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首相官邸への道はケベックを通る [ケベック]

 自由党のイグナティエフ党首は6月4日、モントリオールのホテルでの演説で、今こそケベック連合への投票を止め、自由党を政権に就けるときだと、ケベック人に熱いメッセージを送った。
 下院議席の4分の1を占めるケベック州は、総選挙の雌雄を決する鍵を握っている。極論すれば、ケベックが推す党こそが総選挙の勝者である。ところがケベック連合は1990年の結党以来、ケベック州で常に第一党の地位にある。これはすなわち、1993年以降ケベック州が常に野党であったことを意味する。
 彼は、ケベックはケベック連合に投票することによって政権を失ったと指摘した。ケベック人の多くは2008年総選挙で、右翼のハーパー政権が芸術助成プログラムを打ち切ったことに抗議し、ケベック連合に投票した。だがイグナティエフ党首はこう指摘した。
「ケベック人は抗議したが、ハーパー政権はいまだ健在ではないか。」
 彼は、自由党の政権復帰に力を貸してほしい、その代わり自由党はケベックが望む政治を実現できると約束した。また自由党政権においては、ケベックの誇りとカナダの偉大さは矛盾しないと訴えた。
「サセックス24番地(注※首相官邸)への道は、ケベックを通るのだ。」
 しかし彼は、ケベックの支持を得るために法律上の特権を供与するつもりはないとも明言した。それはかつてマルローニ首相が、進歩保守党を破滅させた「いつか来た道」にほかならない。
 芸術家が作品を海外で展示するのを援助する芸術助成プログラム復活の公約は、スタンディング・オベーションで迎えられた。
「私は、ギ・ラリベルテ(シルク・ド・ソレイユ創設者)やロベール・ルパージュ(脚本家)、ロベール・シャルルボワ(作曲家)がただの芸術家ではないと考える政府が欲しいのだ。」

 だがイグナティエフがケベックの支持を受け、政権に就くには多くの難関がある。自由党の圧倒的高支持率の前に、保守党・新民主党・ケベック連合3党は自由党包囲網を結成した。保守党はすでにイグナティエフ党首のネガティブ・キャンペーンに着手し、流暢な彼のフランス語は、ケベックではなくパリのものだと中傷している。
 自由党はすでに、スポンサーシップ事件によってケベックで人気を下げている。2006年に彼が口火を切って始まった「ケベックは国家」論争に、彼自身が縛られることになろう。1992年、ケベック独立運動について「せいぜい良く言ってもケベックのはったりでしかない。独立したいならさせろ」という発言を、ケベック人はよもや忘れてはいまい。
 ケベック連合のピエール・パケット議員は、イグナティエフ党首の姿勢を、(ケベック出身の)トルドー首相やクレチエン首相らによる中央集権主義の伝統を踏襲するものでしかないと批判し、「それは、ケベックをかつてと同じ場所に置こうとする古き良き自由党だ」と一蹴した。
 新民主党のトーマス・マルケア議員は、「それは、35年もの間カナダ国外にいただけではなく、カレッジで学んだこと以外にケベックについて彼が何も知っていないことを示すものだ。率直に言って、彼を少しも恐れてはいない」と語った。
2895463 保守党のジャック・グールド議員は、イグナティエフ党首がケベックに特権を付与することを否定した発言について、戦時措置法におけるトルドー首相とスポンサーシップ事件におけるクレチエン首相の行状に並ぶものだと批判した。
 さらに保守党のクリス・ウォーケンティン議員は、「34年間もカナダを離れて、自分をアメリカ人だと言い、カナダ人を『ファンタジーランドの住人』と嘲り、わが国の国旗を『ビールのラベルの偽者』と呼んだ挙句にカナダに戻って来るとは、何と勇気のあることだろう」と痛烈に批判した。


写真:モルソン・カナディアン。
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