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コスグレイブ判事が辞職 [犯罪・事件]

2687873 ラリー・フォスター殺害事件で、世紀の誤審を犯したオンタリオ高等裁判所のポール・コスグレイブ判事が4月2日、辞職した。彼は今年12月に75歳の定年を迎え、17万ドルの退職金を得る予定になっていた。
 カナダ司法委員会は3月31日、「国民の信頼を回復不能なまでに損なった」として連邦議会にコスグレイブを罷免するよう要請しており、彼が史上初めて罷免される裁判官になることは確実な情勢だった。1996年にも、ジャン・ビアンブニュ判事が議会での弾劾の前に辞任している。
 辞任を受けてロブ・ニコルソン法務大臣は、「コスグレイブ氏が辞任した以上、もう何の措置も必要ない」とコメントした。またラリー・フォスターの双子の兄弟レン・フォスターは「彼は、自分がしたことの報いを受けている。過ちを悟るのが少し遅かったのではないか」と語った。

 コスグレイブは1969年から78年までスカボロー(現トロント)の市長を務め、1980年に下院議員に当選して政界入りし、トルドー内閣の公共事業大臣を務めた。1984年には政界を引退したが、ターナー首相によってオンタリオ高等裁判所裁判官に指名された。
2687872 1995年、ラリー・フォスター(64)が殺害され、遺体がリドー川で発見された事件で、バルバドス人のジュリア・エリオット容疑者が起訴された。被害者が死亡した直後、エリオット容疑者が被害者のクレジットカードを使用し、彼のステレオ・電子レンジ・カメラ等をバルナドスに送った事実が明らかになったにもかかわらず、コスグレイブ判事は2年に及ぶ予備審問の後、警察と検察が150もの憲法違反を犯したとして、1999年裁判を中止した。エリオットは国外に脱出した。
 ところがオンタリオ控訴裁は2003年、オンタリオ州司法副長官が検察に裁判で偽の情報を提示するよう指揮したとするコスグレイブの主張には根拠がないとして、判決を覆しエリオット容疑者の新しい裁判を行うよう命じた。これを受けてオンタリオ州のマイケル・ブライアント司法長官は、カナダ司法委員会にコスグレイブの処分を要請した。そしてコスグレイブは、2004年12月まで停職となった。
 だがコスグレイブは、司法長官による処分は憲法が定めた司法の独立に反しているとして、カナダ司法委員会に異議を申し立てた。彼は、もし司法長官による処分を認めるなら、裁判官はそれを恐れ、検察に不利な判決を下すことができなくなると主張した。裁判官協会とオンタリオ刑事弁護士会は、コスグレイブを支持した。
 2005年10月、カナダ連邦地裁は、司法長官がカナダ司法委員会に裁判官を処分させる指揮権を剥奪した。だがこの間に、エリオット容疑者がコスタリカで逮捕され、殺人の罪を認めた。連邦控訴裁は2007年3月、連邦地裁の判決を破棄し、この問題をカナダ司法委員会に一任した。
 2009年3月31日、22名から成るカナダ司法委員会は全員一致で、コスグレイブの罷免を連邦議会に要請した。
 エリオットは現在、キッチナー刑務所で懲役7年の刑に服している。


写真上:ポール・コスグレイブ判事
写真下:ジュリア・エリオット受刑者。
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