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シン党首、他議員を「差別主義者」と呼び退場させられる [人権]

 下院で6月17日、新民主党のジャグミート・シン党首が提出した「連邦警察(RCMP)には制度的人種差別が存在すると認める」動議は、賛成多数で可決されたが、彼が目指した全会一致ではなく、ケベック連合のアラン・テリエン議員一人だけが賛成しなかった。
 シン党首がテリエン議員を「差別主義者」と言うと、ケベック連合のクロード・ドベルフェーユ下院院内総務が立ち上がり、反論した。
「今提出された動議に賛成しないという理由で、他の議員を公党の党首が差別主義者呼ばわりしていいとは思わない。ラ・プレーリー選挙区の議員を、新民主党は臆面もなしに差別主義者として扱っている。本院において到底受け容れがたい。」
 キャロル・ヒューズ副議長は「私には聞こえなかった」と言ったが、シン党首は「本当にそう言った。私は彼を差別主義者と呼んだし、そう確信している」と主張した。ヒューズ副議長はシン党首に謝罪するよう依頼したが、拒否されたため、アンソニー・ロタ議長はシン党首に、その日議場から退場するよう命じた。

 議場を出たシン党首は、記者会見で次のように述べた。
「一人の議員は恥知らずなことに、単にノーと言わず大声でノーと言い、このような手振りをした。」
 彼はそう言って、右手で蝿を払うかのような手振りをした。
「それを見て私は、長い年月の間何があったのかを、確かに知った。人々は人種差別を、制度的人種差別を、先住民が殺されるのを、黒人が暴力の被害に遭い殺されるのを、大したことだと思っていなかったのだ。私はまさにその瞬間、人種差別の正体を見た。」
「それはあたかも、人々が体験する現実を誰かが排斥するときに似ている。それを見たとき、私には憤りがあった。」
 議員は院内での発言に関し院外で責任を問われないが、院外でも同じ主張をするかと問われると、彼は次のように述べた。
「はい。私は、明確にそう言った。私は、明確にそれを繰り返す。」
「はい、連邦警察には制度的人種差別があると認め、問題を根本的に是正する動議に反対する人は、人種差別主義者である。」

 ケベック連合のドベルフェーユ下院院内総務もこの日、声明を発表した。
「先住民と少数民族に対する差別は重大な問題だが、下院公安委員会は連邦警察における制度的人種差別について調査中である。調査結果が公表される前に、何かを強要するのは不適切だと我々は考える。我々は、議会のプロセスを尊重したい。」
「新民主党党首は、ケベック連合下院幹事長に根拠のない侮辱を加えた。彼はただちに謝罪すべきである。」
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カナダに「制度的人種差別」はあるか [人権]

 ミネアポリスでジョージ・フロイド氏が5月25日、警官の暴力によって死亡する事件が起きると、行政による「制度的人種差別」に憤る人々が抗議のデモを行い、一部は暴徒と化した。カナダでは3月10日アルバータ州フォートマクマレーで、アサバスカ・チペワイアン・ファーストネーションのアラン・アダム首長が拘束される際、警察に顔面を激しく殴打される様子が動画として公表された。
 連邦警察(RCMP)のブレンダ・ラッキ長官は6月12日、カナダの行政にも人種差別はあり、その解消に取り組んできたと語ったが、後に発言を修正した。
「私は、我が国の行政機関に人種差別があると認めたが、制度的人種差別が連邦警察に存在するとは言っていない。」
 これを受けてリリアン・ディック上院議員(進歩上院の会)は15日、彼女の辞任または解任を要求した。
「彼女の最近の声明は、制度的人種差別が何であるかのかを、完全に理解していないことを示している。連邦警察が制度的人種差別を除去する方法を心に描き、実行することは彼女にはできない。制度的人種差別が、連邦警察に存在するかどうかについての彼女の不可解な転換は、リーダーとして逆説的であり、受け入れがたい。」
 なおディック議員は、クリー・ゴードン・ファーストネーションに属している。

 アバカス・データ社が6月5日から10日まで、18歳以上のカナダ人1750人を対象に実施した世論調査は、制度的人種差別はあると回答した人が61%、ないと回答した人が9%という結果を示した。
 レジェ・マーケティング社が6月5日から7日まで、18歳以上の1523人のカナダ人と1001人のアメリカ人を対象に実施したオンライン世論調査では、「以下の人々のうち誰を支持しますか」という設問に、カナダ人は、差別に抗議する人72%、警察39%、州政府33%、トランプ大統領9%と回答した。対照的にアメリカ人は、差別に抗議する人が63%と少ないのに対し、警察55%、州政府52%、トランプ大統領38%と、行政に対する支持が顕著に高かった。そこでカナダ人回答者に、市民と警察の関係はアメリカに比べて良いかと尋ねたところ、「良い」が77%、「ほぼ同じ」が15%、「悪い」が3%という結果になった。
 また、人種差別は行政において深刻な問題であると回答したカナダ人は、白人で48%だったのに対し、有色人種では61%だった。

 自由党は有色人種の間で強く支持されていて、その基盤であるオンタリオ・ケベック・ブリティッシュコロンビアはいずれも有色人種の多い地域である。有色人種が過半数を占める選挙区が全国で41あり、うち自由党は32議席を持っている。
 アバカス・データ社の統計は、有色人種の有権者の間で自由党支持者が52%、保守党支持者が22%、新民主党支持者が20%であることを示している。これが白人有権者になると、自由党の保守党に対する優位はわずか6ポイントに過ぎない。
 有色人種の有権者では、トルドー首相の支持率が53%なのに対し、不支持率は19%である。2019年秋の総選挙期間中、首相が教師時代に「アラビアン・ナイト」のパーティでブラックフェイスに塗った写真を暴露されたときが最も支持率が低く、43%だったことを思えば、劇的な改善だといえる。人々は首相を、新型コロナウィルス対策に頑張っていると好意的に評価しているようだ。
 今総選挙が実施されれば、自由党が過半数を容易に獲得することに疑いの余地はない。だが新型コロナが完全に制圧されたとは言えない現状において、総選挙を実施すれば、投票所に人々が殺到しクラスターを招きかねない。総選挙が実際に行われるときには、自由党の支持率は下がっていることが考えられる。そこで人種問題は、自由党が総選挙に勝利するための重要なファクターでありえる。

 トルドー首相は人種差別への抗議集会に参加し、膝を屈してこう語った。
「制度的人種差別はまさに、全国的な、警察を含む全ての行政機関の問題である。それは多様な背景を持つカナダ人たちが、世代を超えて直面してきた問題である。これはカナダ人が、我々のシステムには不公平があると認めた瞬間である。」
 対照的に、ケベック連合のイブ=フランソワ・ブランシェ党首は2日、カナダに制度的人種差別があることを否定した。
 ケベック州のフランソワ・ルゴー首相も、制度的人種差別を否定した。
「差別はいくぶん存在する。だが制度的人種差別というものはない。」
 ストックウェル・デイ元国際貿易大臣(元保守党)は2日、レギュラー出演していたCBCのニュース番組で、次のように述べた。
「我々は、カナダの制度が完全ではないと認めなければならない。そう、我々の周囲には少数の愚か者がいるが、カナダは人種差別国ではないし、大多数のカナダ人は人種差別主義者ではない。そして、常に改善される必要のある我々のシステムは、制度的に人種差別主義ではない。」
 彼はスポンサーの意向により、降板させられた。
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オトゥール議員の「カナダを取り戻す」が話題に [保守党]

 保守党党首選に立候補しているエリン・オトゥール議員は、6月10日にマニフェストを発表したが、スローガンの「カナダを取り戻す」(Take Canada back)が話題になっている。
 インターネットでは、様々な疑問や揶揄の声が挙がった。
「この国はあなたのものではない。」
「人種差別が問題になっているこの時期に、いったいカナダが誰に奪われたのか、はっきりさせてほしい。」
「カナダを取り戻すと言えるのは、先住民だけだ」
「エリン・オトゥールは、誰からカナダを取り戻すのか。ほかのカナダ人から?移民から?自由党から?左翼から?いったい彼は、カナダが誰に奪われたというのか?」
 またある人々は、それをトランプ大統領の「偉大なアメリカをもう一度」(Make America Great Again)と似たようなものだと考えた。作家のマリッサ・メルトン氏は2017年「トランプ氏の言葉は、それを人種差別的と捉えた人々の心には響かなかったが、別の集団の跋扈によって地位を奪われたと感じる人々の心には響いた」と語った。
 ハフィントン・ポスト紙は、オトゥール議員の事務所にスローガンの具体的意味について問い合わせたが、返答はないという。

 日本では2012年の総選挙で、安倍晋三総裁率いる自民党が「日本を取り戻す」のスローガンを掲げて圧勝している。
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