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自由党が補選で2議席獲得:熱く燃えるオンタリオと、しらけるアルバータ [自由党]

 カナダ・デーの前日6月30日に実施された下院補欠選挙は、4選挙区のうち2選挙区で自由党が勝利し、勢いを見せた。与党保守党は、現有するアルバータの2選挙区を維持した。新民主党は、オンタリオの現有議席を失うなど、全ての選挙区で敗北した。

 ジャスティン・トルドー党首は2013年4月に自由党党首に就任して以来、補選において中西部では全敗(全て保守党の勝利)しているものの、中西部以外では全勝している。彼は現有議席の全てを維持しつつ、2013年5月にラブラドル選挙区でペナシュー政府間関係大臣の議席を奪い、今回もトロントの選挙区で新民主党が長く保持した議席を奪った。


 オンタリオ州トリニティ=スパダイナ選挙区は、チャイナタウンを含んでおり、中国系のオリビエ・チャウ議員(新民主党のレイトン元党首未亡人)が3期8年保持してきた。彼女がトロント市長選出馬のため辞職したことが補選を行う理由だが、この選挙区は長年自由党と新民主党が取ったり取られたりを繰り返しており、総選挙全体を占う指標となっている。
1988-1993 ダン・ヒープ(新民主党)
1993-1997 トニー・ヤンノ(自由党)
1997-2000 トニー・ヤンノ(自由党)
2000-2004 トニー・ヤンノ(自由党)
2004-2006 トニー・ヤンノ(自由党)
2006-2008 オリビエ・チャウ(新民主党)
2008-2011 オリビエ・チャウ(新民主党)
2011-2014 オリビエ・チャウ(新民主党)
20014-   アダム・バーン(自由党)
 偶然にも、選挙区を自由党が制したときは自由党政権に、新民主党が制したときは保守党政権になっているのだ。
 人気ジャーナリストのアダム・バーン市会議員を擁立して選挙区を制したトルドー党首は、以下の声明を発表した。
「トロントの有権者は、自由党がハーパー政権に取って代わる唯一の選択肢であるという、明確なメッセージを送った。」
 いっぽう新民主党のトム・マルケア党首は、トルドー党首就任以来補選で全敗している。彼は、次の総選挙ではトリニティ=スパダイナ選挙区は分割され存在しなくなると述べ、不吉なジンクスを否定したうえで、こう述べた。
「総選挙は、15か月以内に行われる。我々はそのとき、ここに帰って来る。」


 オンタリオ州スカボロー=エイジンコート選挙区は、1988年の選挙区創設以来自由党が26年間保持している鉄板選挙区である。保守党は、トルドー党首がマリファナ合法化を支持したことを執拗に批判し、議席を奪おうとしたが、自由党のアーノルド・チャン候補が得票率59.3%で圧勝した。これは前回2011年総選挙で、ジム・カリジャニス候補が獲得した45.4%を大きく上回った。
 チャン候補はこの勝利を、保守党によるトルドー党首へのネガティブ・キャンペーンの拒絶であると評価するとともに、投票日をカナダ・デーの前日にすることで有権者を投票から遠ざけ、批判を封じることで与党が利益を得ようとしたと非難した。


 アルバータ州フォートマクマレー=アサバスカ選挙区は、カナダ保守党が2003年から、その前身の進歩保守党・改革党・カナダ同盟も含めると1968年の選挙区創設以来保持している鉄板選挙区である。
●2014年下院補欠選挙
1.デビッド・ユーディガ(保守党)46.78%
2.カイル・ハリエッタ(自由党)35.34%
3.ロリ・マクダニエル(新民主党)11.4%

●2011年下院総選挙
1.ブライアン・ジーン(保守党)71.84%
2.ベレンド・ウィルティング(新民主党)13.24%
3.カレン・ヤング(自由党)10.42%

 自由党は、得票率を前回総選挙から25ポイントも上昇させ、当選者に迫る勢いを示した。そもそも自由党は、トルドー党首の父ピエール・トルドー元首相が、地下資源に課税することで中西部の産油州を狙い打ちにした「国家エネルギー計画」が原因で、中西部で議席を獲れなくなったのだが、この数字はトルドーが党首でも、自由党は議席獲得が可能であることを示している。


 アルバータ州マクラウド選挙区は、カナダ保守党が2004年から、その前身の進歩保守党・改革党・カナダ同盟も含めると1958年から、右翼の社会信用党も含めると1935年から保守系が保持している鉄板選挙区で、テッド・メンジース財務担当国務大臣の辞職により補選が行われた。
●2014年下院補欠選挙
1.ジョン・バーロウ(保守党)68.75%
2.ダスティン・フラー(自由党)16.99%
3.ラリー・アシュモア(緑の党)5.78%
4.エイリーン・バーク(新民主党)4.25%

●2011年下院総選挙
1.テッド・メンジース(保守党)77.48%
2.ジェニーン・ジルス(新民主党)10.33%
3.アッチラ・ナジ(緑の党)4.63%
4.ニコル・ハンケル(自由党)3.68%

 自由党は2011年総選挙では、緑の党をも下回り4位と惨敗したが、今回補選では得票率を4倍にした。保守党は得票率を9ポイント近く落とし、新民主党は緑の党をも下回る惨敗を喫した。


 なお今回補選は、多くの有権者が週末から火曜のカナダ・デーまで続く4連休のさなかに実施された。投票率は、オンタリオの2選挙区ではトリニティ=スパダイナ選挙区が31.6%、スカボロー=エイジンコート選挙区が29.4%と高い数値を示したのに対し、アルバータの2選挙区ではフォートマクマレー=アサバスカ選挙区が15.2%、マクラウド選挙区が19.6%と記録的な低投票率となった。選挙管理委員会は、マクラウド選挙区は史上2番目の低投票率、フォートマクマレー=アサバスカ選挙区については近年では最低であり、これより低い数値があるかどうかは連邦発祥時まで記録を遡らないと回答できないと発表した。
 批評家は、フォート・マクマレーはオイルサンド採掘地であり、出稼ぎ労働者の仮設住宅が多く、「ニューファンドランドで2番目に大きい町」と言われるほど地域への住民の帰属意識が低いと指摘した。採掘地の夏の週末は日が照って暑く、カナダ・デーを含む4連休が、住民の選挙区からの脱出を促した可能性がある。
 確実に言えることは、カナダ・デーを含む4連休にもかかわらず、オンタリオの有権者は自由党を熱烈に支持したが、アルバータの保守党支持者は長年続く無風選挙に情熱を失っているということである。
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