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ウィルソン=レイボールド氏が議会で証言、トルドー首相窮地に [自由党]

 以前から「私の真実を話したい」と主張してきたジョディ・ウィルソン=レイボールド前法務大臣兼前司法長官は、2月27日下院法務委員会に招致され、首相側近や総理府スタッフらからSNC-ラバラン社を不起訴にするよう圧力をかけられたと証言した。トルドー首相は、就任以来最大の窮地に陥った。

 (1) 衝撃のウィルソン=レイボールド証言
 キャサリン・ルーセル検事総長が2018年9月、司法取引はせず裁判を続行すると決断したあと、ウィルソン=レイボールド司法長官もこれを踏襲したが、首相側近のマテュー・ブシャール秘書官やエルダー・マーケス秘書官らに、有罪になれば公共事業に10年間入札できなくなり、大量解雇をひき起しかねないため、考え直すよう説得されたと証言した。さらにその後、首相の側近中の側近ジェリー・バッツ首席秘書官や、ビル・モルノー財務大臣スタッフのベン・チン氏にも説得されたと語った。
「カナダ司法長官としての任務にまつわる私の司法判断に対し、政府内の人々による一貫した継続的な政治的干渉を受けた。」
「これらの会話の中に、SNC-ラバラン問題への干渉の要請と、DPA(Deferred Prosecution Agreement:起訴猶予取引)適用に応じない場合に起こりうる結果についての暗黙の脅迫があった。」
 なおバッツ首席秘書官は、2月18日に「倫理的に行動した」と述べて辞任している。
 度重なる圧力に困った彼女は、9月にトルドー首相に訴えたが、その答えは意外なものだった。
「会話の最中総理は、ケベックで(州議会)選挙があり、『私はケベックの下院議員だ』と強調した。」
「私は本当に驚いた。今でも鮮明に覚えているが、私は総理の目を見ながら直截に尋ねた。『総理は、司法長官としての私の任務と判断に、政治干渉なさるのですか?』すると総理は『ノー・ノー・ノー、僕らはただ、解決する必要があるんだ』と言った。」
 彼女は、首相は近く実施されるケベック州議会総選挙で、与党ケベック自由党が苦戦しており、ケベック未来連合に政権奪取されそうなことを懸念していたようだと指摘した。
 彼女は12月18日、バッツ首席秘書官から「解決を探す」ための会談を持ちかけられ、彼とそのスタッフのケイティ・テルフォード氏が、ウィルソン=レイボールド氏スタッフのジェシカ・プリンス氏と会談したが、その席で「干渉なしには解決しないよ」と言われたという。プリンス氏は「彼らは最後には、あなたへの要求に正直になった。まるで、検察の独立など問題ではない、もはや合法性を論じている場合ではないと言わんばかりだった」と報告したとウィルソン=レイボールド氏は述べた。
 翌19日には、枢密院職員マイケル・ワーニック氏から電話で、総理はこの問題について「極めて強い決意」があり、「なぜDPAが適用されないのか」「何とかしてそれを使う方法を見つけるつもりだ」と告げられた。ワーニック氏はさらに「総理は合法性の外側で何かするよう頼んではいない」とわざわざ言及した。
 彼女は「政府が危険地帯に足を踏み入れている」と感じ、警告した。
「私は司法長官として、政治的動機から党派的な行動をとるわけにはいかない。」
 すると彼は、決断はあなた一人の責任であり、そしてあなたは総理がこの問題について何を望んでいるかを察するべきだと言ったので、彼女はウォーターゲート事件を思い出し「これは土曜の夜の大虐殺だ」と思ったという。
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 新民主党のシン党首は、公聴会の開催を要求した。保守党のシーア党首は、総理の辞任と連邦警察(RCMP)の捜査を要請したが、彼女は違法性は否定した。
「私の見解では、それらは違法ではない。発言の文脈、圧力の性質に鑑み、それらは非常に不適切と言える。」
 1月14日の内閣改造1週間前に、彼女は総理から電話で法務大臣からの異動を聞かされた。
「私は、この電話または内閣改造については詳述しない。しかし理由は、SNC-ラバラン問題だと考えている。」
 自由党のランディ・ボワソノール議員が、総理をまだ信頼しているかと質問したとき、彼女は長い沈黙の後、こう答弁した。
「私は辞任した理由について、これ以外に言及するつもりはない。内閣のテーブルに座るための信頼がなかったので、私は閣僚を辞任した。」
 彼女はトルドー首相の信頼性について二度問われ、二度とも答えなかった。
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 (2) 自由党内の反応
 トルドー首相は27日、自分と総理府スタッフは「適切にかつ専門的に」行動すると述べ、ウィルソン=レイボールド氏の証言を「完全に否定する」と語った。そして「スコット・ブライソン(予算庁長官)が辞任しなかったら、ジョディ・ウィルソン=レイボールドはまだ法務大臣とカナダ司法長官だった」と説明した。彼女が自由党幹部会に残れるかどうかについては、「多少の考えがある」と回答した。
 ビル・モルノー財務大臣は28日、自分はSNC-ラバラン問題についてウィルソン=レイボールド氏に話を持ちかけたことはないが、「彼女の決断により失業保険が危うくなる」と、自分のスタッフが彼女のスタッフに「適切に」接触したと弁明した。
 クリスティア・フリーランド外務大臣は28日、トルドー首相とウィルソン=レイボールド氏のどちらを信じるかを問われ、次のように述べた。
「彼女が『私の真実を話したい』と言っていたように、彼女は『彼女の真実』を話したのだろう。」
 ウィルソン=レイボールド氏の性格を「ともに働くのが困難」とした風評については「私は彼女を、思慮深い同僚以外の何者だとも考えたことはない」と退けた。彼女は幹部会に残るべきかと問われると、フリーランド外相は「幹部会は多様な見解を持つ幅広い教会」だと述べた。
「内閣と幹部会は、密室で討論することができるが、出て来るときは団結していなければならない。」
 マリヤム・モンセフ国際開発大臣は、ウィルソン=レイボールド氏の自由党内での処遇は「最終的には首相の決定事項」と述べ、「私はその判断を信じる」と語った。
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 ウィルソン=レイボールド氏は証言を終えて、自由党幹部会に残れるかどうかを問われると、次のように回答した。
「私は、バンクーバー・グランビル(選挙区)の議員であることを誇りに思う。私は自由党下院議員として当選した。それは変わらない。」
 もし幹部会を追放されたら、それは何を意味するのかと問われると、彼女はそのような事態は想定していないと答えた。


図上:かつてトルドー首相がウィルソン=レイボールド氏を叩きのめした漫画を描いたマッケイ氏は、今やトルドー首相がウィルソン=レイボールド氏に叩きのめされ、孟晩舟氏とのダブルスタンダードを中国に指摘される漫画を描いている。
図中:仏語紙に掲載された、トルドー首相がウィルソン=レイボールド氏に叩きのめされる漫画。彼女の服装が差別的だと批判された。
図下:「カナダ国民は近いうち、誰にこの国の首相になって欲しいかという明確な選択をすることになる。」気が早い人は、ウィルソン=レイボールド氏に期待しているようだ。
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