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各州の情勢 [2015年下院選]

 「有効政党数=定数+1」というデュベルジェの法則にもかかわらず、小選挙区制のカナダは多党制となっている。国土が東西に広いカナダは、地域ごとに気候や産業の違いが大きく、地域ごとに異なる二大政党の戦いになっているからである。

(1) 東部(大西洋地域)
 東部は移民が少なく、カナダの他地域より保守的である。東部はレッド・トーリー(保守左派)の勢力が最も強い地域である。
 だが保守党は雇用保険の適用を厳格化したため、この地域で支持を減らしている。ニューファンドランド&ラブラドル州からはすでに締め出され、プリンスエドワード島州4議席のうちわずか1議席を持っている。ノバスコシア州では11議席のうち4議席、ニューブランズウィック州は10議席のうち8議席を占めているが、いずれも危険に晒されている。
 自由党は、東部全域で圧倒的に支持されている。
 新民主党は、ノバスコシア新民主党政権の不評が響いているが、保守党が現有するノバスコシア州サウスショア=セント・マーガレッツ選挙区とニューブランズウィック州マダワスカ=レスティグーシュ選挙区、無所属のニューファンドランド&ラブラドル州アバロン選挙区を奪取する望みがある。

(2) ケベック
 コンコルディア大学で政治学を教えるミレイユ・パケ教授は、新民主党の支持の上昇は、ケベック政治の価値軸が分離主義対連邦主義から保守対革新に変わっていることを示しているという。彼女は「多くのケベック人が自らを革新と定義する以上、新民主党支持が自然な選択だろう」と語った。
 保守党は、ケベックで数議席を獲るのがやっとだろう。
 自由党は、カナダの多くの地域では左派と見られているが、ケベックでは保守的と見られている。トルドー党首はケベック人であるにもかかわらず、彼の父が1982年憲法でケベックの期待を裏切ったことで、自由党は牙城モントリオールの外へ進出するのに苦労している。
 ケベック連合は、デュセップ党首の復帰にもかかわらず党勢回復の兆しを見せていない。

(3) オンタリオ
 北部では新民主党が強く、都市部では自由党と新民主党が争い、郊外では保守党が強い。オンタリオ州は今回総選挙から15議席増加するが、そのほとんどは保守党が強い郊外の選挙区である。
 だがヨーク大学で政治学を教えるデニス・ピロン教授は、昨年の州議会総選挙でオンタリオ自由党が勝利したことは、住民の多くがリベラルであることを示していると指摘した。
 保守党を負かそうと思う有権者は、伝統的に自由党に投票してきた。しかし世論調査での新民主党の人気は高く、今回は事情が違うかもしれないとピロン教授は語る。
 オンタリオの趨勢は、というより総選挙自体の命運は、次の2点にかかっている。一つは保守党が議席をどれだけ維持できるか、もう一つは保守党が取りこぼした議席をどの党が拾うか、である。

(4) 中西部(プレーリー)
 ウィニペグ大学で政治学を教えるアレン・ミルズ教授は「プレーリーと言うとあたかも3州が同じであるかのように聞こえるが、マニトバはサスカチュワンでもアルバータでもない」と言う。
 保守党は中西部全域、特に農村で圧倒的な人気を誇る。だがマニトバ州は、今はなき進歩党の根拠地で、左派にも望みはある。
 新民主党は、マニトバ新民主党政権の不評が響いているものの、ウィニペグのエルムウッド=トランスコーナ選挙区は23年間保持した選挙区であり、奪回できる高い可能性がある。
 だがウィニペグは自由党にとっても望みのある地域で、ウィニペグ・サウス選挙区、ウィニペグ・サウス・センター選挙区、サン・ボニファス選挙区は奪取できる可能性が高い。
 サスカチュワン州では従来、都市部と郊外が一つの選挙区として合体しており、それらの選挙区は保守党が優勢だった。ところが区割りを変更した結果、都市部だけの選挙区が創設された。新民主党は大都市レジャイナとサスカトゥーンで、議席増が望めそうだ。
 アルバータ州は保守党の牙城で、接戦になることはほとんどない。2004年は2議席を除く全議席、2006年は全議席、2008年と2011年は1議席を除く全議席が保守党のものになった。
 解散時にはアルバータに非保守党議員が2人だけいたが、どちらもエドモントン選出である。そしてカルガリーは、1968年以降保守党以外の当選者を出していない。
 だが州内屈指の大都市であるカルガリーのカルガリー・センター、レスブリッジ、カルガリー・スカイビューとエドモントンのエドモントン・ミル・ウッズの4選挙区では、自由党が11年ぶりに議席を獲得できそうだ。
 新民主党は、2015年州議会総選挙での躍進に乗じたいだろうが、マウント・ロイヤル大学で政治学を教えるドエイン・ブラット教授はこれを疑問視する。
「新民主党の躍進はエドモントンではあるかもしれないが、カルガリーであるとは思わない。アルバータ新民主党は、保守票が進歩保守党とワイルドローズ党に分散したことで圧勝できたが、連邦新民主党は統一されたカナダ保守党を相手に戦わなければならない。」

(5) ブリティッシュコロンビア
 バンクーバー島は、緑の党が強固な地盤を持つ唯一の地域である。エリザベス・メイ党首は、サーニッチ=ガルフ・アイランズ選挙区を維持できそうだ。ビクトリア選挙区は、2011年総選挙で当選した新民主党候補の得票率37.17%に対し、緑の党候補が34.3%で惜敗しており、今回も激戦になりそうだ。
 バンクーバーとトロントには、共通性がある。どちらも移民が多い。郊外では保守党が強く、ダウンタウンでは新民主党対自由党という構図になっている。
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