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保守党党首にオトゥール:社会保守主義、存在感を示す [保守党]

 保守党党首選の集計結果が8月24日に確定し、エリン・オトゥール元退役軍人大臣が当選した。
 投票は21日に締め切られ、ただちに開票作業に入ったが、封筒が前回党首選より小さかったため、集計機が中の投票用紙を大量に噛んでしまい、手作業の集計となったことから、23日夕方に発表する予定が24日早朝にずれ込んだ。

 事前の予想では、マッケイ候補がリードするのをオトゥール候補が追う展開で、ルイス候補とスローン候補は泡沫候補と見られていたが、予想に反し前者3名の接戦となった。今回は保守党の根拠地である西部から候補がなく、マッケイ候補は東部、あとの3人はオンタリオ出身だった。またマッケイ候補だけがレッド・トーリー(保守左派)だったのに対し、あとの3人はブルー・トーリー(保守右派)だった。ゆえにマッケイ候補は、第1回投票で40%の獲得を目指していた。回が進むごとに最下位候補を足切りする方式なので、脱落した候補の票が自分以外に取り込まれる可能性が高いからだ。だが第1回投票の実際の得票は、マッケイ候補30.3%、オトゥール候補29.4%、ルイス候補24.7%、スローン候補15.6%となった。マッケイ候補は東部では強さを発揮したが、アルバータとケベックではオトゥール候補に大差をつけられた。
 スローン候補脱落を受けて、第2回投票で彼の票の3分の2は同じ社会保守主義のルイス候補に流れた。だが21%はオトゥール候補に流れたので、票数ではルイス候補35.2%、オトゥール候補33.2%、マッケイ候補31.6%となり、あっと驚くルイスの首位となったが、ポイント換算するとオトゥール候補35.2%、マッケイ候補34.8%、ルイス候補30.0%となり、オトゥール候補が首位となった。
 ルイス候補が脱落したが、彼女の支持者の3分の1は第3候補を選択していなかったため、第3回投票では無効票となった。残りの人々の5分の4は右派のオトゥール候補を第3候補としたため、オトゥール候補57.0%、マッケイ候補43.0%でオトゥール候補の当選が決まった。

 前回党首選では、本命視されたベルニエ候補があまりに斬新な改革案をぶち挙げたため、社会保守主義の票が知名度の低いシーア候補に集まり、ダークホースを当選させた。最終的にシーア候補を支持したトロスト候補やルミュー候補らは、今回は同じ社会保守主義のスローン候補やルイス候補を支持し、彼らが脱落すると最終的にオトゥール候補支持に回り、当選の原動力となった。2018年のオンタリオ進歩保守党党首選でも、社会保守主義はターニャ・グラニック・アレン候補を支持し、彼女が脱落するとダグ・フォード候補支持に回って、レッド・トーリのクリスティン・エリオット候補を破っている。社会保守主義は、今回党首選でも底力を見せつける結果となった。なお、カナダ同盟と進歩保守党が2003年に合併して成立したカナダ保守党の党首選は、全て右派が勝利しており、左派または進歩保守党出身者は一度も勝利していない。

 オトゥール候補は党首選に勝つため、「カナダを取り戻す」などの右翼的主張を繰り返した。だがカールトン大学で政治学を教えるジョナサン・モロイ教授は、総選挙に勝つには幅広い支持が必要で、党首選とは事情が違うと指摘した。
「スローン候補とルイス候補は、社会的保守主義陣営の反発力を示した。それでも彼らは、党内ではおそらく少数派で、一般市民の間では確実に少数派だ。」
「ハーパーは、社会保守主義の問題を党内で封印し、彼らを相手にしないことで効果的に党を率いた。シーアも、同じようにしようと努めた。だが世論は予想以上に進歩し、LGBTの問題を避けて通ることは彼には許されなかったが、社会保守主義の後押しで当選した彼には、社会保守主義を無視することが難しかった。」
 当選したオトゥール氏は、幅広い勢力の結集を訴えた。
「あなたが黒人だろうが白人だろうがブラウンだろうが、いかなる人種であろうが信条であろうが、LGBTだろうが異性愛者であろうが、先住民だろうが3週前の移民だろうが3代前の移民だろうが、うまくやっていようが何とかやっていようが、礼拝を金曜にしようが土曜にしようが日曜日にしようが一切しまいが、あなたはカナダの重要な一部であり、カナダ保守党に居場所がある。」
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