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ケベック連合、キルパン携帯禁止を連邦議会に要求 [人権]

800_navdeep_bains_110120.jpg シーク教徒が祭祀用の短剣「キルパン」を携帯したためケベック州議会への立ち入りを拒否された事件を受けて、ケベック連合のクロード・ドベルフェーユ下院幹事長は1月19日、州議会の対応を支持するとともに、連邦議会においても同様のガイドラインが必要だとする意向を述べた。
「この問題は、宗教上のシンボルに関する議論ではない。それは、セキュリティの観点から分析されなければならない。我々には、適切なセキュリティの指針が必要である。」
 彼女は、キルパンは金属製ナイフのような武器とは違うというなら、その明快な理由を説明する必要があると語った。

 だがこの問題は、シーク教徒である自由党のナブディープ・ベインズ議員(オンタリオ州ミシサウガ-ブランプトン・サウス選挙区)にとっては死活問題である。彼はテレビのインタビューでこう述べた。
「この問題を今取り上げる真の理由は、存在しない。私は2004年からキルパンを携帯していたが、彼らはこれまで問題にはしなかった。私はカナダ連邦最高裁や、アメリカ議会にすらキルパンを持ち込んでいるが、一度も問題になったことはない。」
「我々は、この問題を政治化してはならない。彼らは国民を分断し、混乱と不信の種を植えつけようとしているのだ。」
 彼は今月には、キルパンを携帯してニューファンドランド&ラブラドル州議会に入場している。

 新民主党のレイトン党首夫人であるオリビア・チャウ議員は、ケベック連合の提案を一蹴した。
「ケベック連合は、分断政治ゲームを恥じるがいい。シーク教徒の議員は長い間何名か、連邦議会にいる。それは今まで問題ではなかったし、これからも問題であるべきではない。」
 自由党のイグナティエフ党首は、祭祀用のキルパンは武器ではないと強調し、次のように述べた。
「全てのカナダ人は、議会と民主主義にアクセスする権利を持つ。これは寛容の問題であり、信教の自由の問題である。」
 シーク教徒の下院議員は少なくともあと2人いるが、彼らが議場にキルパンを持ち込んでいるかどうかは定かではない。
 ケベック州には、全国のシーク教徒人口の3%以下しかいない。それゆえケベック連合は、シーク教徒に何ら配慮する必要なしにこの問題を取り扱うことができる。反対に自由党や新民主党は、ケベック州で多くの議席を期待できず、むしろシーク教徒の多いオンタリオ州やブリティッシュコロンビア州の議席が多いことから、彼らに配慮する必要があるだろう。
 ケベック州議会に入場を拒否された4人のうちの1人であるバルプリート・シン氏は、こう述べた。
「多文化主義は、カナダのすばらしいモデルである。フランスの『ライシテ』モデルは、ゲットー化と暴動をひき起こした。」
 また彼は、世界シーク教徒機構が問題の表面化を狙っていたとする疑惑を否定した。
「世界シーク教徒機構のメンバーを州議会に招待しておきながら、キルパンを携帯しないことを期待していたとは驚くべきことだ。我々は騒動をひき起こすことを狙っていたわけではないが、騒動が起こることを予感していなかったと言えば嘘になるだろう。」

 アングロ・カナダの批評家の何人かは、ケベック議会の対応について懸念を表明した。だがケベック州内では、一部のアングロ・カナディアンをのぞき、ほとんどが州議会の対応に好意的だった。
 モントリオールに関する2006年の最高裁判決は、キルパンが小さなもので、かつ直ちに抜くことができないよう衣服の中に収められている限り、禁止する正当性がないと判断した。また、生徒ははさみから野球のバットまで、キルパンと同等に危険な物を容易に入手できると指摘した。だが4人のシーク教徒の入場を拒否したセキュリティ責任者の「人を刺すことができるなら、それは私にとってはナイフである」という発言は、喝采を浴びた。
 ケベック民主行動党のマリオ・デュモン元党首は、アングロ・カナダからの批判は「残りのカナダからの恒例のケベック・バッシング」と語った。
 政治学者のクリスチャン・デュフールは、こう述べた。
「ケベック連合が、このような純粋なケベック的価値をオタワで推し進めようとしていることに驚く。だが間違えてはいけない。彼らは、カナダには多様な考えがあるのだということを声高に宣伝しているのだ。」

 1984年にドニ・ロルティがケベック州会議事堂に侵入し、銃を乱射して死者3名・負傷者13名を出した事件の後、セキュリティは厳格化された。あれから四半世紀が経ったが、弾痕は事件を風化させないように修復されず、今もそのまま残っている。


写真:ナブディープ・ベインズ議員。
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