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トルドー内閣、大規模な改造 [自由党]

 トルドー首相は7月26日、大規模な内閣改造を行った。議員たちは夏休み中だが、首相が閣僚たちにオタワに戻るよう指示したことで、発覚した。
 最近の政党支持率調査では、保守党37%に対し、与党自由党は32%に低迷している。新民主党とは2025年6月まで政権を支える協定を結んでいるが、首相は2年以内にある次の総選挙を睨み、支持率回復を狙って改造に踏み切ったものと見られる。

 2021年11月の大規模な内閣改造では、財務・外務・国防の三大ポストの全てが女性となり話題になった。政権ナンバー2のクリスティア・フリーランド財務大臣(副首相)とメラニー・ジョリー外務大臣は留任したが、アニータ・アナンド国防大臣は、軍内部で横行するセクハラへの対処を女性大臣として期待されたものの、成果を挙げられなかった。彼女は予算庁長官に異動する。
 代わって国防大臣に就くのは、ビル・ブレア枢密院議長兼非常時対応準備大臣である。NATOの担当大臣として、ウクライナ問題への対処が注目される。
 ドミニク・ルブラン政府間関係大臣兼インフラ・地域社会大臣は、首相の幼馴染で最側近である。父のロメオ・ルブラン氏も首相の父ピエール・トルドー首相の大臣を務めた。今回は、公安大臣兼民主機構大臣兼政府間関係大臣となった。

 トルドー首相は、引退を表明しないかぎり更迭はせず、降格を好むとされてきたが、前任のマルコ・メンディチーノ公安大臣は、内閣から外された。今回の改造は、彼の更迭のためにあったと言ってよい。フリーダム・コンボイに対する緊急事態法発動は、現行法で対処でき不必要だったとして批判されている。また中国による選挙干渉疑惑についても、対応が遅かった。銃規制のためのC-21号法案については、自ら作成した修正案を撤回し、下院は通過したものの上院では滞っている。2020年のノバスコシア銃乱射事件では、警察の初動が遅かったとして批判された。最近では、43人を強姦し3人を殺して終身刑となった「スカボロー・レイピスト」ポール・ベルナルド受刑者の、より低セキュリティの刑務所への移送に関しても批判された。
 内閣から外された人は、ほかに2人いる。モナ・フォルティエ予算庁長官は、12万人の公務員が参加した2023年春のストライキによって、旅券事務所や移民局の業務が停止したことの責任を問われた。デビッド・ラメッティ法務大臣兼司法長官は、保釈制度改革の遅れを批判された。
 トルドー首相は総督公邸リドー・ホールでの記者会見で、これら3人が留任できなかった理由を問われたが、答えなかった。
「この国とこの内閣で何年もよく勤めてくれた全員に、感謝したい。」
 次の総選挙に出馬しないことを表明した4人の大臣も、内閣から外された。オマル・アルガブラ運輸大臣は、空港での待機が社会問題化したことの責任を問われた。
 ジョイス・マレー漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣は、次回総選挙に出馬を表明していたが、7月24日に突如不出馬を表明した。6月にニューファンドランド沖で起きた、タイタン沈没事故への対応が影響したものと見られている。
 キャロリン・ベネット メンタルヘルス・中毒大臣は、マーチン内閣の閣僚も務めた72歳のベテランだが、下院議員の任期が満了しだい引退する。
 ヘレナ・ジャチェック公共サービス・調達大臣も、新しいポストが与えられなかった。

 内閣から外された7人と入れ替わりに初入閣するのは、以下の7人である。
 トロント選出のアリフ・ビラーニ議員は、法務大臣兼司法長官に就く。
 ケベック州オシェラガ選出のソラヤ・マルティネス・フェラーダ議員は、観光大臣兼ケベック経済開発エージェンシー担当大臣に就く。
 トロント選出のゲイリー・アナンダサンガレー議員は、政府-先住民関係大臣に就く。
 ブリティッシュコロンビア州バーナビー選出のテリー・ビーチ議員は、市民サービス大臣に就く。
 トロント選出のヤアラ・サックス議員は、メンタルヘルス・中毒大臣兼厚生副大臣に就く。
 オタワ選出のジェンナ・サッズ議員は、家庭・子供・社会開発大臣に就く。
 オンタリオ州ミシサウガ選出のレチー・バルデス議員は、中小企業大臣に就く。

 今回の内閣改造では、異なるポストに横すべりした大臣が多いのが特徴で、19人いる。カリナ・グールド家庭・子供・社会開発大臣は、下院院内総務に就く。彼女は現在妊娠中で、彼女の不在時にはスティーブ・マッキノン下院幹事長が代行する。
 パブロ・ロドリゲス民族遺産大臣は、運輸大臣に就く。
 パスカル・サントンジュ スポーツ大臣兼ケベック地方経済発展担当大臣は、カナダ民族遺産大臣に就く。インターネットの巨人GAFAとの戦いの担当として、注目される。
 パラリンピックメダリストのカーラ・クワルトロー雇用・労働力開発・障碍者インクルージョン大臣は、スポーツ・体育活動大臣として、6年前まで務めたポストに復帰する。スポーツ界特にホッケー界で蔓延する性的虐待問題への対応が、注目される。
 ショーン・フレイザー移民・難民・市民権大臣は、住宅・インフラ・地域社会大臣に就く。住宅危機への対応が期待される。
 マーク・ホランド下院院内総務は、厚生大臣に就く。
 ローレンス・マッコーレイ退役軍人大臣は、農務大臣に就く。
 ジャン=イブ・デュクロ厚生大臣は、公共サービス・調達大臣に就く。
 マリー=クロード・ビボー農務・農産食品大臣は、歳入大臣に就く。
 グディ・ハッチングス地方経済発展大臣は、地方経済発展大臣兼大西洋カナダ機会エージェンシー担当大臣に就く。
 ディアンヌ・ルブティリエ歳入大臣は、漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣に就く。
 ハルジット・サジャン国際開発大臣兼太平洋経済開発エージェンシー担当大臣は、枢密院議長兼非常時対応準備大臣兼太平洋経済開発エージェンシー担当大臣に就く。
 アーメド・フッセン住宅・多様性・インクルージョン大臣は、国際開発大臣に就く。
 シーマス・オリーガン労働大臣は、労働・高齢者大臣に就く。
 ジネット・プチパ=テイラー公用語大臣兼大西洋カナダ機会エージェンシー担当大臣は、退役軍人大臣に就く。
 マーク・ミラー政府-先住民関係大臣は、移民、難民と市民権担当大臣に就く。
 ランディ・ボワソノール観光大臣は、仕事労働力開発と公用語担当大臣に就く。
 カマル・ケラ高齢者大臣は、多様性・障碍者インクルージョン大臣に就く。
 メアリ・ン国際貿易大臣兼輸出振興・中小企業・経済開発大臣は国際貿易大臣兼輸出振興・経済開発大臣に就き、中小企業のポストから外れた。

 9人の大臣は、留任した。クリスティア・フリーランド副首相・財務大臣、メラニー・ジョリー外務大臣のほかは、スティーブン・ギルボー環境・気候変動大臣、フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ イノベーション・科学産業大臣、パトリシア・ハイデュ先住民サービス大臣兼北オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣、フィロメナ・タッシ南オンタリオ経済開発エージェンシー担当大臣、ダン・バンダル北方大臣兼中西部経済開発担当大臣兼北方経済開発エージェンシー担当大臣、マーシー・イェン女性・ジェンダー平等・青年大臣である。ジョナサン・ウィルキンソン天然資源大臣は留任したが、役職が「エネルギー及び天然資源大臣」に変わった。
 閣僚は首相を除き、男女19人ずつで同数である。

 保守党のピエール・ポワリエーブル党首は、今回の改造について次のように評した。
「数々の失策について責任のある一人の大臣が、異動していない。その大臣とは、トルドー総理大臣である。」
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