、現有議席を15議席も上回る。しかし地盤のオンタリオと東部で保守党を下回るほか、ほぼ全国的に保守党を下回っており、獲れる可能性のある議席を全部獲れたとしても、なお過半数に及ばない苦しい戦いである。
 新民主党は支持率15.1%で、議席シミュレート結果は20議席となり、現有議席を16議席も下回る。現時点での総選挙は、新民主党にとって極めてハイリスクである。
 ケベック連合は支持率10.0%で、議席シミュレート結果は52議席となり、現有議席を5議席上回る。
 緑の党は支持率8.5%で、議席シミュレート結果は0議席である。
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新民主党、予算不信任へ:春の総選挙は決定的に [2011年下院選]

 新民主党のトーマス・マルケア副党首は、ハーパー首相が法人税率を17%から15%に下げる計画を撤回しないかぎり、新民主党が予算案を支持することはほとんどありえないと述べた。また別の新民主党議員は、たとえフラハティ財務大臣が家庭暖房用の灯油税減税や、低収入高齢者のための年金制度改革案を受け入れたとしても、法人税減税を撤回しないかぎり、議員たちの多くは予算案に反対投票するだろうと語った。これにより予算案は全ての野党に支持されず、否決される見込みが強まり、春の総選挙は避けがたい状況となった。
 レジェ・マーケティング社の世論調査によると、法人税減税を支持する人はカナダ人は約10%のみで、増税を支持したのは約40%、現状維持が約25%だった。ここまで国民に人気のない法人税減税なら、野党はこれをつぶすことで総選挙を有利に進めた方が好都合だろう。
 過半数割れの保守党はなおも、予算案成立のため野党の一つを抱き込もうとしている。だがケベック連合は弱みにつけこみ、、HST導入に対する22億ドルの補償が容れられないなら予算案を支持しないと公言し、さらに最近になってその数字を50億ドルに増額した。
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年初総選挙の可能性:保守党過半数は可能か [2011年下院選]

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 2006年2月に発足したハーパー政権は、来年早々に6年目を迎えようとしており、「史上最強の少数政権」と呼ばれたピアソン政権を間もなく追い越すことになる。ハーパー首相は2度の総選挙に勝利しているが、一度も単独過半数を獲得していない。ところがピアソン首相は、野党党首時代に総選挙で2連敗を喫したにもかかわらず、例外的に3度目のチャンスが与えられた。それは彼が、外相時代にノーベル平和賞を受賞したからだろう。3度のチャンスで勝利し首相の椅子を手に入れたピアソンは、その後2度の総選挙でいずれも勝利したものの過半数を獲れなかったので、彼は党首として4度の総選挙で一度も過半数を獲れなかったことになる。

 さて与党保守党は過半数割れのため、与党も野党もどちら側からでも解散・総選挙を仕掛けることができる。状況が野党に有利なら、野党は予算案を否決すればよい。状況が与党に有利なら、与党は総督に解散を奏上するか、野党が到底飲むことのできない予算案を上程し、野党に否決させればよい。
 EKOSリサーチ社が12月6日に調査した政党支持率は、保守党34.6%、自由党29.4%、新民主党16.4%、ケベック連合9.9%、緑の党8.5%、その他1.2%という結果となった。この結果をもとに、今総選挙が行われた場合の獲得議席をシミュレートすると、保守党130議席、自由党96議席、新民主党29議席、ケベック連合53議席(定数308)となる。世論調査は、もしも今総選挙が行われれば保守党が再選されることを示しているが、過半数には遠く、しかも議席を減らすことになる。

 保守党は現在143議席で、過半数に12議席足りない。2008年総選挙において、保守党が得票率4%以下の僅差で負けた選挙区が12選挙区あった。これらは次の総選挙で、保守党の最重要選挙区となることだろう。だが実はこれらのうち、奪取可能な選挙区はわずか3つしかない。ブリティッシュコロンビア州のエスカイモルト-フアン・デ・フカ選挙区、バーナビー-ダグラス選挙区、アルバータ州のエドモントン-ストラスコーナ選挙区である。
 エスカイモルト-フアン・デ・フカ選挙区のキース・マーチン議員(自由党)と、バーナビー-ダグラスビル・シクセイ議員(新民主党)は、次の総選挙に出馬しないと表明したため、現職議員はいないことになる。またエドモントン-ストラスコーナ選挙区のリンダ・ダンカン議員は、わずか1%の僅差で新民主党に奇跡的なアルバータの議席をもたらした。だがそこは伝統的に保守党の議席であり、次回総選挙で新民主党が議席を維持することは難しいだろう。
 残りの9選挙区のうち、5選挙区は2回以上当選したことのある現職に占められている。そのうちバンクーバー・サウス選挙区(ブリティッシュコロンビア州)はウジャール・ドサンジ議員(元ブリティッシュコロンビア州首相、自由党)、ブランプトン-スプリングデール選挙区(オンタリオ州)はルビー・ドーラ議員(元準ミス・インディアカナダ、自由党)のような有名議員がいる。そして、これらの選挙区は全て、現職の党ともう一つの野党で争われてきた長い歴史があり、保守党が奪取するのは極めて困難である。

 さて保守党はこのうちの3選挙区で勝利しても、なおもう9議席が必要となる。次の目標は、保守党が5~6%差で負けた10選挙区だが、奪取可能な選挙区は、2004年総選挙で保守党が獲得したニュートン-サウスデルタ選挙区1つしかない。残りの9選挙区のうち、3選挙区は強力な自由党議員によって占められている。ヨーク・センター選挙区(オンタリオ州)のケン・ドライデン議員(元ホッケー選手、元社会開発大臣、元人的資源開発大臣)、エグリントン-ローレンス選挙区(オンタリオ州)のジョー・ボルプ議員(元市民権・移民大臣)、マルペック選挙区(プリンスエドワード島州)のウェイン・イースター議員(元司法長官)である。ほかの3選挙区は、連続3回以上現職議員を当選させており、保守党候補を寄せつけない。

 2008年総選挙において、保守党が7から15%差で敗れた選挙区は28選挙区あるが、このうち奪取可能な選挙区は5つである。それはアバロン選挙区(ニューファンドランド&ラブラドル州)とブリティッシュコロンビア・サザンインテリア選挙区(ブリティッシュコロンビア州)のような、かつては長年保守党が保持していた選挙区や、キングストン&アイランズ選挙区のような現職のいない選挙区である。
 しかしこれら28選挙区のほとんどは、野党の有名議員たちに占められている。エイジャックス-ピッカリング選挙区(オンタリオ州)のマーク・ホランド議員、スキーナ-バルクリー選挙区の(ブリティッシュコロンビア州)ネイサン・カレン議員、ワスカナ選挙区(サスカチュワン州)のラルフ・グッデイル議員(元財務大臣、元公共事業及び政府サービス大臣)、エトビコーク-レイクショア選挙区(オンタリオ州)のマイケル・イグナティエフ議員(自由党党首)などである。
 逆に、2008年総選挙において保守党が5%以下の僅差で勝った17選挙区は、うち13選挙区が無名の平議員によって占められている。17選挙区のうち6選挙区は、前回敗れた自由党または新民主党候補が再び立候補することが予想されており、そのうち3選挙区は、自由党または新民主党が長年保持してきた選挙区である。17選挙区のうち8選挙区は、次の総選挙で奪回されそうだ。

 グレーター・トロント地域で自由党は、現在26議席を持っている。前回総選挙において45%以下の得票率で当選した議員は、次回も当落線上の厳しい戦いとなるだろうが、自由党にはそのような選挙区は10区しかない。
 現在の支持率なら、保守党は東部とグレーター・バンクーバーで若干の議席を奪取し、全国では20議席奪取も可能だろうが、もういっぽうでは奪取されるリスクのある選挙区もいくつか抱えている。奪取できそうな全ての選挙区を保守党が獲得したとしても、議席は154にとどまり、過半数になお1議席足りない。過半数に必要な12議席増は、かなり困難と言わざるをえない。

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