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連合保守党過半数、世紀の激戦を制す [アルバータ]

 5月29日に実施されたアルバータ州議会総選挙は、連合保守党49(52.6%)、新民主党38(44.0%)、緑の党0(0.8%)、アルバータ党0(0.7%)(定数87議席、括弧内は得票率)という結果となり、与党連合保守党が「世紀の激戦」を過半数で制した。ウンコ発言のジェニファー・ジョンソン候補は当選したが、連合保守党は過半数を大きく上回っているため、彼女を会派から除いても過半数を維持できる。二大政党以外の諸党は、今回も議席を獲得できなかった。
 ダニエル・スミス首相は、勝利を宣言した。
「親愛なるラルフ・クレインの言葉を言い換えよう。プレーリーにおけるもう一つの奇跡へようこそ!」
 ケニー首相が党首だった1年前まで、連合保守党は支持率で新民主党に大きく差をつけられ、総選挙敗北は必至の状況だった。だが10月にスミス党首に代わると支持率を上げ、両党は抜きつ抜かれつのデッドヒートとなった。テレビ討論を機に頭一つ抜き出た連合保守党が、辛くも逃げ切った。

 (1) 「主戦場」カルガリーの攻防
 新民主党は大都市エドモントンを固めたが、連合保守党は地方に強い基盤を持っている。多くの批評家は最大都市カルガリーを主戦場だと言い、二大政党も時間と資金の多くをカルガリーに費やした。しかし新民主党が勝利するには、カルガリー26選挙区の大多数を制する必要があった。だがカルガリーの12選挙区が850票差以内で決着するという激戦において、連合保守党はカルガリーの12選挙区を死守した。新民主党は躍進を期したカルガリーにおいて、ニコラス・ミリケン精神保健大臣を落選させる戦果を挙げたものの、半数に当たる14選挙区しか取れなかった。なおカルガリー-アケイディア選挙区ではタイラー・シャンドロ法務大臣が7票差で落選しているが、票の再集計になるだろう。
 カルガリーでの得票率は、2008年総選挙では進歩保守党46%・自由党34%・ワイルドローズ党9%・新民主党4%だったのが、2023年総選挙では新民主党49%・連合保守党48%・アルバータ党1%と、新民主党が(おそらく自由党の票を奪い)躍進して第一党となったものの、圧勝できず十分ではなかったのだ。
 マウント・ロイヤル大学で政治学を教えるロリ・ウィリアムズ准教授は、こう指摘した。
「都市と地方の分裂は、重要だ。アルバータ州民の中に、連合保守党の内にすら、分裂がある。」

 (2) 現首相と元首相、嫌なのはどっち?
 ノトリー党首は、スミス政権が継続すれば公営医療は後退し民間医療がはびこると、彼女のマニフェストを攻撃した。スミス首相は、ノトリー政権になれば炭素税を課され、法人税増税で景気は悪化する、それでもノトリー政権に戻りたいかと警告した。だが政策論争は表向きのことで、選挙運動の実質は互いに相手を攻撃することだった。
 人々は「連合保守党と新民主党のどちらに投票する?」とは言わなかった。彼らは「スミスとノトリーのどちらに投票する?」と言っていた。実際には多くの政党・候補が出馬したにもかかわらず、マスコミは二大政党にばかり焦点を当てた。そして最大野党の党首は期待の新人ではなく、元首相だった。選挙戦は未来への展望ではなく、現首相と元首相の過去の実績を攻撃するものとなった。
 アバカス・データ社は世論調査で、スミス首相を好きな人38%・嫌いな人47%、ノトリー党首を好きな人39%・嫌いな人46%という結果を明らかにした。現首相も元首相も断然嫌われており、選択肢が2つしかない中で、有権者は自分の嫌いな方を阻止するため相手に投票していた。これが「世紀の激戦」の実態だった。
 どんなに嫌われても、スミスは勝った。ノトリー党首は「党首を続ける」と発表したが、総選挙で2連敗を喫した彼女が留任できるかどうかはわからない。
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高橋 幸二

ロイターがやっちゃった・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/6be0b1b0732e2ba53754877652f72cbd1826d46e
>国内で最も人口が多いアルバータ州で大幅な排出量の削減を実現できなければ目標の達成は難航しそうだ

人口は多い順にオンタリオ州(38.5%)、ケベック州(23.0%)、ブリティッシュコロンビア州(13.5%)、アルバータ州(11.5%)となります。
by 高橋 幸二 (2023-05-31 22:51)