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遺伝子差別禁止法が成立 [人権]

 遺伝子差別を禁止するS-201号法案が、3月8日下院で採決され、222対60の大差で可決された。法案は近日中に、総督の勅裁を得て成立する。
 S-201号法案は、カナダ人権法で保護する対象として遺伝子の特徴を追加し、あらゆる契約・合意の条件として遺伝子検査を求めたり、その結果を開示することを禁止し、罰則として5年以下の禁固または100万ドル以下の罰金を定めている。
 保険業界の陳情を受け、自由党政権はこの法案に反対し、これを骨抜きにする修正案を提出した。大臣全員と政務次官のほとんどは修正案に賛成投票し、かつ法案に反対投票したが、党議拘束がなかったため、自由党平議員のうち4人を除く全員が党首脳に造反し、野党の保守党・新民主党と連携して修正案を218対59で葬り、返す刀で法案を可決させた。

 採決を受けて、カナダ生命・健康保険組合の広報ウェンディ・ホープ氏は声明を発表した。
「カナダ生命・健康保険組合は、S-201号法案が大きな修正なしに本日下院を通過したことに、大いに失望している。いくつかの州と首相と法務大臣によって表明された、法案の主要な要素が違憲であるという見解に、当組合は同意するものである。」
 ジョディ・ウィルソン=レイボールド法務大臣は、法案は保険事業を管轄する州の権限に抵触すると考えたため、州や憲法学者に何度も諮問し、違憲立法の言質を取ろうと試みたが、うまくいかなかった。また自由党政権は、保険契約の除外を企図し、カナダ人権法の禁止条項に遺伝子の特徴を追加する条文以外を削除する修正案を提出した。それは、法案が人口の6%程度にあたる連邦政府職員だけに適用されることを意味するものだったが、8日夕方に超党派によって否決された。
 トルドー首相は、採決の直前に下院で演説した。
「政府は、上程された法案の要素の一つが違憲であるという立場に立っている。政府の立場は法案に反対投票することであり、議員たちにもそのように推奨する。」
 法案を支援してきたロブ・オライファント議員(自由党)は、カナダがG7で唯一遺伝子差別禁止法を持たなかったことについて、この法案はカナダの州と準州が十数年間実現できなかったことへの、連邦の適切な対応であると誇った。
「私は、あらゆる州と準州による補完的な立法を歓迎する。本心だ。私は、そうするなとは言わない。あらゆる州と準州の人権法を改正するがいい。我々には想定内だ。だが我々には、それを上回る連邦政府の権限がある。」
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 この日は国際女性デーで、市民団体「平等の声」は下院本会議場に、338の全選挙区から選ばれた338人の18歳から23歳までの女性を送り込んだ。彼女たちは、党派を超えてS-201号法案を可決したことに拍手を惜しまなかった。
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遺伝子差別禁止法案の修正案が否決 [人権]

 遺伝子差別を禁止するS-201号法案の修正案が、3月7日下院で採決され、超党派の反対で否決された。
 この法案はもともと、あらゆる契約・合意の条件として遺伝子検査あるいはその結果の開示を求めることを違法とし、罰則として5年以下の禁固または100万ドル以下の罰金を定めたものである。
 カナダは公営無料医療・国民皆保険が実施されているにもかかわらず、G7で唯一遺伝子差別を禁止する規定がない。それゆえ多くのカナダ人が、結果を悪用されることを恐れ、検査を受けようとしない。その結果、ある種の病気の罹りやすさやを知り、それを予防することができない。
 2015年の総選挙では、自由党・保守党・新民主党の三大政党全てが、遺伝子差別禁止の法制化を公約した。S-201号法案は、「無所属自由党」のジム・カウアン上院議員(当時、現在は引退)が2015年12月に上程した個人法案(※党幹部会で採択されず、党議拘束がない)で、2016年4月に上院で可決され、12月に下院法務委員会を満場一致で通過した。ところが保険業界が激しいロビー活動を行った結果、自由党政権は法案の換骨堕胎を図るようになり、2月以降いくつかの修正案が出されることになった。7日に採決された修正案は、自由党のランディ・ボワソノール議員によって提出されたもので、雇用者が就職希望者に遺伝子検査を受けさせることの禁止と罰則規定を削除するものだったが、党議拘束のない自由投票で、自由党から大量の造反者が出たため、保守党と新民主党の反対で否決された。

 カナダ生命・健康保険組合は、S-201号法案が修正なしに成立すれば、保険料の高騰と保険金の削減につながると警告し、保険契約を除外するよう強く訴え、これまでに73回もの陳情を行っている。同組合は今年1月、保険契約者の85%にあたる、保険金25万ドル以下の契約においては遺伝子検査の結果通知を要求しないというガイドラインを定め、2018年1月1日から実施することを決めていたことを強調した。
「25万ドルの上限設置は、遺伝子検査を通して重要な健康リスクを知った顧客が、これを通知することなく異常に巨額の生命保険契約を申し込むことができないようにするものだ。さもないと、契約者全員の保険料が高騰し、保険金を得る人は少なくなる。」
 だがカウアン元議員は、遺伝子差別が法で禁止されているアメリカ・イギリス・フランス・イスラエルにおいて、巨額の保険金詐欺が起きていない事実を指摘した。
「知っての通り、彼らの論点は、法案が保険業界を壊滅させるというものだ。だが同様の保護法のある国々で、そんなことが起きただろうか。我々が知る限り、保険業界はうまく行っている。」
 自由党のロブ・オライファント下院議員は、引退したカウアン元議員に代わり、S-201号法案の支援者となった。
「カナダにおいて、人権問題を大企業の自主規制に任せるわけにはいかない。」
「子供たちの遺伝子検査を、医師が行いたいのに、将来の差別を恐れて親が拒否することが毎月のようにある。これは特定の病気に対処する医師への足枷であり、最善の治療を受ける子供への足枷である。それは、親がするべき決断ではない。」

 いっぽうジョディ・ウィルソン=レイボールド法務大臣は、連邦議会による法制定は州の権限を侵害するおそれがあると考え、諸州に手紙を送り、意見を求めた。するとマニトバ・ケベック・ブリティッシュコロンビアの3州が、全ての州の意見を聞きたいので法案は保留にしてほしいと回答した。ところが、法務委員会に召致された4人の憲法学者のうち3人が、法案は違憲ではないと答申した。そこでウィルソン=レイボールド法務大臣は、別の憲法学者の意見をさらに求めたが、反応はなかったという。新民主党のドン・デービス下院議員は、自由党政権が始めた憲法問題について「煙幕以外の何ものでもない」と吐き捨てた。またカウアン元議員は、自由党政権が総選挙で公約したにもかかわらず反対していることを「興味深い」と語った。

 政府の依頼により、もう一つの修正案が3月8日に投票にかけられる。この日は奇しくも、国際女性デーである。
 BRCA遺伝子に異常がある女性は、乳癌になる確率が85%、卵巣癌になる確率が60%とされている。異常のない女性では、それぞれ11.7%と1.4%である。特にヨーロッパ系ユダヤ人(アシュケナージ)の女性は、BRCA遺伝子に異常を持つ人がそうでない人の10倍いるとされている。こうして発癌リスクの高い女性は、職場で昇進する芽を摘まれるかもしれない。また、悪い遺伝子を持っている可能性とその開示を強要されるリスクを回避するため、遺伝子検査を回避し、その結果早期の治療を受ける機会を逃すことがあり得る。
 遺伝子差別を禁止するのは、女性に利するところが多いだろう。法案の骨子を骨抜きにする修正案は、おそらく超党派の反対で否決されることだろう。
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宗教差別非難動議、「イスラモフォビア」の語が物議 [人権]

 連邦議会は2月15日、人種差別・宗教差別を非難する103号動議(M-103)の審議に入ったが、その文中に「イスラモフォビア」(イスラム嫌悪)の文言があることが議論の的になっている。
 この動議は2016年12月、自由党のイクラ・カリッド議員(オンタリオ州ミシサウガ-エリン・ミルズ選挙区選出)によって提出されたもので、ケベック市モスク銃撃事件を受けて審議されることになった。
 カリッド議員はパキスタン生まれのイスラム教徒だが、1990年代にカナダに移住したとき、近所の子供たちに「ムスリムは帰れ」と言われ心を痛めたという。

 だが問題は、「政府はイスラモフォビアとあらゆる形式の構造的な人種差別および宗教差別を非難し」とあることである。
 ナショナル・ポスト紙のコラムニスト、バーバラ・ケイ氏は、表現の自由への影響と、一宗教団体への特別扱いに懸念を表明した。彼女は政府の統計を引用し、2013年に起きたヘイトクライム326件のうち、イスラム教徒に対するものは65件で、ユダヤ教徒に対するもの181件の方が多かった事実を指摘した。また、イスラム法を批判した彼女のコラムのいくつかがイスラモフォビアと見なされ、カナダ刑法で罰せられるのみならず、イスラム教批判を萎縮させた結果、報復や女性迫害を含むシャリア法が事実上カナダに導入されることにもなりかねないと警告した。

 保守党内は、動議に批判的な意見が多い。保守党党首選に出馬しているピエール・ルミュー議員は、103号動議は「言論の自由への攻撃」であり、「一宗教への特別な保護を提唱する」と批判する手紙を支持者に送った。
 同じく保守党党首選に出馬しているケリー・リーチ元労働大臣も、動議に反対するとツイッターで述べた。
「言論の自由は、基本的なカナダの価値である。イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、ヒンズー教、無神論、その他いかなる信仰であろうと、それを信じまた批判する権利があることを、我々は再確認しなければならない。」
 同じく保守党党首選に出馬しているリサ・レイト前運輸大臣も、不支持を表明した。
「103号動議は、論争の的となり適切とは思えない『イスラモフォビア』の文言に焦点を当てている。それゆえわたしは、これを支持しない。」
 同じく保守党党首選に出馬しているマクシム・ベルニエ元外務大臣は、「イスラモフォビア」の語が削除されないかぎり反対するとフェイスブックで述べた。
「この動議は、イスラム教を批判する我々の権利を制限する第一歩だろうか?」
 同じく保守党党首選に出馬しているエリン・オトゥール前退役軍人大臣も、「イスラモフォビア」の文言に危機感を抱き、その文言を含まない同様の「e-411号請願」を発表して、7万人のカナダ人の署名を集めた。彼はカリッド議員に、論争を巻き起こしている103号動議を取り下げ、e-411号請願に加わるよう呼びかけた。
「『イスラモフォビア』の文言が拡大解釈され、イスラム教あるいはその過激派に対する純粋な批判がイスラモフォビアとみなされると、相当な数のカナダ人が考えていることは明白だ。」
「私たちは良い話し合いの機会を持った。そして彼女は、私の提案を考慮すると言った。」
 同じく保守党党首選に出馬しているマイケル・チョン元政府間関係大臣は、下院がすでにユダヤ教・ヤジディ教・コプト教など他宗教への憎悪を非難したことを評価し、条件付きではあるが103号動議への支持を表明した。彼は、言論の自由に対するより大きな脅威は、あらゆる定義可能な集団に対する憎悪の表明を犯罪と規定した刑法第319条であると述べ、その廃止を主張した。彼は、不快な意見でさえ公共の場で議論され、自由な言論の「消毒剤」で反論されるべきであり、民主主義社会において言論の自由を制限するバーは非常に高いものでなければならないと、CBCニュースで訴えた。
「ヘイトスピーチに対抗する正しい方法は自由な言論であり、刑法ではない。」
「刑法第319条は、危害があまりに広く解釈されている。しかも第319条は、議論を萎縮させ、問題を地下に潜行させることになる。」
 ロナ・アンブローズ暫定党首は、修正されないかぎり動議を支持しないと述べた。だが具体的にどのような修正を求めているかについては、明言しなかった。
 保守党は16日、「あらゆる形式の構造的な人種差別、宗教上の非寛容、そしてイスラム教徒・ユダヤ教徒・キリスト教徒・シーク教徒・ヒンズー教徒およびその他の宗教コミュニティへの差別を非難する」という内容の新たな動議を提出した。だが自由党は、それは103号動議を水で薄めたようなものだとして反対することを決めた。アンブローズ暫定党首は、これを「党派ゲーム」だと非難した。

 トルドー首相は、イスラム教が一般に女性に抑圧的であることに鑑み、フェミニストである自身の信条と動議はどのように整合するのかと問われ、憲法に規定された個人の権利は、社会において他者の権利と調和していなければならないと回答した。
「混雑した映画館で『火事だ!』と叫ぶ権利はなく、それを言論の自由とは言わない。それは人々を危険にさらすことになる。そして我々が10日前にケベック市で見たように、我々の社会を危険にさらすほかのものがある。我々はそれに対し、強く立ち向かう必要がある。」

 103号動議は拘束力のない動議であるにもかかわらず、インターネット上ではこれを法案と勘違いして、過敏に反応する人々が続出した。中には、動議がただちにイスラモフォビアの非合法化や、シャリア法の導入を意味するものと誤解する者もいた。
 動議には、73のムスリム団体やその他の団体が支持を表明しているが、もちろん全ての団体が支持しているわけではない。イスラエル・ユダヤ問題センターのシモン・フォーゲル会長は、宗教への憎悪を非難するという本来の意図を実現するため、「イスラモフォビア」の文言を削除するようカリッド議員に申し入れている。
「そのような提案が、意図された目的にかない、誠実で合法的な市民の会話を抑制する別の意図に乗っ取られないことが、不可欠である。」
「イスラム教への全ての批判は、イスラモフォビアか?もちろんそうではない。ユダヤ人コミュニティは、四面楚歌だと感じているムスリム・コミュニティへの支援と連帯を望んでいるが、カナダの価値とは相容れないだけでないイスラム教の性質に関する建設的議論を、犠牲にしてまで替えることはできない。」
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【世論調査】カナダ人は意外と移民に非寛容? [人権]

 トロント大学で政治学を教えるマイケル・ドネリー教授による最近の研究は、カナダ人が彼らが思うほど移民や難民に寛容ではないことを示すとともに、カナダにおいて反移民感情が増加する可能性があると結論づけた。
 論文は「カナダ例外主義:我々は善良かそれとも幸運か」というタイトルで、イプソス社が1月18日から27日までの間に1522人のカナダ人を対象に実施したオンライン世論調査に基づいている。調査は、トランプ大統領によるイスラム7か国民入国禁止令や、ケベック市モスク銃撃事件より前に、英語またはフランス語で行われた。

 被験者の約3分の1は、移民を誘致するにあたりイスラム教徒は差別すべきだと回答し、3分の1は白人の移民を有色人種に優先すべきだと回答した。
 被験者の半数は「多くの移民たちはカナダの社会に溶け込んでいるように見えない」、被験者の65%は「移民はよりカナダ人らしくなるため習慣を改めるべきだ」と回答した。
 移民の受け入れを終了することには、被験者の20%が賛成し、45%が反対し、35%は賛成も反対もしないと回答した。
 これについてドネリー教授は、「これらの結果は、深刻な反移民運動がカナダで決して不可能ではないことを示唆する」と語った。
 彼はまた、2010年の調査でアメリカ人の43%が国境閉鎖に反対だと回答したにもかかわらず、トランプ氏が大統領に当選した事実に注目した。各種世論調査は、トランプ氏に投票した人々は経済よりも移民やテロ問題に関心を抱いていたことを示した。だが彼は、移民が政治で重要な争点になったことはカナダではほとんどなかったと述べた。
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新10ドル札の肖像に「カナダのローザ・パークス」バイオラ・デズモンド [人権]

ViolaDesmondHR.jpg ビル・モルノー財務大臣は12月8日、2018年に発行される新しい10ドル札の肖像に、バイオラ・デズモンドを採用すると発表した。これまで紙幣の表の肖像は国王か元首相で、民間人が描かれるのは初めて。黒人やカナダの女性としても最初となる。
 デズモンドは1914年、ノバスコシア州ハリファックスに生まれた。彼女は、黒人女性のためのヘアケアやスキンケアが地元にないことを憂い、美容師になることを志したが、ノバスコシアには黒人が入れる美容学校がなかったため、モントリオール・アトランティックシティ・ニューヨークで学んだ。卒業後はハリファックスに戻って美容師となり、黒人女性も学べるデズモンド美容文化専門学校を設立した。
 彼女は1946年11月8日、ノバスコシア州ニューグラスゴーのローズランド劇場に行き、メイン席に座ったが、従業員からそこは白人専用席で、黒人はバルコニー席に座るよう指示された。彼女が拒否すると、暴力的に排除されたうえ、逮捕された。彼女は、席の料金の差について遊興税1セントを脱税した容疑で起訴され、罰金20ドルと法廷費用6ドル(※現在の価値ではほぼ10倍)の支払いを命じられた。ローザ・パークスがバスで白人に席を譲るのを拒否する、9年前のことだった。
 1965年に死去したデズモンドは、2010年ノバスコシア州のメイアン・フランシス副総督(※黒人女性)によって恩赦された。カナダで死後に恩赦されたのは、彼女が最初である。

 モルノー財務大臣は語った。
「勇気、強さ、決断、我々皆が日々必要とすることを、彼女は体現している。」
 長年彼女の偉業を語り続けてきた妹のワンダ・ロブソンさんは、記者会見のその場にいた。
「紙幣の肖像に女性を載せることができるとは、何とすばらしいことでしょう。でも、紙幣の肖像になる女性を姉に持つことは、格別にすばらしいことです。」

 政府が3月、新しい紙幣の肖像としてカナダの女性を採用すると発表すると、2万6000件以上の要望が寄せられた。そして最終的に残った候補が、ポーリン・ジョンソン(インディアンの詩人)、エルシー・マギル(世界で初めて航空工学の学位を取った女性)、イドラ・サン=ジャン(婦人参政権を推進)、ファニー・ローゼンフェルド(女性金メダリスト)とデズモンドだった。そしてカナダ銀行の諮問委員会は、障壁を克服した人、人々に影響を与えた人、長く続く偉業を達成した人を探していたという。デズモンドは、そのいずれにも合致した。
 人気のあったルーシ・モード・モンゴメリ(女流作家)、エミリー・カー(女流画家)、ガブリエル・ロワ(女流作家)は最終的にノミネートされなかった。世論調査では、婦人参政権を推進したネリー・マクラングが最も人気があったが、彼女を含む「フェイマス5」は、2004年に発行された50ドル札の裏にすでに描かれていたため、今回は採用されていない。なお彼女たちは、2011年に発行された現行紙幣には掲載されていない。
 現在10ドル札に描かれているジョン・マクドナルド(初代首相)と、5ドル札に描かれているウィルフリッド・ローリエ(元首相)は、50ドル札か100ドル札に描かれる。現在50ドル札に描かれているマッケンジー・キング(元首相)と、100ドル札に描かれているロバート・ボーデン(元首相)は、紙幣から消える。ATMで最も使用される20ドル札は、これまでどおりエリザベス女王が描かれる。
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アナルセックスを禁じた刑法条文、撤廃へ [人権]

 トルドー政権は11月15日、アナルセックスに刑事罰を科す刑法第159条を削除する法案を上程する。
 刑法第159条第1項は、アナルセックスに対し10年以下の禁固を科している。それから第2項では免責事項について述べており、(a)夫と妻、(b)合意のある18歳以上の二者、の間によるものは第1項が適用されない。そして第3項では合意について、(a)二人を超える参加者がいた場合、および公共の場で行われた場合、(b)(i)強制や脅迫あるいは詐欺や錯誤に基づく合意、(ii)精神的障害ゆえに合意できなかったという合理的疑いを越えて裁判官を納得させられない場合は、合意があったものと解さないと述べている。
 カナダでは、合法的に性行為ができるのは16歳以上(※2008年までは14歳以上)である。ただし、教師やコーチなど指導的な立場の人との性行為や、ポルノ出演、売春は18歳以上である。
 第159条の撤廃は、ゲイ・コミュニティにとって悲願であった。同性婚がすでに認可されているにもかかわらず、第2項(a)は異性配偶者間のみを合法としているからである。また第2項(b)に従うと、16歳以上の未婚の異性カップルは(アナルに挿入しないかぎり)性行為が合法であるにもかかわらず、16歳と17歳の同性カップルにとっては挿入行為が非合法のままである。さらに第3項(a)に従うと、16歳以上の未婚の異性カップルは3者以上(※原文:more than two persons take part or are present)での性行為が合法だが、16歳と17歳の同性カップルにとっては非合法となる。
 オンタリオ州裁判所は1995年、すでに刑法第159条を無効と判断した。だが条文は刑法に残ったままであり、2008年から2014年までオンタリオで22人が起訴された。新民主党のジョー・コマーチン議員は2011年、第159条を削除する個人法案(※党幹部会で採択されなかった法案。採択されると党議拘束がかかる)を提出したが、議会では審議すらされなかった。なお2005年にブリティッシュコロンビアで結成された「セックス党」は、党綱領に刑法第159条の削除を掲げていたが、2012年に解散している。
 政府の動向に対し、保守派はすでに行動を起こしている。保守系女性団体「REALウーマン」(REALはRealistic, Equal, Active, for Lifeの略)のグウェン・ランドルト氏は、「159条を改正ではなく撤廃するというなら、誰もが何歳でもアナルセックスできることになります」と警告した。


セックス党については以下を参照。
http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2009-03-31
http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2008-01-18
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【世論調査】カナダ人の多くは「カナダの価値」審査を支持 [人権]

 フォーラム・リサーチ社が1370人のカナダ人有権者を対象に行い、9月9日に発表した世論調査は、「移民申請者は反カナダの価値について審査されるべきだ」とする意見に67%が賛成することを示した。反対は24%、「どちらでもない」は9%だった。
 文化的価値による審査は、ジェネレーションX(1965~85年生まれ)及びベビーブーマー(1946~64年生まれ)で73%、男性で70%、女性で64%、中所得層(年収6万~8万ドル)で72%と、階層を越えて強く支持されている。地域別ではケベックで71%、オンタリオで70%と中部が高く、最も低いのは東部の56%だった。また保守党支持者で87%、低学歴層で76%と高かった。
 最も重要なカナダの価値を8つの選択肢から選ぶ設問では、最も重視されたのは「平等」の27%で、以下「愛国心」15%、「公正」12%、「寛容」11%が続いた。重視されなかったのは「多様性」9%、「思いやり」7%、「義務」5%、「礼儀」4%で、「最も重要なカナダの価値はほかにある」という回答が9%あった。
 保守党支持者にとって最も重要な価値は「愛国心」の29%で、次が「平等」の19%だった。自由党支持者にとって最も重要な価値は「平等」の33%で、次が「寛容」の16%だった。新民主党支持者にとって最も重要な価値は「平等」の29%で、次が「愛国心」の16%だった。「平等」は、中西部を除く全ての地域で最も重視されている。中西部では「愛国心」(20%)と「思いやり」(19%)が最も重視されている。
 59%のカナダ人は、一種類以上のムスリム女性の衣類を禁止すべきだと考えている。ヘジャブとニカブとブルカを禁止すべきと考える人は29%、ニカブとブルカを禁止すべきと考える人は15%、ブルカのみを禁止すべきと考える人は15%だった。衣類を禁止すべきでないと考える人は36%で、5%は回答しなかった。
 衣類を禁止すべきでないと考える人は、保守党支持者で22%、フランス系住民で12%と顕著に低かった。自身を民族的に「カナダ人」と認識する人では34%で、「その他の民族」と認識する人に比べ低くなっていた。
 市民権宣誓式でのニカブ着用に反対する人は68%で、2015年10月の総選挙直前にフォーラム・リサーチ社が調査したときの59%より増加している。公務員のニカブ着用に反対する人も68%で、これも2015年10月の62%より増加している。いずれのケースも、保守党支持の年輩の中所得層男性から、ケベック在住者まで差異が見られない。それにもかかわらず58%のカナダ人は、「女性の衣服に関し国家は干渉すべきでない」と考えており、これに反対する人は29%しかいなかった。「干渉すべき」と考える人が多いのはケベック在住者の41%、保守党支持者の39%、新民主党支持者の32%である。
 カナダが受け容れたシリア難民は、いい影響を与えたと考える人は29%、いい影響を与えていないと考える人は31%だった。「カナダは移民を多く受け入れすぎている」と考える人は38%で、「移民が少なすぎる」と考える人は13%だった。「『適切な数』の移民を受け入れるべきだ」という意見には、41%が同意した。
 「カナダは移民を多く受け入れすぎている」と考える人は、ジェネレーションX及びベビーブーマーで42%、男性で41%、女性で35%、低所得層(年収2万ドル以下)で47%と、階層を越えた一定の支持がある。このほかオンタリオで42%、アルバータで42%、保守党支持者で58%、低学歴層で54%と高く、自由党支持者では20%と顕著に低かった。
 59%のカナダ人は、カナダへの移民がカナダの文化的価値と相容れないときは、自国の文化的価値を放棄しなければならないことに同意した。この意見は、高齢者(65歳以上)で67%、男性で64%、女性で55%、中所得層で68%と、階層を越えて幅広く支持されている。ほかにケベックで74%、保守党支持者で75%、低学歴層で64%と高く、自由党支持者では48%と低くなっている。

 これらの結果を受けて、フォーラム・リサーチ社のローン・ボジノフ社長は次のように分析した。
「この問題が難しいのは、大多数のカナダ人が『女性の衣服に関し国家は干渉すべきでない』と言いながら、その同じ人々がムスリム女性にとって宗教的に重要な衣類を禁止したがっているということである。カナダの価値問題についても、同様の難問に行き当たる。彼らは、最も重要なカナダの価値は平等だと言う。それでも彼らは、カナダに来る移民に彼らの価値を捨てるか、少なくともドア際で彼らをチェックして欲しがっている。ケリー・リーチ氏は、カナダの価値テストを呼びかけることで、カナダ人の心の琴線に触れたように思える。」


【参照】 【世論調査】市民権宣誓式におけるニカブ着用に圧倒的多数が反対
http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2015-09-23
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カナダ人の4分の3が「ポリティカル・コレクトネスは行き過ぎ」 [人権]

 自らを「私はポリティカル・コレクトでない」と称したドナルド・トランプ氏が、ついに共和党の大統領候補に擁立されることになった。かなり多くのカナダ人は、トランプ氏に大統領になって欲しくないと考えているが、アンガス・リード社が8月17日に1510人の成人カナダ人を対象に実施したオンライン世論調査は、カナダ人がポリティカル・コレクトネスについて過敏になりすぎていると感じていることを示唆している。
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 回答者の76%は、「ポリティカル・コレクトネスが行き過ぎている」と答えた。そのように考える人は、55歳以上では82%、35~54歳では78%、18~34歳では67%と、高齢になるほど多くなった。
 回答者の33%は、「異なる背景を持つ人々を怒らせないよう言葉に気をつけなければならない」(以下Aと呼ぶ)に同意した。いっぽう回答者の約3分の2は、「このごろはあまりにも多くの人々が、他者の言葉使いにすぐ腹を立てる」(以下Bと呼ぶ)に同意した。
 保守党支持者では、Aに同意した人は21%、Bに同意した人は79%だった。自由党支持者では、Aに同意した人は40%、Bに同意した人は60%だった。新民主党支持者では、Aに同意した人は38%、Bに同意した人は62%だった。支持政党に関係なく、AよりBに同意する人の方が多いが、Aに同意する人の割合が左派2党は、保守党の2倍いることがわかった。
 アンガス・リード社はまた、アメリカのピュー・リサーチ社の調査も引用している。それによるとアメリカ人の59%が、ポリティカル・インコレクトな話への耐性が必要だと考えている。民主党支持者では、Aに同意した人は61%、Bに同意した人は37%だった。共和党支持者では、Aに同意した人は21%、Bに同意した人は78%だった。無党派では、Aに同意した人は32%、Bに同意した人は68%だった。
 こうして見ると、カナダ保守党支持者とアメリカ共和党支持者のデータはほぼ同じで、カナダ新民主党支持者とアメリカ無党派のデータもほぼ同じだが、アメリカ民主党支持者だけがBよりAが多くなっている。
 回答者の78%は、「見知らぬ人の前で意見を言うべきでない」に同意した。また回答者の80%は、「誰かを怒らせずに話すのは不可能だと感じている」に同意した。
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性別を表示しない健保カードでパスポート発給を拒否 [人権]

 オンタリオ州ハミルトン在住のレイチェル・ベスタードさん(24歳)は、先週パスポートの取得を却下された。それは、6月から州政府が発給している、性別を表示しないオンタリオ健保カードを提示したのが原因だった。
 ベスタードさんは今年10月、ヨーロッパへ旅行するためにパスポートを申請した。そのためには保証人のサイン、パスポート用写真、出生証明書と政府発行の写真付きIDが必要だった。彼女は運転免許証を持っていなかったので、写真付きIDとしてオンタリオ健保カードを提示した。ところが彼女が今年受け取った健保カードは、LGBTQへの配慮として性別を表示していなかった。しかしパスポートの申請には、写真付きIDが氏名・生年月日・性別を表示していることが求められている。
 2017年からは、性別を表示しない運転免許証が発給される。そこには性別として男性の「M」、女性の「F」のほか、その他の「X」を選択することができる。新しい運転免許証が発給されれば、同様のトラブルが続出することが予想される。
 これについてベスタードさんは、性別を表示する臨時の健保カードを取得すれば、パスポートを取得できるだろうとオンタリオ州政府に言われたと語ったが、彼女はそれをその場しのぎの対策であり、今後起こるであろう問題への対処になっていないと憤慨した。彼女は、問題の本質は州政府と連邦政府が協議していないことだと指摘した。
 パスポートを取得するには、オンタリオ写真カードを取得するという方法もあるが、郵送で到着するのに4~6週間かかるため、10月の旅行には間に合いそうにない。
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安楽死幇助法案が成立 [人権]

 カナダ上院は6月17日、安楽死幇助を合法化する法案(C-14号法案)を44対28の賛成多数で可決した。法案はその2時間後、総督の勅裁を得て成立した。
 上院は15日、対象を終末期の患者に限定した条項を削除する修正を64対12(棄権1)で可決し、法案を下院に返付したが、下院は16日にこの修正を拒否し、法案を再び上院に送付していた。上院では、下院を納得させることが難しい現状では、再度修正し下院に返付しても同意を得ることが難しく、完全に廃案にするよりは法の規定がある方がましだという考えが支配的となり、政府案の受け入れに動いた。上院議員の中には、安楽死幇助自体に反対の者や、またより厳格な基準を求めた者もいたが、安楽死幇助の規定がないよりはましだと考え、賛成票を投じた。かくして、対象を「回復の見込みがなく死が予見される状態にあり」かつ「病状が終末期にある」人に限るという条項は、維持された。

 2015年2月6日の「カーター判決」により、安楽死幇助の禁止が違憲であり、1年以内の法制化を要求された。2016年2月6日、最高裁は法制化にさらに4か月の猶予を与えたが、その時点では病状が終末期にない患者にも医師に幇助され安楽死する権利があったと考えられている。だがトルドー政権が上程したC-14号法案は、同意のある成人のみに、不可逆的悪化の段階にあり、死が合理的に予見できる場合に制限されていた。
 無所属のアンドレ・プラット上院議員は、成立した法案には重大な欠陥があると語った。
「病状が終末期になく、かつひどく苦しんでいる患者たちから医師に幇助され死ぬ権利を政府が奪ったことは、重大かつ残酷な誤りであると、私は確信する。だがおそらくそう遠くない将来、裁判所がその誤りを正し、政府はその誤りについて国民に弁明することになるだろう。我々上院は、政府にその誤りを警告でき、いい仕事をしたと思っている。」
 無所属自由党のセルジュ・ジョワイヤル上院議員も、終末期でない患者を除外する条文に異を唱え、安楽死幇助法案の合憲性について連邦政府が裁判所に諮問することを盛り込んだ修正案を作成したが、受け入れられなかった。彼は、終末期の患者に限定した条文が削除されずに成立したら、連邦政府を告訴するとまで語った。彼は自由党下院議員だった1976年、英語だけが航空交通管制官に使用される規則に異を唱え、裁判に訴えて勝訴した過去がある。彼は今後、裁判所に諮問することを州政府に求めると語った。
 無所属自由党のテリー・マーサー上院議員も、連邦政府が最高裁に諮問しないなら、絶望的な病状にある患者は、医師に幇助され安楽死する権利があるかどうかを裁判所に求めることで「地獄(筆者注※“hell”はswearwordにあたり、滅多に口にしない)を通り抜ける」ことになり、破産へと向かうことになるだろうと警告した。
 保守党のクロード・カリニャン上院幹事長も、苦痛でひどく苦しんでいる患者に長期間かつ高額の法廷闘争を強いることは「人道に反している」と批判した。
「明らかに、この法案には問題がある。」

 だがジョディ・ウィルソン=レイボールド法務大臣は、法案を最高裁に諮問することを頑なに拒否した。そして16日にジェーン・フィルポット厚生大臣との共同声明において、C-14号法案の合憲性を強調した。
「法案は、医師に幇助され死ぬことを希望する人々の権利と、社会的弱者を保護することの適切なバランスが保たれている。」
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安楽死幇助法案、下院へ返付:ピンポンゲームは終わるのか [人権]

 安楽死幇助法案(C-14号法案)は、裁判所が要求した6月6日の期限をすでに過ぎたが、先週上院で可決されず、死が予期される患者に限定した条項を削除するなどの修正を加え、14日か15日に下院に返付される。
 下院が上院の修正の全てを承認すれば法案は成立するが、下院が修正の一部を承認しなければ法案は再び上院に送付される。衆議院の優越が明記されている日本と異なり、カナダでは行き詰まりを打開する規定がないため、理論上は、両院が合意するまでいつまでも法案が両院を行き来するピンポンゲームが続くことがありえる。

 期限に間に合わせるため、下院で十分な審議もせず法案を急いで通過させたトルドー首相は、「選挙されない上院は、選挙された下院に従うべきだ」と言うが、事態を甘く見すぎたかもしれない。それでも上院議員たちの中には、終わりのないピンポンゲームにけりをつけるため、この次は下院の決議を尊重しようという動きが見られる。
 無所属自由党のグラント・ミッチェル上院議員は次のように述べ、下院へ歩み寄る意向を示唆した。
「これから何が起こるのか我々には正確にわかっているわけではないが、我々にわかっていることは、上院議員は選ばれていないが下院議員は選ばれているという事実である。」
 無所属自由党のモビナ・ジャッファー上院議員も、下院に敵対するつもりはないと弁明した。
「私はこれを、上院と下院の戦いだとは考えていない。我々は国民のため、ともに働こうと考えている。」
 彼女は、下院は上院の修正を全て却下するとは予想していない。
「私は、非常に思慮深い議論が起こると見ている。」
 無所属自由党のジョゼフ・デイ上院議員は、上院が下院に法案を二度以上返付した最後の例として、2006年の連邦責任法を挙げた。それは当初150個所の修正を受け、そのうち七・八十個所についての同意を得た。
「それには時間がかかる。そこで妥協が必要になる。そこでは、常に。」
 保守党のクロード・カリニャン上院幹事長は、修正された法案が下院にメッセージを送ると述べた。
「私は、下院に送るメッセージは非常に明白だと考える。」

 上院と下院が修正について合意に達しない場合、滅多に召集されることのない両院協議会に持ち込まれることがある。上下両院はこれまで非公式に談合することを好まなかったので、それは1947年以降召集されなかった。
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安楽死幇助法案、期限内の成立は絶望的:明日からグレーゾーンに [人権]

 カナダは現在、6月6日の夕刻である。連邦最高裁は2015年2月6日、医師の幇助による安楽死を禁止した刑法を違憲と判断して、1年以内の法制化を要請し、後に期限を6月6日に延長した。だがC-14号法案は、「エルボーゲート事件」など野党の妨害や首相のサミット出席などにより滞り、下院を5月31日にようやく通過し上院に回付されたばかりであり、期限内の成立は絶望視されている。
 ジェーン・フィルポット厚生大臣は先週、「我々は、6月6日の最終期限に間に合わない危機にさらされている」と述べ、すみやかな法案成立を要請した。だが法案は、期限内の成立を急いだせいか、下院では十分審議されず、修正もされなかった。しかし上院では「法案は憲法に則っていない」、「苦しんではいるが病状が終末期でない人々が除外されている」、「安楽死にはより厳格な基準が必要だ」、「安楽死幇助を望まない医師への保護が盛り込まれていない」などの異論が噴出し、すみやかな可決は望むべくもない。
 「無所属自由党」のジム・カウアン上院幹事長は、今こそ上院の必要性をアピールするときであり、遅延戦術や議事妨害はせずまじめに取り組むと語った。
「もしも我々が、政府が6日までの成立を望んでいるから、ただ可決して通過させればいいのだと言うなら、人々は何のために上院があるのだと言うだろう。我々は我々の仕事をする必要がある。」

 法案は、上院の憲法問題委員会で審議された。だが委員の内わけは保守党7、無所属自由党4、無所属1となっており、下院を通過した法案をただ通過させるだけの無意味な存在と考えられている上院には珍しく、激しい議論を巻き起こした。さらに本会議は、保守党42、無所属自由党21、無所属23、欠員19(定数105)という構成になっており、各党が「良心の問題」だとして党議拘束をかけていないことから、結果は予想ができない。自由党は2014年1月、幹部会から全ての上院議員を除名し無所属としたから、ピーター・ハーダー上院院内総務を別にすれば自由党政権とはつながりがない。さらにこのとき、数名の保守党上院議員が離党し無所属となっている。
 法案は、理論的には今週上院を通過し成立できるが、修正された場合は、下院に返付される。上院は内閣不信任と予算関連法案を取り扱わないことを別にすれば、建前上は下院と同等の権限を有することになっているものの、実際には下院の決議を覆すことは稀で、ここ70年間でわずか8度しかない。下院への返付は2012年以降はなく、2009年の例では、下院は修正に単に同意しただけだった。下院が上院の修正に同意しない場合は、両院協議会で協議されることになるが、1940年代を最後に行われていない。ここでも合意されない場合、カナダには行き詰まりを打開する規定がない。日本なら衆議院の優越が憲法に明記され、出席議員の3分の2で再可決・成立できるが、英連邦諸国は慣習法で規定がないため、法案が上下両院へ何度も回付されたり返付されたりを、両院が納得するまで繰り返すことになる。
 カウアン上院幹事長は、C-14号法案には瑕疵があると考えており、悪法を作るより法がない方がましだという信念に基づき、政府が期限内成立を要請しているにもかかわらず、十分な審議と修正が必要と確信している。
「法案が修正されないかぎり、私は賛成票を投じない。」

 法案が期限内に成立しなければ、終末期医療にたずさわる医師たちは、7日以降は禁止も合法化もされていないグレーゾーンに突入する。治療法がなく苦痛にあえいでいる終末期の患者から、安楽死幇助を求められたらどうするのかという難問を突きつけられることになりかねない。だがトロントのマイケル・ガロン病院に勤めるケビン・ワーケンティン医師は、終末期医療に14年間従事して、安楽死幇助を求められたことは5回しかなかったと語り、安楽死幇助を求める患者が7日以降に殺到するわけではないだろうと予測した。
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連邦政府、ニカブ訴訟に上告せず [人権]

 ジョディ・ウィルソン=レイボルド法務大臣は11月17日、ニカブ訴訟について連邦政府は上告しないと発表した。
「我々が多様性を受け入れて、すべてのカナダ人の基本的自由を尊重する観点を、我々の政権はとる。そして、これは我々がそれらの価値観を保護することを確かなものとする仕事の始まりである。」
 市民権宣誓式において、イスラム教徒の女性がしばしばニカブを着用していたのに対し、保守党政権は2011年に着用禁止法を制定した。ところがパキスタン出身のズネラ・イシャークさんが、違憲立法だとして訴えを起こし、2月の一審と9月の二審で勝訴したため、保守党政権は10月の総選挙で再選されれば上告すると公言していたが、敗北し下野した。
 ニカブ論争は総選挙の争点にもなり、左派の自由党と新民主党はニカブ禁止に反対を表明したが、世論調査は国民の多くが禁止に同意することを示した。ケベック州における支持基盤が、自由党がアングロフォン地域だったのに対し、新民主党はフランコフォン地域だったため、ニカブ論争は自由党には大きなダメージにはならなかったが、新民主党にとっては支持率を急降下させる原因となった。なお二審判決を受けて10月の総選挙は、ニカブ等を被ったまま投票する権利が認められたため、カボチャやスーパーの紙袋などを被って投票するパフォーマーの姿が全国的に見受けられた。
 なお市民権宣誓式出席に先立ち、個人を識別するため担当者に顔を露出する行為は、いまだ要求されたままである。
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【世論調査】市民権宣誓式におけるニカブ着用に圧倒的多数が反対 [人権]

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 CBCが9月17日と18日に1万3930人を対象に実施した世論調査は、圧倒的多数が市民権宣誓式におけるニカブ着用に反対することを示した。
 「市民権宣誓式において、宗教的な理由で顔を覆うことは許されるべきか」という質問に対し、賛成は19%、反対は72%と、圧倒的に反対が多かった。
 支持政党別に見ると、反対はケベック連合支持者が96%で最も多く、次が保守党支持者で92%だった。それから新民主党支持者は62%、自由党支持者は57%、緑の党支持者は51%で、支持政党に関係なく、連邦議会に議席を持つ政党の支持者はいずれも反対が多数を占めている。
 賛成は、緑の党支持者で31%、新民主党支持者で29%、自由党支持者で28%だった。

 2014年ケベック州議会総選挙でケベック党が敗北した理由は価値憲章だと、多くの批評家は指摘するが、宗教問題は依然としてケベックで論争の的であり続けている。各種世論調査は、カナダで最も保守的な地域は中西部で、最も革新的な地域はケベックであることを示すが、ニカブ容認に関しては、地域別に見るとケベックが際立って反対が多く90%、それから中西部72%、東部68%、オンタリオ66%、ブリティッシュコロンビア58%と続く。
 トロント大学で政治学を教えるクリストファー・コックレイン教授は「これは保守党がケベック進出をうかがう数少ない道の一つだ」と解説した。ニカブ容認について、保守党とケベック連合が明確に反対してきたのに対し、左派の自由党と新民主党は、難しい立場にいると彼は指摘する。
「新民主党と自由党がニカブ禁止あるいは規制を表明すれば、相当な支持を失うことになるだろう。ケベックで新民主党と自由党に大きくリードされている保守党にとって、この問題は彼らへの支持を奪いケベックに進出する、絶好の機会である。」


図:ヘジャブの普及度。
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在外市民の選挙権を否定:ドナルド・サザーランド氏、投票できず [人権]

 オンタリオ控訴裁判所は7月20日、外国に5年以上滞在したカナダ市民の選挙権を認めたオンタリオ高裁の判決を覆した。これにより、近い将来実施される連邦議会総選挙において、ドナルド・サザーランド氏を含む150万人ものカナダ市民が投票できないことになった。

 5年以上滞在したカナダ市民の選挙権が制限されたのは、マルローニ政権時の1993年である。このときは、休暇のため一時的に帰国するだけでも選挙権を回復できた。またこのときの改正は、裁判官・精神障害者・更生施設に2年未満収容されている者への制限を解除した。2007年には選挙管理委員会が、一時帰国による選挙権回復を見直し、居住していることを要件とした。
 2012年、ニューヨークに暮らすカナダ市民ジリアン・フランクさんとジェイミー・デュオンさんは、投票する権利を求めて訴えを起こした。オンタリオ高裁のマイケル・ペニー判事は2014年、居住ではなく市民権が選挙権の必要条件であるため、外国に滞在したカナダ市民の選挙権を制限する選挙法は違憲だと判断した。

 オンタリオ控訴裁は、2対1で高裁判決を覆した。ジョージ・ストラシー首席判事は「国政選挙において、実質的に影響のない非居住者に投票権を認めることにより、カナダで日々現実の生活を過ごしている人々に影響を及ぼす権限を与えることは、不当である」「カナダに居住せず、カナダの法律を受け入れる必要がない人々が投票できるならば、我々の民主主義の合法性をむしばむことになる」と述べ、さらに原告の2人について「彼ら自身の要求により、カナダとの関係を自発的に断ち切った」と定義した。彼はまた5年の制限について、イギリスの15年、オーストラリアの6年、ニュージーランドの3年と比較し「理にかなった、最小限の制限」と判断した。

 判決を受けてフランクさんは「まるで自分が二級市民になったように感じた」と語った。
 ヨーク大学で政治学を教えるデニス・ピロン教授は、グローバル化した社会では、市民権についての考えも変化しうると指摘した。
「民主主義の本質は、自分の生活に影響を及ぼすことを決定する能力が、人々にあることだと私は考える。」
 彼はまた、トロント市議会が投票権を定住者に与える法案を可決した例を挙げ、問題は市民権のみにとどまらず、法律に影響を受ける全ての住民にまで拡大する可能性に言及した。
「この論争はひょっとすると、誰が投票するにふさわしいかという、より大規模な論争をひき起こすかもしれない。」

 保守党政権は2014年1月の高裁判決を受けて、12月にようやく市民投票法案(C-50号法案)を上程した。政府は在外カナダ市民が投票可能にするための法案だと主張したが、それには国外在住であるにもかかわらず、全ての選挙ごとに市民権の証明と選挙区登録を必要とした。カナダ在住市民はいつでも登録できるのに、在外市民は必ず選挙公示後に、しかも郵送でしか登録できず、法が規定する最低選挙期間が37日で、50日を超えることが稀であると考えると、郵便物が往復している間に投票日が過ぎてしまうことも考えられる。さらに選挙区を決定するため、カナダにおける最後の住所地の証明が必要だが、パスポートには住所の記載がない。この法案は「市民投票阻止法案」と呼ばれ強い批判を受けたが、可決されないまま第41回連邦議会の第2セッションが夏休みに入り、近く解散・総選挙が実施されそうなため、廃案になる見込みである。
 2011年に実施された連邦議会総選挙では、国外に5年未満滞在する市民6000人、国外に駐留するカナダ兵2万6000人、受刑者1万5700人などによる特別投票は、かなり多くが自由党に投じられた。グレーター・トロントの選挙区43のうち、特別投票で自由党候補が最も多くの票を獲得した選挙区は34にのぼった。そこで保守党政権は、在外市民の投票を阻止する必要があるのではないかと噂されている。フランクさんは、政府はなぜこの法案を是が非でも可決させず廃案にしたのか、理解に苦しむと語った。
 なおオンタリオ控訴裁のうち、高裁判決を退けたジョージ・ストラシー判事とデビッド・ブラウン判事の2人はハーパー首相(保守党)に指名され、高裁判決に同意したジョン・ラスキン判事はクレチエン首相(自由党)に指名されている。

 カリフォリニア州在住の俳優ドナルド・サザーランド氏は、7月29日グローブ&メイル紙に手紙を送った。彼は1935年ニューブランズウィック州セントジョンに生まれ、2010年バンクーバー・オリンピックではオリンピック旗を持って入場した。

「私は、カナダ人である。しかし、以前ほどそうではない。私の名は、ドナルド・サザーランド。妻の名は、フランシーヌ・ラセットである。我々は、カナダ人である。我々は、パスポートを一つだけ持っている。カナダのパスポート、それだけだ。国境に行くと、なぜアメリカの市民権を取得しないのかときかれる。アメリカ市民になっても、そのままカナダ人でいられると。二重国籍が可能なのだと。だが私は、『ノー』と言う。私はカナダ人だ。
可能なかぎり、我々はカナダに滞在している。我々の家は、ここにある。私が『家』とか『ここ』とか言うとき、いまだによく考える必要がある。私はうっかり“eh?”と言わないよう、気をつけなければならない。40年ほど前の1978年、カナダ政府は私にオーダー・オブ・カナダ勲章を授与した。カナダ総督は、私に総督賞を授与した。私は、トロントのウォーク・オブ・フェームに名を連ねている。私のユーモアセンスは、カナダ人のものである。しかし、私は投票できない。
常にここに暮らしていなければ、投票することはできない。国外で暮らすアメリカ人は、投票できる。市民だから、彼らは投票することができるのだ! だが私にはそれができない。なぜか。私が市民でないからか。カナダで起きることが私には重要でないからか。私がどの国に誇りを抱いているか、私にインタビューした記者たちに尋ねてみるがいい。彼らは言うだろう。私はカナダ人だと。しかし私は国外在住者で、ハーパー政権は国外在住者を選挙に参加させない。
ル・モンド紙の社説を読んだだろうか。カナダはもはやカナダではないと、1ページかけて語っている。美しい、平和を希求するカナダ、人々がかつて知っていたカナダ、誇りにしていたカナダは、もはやカナダではないのだと。記事は、誰がカナダ人なのかについて詳述している。なんと嘆かわしいことだろう。そしてこの新しい『カナダ』、本当のカナダの地を占めるこのカナダの政府は、世界中のカナダ市民に投票権を認めない法律を躍起になって推進した。なぜか。それは、世界の国々が希求する価値を反映する政権に、我々が投票によって戻してしまうかもしれないと、彼らが心配しているからかもしれない。」
                              ドナルド・サザーランド、カナダ人
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保守系議員が初めてプライド・パレードに参加 [人権]

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 トロントで6月28日、LGBT(レズビア・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)のためのプライド・パレードが行われた。歌手のシンディ・ローパーさん、エルトン・ジョンさんの配偶者であるトロント出身の映画監督デビッド・ファーニッシュさんの姿も見られた。政界からは自由党のトルドー党首、新民主党のマルケア党首、レズビアンを公言したキャスリン・ウィン首相(オンタリオ自由党)らが参加したが、今年は保守系政治家として史上初めて、オンタリオ進歩保守党のパトリック・ブラウン党首ら数名の議員と、トロントのジョン・トーリー市長(オンタリオ進歩保守党元党首)も参加した。特にトーリー市長の参加は、同じ保守系でも前任のロブ・フォード市長がこの祭を冷遇したこととは対照的だった。
 だが、保守党支持者でCFRAラジオホストのニック・バンダーグラークト氏は、パレードに参加した保守系政治家たちをフェイスブックで酷評した。
「これらの人々は、私のようにパレードを装ったポルノを快く思わない人々を代弁すべき保守系政治家ではないのか。彼らは、自分が見つからないとでも考えたのだろうか。もし私に権限があるなら、トーリー市長もブラウン党首も、二人ともビルから追い出し、二度と中には入れないだろう。」
 バンダーグラークト氏は後に、それは興奮して言ったことであり、「ビル」とは進歩保守党組織を意味する比喩であって、また自分にはそのような権限はないと弁明したが、パレードに参加したジャック・マクラーレン州議とリサ・マクラウド州議を非難したことは撤回しないと語った。
 彼はまた、28日の番組でこう述べた。
「私は、まだ得ていない権利のために戦おうとするゲイたちの誰にでも挑戦する。彼らは結婚もでき、養子縁組もでき、裁判官や教師や何にでもなることができるのに、このうえ何を求めて戦うというのか。彼らはパレードすることができるが、裸で歩き回るような真似は止めろ。私は8人の子の親だが、私はパレードの中には行かない。」
 マクラーレン州議は、バンダーグラークト氏に失望したと語った。
「我々は、ある人々が思うほど偏狭ではない。我々は常に、人々を気にかけている。我々のコミュニティで人々を代弁する、それが我々の仕事だ。私は、同性愛者や性転換者とトラブルになったことは一度もない。彼らはカナダ人であり、納税者であるから、彼らにはそれ以外の人々と同様の権利がある。」
 マクラウド州議は、偏狭さと保守主義は違うと述べた。
「我が党はすでに、曲がり角を曲がったのだ。それが気に入らない人もいるかもしれない。でも私は、価値観を共有しない人々にへつらうつもりはない。私は、私が他者を憎むことを望む人々に迎合するつもりはない。もし私が票を失うなら、それは自分が正しいということだ。」
 彼女は、バンダーグラークト氏の番組にはもう出ないと断言した。


写真:「LBGTory」の旗を掲げてプライド・パレードに参加するパトリック・ブラウン党首(右から2人目)。後ろに「PCトーリー 我々はあなたの側に立つ」というプラカードがあることに注意。
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バーナビーの慰安婦像設置は「当面保留」 [人権]

http://www.sankei.com/world/news/150418/wor1504180012-n1.html
 カナダ西部のブリティッシュコロンビア州バーナビー市に、韓国の姉妹都市や現地の韓国系住民らが慰安婦像の設置を提案していた問題で、同市のコーリガン市長が像設置の判断を当面保留する決断をしたことが分かった。地元日系住民らの反対が奏功した形だ。
 コーリガン市長は15日に発表した声明で、「(韓国側からの)提案を検討する初期段階で、情報収集したり、住民らの意見を聞いたりした結果、地元の日系カナダ人社会などにおいて懸念が生じる可能性があることに気づいた」とし、現状のままでは設置計画を進めないことを表明した。今後については、「日系と韓国系の双方が納得する提案がなされれば、そのとき検討する」と含みを持たせた。
 韓国側からの提案が表面化して以降、日系住民側は直筆の反対署名を少なくとも500人分以上集め、市に提出。このほか、インターネットで1万3千人分以上の反対署名が集まった。市や公園管理当局に現地の日系人らが反対理由を直接説明したほか、米国の日系人らも反対の手紙を送るなどしていた。
韓国側の提案は、バンクーバー市との境にある森林公園「セントラルパーク」内にある朝鮮戦争戦没者記念像の近くに慰安婦像を設置するもの。2月には除幕式を行い姉妹都市の華城市の市長も参加する計画だったとされる。碑文に「韓国の女性が日本軍に強制連行され、性奴隷にされた」などと記されることも提案されていたという。保留になったことで韓国側の働きかけが強まる可能性もある。
 一方、声明には「最近、日系社会と韓国系社会が和解と協力を促進するための対話への意思を示している」とし、双方が納得する提案があれば、改めて検討するとしている。ただ実際にそうした動きは見られないため、「懐柔策」との疑念を持つ日系住民もいる。
 カナダで慰安婦像設置の動きが浮上したのはバーナビー市が初めて。自民党の「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」でも取り上げられた。
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慰安婦像建立カナダに飛び火 韓国ファソン市との姉妹提携で [人権]

http://www.saopauloshimbun.com/index.php/conteudo/show/id/20894/cat/105
 今年は戦後70年。節目の年なのだが、日本は中国とは尖閣諸島問題、韓国とは慰安婦問題でぎくしゃくしており、修復が進まない。韓国は民間団体が韓国国内ばかりではなく、米国各地に慰安婦像を建立し、日本だけでなく米国国内でも議論を呼んでいる。そんな折、今度はカナダのブリティシュ・コロンビア州バーナビー市と姉妹都市となっている韓国の京畿道華城市(ファソン市)が、バーナビー市に慰安婦少女像を建立するという話が広まり、近隣のバンクーバー地域の日系コロニアも困惑している。この慰安婦像の建立は北米の韓国系社会が進めているのだが、ブラジルも対岸の火事と傍観するわけにはいかない。サンパウロには韓国系コロニアがあり、いつ飛び火するか分からない。
 韓国の新聞は既に建立が本決まりになったと報道しているが、同州のバンクーバー市の邦字紙・バンクーバー新報がバーナビー市のデレク・コリガン市長に独占インタビューしたところ、「慰安婦像建立は未定」と発言。同紙の津田佐江子社長は、「インターネット上であたかも建立が本決まりになったことが流布されているので、カナダ・バンクーバーでも日系コミュニティが大変困惑、混乱しており、市長に直接インタビューした」と語っている。
 バンクーバー新報の報道によると、バーナビー市と姉妹都市を結んでいるファソン市から「慰安婦問題を忘れないためにバーナビー市セントラルパークにある朝鮮戦争戦没者記念碑の近くに慰安婦像を建立したい」との申し入れがあったという。
  コリガン市長は、ファソン市に対して、提案を検討すると示唆したという。コリガン市長は、「その時はこの件について様々な問題があることを知らなかった」 とインタビューに答えている。地元の日系人からコリガン市長に電話がかかってきて初めてこの件が大きな問題を内包していることを知り、日系コロニアの人々 の反応に驚いた、と発言している。
 コリガン市長は、米国に建立された同種の像の建設で社会に大きな議論を引き起こしてい ることを知り、「姉妹都市の要請を受けることも、こうして議論していくことも我々のコミュニティの調和のためのもので、さらなる衝突を引き起こすことは市 議会の本意ではない」と説明している。
 同市では今後、公開での意見交換会などを開く予定はないが、関係者による会議を開いたり、広く人々の声を聞きたいとしており、今後の成り行きが注目される。
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ケベック連合が新民主党の批判広告:宣誓式でのニカブ着用容認判決、政局に [人権]

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 連邦政府が2011年に制定した、市民権の宣誓式でニカブを脱ぐことを義務づけた法律に対し、イスラム教徒の女性が訴えていた問題で、連邦裁判所は2月6日、ニカブ着用を認める判決を下した。ハーパー首相は控訴の意向を述べたが、総選挙が近づいているせいかこれに各党が激しく反応し、政局になりそうな勢いを見せている。
 ハーパー首相は12日、以下のように述べた。
「カナダに加わろうとするまさにそのとき、自分のアイデンティティを隠す人がいたら、大多数のカナダ人は不快に思うだろう。それは、カナダ人にとって容認できない。」
 だが自由党のトルドー党首は、保守党は選挙の票を目当てにして、カナダ人のイスラム教徒への恐れに迎合していると批判した。また新民主党のマルケア党首は、「イスラム教徒はしばしば政治的スケープゴートにされる。私は心を痛めている」と述べた。
 するとケベック連合のマリオ・ボリュー党首は、マルケア党首の発言に過敏に反応した。彼はマルケア党首を「マルチカルチャー原理主義」「文化相対主義で世間を騒がせている」と評した。さらにケベック連合は、新民主党を批判する広告まで作り、25日にリリースした。それは「マルケア氏はニカブ着用を容認した。新民主党に投票する人は顔を隠すべきだろうか」と書かれた広告の下に、黒いニカブの眼窩を通して下院議場を見た写真が掲載されている。
 ケベック連合は結党以来、常にケベックの第一党だったが、2011年総選挙で新民主党に多くの議席を奪われ、わずか4議席の惨敗を喫した。ボリュー党首に代わってからも、依然として低支持率にあえいでいる。そこでケベック連合は、失地回復のためケベックの最大勢力である新民主党をターゲットにしたのだろう。
 ボリュー党首は「市民になるときは、投票するときと同じく、ヘジャブは脱ぐべきだと私は思う」と語った。
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カナダ最高裁が安楽死を容認、21年前の判決覆す [人権]

 連邦最高裁は2月6日、治療法がなく苦しんでいる成人の患者について、医師の幇助による安楽死を認める判決を下すとともに、連邦政府と州政府に12か月以内の法制化を命じた。脊柱管狭窄症を患ったケイ・カーターさん(2010年スイスで安楽死)の遺族と、筋萎縮性側索硬化症(ALS/ルー・ゲーリック病ともいう)を患ったグロリア・テイラーさん(2012年病死)の遺族およびブリティッシュコロンビア市民自由協会が提訴していた。

 ALSを患い余命2年と宣告されたスー・ロドリゲスさんは、医師に致死性の薬物を用意してもらい、自分で注射できる力が残っている間に自殺したいとして、1992年自殺幇助を認める訴えを起こした。だが刑法第224条(b)は「人を幇助して自殺させた者は、14年以下の拘禁刑に処す」と規定しており、連邦最高裁は翌年、訴えを5対4で退けた。その後彼女の病状は自殺不能なまでに悪化したが、匿名の医師の幇助により1994年に安楽死した。その医師は起訴を免れた。

 連邦最高裁はこの日、9対0の全員一致で21年前の判決を覆した。
「刑法が定めた全面的禁止は、弱者の命を保護するためという理由で、重篤かつ医学的に回復不能な状態に苦しんでいる、判断力がありかつ同意のある成人が、いかに生きあるいは死ぬかという重大な決定をすることを阻止しており、行き過ぎであった。」
「刑法第224条(b)は、1982年憲法第7条が規定する『生命、自由及び身体の安全の権利』の3つの基本的人権に対する侵害であり、自由で民主的な社会において正当化できない。」
「生命の権利は、『死なない権利』に限定されるものではない。」

 ブリティッシュコロンビア市民自由協会の訴訟責任者グレイス・パスティーンさんは、喜びのコメントを発表した。
「これは人権の、そして人生の終わりに対する思いやりの勝利である。この判決が意味するものは、人生の終わりにおいて耐えられないほど苦しんでいるカナダ人には選択肢があるということである。カナダは今日、医師の幇助によって合法的に安楽死できる国のリストに加わった。現在ベルギー、ルクセンブルク、スイス、オランダ、オレゴン州、ワシントン州、ニューメキシコ州、モンタナ州、バーモント州が、これを認めている。」
 スー・ロドリゲスさんを支援した、新民主党のスベンド・ロビンソン元下院議員は、こう述懐した。
「スーはきっと喜んでいるだろう。彼女は残酷な法を変えるため、勇気と尊厳をもって戦った。裁判所に行ったとき、我々はこれが長い旅の最初の一歩だと思った。まさか20年以上もかかるとは思わなかった。しかし我々は今日、ようやくここに辿り着いた。」
 カナダの価値研究所のチャールズ・マクベティ理事長は、医療の立場から懸念を表明した。
「生命は、それを殺す医師を許すにはあまりに貴い。これは、医師が誓う『依頼されても人を殺す薬を与えない』とする『ヒポクラテスの誓い』に反している。人々が生きるために戦うよりも、人生を終わらせることに同意させる圧力と戦わなければならなくなると思うのは、悲しいことだ。」
 キャンペーン・ライフ連合のジム・ヒューズ理事長は、判決を批判した。
「どんな生きざまであれ、他者を殺す法的権利を人に与えることは、決して許してはならない。この判決は、障害者・高齢者や末期的病状の患者たちが、『尊厳死』の大義の旗の下で虐待され殺されるリスクに潜在的に晒されることを意味する。これは容認できない。」
 政治改革行動協会のマーク・ペニンガ副理事は、判決が後世に与える影響について語った。
「今回の判決により、自主的な選択権は、人命それ自体より価値があることになった。これは社会的弱者にとって、破壊的な結果をもたらすだろう。」
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