SSブログ

トルドー政権、選挙制度改革を断念 [自由党]

uploaded-by-malcolm-mayes-email-mmayesartizans-com2.jpeg

 カリーナ・グールド民主機構大臣は2月1日、選挙制度改革を断念すると発表した。
 政府筋によると、1月にカルガリーで行われた閣議で、すでに断念することが決まっていた。反対した閣僚は1人しかいなかったという。
 トルドー首相は今週、下院でこう述べた。
「率直に言って、賛否のある国民投票をこの時期に実施するのは、過激派の発言力を拡大することになり、カナダのためになることではない。」
 首相は、選挙制度改革特別委員会が推奨する比例代表制は、小党乱立や多数安定政権の抑止、また連立政権の常態化につながりやすいことや、小勢力が議会へ進出する道を開くことになり、その結果地域政党や白人優位主義・国粋主義・ポピュリズムのオルタナ右翼の発言力を拡大することを懸念していた。

 2015年の総選挙時、野党第2党だった自由党は選挙制度改革を公約したが、どのような制度を導入するかを明言せず、単に比例代表制・優先順位付き連記投票・投票の義務化・オンライン投票などについて検討する超党派委員会を設置すると述べるだけであった。
o-MARYAM-MONSEF-facebook.jpg だがいざ委員会が設置されると、新民主党は比例代表制を主張した。緑の党は小選挙区比例代表併用制の支持を決めるとともに、ギャラガー指標(※得票と議席の反比例度を示す。数値が大きいほど両者が乖離していることを示す)が5以下のいかなる比例代表制も支持すると主張した。保守党は現行の「勝者総取り」小選挙区制を支持したが、いかなる改革でも国民投票で有権者に諮問すべきだと主張した。野党の主張は当初バラバラだったが、秋には保守党・新民主党・ケベック連合・緑の党の全野党は比例代表制を支持することで合意した。
 だが自由党政権は、ひとたび国民投票を実施すれば、論争がほかの問題に拡大することを恐れた。ケベック独立を問うた1995年の住民投票騒ぎを皆が覚えていたし、今回の投票が将来あるかもしれない再度の独立を問う住民投票の先例にされるのも、好ましくなかった。
「50%プラス1票あれば十分なのか」「有権者の3分の2の同意があれば、1州が反対しても強制できるか」
 あのような騒動を繰り返したいとは、誰も思わなかった。それで自由党政権は、「現行制度による選挙は2015年が最後」という公約を盾に、(時間のかかる)国民投票は不要だと繰り返した。モンセフ民主機構大臣(当時)も「国民投票は容易に癒えることのない深い亀裂を社会に生じる」と警告した。カナダ史上において禁酒法(1898年)、徴兵制(1942年)、憲法改正に関するシャーロットタウン協定(1992年)の3度国民投票が実施されたが、いずれも結果が州により大きく異なり、亀裂を生んだという認識がある。
 トルドー首相は優先順位付き連記投票を推進したが、それを支持する者は少なく、国民の多くは選挙制度改革に関心がなかった。さらにややこしいことに、閣僚の中にもディオン外務大臣・ルブラン漁業大臣・フリーランド国際貿易大臣(肩書きは当時)などは、公然と比例代表制を支持していた。

 トルドー首相は今週下院で、こう述べていた。
「私は長い間、優先順位付き連記投票を推進してきた。野党議員たちは、比例代表制を望んだ。最大野党は、国民投票を要望した。そこにはコンセンサスがない。」
 そして選挙制度改革断念については、1日にこう述べた。
「カナダの安定を害することをするのは、無責任である。選挙の公約を理由に、投票箱の中身をチェックするだけのために、間違ったことをするつもりはない。私は、そのような首相になるつもりはない。」
 新民主党のネイサン・カレン議員は3日、連邦議会で自由党政権を批判した。
「選挙制度改革における裏切りを正当化する必死の試みにおいて、自由党はあらゆる言い訳を使っているが、それは馬鹿げている。」
「比例代表制はより多くの女性、より多様な議員を選び、ともに働いてカナダをまとめる。」
「自由党政権が選挙制度改革を断念したのは、それがカナダの統一に対する脅威だからではなく、自由党に対する脅威だからだ。」


図上:公約をかなぐり捨てるトルドー首相。
写真下:選挙制度改革特別委員会で、ギャラガー指標を示すプラカードを掲げるマリヤム・モンセフ民主機構大臣(当時)。彼女は議会を侮辱したと非難され、後にこのポストから外された。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:地域

nice! 0

コメント 0

コメントの受付は締め切りました

トラックバック 0