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ワイルドローズ党消滅か、スミス党首ら進歩保守党に移籍を模索 [アルバータ]

 ワイルドローズ党のダニエル・スミス党首を含む数人の議員が、アルバータ進歩保守党への移籍を申し出ていることがわかった。これを受けて進歩保守党は、ワイルドローズ党の吸収合併を申し入れたと複数のメディアが報じた。
 いまやワイルドローズ党と進歩保守党の双方が、メディアを巻き込んだリーク合戦を始め、双方の文書がメディアに流出している。CBCはダニエル・スミス党首、ロブ・アンダーソン院内幹事長、ジェフ・ウィルソン議員、ゲイリー・ビックマン議員、パット・スティア議員、ブレイク・ペダーソン議員、ジェイソン・ヘイル議員の7人が移籍を模索していると報じた。
 11月2日にワイルドローズ党をすでに離党したジョー・アングリン議員(無所属)は、7人から9人が移籍すると予想した。
 だがジェフ・キャラウェイ副代表は、スミス党首、ロブ・アンダーソン院内幹事長、ジェイソン・ヘイル議員、ブルース・マカリスター議員の4人が移籍するという見通しを述べた。
 ワイルドローズ党の14人の議員は、進歩保守党からの申し込みについて話し合うため、12月16日午後に会議を開催した。党執行部は、党の今後について話し合うため、同日夜、電子会議を開催する。

 いっぽう進歩保守党は、12月17日に幹部会を開催する。ジム・プレンティス首相は、移籍問題の詳細について明言することを避けた。
「我々は、向こうで何が起こるか見守る。」
「これらの問題は、我々の幹部会で議論されることだ。そして確かに我々は、明日それに対処する。」
 リークされた文書は、移籍したワイルドローズ党現職議員には、2016年6月までに実施される次の総選挙において、党が擁立することを保障し、もし党員の誰かが立候補しようした場合は首相が警告することを約束している。

 ワイルドローズ党のジェフ・キャラウェイ副代表は、議員たちの動向に関係なく党は存続すると語った。
「議員たちが自分の生き残りのために党を移籍することは、非常に残念である。」
「だが事実は、党は存続する。我々の資金調達力は強固である。我々には、有権者名簿がある。我々には次の総選挙のための、候補者リストがある。」
 ドリュー・バーンズ議員は、ワイルドローズ党議員には、その支持者に忠実であり続け、政府を監視し続ける責任があると述べた。
「この合併がどんなものであれ、私は幹部会の仲間たちが同意をしないことを望む。」
「私は、我々が選ばれた政策と原則に拠って立つことを望んでいる。」
「私は、ワイルドローズ党議員に留まることを約束する。」
 シェイン・サスキュー議員とリック・ストランクマン議員も、ウェブサイトでワイルドローズ党に留まると表明した。
 ポール・ヒンマン前党首は、失望はするが驚かないという。
「我が党は、合併する必要はない。進歩保守党に入りたい人は、自由にそうしてもらって結構だ。」
 だが彼は、党員の資格が、移籍する議員たちに続き自動的に与えられるとは考えていない。
 党創立時からの党員であるコリー・モーガン氏は、党員資格について話し合われなかったことに怒りをあらわにした。
「我々党員たちは、様子を見守っているだけだ。党員たちはいまだに、この重要な問題について何も知らされていない。我々党員は、何の相談も受けていない。党員そして支持者として、私は怒り、傷ついている。」
 彼はプレンティス首相を「有能なマキャベリスト」と呼んだ。
「彼は野党の価値を下げるあらゆる方法を見つけ、それを見事にやってのけた。」
 ワイルドローズ党の主張する財政政策を、プレンティス首相は次々と丸飲みすることで、ワイルドローズ党の存在意義を失わせ、2つの右派政党合併を現実のものにしたのだ。

 アルバータ新民主党のレイチェル・ノトリー党首は、両党ともに政策ではなく権力にしがみつくことにしか関心がないと斬り捨てた。
「リークされた文書は、草の根民主主義に基づくものではない。それはあたかも、権力にしがみつくためのガイドである。」
 そしてプレンティス首相については、「彼はワイルドローズ党のマニフェストに則り統治しようとしていた」と評した。
 アルバータ自由党のラジ・シャーマン党首は、強い政府には強い野党が必要だが、プレンティス首相率いる中道右派の進歩保守党は、右翼のワイルドローズ党と区別がつかないほど右にシフトしたと説明した。
「我々が保守の与党を持ち、そして保守の野党を持つことは、無意味である。」

 マウント・ロイヤル大学で政治学を教えるデュエイン・ブラット教授は、合併問題を「非常に奇怪」と評した。
「ワイルドローズ党は、アルバータ州政治の歴史上最も強力な野党であった。プレンティス首相の政策の多くは、ワイルドローズ党が主張したものをただ採用しただけである。だがもしアルバータ州で財政問題が起これば、ワイルドローズ党は財政問題に強みを持っているので、壊滅的転落の後も生き残れたと私は考えている。」
 そしてブラット教授は、合併は民主主義にとっての悲劇であると述べた。
「我々はここ数年の間、この州において2つの政党がしのぎを削る状況を手に入れていた。ひとたび合併が実現したら、もうそれを見ることはないだろう。」

 ワイルドローズ党は、2003年創立のアルバータ同盟党と2007年創立の(旧)ワイルドローズ党が源流である。アルバータ同盟党はカナダ同盟の支持者が創設した州組織だが、カナダ同盟はアルバータ進歩保守党と提携したので、ただ一度の総選挙で一人しか当選させられなかった。(旧)ワイルドローズ党は党員わずか76人の泡沫政党で、政党登録されず、総選挙に出馬できなかった。両党は2008年に合併して「ワイルドローズ同盟党」となり、後に党名変更してワイルドローズ党となった。
 2009年、美人で弁の立つダニエル・スミスが党首に就任すると、支持率は急上昇したが、2012年総選挙では世論調査で強い支持を受けていたにもかかわらず、候補者が人種差別・アンチゲイ・地球温暖化否定などの発言を繰り返し、新党ならではの組織の弱さと、候補者選定のいいかげんさを露呈し、17議席と完敗を喫した。
 10月27日に4つの補選で全敗すると、スミス党首は己の責任を問うどころかマスコミの報道を批判し、選挙スタッフを解任、ついには側近のジョー・アングリン議員が秘密裏に幹部会の内容を録音していたと根拠なしに主張するに至り、議員たちが続々と離党する事態を招いた。
 ワイルドローズ党はカルガリーに2議席、エドモントンに0議席と、典型的な田舎政党であり、強い宗教的背景を持っている。昨年同性愛者の権利を尊重する決議を採択したにもかかわらず、今年11月にスミス党首不在の場で党員が、これをマニフェストに載せない決議を可決したため、党内の緊張が高まっていた。
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