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自由党の支持率上昇、遠のく解散・総選挙 [自由党]

 バンクーバー・オリンピックは、2010年2月12日から開催される。このとき首相の椅子についている者は、特別な国際的注目を浴びることになるだろう。
 各種世論調査は、最大野党自由党の支持率が与党保守党を凌いでいることを示している。そこで保守党は、オリンピック以前の政権交代を阻止するため、来年度予算を通常より2か月遅らせ、3月に上程することを計画している。
 だが自由党は支持率は高いものの、前回総選挙で議席を大幅に減らしている。保守党が過半数にわずかに足りず、議会を制するためには野党3党のうちの1つと提携すればいいのに対し、自由党は内閣不信任するためには、新民主党とケベック連合の両方の協力を必要とする。果たして両党は、前回総選挙で議席を上積みしたにもかかわらず、早期の解散・総選挙に打って出る理由があるだろうか。
 両党はともに左派政党であり、自由党が議席を減らすと議席を増やし、自由党が議席を増やすと議席を減らすのが通例である。ジャック・レイトンは、党首に就任したときわずか13議席だった新民主党を、37議席にまで勢力を拡大することに成功した。また同党は、昨年の総選挙で巨額の費用を費やしたと言われている。
 しかしケベック連合にとっては、お金は問題ではない。選挙運動のため、他党が飛行機を乗り継ぎ大陸を東奔西走するとき、ケベック連合はケベック州だけで選挙運動する。
 ところがケベック州で保守党が持つ議席は、自由党より少ない。自由党の支持率が上がれば、ケベック連合はモントリオール周辺の議席をほとんど失うことになるだろうが、保守党の人気が下がってもケベック連合が獲得できる議席は、多くはない。ケベック市周辺の保守党の議席は、保守党の支持率が低いときでも当選できる強固な地盤であり、これを奪うことは容易ではない。

 保守党もまた過半数割れで、単独では何もできず、野党のうちの1つを味方にしておく必要がある。もしくは、内閣不信任を阻止するため野党3党の団結を阻害し、たとえ総選挙に追い込まれても野党同士を戦わせておきたい。このとき、左派票を自由党と新民主党に分裂させておくことが重要だ。
 新民主党が保守党の議案に賛成投票すれば、党内から強い反発を招くのが通例だ。特に新民主党はこの3年間、自由党は空理空論を唱え保守党政権維持に手をこまねいていたと非難し続けてきた。保守党への協力は新民主党票の分裂を招き、中道左派を自由党のもとに集結させることになる。こうして、新民主党・自由党・保守党の3党が競り合っているオンタリオ・東部・ブリティッシュコロンビア南部において、自由党候補が保守党候補を破るのを見ることになるだろう。
 ところがケベック連合は、ケベックの利益のためなら保守党を支援するにやぶさかではない。そこで何とかケベックに好餌を与え、ケベック連合を賛成もしくは棄権させることができれば、新民主党と自由党の2党では何もできないので、新民主党はもはや原理主義的な保守党への反対投票を行うしか道はなく、新民主党票の分裂を回避できる。保守党と新民主党は裏取引を行い、議会で激しく討論するふりをすればいいのだ。そうすれば新民主党とケベック連合は、上げ潮の自由党に議席を奪われることを予防できるので、自由党による政権奪回を阻止することになるのだ。

 4月29日に発表された、CROP社によるケベック州での政党支持率調査は、自由党37%、ケベック連合31%、保守党15%、新民主党12%となり、スポンサーシップ事件が発覚した2004年以来初めて、自由党がケベックで首位に立った。この数字は、今総選挙が実施されれば、ケベック連合は議席の半分を失うことを意味する。また最も首相にふさわしい人物として、ケベック人の45%が自由党のマイケル・イグナティエフ党首を、わずか17%が保守党のスティーブン・ハーパー首相を挙げた。これらの数字は、自由党以外のどの党にとっても脅威であり、早期解散・総選挙の可能性は、ほとんどなくなったと見るべきだろう。
 ケベック連合が推進する、26億ドルの税収をケベックへ移管する税統合システムに対し、保守党はこれまで反対してきたにもかかわらず、世論調査の影響を受けてか、29日に賛成投票した。新民主党が保守党に同調するかどうかは、同党が訴えている失業保険制度改革・年金制度改革・クレジットカード規制への取り組みしだいであろう。イグナティエフ党首は2月に連立協定を反故にしたが、いま保守党・ケベック連合・新民主党による新しい自由党包囲連合が結成されつつあるようだ。
 新民主党のレイトン党首は、失業保険・年金・クレジットカードに関する提案について、保守党からまだ連絡はないと語り、「我々はそれらが成立するよう邁進するのみである」とコメントした。ケベック連合のジル・デュセップ党首は「私は、世論調査についてはコメントしない。私は選挙に勝つだけだ」と語った。
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