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ケベック党政権、「政教分離憲章」を上程か [ケベック]

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 ケベック党政権は9月中旬、「政教分離憲章」を発表する。これは、学校・保育所・病院など公務員の職場で、宗教的なシンボルを身に着けることを禁止するものだという。
 ケベック党は議会で過半数に達していないため、この動きは当初、民族主義者に対するただのパフォーマンスと見られてきた。ところが第二野党のケベック未来連合が、憲章を部分的に支持すると発表したことで、可決の可能性が出て来た。同党のフランソワ・ルゴー党首は、教員・裁判官・警官・刑務官については禁止すべきだが、医師・保育士については禁止すべきではなく、また十字架の禁止は必要ないと主張する。

 この問題はさっそく、連邦政界にも飛び火した。これについてハーパー首相は8月29日、まだ法案を見ていないとことわったうえで、こう述べた。
「分離主義者は連邦政府に戦いを挑むのを好んでいるが、我々には関心はない。この国に来る人々の人種や宗教が何であれ、自分がカナダ人でありこの国が祖国なのだと感じるようにすることが、我々の仕事だと心得ている」。
 だがカナダ保守党の前身である改革党は、かつてシーク教徒のRCMP(連邦警察)警官がターバンを被るのは禁止すべきだと主張していた。改革党とケベック党はいわば同じ穴のムジナであり、違うことといえば前者は極右で後者は極左だということでしかない。
 新民主党のトム・マルケア党首にとって、この問題はすこぶるやっかいだ。同党はもともと西部とオンタリオを基盤にしてきたが、前回総選挙のときケベックで57議席を獲得している。ケベックの有権者におもねり憲章を支持する発言をすれば、民族の坩堝であるオンタリオとブリティッシュコロンビアで手痛いしっぺ返しを食らうことになるだろう。
 彼は今週、裁判所が違憲判決を出すことが予想される法案を、ポリーヌ・マロワ首相は発表しないだろうと発言した。だが1982年憲法第33条の「適用除外条項」により、州政府が連邦憲法に反する法律を制定してきたというのも、過去に何度か見てきた光景である。
 自由党のジャスティン・トルドー党首にとっても、事態は複雑である。第一に彼はケベック州選出議員であり、第二に彼は多様文化主義とそれに基づく憲法を制定したトルドー首相の息子だということである。
 彼は、キング牧師の演説の50周年に当たる28日、「キング牧師は隔離を拒否し、差別を否定し、彼らが二級市民とみなされることを拒否した」と述べて、あたかもケベック党政権が人種差別政策を採ろうとしているかのような印象を与えた。彼はさらに「我々が宗教とケベック・アイデンティティのどちらか一方を選ばなければならないと信じている人々が、いまだにいるのは残念だ」「憲章は人々に信教の自由・表現の自由・信条の自由と、職場における受容と経済的安定の一方を選ぶよう仕向けるものだ」と批判した。
 これについてマロワ首相は、以下のように反論した。
「トルドー党首の発言は、論争の火に油を注いだ」。
「自由党党首はコメントする前に、発表された法案を見た方がいい」。
「国は中立でなければならないという我々の考えを、明確にさせて欲しい。それは私的な領域で、信教の自由を阻害するものではない」。
 いっぽう連邦政党であるケベック連合のダニエル・パイエ党首は、これはケベック州民の問題であり、連邦の政治家は口を出すべきでないと語った。だがマルケア党首は、これにすかさず反論した。
「私は、ケベック選出の議員である。すべてのケベック州民はこの論争に関わりがあるということを、パイエ党首は理解すべきだ」。
 ケベック自由党のピエール・パラディ議員は、ケベック党政権は経済政策の失敗から目を逸らすために、民族主義的政策に注意を引きつけていると批判した。

 世論調査では、ケベック州民の57%、フランコフォンの65%が憲章に賛成すると回答した。だがアングロフォンでは25%、アロフォンでは33%にとどまった。モントリオール市議会は27日、満場一致で憲章を支持しない動議を採択した。
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図上:政教分離憲章の創造。
図下:ベルナール・ドレンビル大臣が提唱する、宗教的シンボルを表示しない旗。
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