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格安航空会社ジェッツゴーが倒産 [経済]


 カナダの格安航空会社ジェッツゴーは3月11日、裁判所に破産を申請しすべての業務を停止した。空港に出向いた搭乗予定の乗客を待っていたのは、無人のカウンターだった。こうしてこの日約1万7000人が搭乗できず立ち往生することになった。
 「ぼくたちディズニーランドに行けないの?」。ある母親は子供に家族旅行の中止を告げた。
 「私たちの結婚式はどうなるの?」。フロリダまでレンタカーで移動せざるを得なくなった結婚予定のカップル。
 「代替フライトは現金払いと言われたので、旅行はあきらめます」
 これらはこの日空港で、また旅行先で乗るはずの飛行機が飛ばない悪夢を見せられた1万7000人の悲痛の声のごく一部だ。
 ひどいことに、倒産発表前日も新聞に広告が掲載され、また発表1時間前にオンラインでチケットを購入した人もいたという。前日の真夜中まで予約を受け付けておいて、客には「明日の朝はお早めに空港へ」などとコンファームしていたというから、従業員も何も知らなかったのだろう。春休み前にできるだけ多くのチケットを売りさばき収入を得ようとする、最後まで「ケチケチ経営」ぶりであった。
 2002年6月12日に営業を開始したジェツゴーを、わずか32カ月で終わらせたその主はジェッツゴーのCEO(最高経営責任者)ミシェル・ルブラン氏。2001年ロイヤルエアをカナダ3000に売却した人物だ。
 航空ビジネスへの野望は、16歳で単独飛行を成し遂げたときに始まった。18歳で商業パイロットのライセンスをとり、ケベックで航空学校を経営していた父の事業を継いだのが30歳のとき。それ以来航空会社を買収しては数年後に売却を繰り返し、2002年にジェツゴーを始めたときは55歳だった。
 株式非公開のワンマン経営。貸借対照表も損益計算書も外部には無縁。彼の経営哲学は第一に、人件費を抑える。第二に、パイロットの研修は自己負担。第三に、古い機体を安くリースする。第四に、航空機の機種は二つだけに絞る。第五に、航空券の販売はインターネットに集中させる。
 だが機体の故障が絶えず、莫大な修理費が経営を圧迫した。さらにジェット燃料の高騰が会社を襲った。ルートと機体をどんどん増やし、格安チケットを売って補填する自転車操業となった。開業以来フライトの遅延、キャンセルが極端に多かった理由がここにある。大事故につながらなかったのは奇跡としか言いようがない。
 パイロットの最近の給与は最低賃金に近かったとも言われ、おまけに入社時に3万ドルを訓練費として収めている。2年後に返金されるはずがいまだに支払われていない。この穴埋めのため二つ目の住宅ローンを組んだ人もいるという。
 「明日出勤しなくてよいと真夜中に会社から電話があったんです。悪い冗談を言うなあと言ったら、本当でした」
 寝耳に水のこの知らせを受けた1350人の従業員たちに、会社側は「制服と駐車場のパスを返却しなければ最後の給与は渡しません」と言い放った。そのためオフィスには大勢の元社員が、寒空の中小切手を受け取りに集まっていた。


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