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ダニエル・スミスが引退表明、記者に暴言 [アルバータ]

 進歩保守党の予備選で敗れたダニエル・スミス州議は、3月29日ツイッターで政界引退を表明した。その際、記者にPワードを使い、謝罪した。

 28日に予備選で敗れ、立候補の途を絶たれたスミス州議は、その日は対戦相手のフィッシャー町議を称え、今後については夫と相談すると述べた。ところが翌日、グローバル・ニュースのバシー・カペロス(Vassy Kapelos)記者がツイッターで今後について問うと、彼女は暴言を吐いた。
スミス州議「私は、公生活から身を引きます。」
カペロス記者「それは、いかなる公職にも就かないということですか?」
スミス州議「バシー、失せろ。(“Piss off Vashy.”)」
カペロス記者「何ですって?」
スミス州議「放っといてよ。」
スミス州議「ごめんなさい。不適切でした。あやまります。私は、まだコメントする心の準備ができていません。」

 ほんの1年前まで、スミスは総理の椅子に手が届く位置にいた。進歩保守党政権は腐敗し、財政赤字を増大させ、そのリーダーシップは迷走し、ワイルドローズ党は支持率で与党を凌いでいた。
 彼女は若くチャーミングで、弁が立ち、政治に関する見識もあり、政治家になるべくして生まれたプリンセスである。彼女はカルガリー大学で政治学と経済学を修め、フレーザー研究所のインターンを務めた。その後はカルガリー・ヘラルド紙のコラムや、グローバル・テレビジョンのホストとして活躍したが、2009年にワイルドローズ党にスカウトされ、党首選に出馬して勝利した。その裏には、進歩保守党政権による石油ロイヤリティ引き上げに反発したジョン・マードック氏らオイルメジャーの資金援助があったと言われている。
 資産家が政界に進出しようとするとき、乗っ取りやすい泡沫政党に目をつけるのはカナダではよくあることだ。ワイルドローズ党は、オイルメジャーから金とカリスマのスミスを送り込まれたことで、一躍有力政党にのし上がった。スミスは党内抗争を抱える進歩保守党から、ロブ・アンダーソン州議とヒース・フォーサイス州議の2人を引き抜き、支持率を急上昇させ、政権奪取する勢いを示した。
 しかし選挙期間中に候補者が、同性愛批判や人種差別発言を繰り返し、新党ならではの基盤の弱さを露呈した。スミス党首自身も、地球温暖化に懐疑的な発言をした。新党ワイルドローズ党にはもともと政策などなく、オイルメジャーが自分たちに都合のいいことを代弁させるために、政策も機構も基盤もない党を乗っ取り、見栄えの良いスミスを看板に立てたに過ぎなかった。
 政権奪取はならなかったものの、ワイルドローズ党は17議席を獲得し、ここ40年間で最強の野党となった。レッドフォード首相の不祥事が発覚すると、ワイルドローズ党は再び支持率トップの座を取り戻し、再び政権を奪取する勢いを示した。
 だが彼女の勢いも、ここまでであった。稀代の策士プレンティスが進歩保守党党首になると、財政に強いワイルドローズ党の政策を丸呑みし、批判を封じた。そして、2014年10月の補選で全敗したスミス党首は追い詰められ、議員8人とともにかつての敵中に飛び込んだ。
 彼女の側近だったビトー・マルシアノ氏は、彼女をこう評した。
「ダニエル・スミスには非凡な政治的才能がある。だが彼女は、有権者とふれ合い理解することを怠った。彼女がしてきたことは自分のための政治だったと、有権者が見抜けないとでも考えたのだろうか。」
 ワイルドローズ党のパット・スティア州議は、こう述べた。
「彼女は魅力的なカリスマであり、アルバータ政界のプリンセスだった。それゆえ彼女の裏切りと迷走は、人々にショックを与えた。彼らは、自分が恋人に捨てられたように感じただろう。」
 スミスは党移籍の後、しばらくは静かになりをひそめていた。おそらく、しばらくすれば人々は忘れてくれると考えたのだろう。だがそうはならなかった。草の根から政界に身を投じ、泡沫政党の党首となり、それを政権奪取の一歩手前にまで引き上げたスミスは、一時は連邦首相の座すら嘱望されたが、無名の新人に予備選で敗れ、まもなく政界を去ろうとしている。
 ワイルドローズ党から進歩保守党に移籍した9人の議員たちは、3人が不出馬を表明し、3人が予備選を勝ち上がり、3人が敗退した。
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