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ケベック未来連合過半数、ケベック政界再編へ [ケベック]

 10月1日に実施されたケベック州議会総選挙は、即日開票され、ケベック未来連合74(37.4%)、ケベック自由党31(24.8%)、ケベック党10(17.1%)、ケベック連帯10(16.1%)、その他0(4.6%)(定数125議席、括弧内は得票率)という結果となった。ケベック未来連合は初の政権獲得で、48年間続いたケベック党と自由党による「独立か否か」の争いに終止符を打った。旧二大政党のケベック党は、公式政党の資格である12議席ないし得票率20%のいずれにも達せず、初めて総選挙に挑んだ1970年を除き、初めて第4党に転落した。ジャン=フランソワ・リゼ党首は落選し、即日党首を辞任した。自由党は、史上初めて得票率30%を下回った。

 フランソワ・ルゴー次期首相は1957年、ケベック州サン=タン=ド=ベルビューに生まれた。1998年ケベック党から州議に当選し、ブシャール内閣の産業・商業大臣と文部大臣、ランドリー内閣の厚生・社会福祉大臣と文部大臣を歴任し、党内重鎮と見なされたが、ケベック独立に疑問を抱くようになり、2009年6月政界を引退した。
 彼はその2年後、右派で非独立派の新党「ケベック未来連合」を旗揚げする。ヘルスケアの経費削減などを訴え「自由党と何も変わらない」と言われた同党は、もっぱら自由党の政治腐敗を攻撃してきた。自由党は、元ケベック党の彼を「隠れ独立派」と揶揄したが、彼は自身を「ナショナリスト」と呼んだ。ここで言う「ナショナリスト」とは「国家主義」ではなく、フレンチ民族主義のことである。
 新党には、ルゴー党首以外に経験ある政治家がいなかった。だが2007年総選挙で、党首一人しか議員のいなかった右派の民主行動党が野党第一党に躍進し、右派の非独立派にも根強い支持があることが示された。独立を訴えるケベック党は3位に沈み、思えばこのとき今日の予兆が見えていたというべきだろう。ケベック未来連合は2012年に民主行動党を併合し、その議員たちを傘下に収めた。2012年と2014年の総選挙は、どちらも3位に終わったものの、与党に迫る得票率を記録した。
 今回総選挙で同党は、財界の異論にもかかわらず、移民削減を提唱した。そして移民がフランス語の将来を脅かすとし、移住して3年以内にフランス語を学ばない移民を追放すると述べ、物議をかもしている。
 世論調査では、ケベック独立を支持する人が年々減っていることがわかっている。旧二大政党のケベック党が主張する独立は、有権者に受けなくなっている。そこで独立を訴えず、フレンチ民族主義を主張するケベック未来連合が、フランコフォン有権者の間で支持を広げていった。

 与党自由党は、財政の均衡を保つため予算削減に走り、有権者の支持を失った。
 自由党は歴史的に、世論調査より多く得票することが知られている。2012年総選挙では、自由党は世論調査でずっと3位だったが、蓋を開けてみればケベック党より4議席、得票率にして0.75%足りない2位だった。だがそのような現象は、ケベック党政権成立が独立をひき起こすという懸念から起きるもので、今回は独立を訴える党がなく、追い風は吹かなかった。

 ケベック党は、独立を問う住民投票を2022年まで実施しないと公約し、争点を移民とヘルスケアに絞ったが、存在意義を失い、支持者をつなぎ留める何の効果も生まなかった。独立を支持する者は独立派のケベック連帯に走り、フレンチ民族主義を支持する者はケベック未来連合に走り、初めて与党になった1976年以来最低の惨敗を喫した。
 2007年総選挙で野党第二党に転落したとき、党内で「独立路線は有権者に受けないのでは」という異論は出た。だがその後党首になったマロワ党首が独立を強く訴えなかったため、強行独立派との間で内ゲバとなった。そして自由党がマフィアと関係し支持を失ったため、ケベック党は再び政権に復帰できたものの、独立をあくまで訴えるべきかどうかという問題に向き合うことのないまま、今日の惨敗を迎えた。リゼ党首も落選しており、ケベック党は独立論争と次の党首を誰にするかをめぐり、一大転機を迎えるだろう。多くの批評家は、同党は近い将来消滅すると予測している。

 ケベック連帯は若い支持者が多く、若年層の投票率が低いことからこれまで苦戦を続けてきた。だが2017年10月に左派の小政党「国民の選択」を併合し、ケベック党が独立路線を棚上げしたことも有利に働き、根拠地のモントリオール島で6議席のほか、ケベック市で2議席、シェアブルック市で1議席、地方で1議席を獲得し、初の2桁議席・2桁得票率に達した。
 独立派の左派であるケベック連帯は、類似のケベック党と票を奪い合っている。ケベック未来連合はケベック連帯とは競合せず、フランコフォン有権者の票をケベック党と奪い合う関係にあることから、ケベック連帯の躍進もケベック未来連合に有利に働いた。
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高橋幸二

 10月1日に実施されたケベック州議会総選挙の結果は、ケベック未来連合74(37.4%)、ケベック自由党31(24.8%)、ケベック党10(17.1%)、ケベック連帯10(16.1%)、その他0(4.6%)(定数125議席、括弧内は得票率)と確定した。
 フィリップ・クイヤール首相は当選したものの、4日に自由党党首と議員を辞職し、首相の任期切れをもって引退する。ピエール・アルカン コート=ノール地方担当大臣が5日、暫定党首に就任した。ケベック党のジャン=フランソワ・リゼ党首は落選し、1日に党首を辞任した。パスカル・ベリュベ州議が9日、暫定党首に就任した。
by 高橋幸二 (2018-10-13 19:05) 

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