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オバマ当選はカナダ政治にどう影響するか [アメリカ]

●米加のねじれ
 11月5日、アメリカ大統領選挙でバラク・オバマ候補が当選した。これによりカナダとアメリカの関係は「保守-リベラル」となり、マーチン首相-ブッシュ大統領の「リベラル-保守」関係以来の「ねじれ」となった。
 歴史的に保守党の首相は、共和党の大統領とはウマが合った。特にマルローニ首相はレーガン大統領とはアイルランド系同士で、史上かつてないほどアメリカ寄りの政策を採った。
 だがカナダでは自由党政権が圧倒的に長いのに対し、アメリカの大統領は共和党の方が多い。そのため「リベラル首相-保守大統領」の組み合わせがどうしても多くなるが、しばしばトラブルを起こしている。
ケネディ大統領はディーフェンベーカー首相を「ディーフェンバーカー首相」と呼び、カナダ首相の名前を知らないことを告白してしまった。ディーフェンベーカー首相はお返しに、ケネディ大統領の「キャナダー」という訛りを真似しておちょくった。
 貧しい家から叩き上げで大統領にのし上がったニクソン大統領は、金持ちでハーバード卒でプレイボーイでそのうえ容共主義のトルドー首相が大嫌いで、後にウォーターゲート事件が発覚したとき「あのトルドーのバカ野郎(asshole)」と語ったテープが公開された。またニクソンはトルドーと会談した後「カナダ首相とその素晴らしい奥様に感謝する」と語ったが、トルドーは独身だった。
 クレチエン首相はイラク戦争に追随しなかったばかりか、ブッシュ大統領がNATO会議でイラク戦争協力を議題に載せたことに対し、デュクロ広報担当が「何というバカ」と言ったのがマスコミに洩れたため、両国の関係は冷え切った。
 さて保守党のハーパー首相と民主党のオバマ大統領の関係は、どうだろうか。両者はその所属する政党の違いにも関わらず、必ずしも正反対ではない。カナダ保守党はハーパー党首の下で、かつての右翼から中道右派へとシフトしている。いっぽうオバマは同性結婚に反対するなど、保守的な側面も見せている。両者はともに40代後半と若く、教会に通う熱心なクリスチャンだという共通点もある。
 だがハーパー政権は、オバマ政権に期待を寄せているふうではなく、冷静に相手の出方を見ているようだ。ハーパー首相はオバマ次期大統領に対し、最初の外遊先にカナダを選ぶよう要請はしないと語った。現職のジョージ・W・ブッシュ大統領が2000年に就任して、最初の外遊先にメキシコを選んだとき、カナダのメディアは嵐のように批判したものである。

●アフガン撤退
 アメリカはアフガニスタンにすでに3万6000の軍を送っているが、オバマは混乱の続く中央アジアをテロとの戦いの中央戦線とみなしており、イラクの部隊を縮小するいっぽうで、アフガニスタンにはさらに1万2000の軍を送ると公約した。しかし10月の総選挙で、カナダの主要政党はいずれもアフガニスタンからの撤退を公約しており、保守党も2011年までの撤退を約束している。ローレンス・キャノン外相は11月5日、オバマ氏の当選は政府のアフガニスタン撤退に影響を与えないとコメントした。
 カナダはアフガニスタンに2500の軍を派遣し、その多くはカンダハルに駐留している。2002年以降、98人のカナダ兵がアフガニスタンで死亡している。

●NAFTA問題
 オバマ候補は、労働・環境規定についてNAFTA見直し交渉を行い、カナダが再交渉に応じない場合には離脱も辞さないと主張した。だがこの発言は、労組の力が強いオハイオ州向けのリップサービスにすぎないと、誰も本気にしていない。
 3月、オバマ陣営の経済顧問がカナダ公使と接触して「NAFTA見直しはあくまで選挙用で、大統領になってもカナダとの合意は変えるつもりはない」と語ったとCBCが報道して話題になったが、この情報はカナダの保守党政権が意図的にリークしたとするいわゆる「NAFTAゲート事件」についても、ハーパー政権は問題にはならないと見ている。
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