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シーク教徒の短剣着用を理由に州議会への入場を拒否 [人権]

 1月18日、ケベック州議会の公聴会に招待されていた世界シーク教徒機構(WSO)の代表4人が、戒律で身に着けていた短剣「キルパン」が金属探知機に引っかかり、入場を拒否された。
 シーク教徒は戒律により、5つのKを身に着けなければならない。それはケシュ(髪と髭)、カンガー(木製の櫛:清潔を象徴)、キルパン(短剣:真実を守ることを象徴)、カーラー(真鍮の腕輪:真実と自由の僕を象徴)、カッチャー(縞柄のパンツ:純潔を象徴)である。4人は警備員に、キルパンを預ければ入場できると言われたが、これを拒否した。
 世界シーク教徒機構のバルプリート・シン氏は、こうコメントした。
「何とも皮肉なことだ。我々は合理的配慮について会談するはずだったのに、我々は配慮されなかったのだ。合理的配慮は、カナダ連邦議会には存在する。合理的配慮は、連邦最高裁とカナダ全土の州議会には存在する。合理的配慮は、ここケベックで問題にされるべきだとは思わない。」
 そもそもこの事件は、いわゆる「合理的配慮」をめぐる一連の議論のなかで起こったものである。イスラム教徒の女性がニカブ(目を除く頭部全体を覆うベール)を脱ぐことを拒否した場合、本人確認ができないので、役所は公共サービスの提供を拒否できるとする94号法案について、州議会が公聴会に各宗教団体を招集し意見を聞こうとしていた矢先の出来事であった。シーク教自体は女性が顔を覆うことを禁じているが、世界シーク教徒機構は、特定の文化・宗教の放棄を強制するやり方はカナダのやり方ではないという見解をとっていた。
 だが、ケベック民族主義のケベック党で世俗主義を声高に主張するルイーズ・ボードワン議員は、ニカブ着用の戒律は女性抑圧にほかならず、国民平等の観念と信教の自由が衝突するなら、信教の自由は規制されるべきだとした。
「社会には信教の自由だけでなく、ほかの価値観も存在する。たとえば、多様文化主義はケベックの価値観ではない。それはカナダのものであるかもしれないが、ケベックのものではない。」
 シン氏は、ケベック州議会がセキュリティ規則を変えないならば、シーク教徒コミュニティはあらゆる対応について検討することになると述べた。だが州議会のセキュリティ担当は、規則を変える必要はないと応じた。
「私見では、それはシーク教徒が身に着けるナイフである。シーク教徒にも、精神的問題を抱えている人はいるかもしれない。」
 そして2010年2月に、シーク教徒がキルパンを預けることに同意したことで州議会への入場を許可された前例について指摘した。

 シーク教徒のキルパンが公的に問題になった最初の事件は、ピール教育委員会が校内でのキルパン着用を禁止したことである。オンタリオ人権委員会は1991年、教育委員会の措置はシーク教徒への差別であると答申した。
 またモントリオールの教育委員会が校内でのキルパン着用を禁止したとき、連邦最高裁は2006年、全面的禁止は信教の自由の侵害であり、憲法違反であると判断した。しかし判決は、キルパンが鞘に収められているか確認することを強制できる校則を定める権限を、学校側に認めた。
 カナダ人権委員会は1999年、キルパンを着用して飛行機に搭乗する行為は合理的配慮に当たらないと決定した。Viaレイルは2006年、キルパンを着用して電車に乗ることを許可した。
 ウィンザーの裁判所は2010年4月、シーク教徒が法廷にキルパンを持ち込むことを禁止した。
 2010年のバンクーバー・オリンピックでは、刃渡り10センチ以下のキルパン持込みは規制されなかった。
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