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カナダの事業仕分け「プログラム・レビュー・テスト」 [自由党]

 行政刷新会議事務局の加藤秀樹局長は、事業仕分けはカナダで90年代に行われた「プログラム・レビュー・テスト」をモデルにしたという。

 進歩保守党のマルローニ政権下で、財政赤字は206億ドルから450億ドルに拡大した。これはGDPの6%にあたり、歳入の実に35%が利払いに費やされていた。1993年の総選挙で、財政赤字解消の見通しについて問われたキム・キャンベル首相は「今世紀終わりまでには」と答弁し、失笑をかった。下院の任期が5年しかないのに、財政赤字解消に7年もかかるのは遅すぎるし、人気のない彼女が7年も首相を務めるつもりになっていたからである。
 野党自由党のジャン・クレチエン党首は、財政赤字を3年でGDPの3%以下にすると公約し、総選挙に大勝して政権を奪回した。クレチエン首相・マーチン財務相のコンビは、さっそく事業仕分けに取りかかる。連邦政府が行う公益事業プログラムについて、(1)公益性はあるか、(2)政府がすべきか、(3)州に委譲できないか、(4)民営化できないか、(5)効率化できないか、(5)今やるべきか、の6つの観点に基づき、財務省が提示した歳出削減案を受けて、各省庁がレビューを行い、内閣に設置された特別委員会がこれを精査した。これを「プログラム・レビュー・テスト」という。
 いっぽう歳入面では、法人税引き上げ、キャピタルゲイン控除廃止、ガソリン税・タバコ税増税などを実施した。

 この結果クレチエン政権は、連邦公務員4万5000人(19%)を削減し、1997年度以降5年連続財政黒字と、5年にわたる1000億ドルにおよぶ史上最大規模の減税を実現した。読売新聞は、ハリファックス・サミットで「G8首脳中最も成績がいいのはカナダのクレチエン」と評した。
 カナダの財政赤字解消は、アメリカの戦後最大の好況期と重なっており、また旧二大政党の進歩保守党が凋落し、保守政党が2つに割れて保守票を奪い合い、政権交代の危機がないという幸運にも恵まれていた。クレチエン首相は1997年・2000年の総選挙にも楽勝して戦後唯一の連続3選を果たし、財務大臣もマーチンが8年半の長期間務め、継続的に任務に当たることができた。

 だがクレチエン政権末期には、帳尻合わせのための社会保障費削減から公共サービス低下を招き、病院での診療待ちが常態化した。クレチエン首相は、自分の追い落としを画策したマーチン財務相を更迭する。しかし人気を失ったクレチエンに付く者は少なく、マーチンはクレチエンを総理・総裁の座から引きずり下ろし、政権を奪った。かつての盟友だった両者は、今は犬猿の仲である。
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