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補選で占う10月総選挙 [2019年下院選]

 2月25日、3選挙区で実施された補欠選挙の結果は、以下のとおりとなった。

★ブリティッシュコロンビア州バーナビー・サウス選挙区(投票率29.9%)
1.ジャグミート・シン(新民主党) 8884票(39.0%)
2.リチャード・T・リー(自由党) 5930票(26.0%)
3.ジェイ・シン(保守党) 5133票(22.5%)
4.ローラ=リン・トンプソン(人民党) 2420票(10.6%)

★オンタリオ州ヨーク-シムコー選挙区(投票率19.9%)
1.スコット・デビッドソン(保守党) 8929票(53.9%)
2.ショーン・タナカ(自由党) 4811票(29.0%)
3.ジェッサ・マクリーン(新民主党) 1244票(7.5%)
4.ドリアン・バクスター(進歩カナダ党) 634票(3.8%)
5.マシュー・ランド(緑の党) 451票(2.7%)
6.ロバート・ギューツ(人民党) 314票(1.9%)

★ケベック州ウートルモン選挙区(投票率21.4%)
1.レイチェル・ベンダヤン(自由党) 6086票(40.4%)
2.ジュリア・サンチェス(新民主党) 3925票(26.1%)
3.ダニエル・グリーン(緑の党) 1889票(12.5%)
4.ミシェル・デュシェーヌ(ケベック連合) 1683票(11.2%)
5.ジャスミン・ルーラス(保守党) 1098票(7.3%)
6.ジェームズ・シール(人民党) 322票(2.1%)

 補選は総選挙に比べ投票率は低くなるものだが、冬季の補選でしかも悪天候のため、記録的な低投票率となった。それでも結果は、10月の総選挙を占うに十分な兆しを示している。

 (1) 自由党:逆風で見せた底力
 ウートルモンは1935年から2006年まで71年間、一度の例外を除き自由党が保持し続けた鉄板選挙区だった。2007年の補選で新民主党のトム・マルケア氏が当選したのは、同党がケベックで当選した史上2回目ということで話題になったが、党首となったマルケア氏は4回連続当選し、新民主党の地盤になっていた。だが自由党は今回、SNC-ラバラン疑惑でかつてない逆風の中、2位に14ポイント以上の差をつけて圧勝した。自由党は10月の総選挙で、トロント郊外の接戦選挙区の多くを失うだろうが、新民主党のケベックでの不評につけこみ、その代償をケベックで得ることができそうだ。得票率40.4%は、2004年以降で最大の数字でもあり、自由党は逆風でもケベックで勝てることを示した。
 自由党は前回総選挙より7ポイント増加しており、もしもケベックの全ての選挙区でも7ポイント多く得票するなら、新民主党は前回獲得した16議席の全てがおびやかされる。しかしバーナビー・サウス選挙区では7.9ポイント、ヨーク-シムコー選挙区では8.8ポイント減少しており、もしもカナダ全土の郊外で同じポイント減少するなら、苦戦は必至となる。

 (2) 新民主党:最大の勝者はシン党首か、それとも・・・
 苦戦の下馬評を覆し、シン党首は見事に当選した。政治生命を賭けた補選に勝利した彼こそ、この日の最大の勝者だっただろう。彼が党首に就任して以来17の補選があったが、これは新民主党が勝利した最初である。
 シン党首は前回総選挙より、3.9ポイント多く得票した。緑の党が候補を擁立しなかった利点はあったものの、緑の党は前回総選挙で2.9%しか得票していないので、シン党首は勝利を自賛してよい。
 だがウートルモン選挙区では、前回より18ポイントも減少している。この数字は、ケベックで実施された他の補選とほぼ一致しているため、有名候補マルケア氏の引退が原因ではない。ターバンを被ったシン党首がケベック全域で不評なため、彼の当選は彼が次の総選挙で指揮を執ることを確実にしたから、新民主党がケベックで大敗することは間違いなく、真の勝者は自由党ではないか、というのは言葉が過ぎるだろうか。

 (3) 保守党:鉄板選挙区を難なく勝利
 ヨーク-シムコー選挙区は、2004年からピーター・バン=ローン元国際貿易大臣が保持してきた保守党の鉄板選挙区で、彼の引退により補選が実施された。同選挙区はまた、保守党(または進歩保守党)候補が1979年以降の選挙で常に最も多く得票した選挙区でもある。保守党候補はこの日、鉄板選挙区を当然のように勝利した。主要3党の中で、保守党の勝利が最も小さな勝利だったかもしれない。
 自由党に逆風が吹く中、ヨーク-シムコー選挙区における前回よりわずか3.6ポイントの増加は、自由党からの政権奪取を目指す保守党にとって、あまりに小さすぎる数字であろう。2018年12月に実施された、リーズ-グレンビル-サウザンド・アイランド&リドー・レイク選挙区で見せた10.4ポイントの増加に比べ、勝利も色あせて見える。

 (4) 人民党:有力政党たりえず
 人民党は、初めて迎えた選挙で全敗した。
 バーナビー・サウス選挙区では、クリスチャン・トークショーの有名司会者ローラ=リン・トンプソン候補を擁立し、移民を警戒するスローガンを掲げ、右派有権者の間に食い込んで得票率10.6%と健闘した。だが彼女と保守党候補の票を足しても、自由党当選者には及ばない。
 人民党は西部はともかく、中部では有力政党ではないことを露呈した。ベルニエ党首が自分を追放した保守党に復讐するため、その票を奪い落選させることを企図しているとするなら、ウートルモン選挙区の得票率2.1%と、ヨーク-シムコー選挙区の得票率1.9%は、何ら保守党の脅威ではない。後者では、進歩カナダ党や緑の党にすら劣った6位に沈んだ。政党助成金を受け取るには、得票率2%以上に達しなければならない。
 ベルニエ党首はツイッターで、バーナビー・サウス選挙区について「期待以上の素晴らしい成果」と賞賛するいっぽう、「オンタリオとケベックでの低い数字には失望した」「もっと多くを期待していた」と綴った。

 (5) 緑の党:敗れてなお意気高し
 近年の総選挙で得票率3%台の緑の党は、各種世論調査で7%以上の支持率を示し、好調が続いている。ウートルモン選挙区でダニエル・グリーン候補は、ケベック連合候補や保守党候補をも上回り、得票率12.5%を記録した。これは、同党がケベックの過去の選挙において記録したいかなる数字をも上回っている。このままの高支持率で総選挙を迎えたら、同党は数議席上積みも夢ではない。
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