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「史上最悪のカナダ人」にトルドー元首相

 各種人気投票では必ず3位以内にランクインするカナダのスーパースター、故ピエール・トルドー元首相が、歴史雑誌「ザ・ビーバー」8月号と連動したインターネット投票で「史上最悪のカナダ人」に選ばれたと、同誌が7月31日に発表した。

 トップ10は以下の通り。
1.ピエール・トルドー(元首相)
2.クリス・ハンナ(パンクグループ「プロパガンディ」)
3.ヘンリー・モーゲンテイラー(中絶推進医師)
4.ブライアン・マルローニ(元首相、進歩保守党を破滅させた)
5.ポール・ベルナルドとカーラ・ホモルカ(女学生2名を殺害)
6.スティーブン・ハーパー(現首相)
7.セリーヌ・ディオン(ポップ歌手)
8.ジャン・クレチエン(元首相、スポンサーシップ事件被告)
9.クリフォード・オルソン(児童連続殺人犯)
10.コンラッド・ブラック(元メディア王)

 トルドー元首相がワースト1に選ばれたことは、2004年に「最も偉大なカナダ人」調査で3位にランクインした事実と比べ、明らかにカナダ人がトルドーに対し愛憎相半ばするツンデレ状態にあることを示している。
 カナダ歴代首相をランク付けした「嫌な奴・馬鹿な奴」の著者ウィル・ファーガソンは「トルドーはいまだ賛否両論ある人物なのだ」とコメントした。
 マーク・リードは「トルドーは憲法の父として尊敬を集めているが、国家エネルギー計画によって西部で、十月危機の戒厳令によってケベックで敵を作ったのだろう」と指摘するとともに、「彼はカナダを変えた男として、最近の50年の歴史においてただ一人挙げられる人物だ」とも語った。
 また彼は、オンライン投票は歴史に関心を持つカナダ人の気を引くために遊び半分で行われた可能性があり、オンライン・コンテストが統計的に信頼できない例となるだろうとコメントした。その例証として、政治家または殺人犯がトップ10にランクインしているにもかかわらず2位に入らず、2位はパンク・バンドマンであったという事実に着目した。2位にランクインしたクリス・ハンナは、自分への投票を呼びかけていたのだ。

 カナダ歴史協会代表でビーバー誌発行人のデボラ・モリソン氏は、ノミネートされた人々がここ30年間の人物に限られていることに注目し、
「投票者は現在だけを見て、歴史的視野を欠いている。多くの人々がこの結果を見て『歴史上もっと悪いやつらがいる』と考えるだろう」
と語った。

 1990年と2004年の人気投票の結果はこちら。
http://bluejays.ld.infoseek.co.jp/preface.htm

写真左:プロパガンディのクリス・ハンナ。
写真右:クリフォード・オルソン。


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高橋 幸二

 アンケート結果についてブログ主の私見を述べる。

1位 ピエール・トルドー
http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2007-08-07
アメリカでの評判は悪く、少なくともニクソンは嫌っていた(ニクソンに好かれる人物にロクな人はいないと思うが)。サッチャー首相がカナダを訪問したとき、「あなたと私の意見が食い違うのはあなたが間違っているときだけです」と言ったのは有名な話である。政権末期に彼が「平和イニシアチブ」を掲げて各国を精力的に訪問したことについても、大韓航空機撃墜事件などで西側が東側と対決姿勢を強めている時期にあたり、米国務省高官が「ヤクにラリったブサヨクのやること」と口走って問題になったり、またサッチャー首相には「原爆が落ちた1年後には広島に草が生えていたのよ」と言われたりするなど、散々だった。
トルドーは国歌・公用語・新憲法を制定するなどカナダ・アイデンティティを確立し高く評価されているが、経済には明るくなかったようだ。ケベックに「独特の地位」を認めず、西部を犠牲にする政策をとったため両地域での評判はすこぶる悪い。彼は過大評価されているのである。
またトルドーがアメリカの大女優バーブラ・ストライザンドと交際していたのは、カナダ人にとっては誇らしかったかも知れないが、ニクソンのようにエリート臭・プレイボーイ臭が露骨なのを嫌っていた人もいたであろう。

2位 クリス・ハンナ
 ランクインしたことを喜んでいる唯一の人物。カナダ映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」において、事件に影響を与えたと糾弾されたマリリン・マンソンが、そのアナーキーなイメージとは裏腹に至極真っ当なコメントをしていたことが思い出される。

3位 ヘンリー・モーゲンタラー
 私はこの人を知らないが、キリスト教保守主義の影響の強いカナダではやはり受け容れられないだろう。

4位 ブライアン・マルローニ
 1993年に辞任したとき、新聞に「戦後最低の内閣」と書かれていたが、戦後最低どころか歴史上最低で、犯罪者でもなければこれより悪いのは絶対に出て来ないだろう。20世紀末に調査したら間違いなく1位になっていたと思われる。詳しくは「カナダの右派政党」を参照。

5位 ポール・ベルナルドとカーラ・ホモルカ
http://blog.so-net.ne.jp/canadian_history/2007-08-08
 人もうらやむハンサムなエリートと美女のコンビで、しかも変態で殺人犯にまで堕ちてくれると、人々の屈折した優越感を刺激せずにはいられない。殺したのは「わずか」2人で、もっと大勢殺した者もほかにいるが、やはりこれほどの逸材はそうはいないと思われる。

6位 スティーブン・ハーパー
 自由党支持者の組織票と思われる。前歴から右翼と疑われていたが、首相に就任してみると案外まともで、改革党のような過激なことはせず、よく頑張っている。党内の改革党系議員と進歩保守党系議員の間で、うまくバランスを保つことが今後の鍵となる。ハーパー政権は過半数を大きく割り込んでおり、野党は解散・総選挙に追い込むことは簡単だが、そうしないのは総選挙すれば保守党の議席が増えるだけだとわかっているからである。

7位 セリーヌ・ディオン
 子育てで休業するのが気に入らないのか、ケベック人なのに英語で歌うのが気に入らないのか、金持ちなのが気に入らないのか。エア・カナダがセリーヌをCMに出すため、巨額の費用を投じたのが従業員の反発をかっているとの噂もある。

8位 ジャン・クレチエン
 戦後の首相では唯一連続3選を果たし、20世紀を代表する政治家であることは間違いない。有力野党がなかったのが大きな原因だが、それゆえ政権内に自浄作用が働かなかった。政権末期には公共サービスの切捨てを行い、スポンサーシップ事件で晩節を汚した。
 彼が首相になったとき、知り合いの日本人が「俺より英語下手なのに首相になった」と憤慨していたが、いえいえ、英語が下手でも努力すれば報われるということを、首相自らが教え、希望を与えてくれたのですよ。

9位 クリフォード・オルソン
 11人の少年少女を犯して殺害し、逮捕後は被害者の遺体の所在を教える見返りとして1体につき1万ドル、計11万ドルを国からせしめた。これに味をしめた彼は「ほかにまだ20人分教えてやろうか?」とさらなる取引を迫ったという。

10位 コンラッド・ブラック
 アンケートの半月前に有罪判決を受けたためランクインしたと思われる。
by 高橋 幸二 (2007-12-02 17:56) 

高橋 幸二

個人的見解として、カナダ人ベスト10・ワースト10ランキングをを作ってみました。

★総合ベスト10
1.ピエール・トルドー(元首相)
2.ウェイン・グレツキー(アイスホッケー選手)
3.ルーシー・モンゴメリー(赤毛のアン著者)
4.アーネスト・シートン(動物記著者)
5.フレデリック・バンティング(インシュリン発見者)
6.セリーヌ・ディオン(ポップ歌手)
7.テリー・フォックス(希望のマラソン)
8.アレクサンダー=グレアム・ベル(電話発明者)
9.ワイルダー・ペンフィールド(医師、脳地図を製作)
10.ケネス・ガルブレイス(経済学者、外交官)


★総合ワースト10
1.ブライアン・マルローニ(元首相)
2.ロバート・ピクトン(女性50人を殺害)
3.ポール・ベルナルドとカーラ・ホモルカ(スカボロー・レイピスト)
4.マルク・レピン(モントリオール大学銃乱射事件)
5.モーリス・デュプレシ(元ケベック州首相)
6.コリン・サッチャー(元サスカチュワン州エネルギー大臣、前妻を殺害)
7.キム・キャンベル(元首相)
8.ベン・ジョンソン(ソウルオリンピックでドーピング失格)
9.ロバート・ダンズミュア(石炭王、クレーグダロック城を建設)
10.ブリジット・ボワセリエ(ラエリアンでクローン研究)
by 高橋 幸二 (2007-12-02 17:59) 

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