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カナダ・デーは「歴史的過ちに向き合う日」 [先住民]

 ブリティッシュコロンビアでは50度近い猛暑となり、大規模な山火事が発生している。カトリック教会への放火が相次ぎ、いくつかの自治体はカナダ・デーのイベントを中止した。
 首都オタワでは7月1日、新型コロナのため(オフラインでは)2年連続でイベントは中止されたが、トルドー首相はたくわえた顎鬚を剃りさっぱりとした身なりで登場し、メディアに向けて声明を発表した。
「我々は今日、我が国と、それを故郷と呼ぶ人々を祝福する。」
「だが我が国の数々の成功を認める間、我々は、ある人々にとってカナダ・デーはまだ祝福すべき日ではないということも認めなければならない。」
「発見された事実は、我が国の歴史的過ちと、先住民や他の人々にいまだ存在する不正に向き合うよう迫った。」
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 連邦議会議事堂では、寄宿学校で犠牲となった児童たちを悼み、国旗が半旗で掲げられている。パーラメント・ヒルでは公式のイベントは行われていないにもかかわらず、オレンジ色のシャツを着た“Every Child Matters”の集会が1000人以上の人々を集め、犠牲者を示す小さな赤い手形のついた国旗が翻った。
 集会に参加したニューブランズウィックの先住民シャネル・バーナビーさんは、次のように述べた。
「これはカナダ・デーの中止を求めることではなく、家に帰って来ることのなかった我々の子供たちを認めて哀悼することである。」
 彼女は先住民が、カナダの刑務所や里子養育プログラムにおいて、人口比を大きく上回り著しく多い事実を指摘した。
 ウィニペグのマニトバ州会議事堂ではこの日、ビクトリア女王の銅像がオレンジ色のシャツを着た群衆によって引き倒された。
(筆者注※ビクトリアは寄宿学校が設立された当時の女王だが、恋愛結婚した夫に先立たれ「喪に服す」と称して公務をボイコットした。彼女はカナダの事情に詳しくなかっただろうし、法案に署名したのは総督であって彼女ではない。オタワが首都に選ばれたのは、彼女がカナダ地図に向けて矢を投げ刺さったからだというのは、彼女の気まぐれな性格に基づくガセビアで、事実ではない。)
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写真上:パーラメント・ヒルで行われた抗議集会。
図下:「カナダ」の文字を忌避する商店。
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司祭「寄宿学校は良いこともした」で辞任 [先住民]

 先住民のための寄宿学校は「良いこともした」と説教で語った司祭が、辞任した。
 トロント郊外にあるマーシフル・リディーマー聖堂のオーエン・キーナン司祭は6月20日、説教で次のように語った。
「3分の2もの国民が、我々が愛する教会を、そこで起きた悲劇のゆえに非難する。私は同じ数の人々が、それらの学校であった良いことについて感謝していると思う。だが当然ながら、そのような疑問は絶対に言及されなかったし、我々はそこで良いこともあったと言うことは許されない。」
「政府による醜悪なプロジェクトに加担したことについて教会が謝罪する前に、誰が何ゆえにカムループスに葬られたかを知る必要がある。」
「大勢の人々が、寄宿学校で非常に良い経験をした。大勢の人々が、健康的で教育的な、喜びに満ちた経験をした。」
 彼はそう言って、祈りと和解を呼びかけた。

 この発言はyoutubeにも掲示された(その後削除)が、内外から非難が殺到し、トロント大司教区は25日、キーナン司祭が辞任したと発表した。
「オンタリオ州ミシサウガにあるマーシフル・リディーマー聖堂のオーエン・キーナン司祭について、トロント大司教区のコリンズ枢機卿は、キーナン司祭の辞任を受理し、彼に無期限の休職処分を与えた。我々は、彼の最近の発言によってひき起こされた苦痛について謝罪する。」
 キーナン司祭はその後、非難に耐える教会と信徒たちを守ろうとしたと弁明した。
「カトリック教徒そして聖職者として、私は寄宿学校をいかなる意味においても容認しない。このような施設が存在したことを、私は心から遺憾に思う。私は、そこで起きた危害についてお悔やみを述べたい。もし寄宿学校の経験者に会うことがあれば、私は赦しを請うだろう。」

 寄宿学校は、主にカトリック教会によって運営された。先住民の福利と教育のためという名目で、15万人もの子供たちを郷里や家族と引き離し、彼らの言語や文化を厳しく抑圧しカトリックを強制する、事実上の同化政策だった。暴力や性的虐待が日常的に行われ、4000人以上が家族のもとに帰ることなく行方不明になったとされる。
 ブリティッシュコロンビア州カムループスの寄宿学校跡地で5月27日、215人の子供の遺体が発見された。サスカチュワン州マリーバルの寄宿学校跡地でも6月24日、751人の子供の遺体が発見された。最近では、インディアン居留地でカトリック教会が放火される事件が相次いでいる。
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「カナダ・デー」中止の動き広まる [先住民]

 ブリティッシュコロンビア州カムループスの寄宿学校跡地で215人の子供の遺体が、サスカチュワン州マリーバルの寄宿学校跡地で751人の子供の遺体が発見されたことは、「寛容な国」で密かに行われた恐るべき暗部を明るみにした。
 カナダ建国を祝う7月1日の「カナダ・デー」が近づいている。首都オタワをはじめ各地で、メープルリーフの国旗が翻り、花火が打ち上げられるのが通例だが、今年はいくつかの先住民団体、市民団体、自治体でカナダ・デーの中止やボイコットを求める動きが広がり、ツイッターでも#CancelCanadaDayのハッシュタグがトレンドになっている。
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 先住民の権利を訴える団体「Idle No More」は、7月1日にバンクーバーとオンタリオのいくつかの都市で抗議運動を予定している。フェイスブックの団体のページには、こう書かれている。
「カムループス寄宿学校における最近の発見は、カナダが先住民の抹殺と大量虐殺の上に築かれた国のままだったと、我々に思い出させた。カナダの暴力の歴史が讃美される間、我々は座して見過ごすことはできない。」
 また「我々の奪われ殺された子供たちのための#HaltTransCanada」というページは、数百年に及ぶ占領と植民地化と抵抗を記念してトランス・カナダ・ハイウェイを1時間封鎖する運動に参加するよう呼びかけている。
 アルバータ州セントアルバート市は、花火打ち上げが寄宿学校跡地で予定されていたため、打ち上げ中止を決めた。またブリティッシュコロンビア州ビクトリアの市議会は、カナダ・デーの催しの中止を満場一致で可決した。同州ペンティクトンのジョン・バシラキ市長は、カナダ・デーの催しを中止することで「カムループスで起きたことへの敬意と和解の意を示したい」と語った。

 マーク・ミラー先住民サービス大臣は6月23日、カナダ・デーには複雑な思いがあると語った。
「カナダは世界で最も偉大な国々の一つであるが、ここで暮らす多くの人々にとって、今それは共有される現実ではない。」
 彼は、自身がケベック選出議員であるという事情から、カナダ・デーには多くの論争があり、普遍的に祝われているわけではないと指摘した。
(筆者注※カナダ・デーとはイギリス議会で、自治領政府と自治領憲法が有効化された日。ケベックは6月24日を「建国記念日」と制定している。カナダは中国人の移民を阻止するため、1885年7月1日中国人にだけ人頭税を課した。ハーパー首相が2006年に謝罪するまで、中国系住民はカナダ・デーを祝わなかった。)
「それは我々が熟考し、我々がどのような国であったか顧みる機会である。」
「連れ去られ、寄宿学校へと連行された子供たちを記念する旗は、まだ半旗として掲げられたままだ。その傷は、まだ塞がれていない。」
 キャロリン・ベネット政府=先住民関係大臣は、9月30日に寄宿学校を記念する最初の祝日を迎えるにあたり、この夏は人々がこの国の人種差別を克服するときであり、カナダ・デーはカナダの醜悪な過去について考えるときだと語った。
「カナダ・デーでは、私はオレンジ色のシャツを着ています。」

 保守党のエリン・オトゥール党首は23日、国の成果を広めるより、むしろ国を貶めることに躍起になる「極左活動家」を非難した。
「過去または現在における不正が、カナダを攻撃する少数の活動家たちにしばしば利用されることを私は懸念する。」
 彼は、カナダの歴史が不正と誤りに満ちていることは、「世界で最も偉大な国に住んでいることへの感謝」を捧げる日である建国記念日のセレモニーの中止を正当化しないと語った。
「ある人々がカナダ・デーを中止したいと言うとき、私は黙っていることができない。私はカナダ人であることを誇りに思う。そして大多数の人々は、私と同じ考えだと思う。」
「我々は、完璧な国ではない。どの国もそうではない。歴史の精密な調査に耐えられる国は、この惑星にはない。だが我々が至らないことを認めるのと、国を常に破壊しようとすることとは違う。」
 彼は、7月1日は国民がカナダに「献身」し、我が国が直面する不平等に取り組む日でなければならないという。
「それは、カナダを再構築するときである。」


図:6月は日本では梅雨だが、カナダでは晴天が続き1年で最も良い時期だと考えられている。
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カッカク議員、ジョーンズ議員を「イヌックでない」 [先住民]

 ムミラーク・カッカク議員(新民主党、ヌナブート選出)が4月16日、ツイッターにイボンヌ・ジョーンズ議員(自由党、ラブラドル選出)を「イヌック(※イヌイットの単数形)ではない」と投稿した件で、ジョーンズ議員は19日、連邦議会で謝罪を要求した。
「私は25年の議員生活を通じ、別の議員からのこれほどの侮辱を見たことがなかった。」
 もともとは、インディジェナス・ポリティックス社が2019年10月21日の総選挙時に、ジョーンズ議員の当選確実を報じたツイッター記事の中で、彼女を「イヌック」と紹介したのに対し、カッカク議員が否定したものだった。
 ジョーンズ議員は、先住民団体ヌナトゥカブート・コミュニティ会議(NCC)のメンバーである。NCCはラブラドル中部・南部の先住民を代表する団体だが、政府が公認する団体ではない。2010年までは「ラブラドル・メティス・ネイション」という名称だった。
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 1982年憲法第2章は先住民の権利について規定しており、その第35条第2項では先住民を「インディアン、イヌイット及びメティス」と定義した。そこではラブラドルの先住民インヌが認定されず、また先住民の血が何%であるかも明記されなかったため、誰が先住民であるかは自己申告に基づくと見なされた。
 「メティス」(métis)は「混血」を意味するが、大文字でMétisと書くと「カナダ先住民と白人の混血」を指す民族名となる。メティスとイヌイットは異なる概念であり、(メティスの先祖とイヌイットの先祖を持たないかぎり)メティスかつイヌイットにはなり得ない。ただし、「メティス」を「混血」の意味で用いる場合は別である。
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 掲示の地図は連邦議会の資料で、イヌイットの居住地域「ヌナンガット」(「土地と水と氷」の意)は、行政区ごとに4地域とされた。ヌナブート(「我々の土地」の意:ヌナブート準州)、イヌビアルイト(「真の人々」の意:ユーコン準州とノースウェスト準州)、ヌナビック(「生きるための場所」の意:ケベック州)、ヌナツィアブート(「我々の美しい土地」の意:ラブラドル)である。
 NCCは2019年、連邦政府が提示した先住民の権利に関する合意書に署名した。だがこれは、政府が公認するインヌ・ネイションとヌナツィアブート自治政府の反発をひき起こした。両団体は合意書に異を唱え、法廷闘争に訴えた。

 カッカク議員は22日、ツイッターに動画を投稿した。彼女はそこで謝罪を拒否し、連邦政府によってインヌは先住民として認定されていないし、ラブラドル南部もイヌイット居住地域として認定されていない事実を指摘した。また彼女自身の血統について説明した後、ジョーンズ議員も自身がイヌイットであることを証明すべきであり、さもなくばイヌイットと自称すべきでないと主張した。
「あなたの家族が何者で、そしてあなたがどこから来たのか、あなたがいかにイヌックであるか、それを私に証明するまで、あなたには自分がイヌックだと言える場所はない。自分をイヌックと言うのはやめなさい。」
 この動画は、ツイッター社によって削除された。

 ジョーンズ議員は同日、CBCテレビで語った。
「自分のアイデンティティについて彼女やほかの誰かに、ソーシャルメディアや公共の電波で証明する必要があるとは思わない。」
「私は、自分が何者なのかを知っている。私は、祖母や曾祖母が何者なのかを知っている。ラブラドルにおける当家のイヌイットの血筋について、1800年代初頭にまでさかのぼることができる。」
「母が宿泊学校で過ごした日々について、私は人々と多くを語り合ってきた。」
「私は、私の文化・私の歴史・私の家系について語り合いたい人とは、誰とでも語り合ってきた。」
「私は、ラブラドルに移住した白人と、イヌイットの血筋に誇りを抱いている。」
 彼女は、カッカク議員はヌナツィアブートとヌナトゥカブートの関係を理解しておらず、彼女の発言は「無邪気なもの」だと語った。家系図を公表するつもりはあるかと問われると、「毛頭ない」と答えた。それから「彼女のためにDNA鑑定をする用意はない」とつけ加えた。


写真上:ムミラーク・カッカク議員(左)とイボンヌ・ジョーンズ議員(右)。
図下:イヌイット居住地域「ヌナンガット」。
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ベヤック上院議員辞職 [先住民]

 リン・ベヤック上院議員(71歳)は1月25日、辞職した。彼女はすでに2度停職になっているが、上院で彼女を罷免する動議が提出されていた。上院議員は75歳定年のため、任期を3年残していた。
 規定により、連邦議会議員を6年以上務めた人は、議員年金を満額受け取ることができる。彼女の辞職は、罷免されることで年金を削減されることを阻止したものと思われる。
 彼女は2013年1月25日、ハーパー首相(当時)によって上院議員に指名された。ハーパー前首相は75歳定年制に異を唱え、8年任期制を提唱しており、指名にあたり8年務めると約束したと彼女は語った。

 彼女は同日発表した声明で、寄宿学校にまつわる発言に関し、言論の自由を尊重する国民に代わって攻撃されることを「光栄」だと述べた。
「彼ら(筆者注※彼女の批判者)は本心での議論を嫌い、権力と支配の計画に基づき、共謀メディアの力を借りて私の意見を攻撃した。」
「事実は、一人の上院議員が何百万ものカナダ人の意見を敢然と代弁したことで彼らを畏怖させたのであり、彼らの恐れは、憲法に反する動議と高くつく調査、言論の自由を抑えつけるためのあらゆる手段を用いて、オタワで私を絶えず非難したことから、明白である。」
 そして彼女は、全国の何千もの人々から受け取った手紙を、生涯の宝物にすると語った。

 ベヤック議員は2019年に停職処分となったとき、先住民との和解に関する教育プログラムの受講を義務付けられたが、完了できなかった。講師が植民地化・収奪・世代を超えた精神的外傷・貧困・人種差別について説明すると、ベヤック議員はこう言ったという。
「歴史は人種差別しない。それはあなたたちの民族が、あなたたち自身にしたことの結果だ。」
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ベヤック議員、メティスを自称か [先住民]

 先住民を誹謗する手紙をウェブサイトに掲示し、停職処分を受けたリン・ベヤック上院議員(無所属)は、処分が会期末までだったため、2019年9月11日の下院解散により第42回連邦議会が閉会し、処分が解かれた。彼女は議員活動再開に意欲的だが、上院倫理委員会は、彼女の謝罪と再教育プログラムへの取り組みが不十分だという理由で、再度の停職処分を要求している。
 メディアは2月5日、彼女が以前に自分をメティス(先住民と白人の混血)と称していたと報じた。報道によると、彼女の両親が先住民を養子に取り、先住民の姉妹ができたからだという。
 メティス全国評議会のデビッド・シャートランド副理事長は、これを侮辱であり、差別的であり、メティスの定義を完全に誤解しているとして、謝罪を求める手紙を上院に送った。
 だがベヤック議員は同日、反論の声明を発表した。
「メティスは偉大な民族だが、はっきりさせておきたいことがある。私は現在においても、過去においても、未来においても断じてメティスではない。私の人生において、いつであれ、どんな形であれ、誰に対してであれ、メティスだと主張したことは断じてない。」
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ベヤック上院議員、停職処分に [先住民]

 リン・ベヤック上院議員(無所属)は、連邦議会ウェブサイトに掲示した差別的文書の削除に応じなかったため、5月8日議会の投票で停職処分となった。停職は現在のセッション期間だけで、最長で10月までとなる。
 上院倫理委員会は4月、ベヤック議員を停職とし、人種差別に関する教育プログラムを自己負担で受講させ、問題の文書をウェブサイトから削除するよう勧告した。だが彼女はこの日の投票前、保守党の元同僚議員たちに、考慮する十分な時間を与えるため投票を次週に延期してほしいと訴えたが、応じる者はいなかった。
 彼女はジョージ・オーウェルの小説「1984年」を挙げ、処分は言論を弾圧する全体主義だと非難する演説を行った。
「この種の処分は全体主義的で、カナダのような自由な国の伝統とは相容れない。」
「これは、危機的な日である。議員は誰でも院外での報復を心配することなく演説できるはず、それとも我々は違うのか。」
「非難されているのは、国民を検閲し、国民が多様な意見を表明している微妙な問題に関する議論をシャットダウンすることを私が拒否したことではないか。」
 彼女はさらに、マニトバ州在住の元裁判官から受け取った手紙を引用して自己弁護した。
「あなたの罪とは、先住民問題に関し支配的かつ常識的な、ポリティカリー・コレクトな表現に従うことを拒否したことだろう。」
 議員たちはそれ以上誰も発言せず、即座に採決が行われ、停職処分は可決された。停職期間中は給与は支給されず、議会スタッフや資料にアクセスできなくなる。
 上院は、連邦議会ウェブサイトから問題の投稿を削除する予定である。
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「真実と和解の日」、9月30日で調整 [先住民]

 「真実と和解委員会」が提言した新しい祝日「真実と和解の日」について、連邦政府は9月30日にする方向で調整している。
 連邦議会では2月5日、ジョージナ・ジョリボワ下院議員(新民主党)提出のC-369号法案として、下院民族遺産委員会で審議された。同法案は、「先住民の日」として知られる6月21日を法定休日にすることを請求していた。だがその日は、先住民の文化と貢献を祝う日とされており、ジョリボワ議員自身もその意向であった。しかし「真実と和解委員会」が提言した新しい祝日は、「寄宿学校における暴虐の歴史を心に刻み、生存者に敬意を表する」日の設定であり、「先住民の日」にはそぐわなかった。何人かの委員は、2つの記念日の統合は「不適切かつ敬意を欠いている」と考えた。
 ジョリボワ議員もこれに納得し、6月21日の「先住民の日」は「どこにも行かない」と断言した。
「太陽が昇り、ほかのどの日よりも長く天にとどまる日。ファースト・ネイションズ、メティス、そしてイヌイットの人々には、祝う理由がまだある。」
 委員会はまた、6月21日の祝日はカナダ・デー(建国記念日/7月1日)や、ケベックの事実上の建国記念日「サン・ジャン・バチストの日」(6月24日)に近いことを懸念した。
 連邦政府による代案は、「オレンジシャツ・デー」として知られる9月30日である。それは1973年、6歳だったフィリス・ウェブスタッドさんが、祖母からもらったオレンジ色のシャツを着て、初めてウィリアムレイク(ブリティッシュコロンビア州)のセントジョゼフ・ミッションスクールに行ったが、教師にシャツをはぎ取られてしまったことにちなんでいる。

 新しい祝日は、元日、グッド・フライデー、カナダ・デー、レイバー・デー、クリスマスに続き、カナダで6番目の法定祝日となる。なお連邦政府が法定祝日を定めても、連邦政府従業員に適用されるだけで、祝日の設定は憲法上、州と準州の権限である。たとえば11月11日のリメンバランス・デーは、連邦が定めた法定祝日だが、いくつかの州は祝日と制定していないため、それらの州では連邦政府従業員をのぞき、多くの民間従業員は出勤する。
 6月21日は、ノースウェスト準州とユーコン準州ではすでに法定祝日となっている。
 余談だが、9月30日は筆者の誕生日である。
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下院で先住民言語の同時通訳が可能に [先住民]

 連邦議会下院は11月29日、下院において先住民言語で演説した場合、英語とフランス語への同時通訳を行うことを認可した。通訳サービスは2日前までの申請が必要で、2019年1月から始動する。下院は現在、約100人の通訳を用意し約20の先住民言語通訳が可能だとしている。
 先住民を自認するカナダ市民は約160万人で、そのうちわずか26万人が先住民言語を話す。カナダには58の先住民言語があり、それには90以上の地方語があるとされているが、そのほとんどは絶滅の危機に瀕している。よく使われる先住民言語には、クリー語、ディネ語、インヌ語、イヌクティトゥット語、オジブワ語、オジ=クリー語がある。

 下院運営委員会は、報告書でこう勧告している。
「下院における先住民言語の特別なステータスを承認することは、和解への重要なステップである。」
 今期限りでの引退を表明しているクリー族のロミオ・サガナッシュ下院議員(新民主党)は、さっそく1月から任期いっぱいまでクリー語で話すと語った。
「将来の先住民議員は、自分の言語を使う権利のために戦う必要はないと知りつつこの場から去って行けるのは、幸いなことである。」
 クリー族の血を引くロバート=ファルコン・ウェレット下院議員(自由党)は、今回の動きを「カナダ人と先住民の歴史的な瞬間」と評価した。
「下院は民主主義が起こる、カナダで最も象徴的かつ重要な場所である。先住民言語がそこで使用されるなら、それらは今後存続できる可能性を持つ。」
 彼は2017年5月、先住民女性に対する暴力について、下院でクリー語で演説したが、通訳が用意されていなかったため翻訳されなかった。
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カナダ人の過半数が「寄宿学校問題は行きすぎ」 [先住民]

 アンガス・リード社が8月21日から24日にかけて、1500人の成人カナダ人を対象に実施したオンライン世論調査は、先住民の寄宿学校にまつわる謝罪や、マクドナルド首相像の撤去は行きすぎていると、国民の過半数が考えていることを示した。
 「寄宿学校問題は無視できない」と回答したのが31%に対し、「寄宿学校にまつわる謝罪にあまりにも多くの時間を使いすぎており、そろそろ終わらせるべきだ」と回答したのは57%という結果となった。2015年総選挙で与党自由党に投票した回答者ですら、前者40%に対し後者50%と、後者が上回っている。保守党投票者ではより顕著に、前者10%に対し後者は84%だった。新民主党投票者では、前者51%に対し後者40%と、前者の方が多くなっていた。年代別に見ると、高齢層ほど反対が多くなる傾向があり、18~34歳では前者41%・後者41%に対し、55歳以上では前者24%・後者69%だった。

 マクドナルド首相像がビクトリア市役所から撤去された措置については、「賛成」が25%、「反対」が55%、「わからない」が20%だった。地域別に見ると、西部は賛成が少なく反対が多い傾向があり、その最たるものはサスカチュワン州の賛成11%・反対81%だった。逆に最も賛成が多く反対が少なかったのはケベック州で、賛成31%・反対38%だった。カナダの全ての州で、反対は賛成を上回った。
 「マクドナルド首相の名と業績は公共の場から消されるべきでない」という設問には、賛成が70%、反対が11%という結果となった。
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ビクトリア市役所のマクドナルド像を撤去 [先住民]

 カナダでは今、先住民を不当に扱った歴史上の人物について再評価を迫り、銅像を撤去する運動が広がっている。ビクトリア市議会は8月9日、市役所のジョン・A・マクドナルド像を撤去する動議を採択した。市役所は11日、像を撤去した。
 マクドナルドは「連邦結成の父」としてカナダ建国に尽力し、今も10ドル札の肖像に描かれている。彼は初代首相として、中国人に人頭税を課し「野蛮で劣った人種」と評した。インディアン法を制定し、寄宿学校を設立したのも彼の政権である。非常に多くの先住民の子供たちが親元から引き離され、カトリックの寄宿学校に入れられ、母国語を禁止されたり、性的虐待を受けたりした。学校で死亡した児童や、脱走して遭難死した児童もいる。ビクトリア市議会は、マクドナルドを「先住民に対する暴力の主導者」と認定した。
 なお彼は1878年から82年まで、ビクトリア選挙区の下院議員を務めている。彼はオンタリオ出身だが、カナダ太平洋鉄道建設をめぐる収賄事件「太平洋スキャンダル」で首相を辞任し、地元での当選が困難なため、保守党の強い選挙区に落下傘降下した。だが彼は、一度もビクトリア選挙区に来ていない。
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 像を撤去された跡には、新たに記念碑が設置された。そこにはこう刻まれている。
「和解プログラムが進展するよう、そして適切な方法でマクドナルドが再評価されるよう、我々は人々に伝え続ける。」
 撤去当日は市役所前に市民が集まり、賛同あるいは抗議の意思を表示した。抗議する人たちはカナダの国歌を歌った。バンクーバーから来たマシュー・ブリーデン氏は、遺憾の意を述べた。
「これは我々の歴史の一部である。まるで、体を切り裂かれ臓腑を引きずり出されたように感じる。」
「議員たちはただこれを推し進め、市民は発言を許されなかった。」
 リューベン・ローズ=レッドウッド氏は、「我々は歴史を抹消するのではない、創るのだ」というプラカードを掲げて支持を表明した。
「マクドナルドは・・・この国で先住民の文化的ジェノサイドを煽動した寄宿学校を設立した主要な一人である。文化的ジェノサイドに名誉はない。そして今こそ銅像が撤去されるべき時であると言うために、我々はここにいる。」
 リサ・ヘルプス市長は、次のように説明した。
「議論と熟考の1年であった。そして我々は、和解には多くの年月が必要だと気づいた。」
「我々は和解の時代にいる。そして、誰も何も抹消していない。しかし我々は、歴史の複雑さを理解しなければならない。そして、それこそがこのプロセスの意義である。」
 エスカイモルト族団体のケイティ・フーパー理事は、市長に手紙を送り賛同を表明した。
「この像を撤去することは、市の和解プロセスにおける重要なステップであり、そして差別と抑圧に終止符を打ち前に進んで行く象徴である。」
 ジオフ・ヤング市議は、市議会の決定に異議を唱えた。
「実際のところ、全ての我々の歴史的指導者たちは、今日我々が不快に思う意見を表明しただろう。それらの指導者たちの間で、私は今日も市議を務める。我々は、将来不快に思われるかもしれない政策を承認しただろうか?」
 ジョン・A・マクドナルド歴史協会のマイケル・フランシス理事は、次のように述べた。
「我々は、かつての指導者が犯した誤ちから学ぶことができる。歴史を見失ってはならない。」
「人の強さと弱さを記録した適切な銘板とともに、像を適切な場所に設置することは、単に撤去するより、はるかに有益かもしれない。」
 キャサリン・マッケナ環境大臣は、カナダ史跡委員会に対し歴史に関する異議申し立ての方法について検討するよう要請した。
「我々の歴史に関して人々が懸念を表明するための思慮深い方法を探るよう、私は命じたが、歴史を抹消することは誰にもできない。」38963598_10156314587565272_5306524990055645184_n.jpg
「良かれ悪しかれ、我々の歴史を認めることが重要だと個人的に考えている。我々は歴史を語ることによって、我々はもっとうまくやれると認識することになるのだから。」
 彼女は、論争の的となっている人物像の隣に別の像や記念碑を設置することを提案した。この提案は、像の撤去は「復讐の平手打ち」で逆効果となると提言した「真実と和解委員会」のマレー・シンクレア前議長を踏襲するものである。

 13日には、ウェスト・エドモントン・モールの菓子店に展示されていたインディアンの像が、客からのクレームで撤去された。


写真上:プラカードを掲げるリューベン・ローズ=レッドウッド氏。
写真下:撤去されたインディアン像。
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コラム「リン・ベヤックの見解はカナダの至るところにある」 [先住民]

  (ハフィントンポスト・カナダ編集者 エマ・ペイリン)

 リン・ベヤック上院議員は、たとえ彼女を取り巻く論争が毎日雪だるま式に膨れ上がっていても、引き下がることを拒絶している。
 先住民は怠惰だとほのめかした支持者からの手紙を、彼女はウェブサイトに掲示したので、保守党幹部会を最近追放された。
 謝罪するよりむしろ、ベヤックは保守党党首アンドリュー・シーアに食ってかかり、「言論の自由」と称し支持者のコメントを擁護した。彼女は、この国中にいる多くの人々を代弁すると主張し続けている。そして悲しいことに、彼女は正しい。彼女の無知は典型的なものだ。
 私は、オンタリオ州ケンブリッジで育った。私は、何世代も前にカナダに移住したイギリスの移民の子孫である。家族の祝い事で、パーティーで、そしてリビングルームで、私はベヤックのような見解が何のてらいもなく表明されるのを聞いてきた。
 去年ベヤックが議会で言ったように、私は白人のカナダ人が、寄宿学校の虐待話は大袈裟だとか、あるいはあの時代はどこの学校でもあったことだと言うのを聞く。寄宿学校は、先住民の文化や言語や、子供たちと両親との関係を破壊するという特別な意図で設立されたという事実にもかかわらずである。それは、学校で死んだ6千人の子供たちと、性的虐待を受けたと言う何万人もの子供たちへの同情なしに言われている。
 先住民は我々の仲間たる市民であり、そしていくつかのケースで、条約が調印され支払いが約束されたという事実にもかかわらず、税金が先住民に支払われることへの不快感を、白人のカナダ人が表明するのを聞く。そう、先住民が税金を一切払わないと考えるのは、誤りである。
 インディアン法と呼ばれる極めて人種差別的・性差別的・家父長主義的な方針を、部族評議会に押し付けたのは我々の政府だったという事実にもかかわらず、白人のカナダ人が部族評議会を非効率的で腐敗していると非難するのを私は聞く。我々の政府は文字通り、先住民を依存させるために制度を創設した。
 それは毎日ではなく、あらゆる人々でもない。だがそれは重大である。
 世論調査は、通説がまさにベヤックのようなものであることを実証する。先住民についての印象をきかれると、カナダ人の13%が即座に、税制優遇措置や、政府の「施し」への依存や、社会に貢献しない怠惰な人々といった、否定的あるいはステロタイプの回答をしたことが、エンバイアニックス研究所による2016年の調査で明らかになった。
 26%が、先住民に対する考えが近年良くなったと回答したが、10%は、政府の「特別扱い」や薬物濫用や犯罪性向といった醜悪なステロタイプを挙げ、考えが悪化したと回答した。
 回答者の26%は政府の政策を、社会的・経済的平等を達成することへの主要な障害と認識した。同数の回答者は、先住民そのものを非難した。
 これらの人々は、単に調査の回答者であるだけではなく、我々の親類、同僚、隣人、パートナー、友人である。これらの意見は、プライベートな領域だけでなく、ソーシャルメディアを持つ誰もが見られるように表明される。
 ハフィントンポスト・カナダのニュース編集者として、私は先住民の子供たちについての吐き気を催すようなコメントの数々を見てきた。CBC(訳者注※カナダ放送協会)サイトは、あまりに多くのコメントが「明らかな憎悪に満ち過激な」ものや「無知を装った憎悪」であるという理由で、先住民に関する全ての投稿を拒絶する措置を強いられた。先住民が劣っていると述べて恥とも思わないカナダ人は、おおぜいいる。
 一通の特別ひどい手紙のせいでベヤックは保守党幹部会から排除されたが、それ以外のおよそ100通の手紙は、シーアが何の対応もしなかったことから、悩みの種であったことがわかる。
 ジョアンという名の支持者は、先住民の懸念を「歴史的泣き言」として一蹴した。グレースは、寄宿学校の教育は子供たちの「民族的な部落根性」の克服を助長できたと書いた。アードレイは、寄宿学校における性的虐待の告発は、単に規則に従いたくなかった人々による捏造だと示唆した。
 ベヤックはこれらの手紙を、自分の人気の証拠として誇らしげに掲示した。シーアはただ一通の手紙に言及することで、それ以外の人々に暗黙の同意をした。問題は明らかに、一人の強情で無知な上院議員を越えている。
 他の政治家たちも積極的に、先住民に関する歴史的に無知な見解を表明した。保守党党首選でシーアと争ったケリー・リーチとスティーブン・ブレイニーの2人の候補は、勝つために悲惨な立場を誇示した。リーチは「あらゆるカナダ人は同等に扱われるべきだ」として、先住民の意見を聴取することもなしにインディアン法を廃止すると語った。ブレイニーは全てのインディアン居留地を、彼ら自身の利益のために解体すると語った。
 政治家は先住民をお気楽な存在として描き、意欲的なカナダ人にそのような見解をどうやって受け容れさせるかについて、資格のない者が提示するという事実。
 ベヤックは部外者ではない。彼らを何百万人ものカナダ人が養なってきたという神話を、彼女はオウム返ししている。もしもシーアが、自党の人種差別がベヤックのウェブサイトのみに限られると考えているなら、彼は間違っている。もしもカナダ人たちが、彼女の意見は例外だと考えているのなら、彼らは間違っている。
 アンチ先住民の人種差別は、カナダ社会の至るところに潜んでいる。それを認めることが、変革への第一歩である。

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(※漫画はハフィントンポスト掲載のものではない)
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ベヤック議員、シーア党首を批判「言論の自由を守る」 [先住民]

 1月4日に保守党幹部会を除名されたリン・ベヤック上院議員(無所属)は、8日に声明を発表し、アンドリュー・シーア党首を批判し、言論の自由を守ると述べた。
 シーア党首は4日、問題の投稿を連邦議会公式ウェブサイトから削除するよう要請し、拒否されたと発表したが、ベヤック議員は自分もスタッフも、シーア党首やそのスタッフからそのような要請を受けてなく、したがって拒否した事実はなく、幹部会除名もメディアの報道で知ったと語った。
 だがシーア党首の広報ジェイク・エンライト氏は、電話で話したと証言した。いっぽう匿名の保守党議員は、シーア党首も彼のスタッフも誰もベヤック議員と話していないことを確認したと明かした。彼は、ベヤック議員と話したのはスミス上院幹事長のスタッフではないかと語った。

 ベヤック議員は、巷で言われている陰謀論を挙げ、マスコミを批判した。
「メディアがトルドー首相の倫理違反や、納税者の負担で補償されているカダル一家とジョシュア・ボイルとの疑惑の関係に集中すべきときに、何か月もの間問題視されなかった古い手紙が、野党党首叩きに使われるのは、興味深いことではないか。」
(筆者注※トルドー首相が2016年、イマーム・ハン氏が所有する島で休暇をとった行為は利害対立法に抵触すると、2018年12月に勧告された。タリバンに誘拐され5年ぶりに救出されたジョシュア・ボイル氏は、以前オマル・カダル氏の姉ゼイナブ・カダルさんと結婚していた。カダル一家はビン・ラディンやアルカイダのプロパガンダを行ったことで知られ、オマル・カダル氏はアフガン戦争で米兵を殺したため16歳でグアンタナモ刑務所に服役した。ボイル氏はトルドー首相と面会した11日後、性的暴行・監禁・脅迫など15の容疑で起訴された)
 ベヤック議員はさらに、シーア党首はマスコミが撒いた餌に引っかかったと非難した。
「良いリーダーはそのような策略に決して引っかからないが、未熟なリーダーが僅差で勝利し、他の視点を十分に考慮しないと、知恵と常識をなくすことがある。」
「我々は、ポリティカル・コレクトネスで汚れた現在のものより、もっと良いリーダーを持つに値する。」
 そして彼女は、カナダ人がもううんざりだと考えていることや、お金は先住民の問題を解決しないという見解を共有していることを今後も掲示し続けると述べた。
「政府は何十年もの間、何億ドルもの納税者のお金を使ってきた。そして我々がしてきたことは、機能していない。」
「無所属議員として、私は言論の自由のための声であり続ける。」
「私は、多くの賢明なカナダ人に代わって語ることは義務であり役目であると考えている。」

 ベヤック議員は保守党幹部会を除名されたが、問題の投稿は連邦議会公式ウェブサイトに残ったままである。キャロリン・ベネット政府=先住民関係・北方問題大臣とジェーン・フィルポット先住民サービス大臣は、シーア党首に共同書簡を送り、彼の措置には満足しているが、投稿を削除させるには手助けが必要だと訴えた。
「これらの手紙の多くは、我々の寛容で包括的な社会に居場所を持たない明確な人種差別的ステロタイプや、多くの誤報を含んでいる。」
「政府の資源は、憎悪と対立を促進するのに用いられることは決してあってはならない。カナダ上院の公式ウェブサイト上に掲載されたことで、これらの攻撃的なコメントが連邦議会に推薦されたと解釈されることを、我々は憂慮する。」
 いっぽう新民主党のチャーリー・アンガス議員は、ベヤック議員が上院議員としてカナダ人に奉仕するには不適切であることへの対処として、「上院の手段」を行使するのでトルドー首相に協力を要請した。
 ベヤック議員のサイトを削除したり、連邦議会の資源の使用に関して新しい基準を設定することは難しくはないが、上院議員の罷免となると容易ではない。上院は2017年春、十代の少女と不適切な関係を持ったドン・メレディス上院議員を失職させるため動いたが、上院議員の失職には規定があり、結局自ら辞任した。
 上院議員が失職する条件とは、会期を2回連続で欠席した者、破産した者、そして「反逆罪あるいは悪名高い犯罪で有罪判決を受けた者」である。ベヤック議員がしたことは他人の意見を紹介し広めたことであり、有罪に該当するかは判断が分かれる。仮に有罪だとしても、ヘイトプロパガンダは罰金刑か社会奉仕が通例のため、「悪名高い犯罪」に該当するとは考えにくい。
 上院議員は改選がなく、任期は75歳の定年までなので、彼女は2024年2月18日まで上院議員を務めることができる。
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ベヤック上院議員、保守党を除名 [先住民]

 保守党は1月4日、リン・ベヤック上院議員を幹部会から除名したと発表した。彼女は連邦議会公式ウェブサイトに、先住民のための寄宿学校に関する彼女の見解を支持するおよそ100通の手紙を掲載し、そのうちの何通かについて削除するよう党から要請されたにもかかわらず、拒否したのが理由だという。これにより上院勢力は、無所属の会39、保守党33、上院自由党15、無所属7、欠員11(定数105)となった。
 アンドリュー・シーア党首は、問題になった投稿は以下のようなものだったと明かした。
「私は人類学者ではないが、あらゆる日和見主義的文化、狩猟・採集民は努力なしに手に入れようとする。政府から与えられるまで座して待つ文化とは対照的に、努力を評価する産業化・組織化された農業文化との間には、衝突が常にある。」

 寄宿学校の生存者であるガーネット・アンジェコネブ氏は2017年9月、それらの投稿について保守党とマスコミに通報した。
「私はベヤック議員の議会公式ウェブサイトを、入念に見た。選りすぐられた支持者からの手紙が、確かに多数ある。」
「公平性とバランスを保つため、彼女は異なる見解の手紙も掲載すべきだった。だが彼女は明らかに、そうしていない。これは、彼女の属する党の見解を反映していない彼女個人の見解を広めるため、議員が政府から支給されたウェブサイトを利用していると考えざるをえない。」
 彼は、保守党から何らの反応も受け取らなかったと語った。

 シーア党首は、これら100通の投稿について1月2日に知ったと説明したうえで、ベヤック議員の行動を人種差別と明言した。
「この(※原文は“this”単数形)コメントを拡散することは、保守党議員として不快で容認できない。先住民が他のカナダ人と比較して怠惰であると提唱するのは、単に人種差別である。」
「彼女の行動の結果、上院幹事長ラリー・スミスと私は、幹部会からリン・ベヤック上院議員を除名した。人種差別は、カナダ保守党もしくはその幹部会で、容認されることはない。」
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ベヤック上院議員の寄宿学校擁護発言が波紋 [先住民]

 保守党のリン・ベヤック上院議員による、先住民の寄宿学校に関する発言の数々が波紋を呼んでいる。
 かつて先住民の子供たち15万人以上が、親元から引き離され、カナダ政府の助成を受けたミッションスクールで同化教育を強制された。彼らは母語の使用を禁止され、性的虐待を受け、何千人もの児童が学校で死亡した事実が明らかとなった。
 だがベヤック議員は、寄宿学校について「少数の先住民は、学校の居心地が悪いと感じていた」「先住民の子供たちの3人に1人が、寄宿学校に入れられた。親から引き離されたのはごく少数で、むしろ多くの子供たちは、狩猟や交易に従事するため長い間家を留守にしていた親によって、入学手続きされた」などと語り、ロナ・アンブローズ暫定党首(当時)によって3月、上院の先住民問題委員会から外されている。
 ところが9月上旬には再び、ホームページ上で「(先住民の)ステータスカードを返上し、かわりにカナダ市民権を得るべきだ」(筆者注※カナダで生まれた先住民はカナダ市民である)と主張したため、この問題に再び火がついた。

 保守党のアンドリュー・シーア党首は18日、次のように述べた。
「私はもちろん、彼女の意見に同意しない。彼女は、我々の党と幹部会を代弁していない。私はもちろん、彼女が言った言葉の選択を非難する。」
 彼はまた、ベヤック議員は「保守党幹部会で役割がない」と語った。彼女は上院の運輸委員会・農業委員会・防衛委員会の委員に任じられており、彼女が退任したとは報じられていない。保守党広報は、彼女がまだ委員のままかどうかを問われると、回答を拒否した。
 またシーア党首は、彼女を幹部会から除名はしないが、包括的メッセージを共有できないのなら、彼女が出て行くためのドアはすでに開けてあると語った。
 ヌナブート準州代表の先住民であるデニス・パターソン上院議員(保守党)は、彼女のコメントについて「馬鹿げている」と一蹴した。彼は、先住民はもちろんカナダ市民であり、またイヌイットの3分の1をはるかに超える人数が寄宿学校に収容されたと指摘した。
「これは、ベヤック議員が無分別に話した最初ではない。彼女の意見が上院と我が党の幹部会にとどろき、私は非常に動揺している。彼女の意見は挑発的で、攻撃的である。それらは、事実に基づいていない。」
 彼は、彼女の意見は主流にはほど遠く、その見解を共有する上院議員を一人も知らないとつけ加えた。
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 キャロリン・ベネット先住民・北方問題担当大臣は、自由党議員だが、ベヤック議員を保守党幹部会から除名するよう要求した。
「懸念すべきは、彼女が多くを学ぶべきだということをいまだに認めないことである。彼女がもう一度席に着き、寄宿学校の生存者から話を聞くよう提案する。彼らには、彼女に教えることが山ほどある。」


写真:リン・ベヤック上院議員(左)とキャロリン・ベネット先住民・北方問題担当大臣(右)。
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コーンウォリス総督像、布で覆われる [先住民]

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 ノバスコシア州ハリファックスのコーンウォリス・パークで7月15日、150人の市民が集まり、エドワード・コーンウォリス総督の像を撤去しようとした。市当局は混乱を回避するため、当面の措置として像を黒い布で覆った。

 ノバスコシア総督コーンウォリスは、1749年イギリス人入植者を連れて今日のハリファックスに入り、街と要塞を築いた。彼は事前にインディアンと協定を結んでいたが、相手は大半がニューブランズウィックのインディアンで、ノバスコシアのミックマック族の同意を得ていなかった。彼らは小規模な軍隊の駐屯は容認したが、大規模な植民は1726年の協定に反すると異議を唱え、イギリス人への攻撃を開始した(ル・ルートル神父戦争)。これに対しコーンウォリス総督は、ミックマック族の頭皮を剥いだら報奨金を払うと布告した。

 像に布がかけられると、抗議者たちは拳を挙げ、太鼓を鳴らして歌い、手をつないで像の周りを回った。ケープブレトンから来たインディアンのエリザベス・マーシャルさんは、次のように語った。
「これは私が経験した、最も喜ばしい日の一つだ。我々は常に排除されていたから、入植者たちと新しい関係を始めることを予期していなかった。我々は圧迫されていると感じ、声を上げられずにいた。だが今日、我々は声を上げた。」
 ディグビーから来たインディアンのパトリック・ルブランさんは、こう述べた。
「この人物は、我々の同胞の大量虐殺を象徴する。」
「これを毎日見るたびに、思い出す。そして、心が痛む。」
 ケープブレトンから来たインディアンのメリーアン・ジュンタさんは、像が布で覆われたことについて「当面は十分だが、いずれは取り壊されるべきだ」と語った。
 16歳の匿名の人物は、コーンウォリスの像について「ヒトラーの像をユダヤ人の街に置くのと同じ」と述べた。

 像は3メートル近い台座の上に乗っており、抗議者たちがどうやって像を撤去するつもりだったかは不明である。
 やがてイギリス国旗を掲げた少数のグループが乱入し、抗議者たちに怒鳴り始めたが、警察が事前に待機しており、大事には至らなかった。
 今年7月1日のカナダ・デー(建国記念日)には、行方不明となっている先住民の女性を記念する「哀悼式」が、コーンウォリス像の前で開催されている。この集会は、右翼団体「プラウド・ボーイズ」5人の乱入によって妨害された。5人はカナダ軍の軍人で、停職処分を受けた。
 コーンウォリス総督は、しばしば論争の対象となっている。コーンウォリス・プレイスは1995年、ハリファックス・サミット開催を記念して「サミット・プレイス」に改称された。またコーンウォリス中学校は、ハリファックス中央中学校に改称された。


写真:コーンウォリス総督像が黒い布で覆われ、歓喜する抗議者たち。
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スペンス酋長、ハンガーストライキを終了 [先住民]

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 先住民に関する政府の一連の政策に抗議して、アタワピスカット族のテレサ・スペンス酋長が、12月11日からオタワ川のビクトリア島でハンガーストライキを続けていたが、政府に13か条の要求を突きつける妥協案に同意して、1月24日に42日間の抗議を終了した。

 保守党政権は2012年12月、C-45号法案を下院で可決させたが、これは先住民との協議なしに多くの河川や土地を環境保護リストから除外するものであった。ジェシカ・ゴードン、シルビア・マカダム、シーラ・マクリーン、ニーナ・ウィルソンはこれに抗議し、草の根市民運動#IdleNoMoreを始めた。運動はやがてカナダ全土から、国外にまで発展していった。
 スペンス酋長は、連邦議会議事堂を望むビクトリア島にテントを張り、ブイヨンとハーブティーとレモン水だけで固形食を摂らないハンガーストライキを始めた。彼女が1日に摂取するカロリーは、300前後であった。
 彼女は当初この問題について、ハーパー首相との会談を求めた。やがてそれは、他の酋長も含めた会議の開催、オンタリオ州首相の同席、ついにはカナダ総督の同席を要求するに至った。ハーパー首相は、2012年に開催された連邦政府と先住民代表の会議からちょうど1周年となる1月24日に、連邦政府と先住民代表の会議を召集すると提案したが、スペンス酋長の健康状態が悪化し、72時間以内に会議を開催しなければ生命にかかわると発表したことで、1月11日に開催された。
 全国先住民評議会のショーン・アテレオ代表は、会議を好意的に評価したが、スペンス酋長は総督の同席がなかったことに不満を抱き、ハンガーストライキを続けていた。だが体力が限界に近づいたこともあり、連邦議会で政府に突きつける13か条の要求に合意して、これを終了した。

 支援者は、彼女を「マザー・テレサ」と称えた。彼女の行為は、先住民が抱える問題、特にC-45号法案に注目を集めることに成功し、彼女は#IdleNoMore運動のシンボルとなった。
 だがそのいっぽうでは、彼女への批判もある。彼女はカナダの政治を十分理解しておらず、しばしば周囲を困惑させる発言をした。彼女は問題を大々的に宣伝したあげく、何も解決していない。
 彼女のハンガーストライキは、全国民を巻き込んだ巨大な運動とはならず、非先住民の支持は多くなかった。ナノス・リサーチ社による世論調査は、カナダ人の先住民への意識が、スペンス酋長の言動により硬化したことを示した。カナダ人回答者の54%が、ハンガーストライキは先住民の利益につながっていないと回答した。
 スペンス酋長は、ビクトリア島のテントから「カナダのために祈ろう」と称し、先住民の祈祷師やロリーン・ハーパー首相夫人に呼びかけた。また、先住民が結んだ協定は国王とのものであり、カナダ政府とのものではないとして、ジョンストン総督に公開書簡を送り、総督の会議への出席に固執した。確かにカナダはそのとき独立国ではなかったが、その後政治体制が変わり、総督には政治上の権限が今はないことを、彼女は理解していなかった。
 彼女は、アタワピスカットの窮状の責任は全て連邦政府にあると見なしており、その解決法は連邦政府からの資金提供しかないと考えていた。部落の孤立や地域経済の欠如に自分の責任があるという考えを、彼女は完全に拒否した。
 2011年10月28日、スペンス酋長は3年間で3度目となる非常事態宣言を発令した。これを受けてジョン・ダンカン先住民問題担当大臣は、連邦政府は2006年からアタワピスカット居留地に、学校と60件の家の建設を含め1億3100万ドルを支出していると反論した。
 スペンス酋長は、会計を住民にもメディアにも公表しなかった。一部の住民は「報復を恐れて」、マスコミの取材を拒否したとも報道された。アタワピスカット族評議会は最終的に、第三者による会計監査に同意したが、2005年から2011年までに連邦政府から受けた1億400万ドルの資金のうち、数百万ドルが使途不明のままである。
 住むところに事欠く先住民がいる中で、スペンス酋長の給与と旅費は、7万ドル以上にのぼっている。彼女はまた、アタワピスカット族評議会の経理担当だったクレイトン・ケネディと内縁関係にある。ハンガーストライキ支援のための募金口座は、アタワピスカット族評議会ではなくケネディのものだった。またスペンス酋長は太っているため、彼女の「ダイエット」をからかう発言は随所に見られた。

 ダンカン先住民問題担当大臣は、この後「よりハイレベルな会談」が首相と先住民代表の間で行われると発表した。週明けの28日、新民主党はさっそくこの問題を連邦議会で追及することになっている。



写真:テントの前に立つテレサ・スペンス酋長。
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ハーパー首相が名誉酋長に [先住民]

f79f7e634663afd394f771037ddf.jpg ハーパー首相は7月11日、アルバータ州の先住民ブラッド族の名誉酋長に任じられた。
 彼は2008年、政府がかつて先住民の児童に、親から引き離し寄宿学校での同化教育を強制した過去について謝罪した。チャールズ・ウィーゼル酋長はこれを讃え、ハーパー首相にブラックフットの言語で「チーフ・スピーカー」の名を贈った。
 ハーパー首相はそれから、メディシンマンに顔にペイントを施され、頭に羽飾りをかけられた。
 ハーパー首相は、レスター・ピアソン元首相とジョン・ディーフェンベーカー元首相に続き、現職総理で名誉酋長に任じられる3人目となった。なおジャン・クレチエン元首相は、首相就任前に任じられている。
 ほかに名誉酋長に任じられた人物には、エイドリアン・クラークソン元総督、デビッド・スズキ博士、ピーター・ローヒード元州首相、ラルフ・クレイン元州首相がいる。
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イヌイットの強制移住について謝罪 [先住民]

 ジョン・ダンカン・インディアン問題担当大臣は8月18日、1950年代に実施されたイヌイットの極北への強制移住について、謝罪の意を表明した。
「カナダ政府は、我が国の歴史における暗いページのうちの過ちと違約について、深く遺憾の念を述べるとともに、極北への強制移住について謝罪する。我々は、強制移住が惹き起こした言語に絶する困難と苦痛に対し、深く同情するものである。」

 ハドソン湾東岸のイヌクジュアックに暮らしていた19世帯87人が、1953年から1956年にかけて、2000キロ北の極北に移住させられた。これにより彼らは福祉依存から脱却し、伝統的生活を取り戻せるものと約束された。彼らは以前と同じように、一つの村でいっしょに生活できるものと思っていた。ところが彼らは、リゾリュート・ベイとグライス・フィヨルドの村に別れて暮らすことになった。新しい村は以前より20度も寒い不毛の地で、住宅も提供されず、イグルー(かまくら)を作るしかなかった。

 だが実際には、豊富な地下資源がありながら無人で不毛の地である極北地方の、領土権を確実なものにするために、連邦政府がイヌイットを「生きる国旗スタンド」として利用していたにすぎなかった。
 連邦政府は長年にわたり、移住はイヌイットの同意により、彼らの経済状態を向上させるために行ったと主張してきた。進歩保守党政権のトム・シドン・インディアン問題担当大臣は1992年、移住は「移住者の環境改善という明白な意図をもって実施された」と述べ、いかなる謝罪をも拒否すると語った。
 ところが90年代に先住民王立委員会が、地下資源に関する懸念が強制移住への引き金になったことを示す文書を発見した。そこにはこう記されていた。
「そのような将来の要求への対処として、カナダ自治領は北極から700マイル以内の島を占有する。」

 1953年にリゾリュート・ベイに移住したとき、まだ6歳だったジョン・アマゴアリックは、こう語った。
「それはまさに、世界一荒涼とした地であった。我々はまさに、村の囚人であった。」
 ダンカン大臣は、謝罪の言葉の中でこう述べた。
「我々は、守られなかった約束について謝罪する。彼らは、より豊かな地に行くと約束された。彼らは、1つのコミュニティの中に残ると約束された。彼らは、新しい地を去ることも、戻ることもできると約束された。そして我々は、移住そのものについて謝罪する。」
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イロコイチーム、ラクロス世界選手権出場を断念 [先住民]

Lacrosse__Iroquo_765501gm-a.jpg イギリスのマンチェスターで7月15日に開幕した、男子ラクロス世界選手権大会に出場を予定していた、アメリカとカナダの先住民イロコイのチームが、「イロコイ連邦」パスポートでの入国を拒否されていた問題で、同チームは大会への出場を断念した。
 イロコイチームは、9人のカナダ市民と38人のアメリカ市民のイロコイ族インディアンで構成されている。イロコイ連邦パスポートで初めて国外に旅行した人は、1923年のデサカーエであった。彼は国際連盟に、シックス・ネイションズの自決権をカナダ政府が侵害したと訴えるために旅行した。
 その後カナダ政府は1977年、イロコイ連邦の独立への欲求に応える形でイロコイ連邦パスポートを承認した。それから33年間、イロコイ連邦パスポートは世界中の空港で受け容れられた。だが2001年9月11日の同時多発テロにより、セキュリティは世界的に厳しくなり、バーコードや電子チップを持たないイロコイ連邦パスポートはしばしばトラブルに巻き込まれるようになった。

 アメリカ政府は今回、イロコイチームのイロコイ連邦パスポート使用に反対していたが、クリントン国務長官は、アメリカ市民に限り、1回限りの例外的使用を認めた。だがイギリス当局はパスポートの有効性を認めず、アメリカまたはカナダのパスポートで入国するよう要求。しかしイロコイチームは、イロコイ連邦パスポートの使用は民族アイデンティティの問題だとしてこれを拒否した。
 イロコイチームのトーマス・ディアは、こう語った。
「私は、カナダのパスポート取得を拒否する。それは、私がカナダ人ではないことを意味する。我々は今カナダとして知られる地域に暮らしているが、我々はカナダが創設される前からここに暮らしているホーデノショーネである。」
 オンタリオ州シックス・ネイションズ出身のデルビー・パワレスは、こう述べた。
「相手チームにメダルを奪われることは、ありえることだ。だがスーツを着た誰かにメダルを奪われることは、別の問題だ。」
 コンコルディア大学のギャビン・テイラー教授は、カナダ政府は何世紀もの間、先住民の旅行問題を直視せず、避けて通ってきたと述べた。
「もしカナダがイロコイ連邦パスポートを認めたら、その他の民族集団も彼ら自身のパスポートを要求し、パンドラの箱を開けることになるだろう。」
 ケベック連合のインディアン問題担当マルク・ルメイ議員は、こう語った。
「我々はみな、民族ではなく承認された国家が発給する有効なパスポートを持たなければならない。さもなくば、バスクのパスポート、ケベックのパスポート、スコットランドのパスポート、コルシカのパスポートが出て来ることだろう。たとえ我々が独立論者だとしても、ケベックはいまだカナダの一部であり、カナダのパスポートは依然として必要である。」
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 ラクロスは、先端に網のついたスティックでボールをパスし、相手のゴールにシュートして得点を争う競技である。カナダのインディアンの儀式が起源であり、現在はカナダの国技となっている。カナダはラクロスで、1904年のセントルイス・オリンピックと1908年のロンドン・オリンピックで金メダルを獲得している。国際ラクロス連盟では、イロコイ男子チームは4位にランキングされている強豪である。


写真:イロコイ連邦パスポートを掲げるパーシー・エイブラム監督。
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