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保守党党首にポワリエーブル [保守党]

 保守党党首選は9月10日に予定どおり開票され、ピエール・ポワリエーブル元民主改革大臣・元雇用・社会開発大臣が第1回投票で68.2%を獲得し、当選した。今回もまたカナダ同盟出身者が当選し、進歩保守党出身者は勝てなかった。ポワリエーブル氏は338選挙区のうち、330選挙区で勝利した。対抗馬と見られていたジャン・シャレー元ケベック州首相は16.1%に終わり、8選挙区でしか勝利できなかった。唯一の社会保守主義者レスリン・ルイス議員は9.7%、ローマン・バーバー元州議は5.0%、スコット・エチソン議員は1.1%だった。

 ポワリエーブル新党首は当選直後の演説で、前任者がそうであったように、党首に就任するや方針を変えてしまうのではないかという疑念を明確に否定した。
「人々は、私に何を期待すべきかをわかっている。大きな転換はない。私は私のままである。」
 ピエール・ポワリエーブル氏は1979年、カルガリーで生まれた。母は16歳の未婚の母で、生まれてすぐに、フランス系カナダ人のポワリエーブル夫妻に養子に出された。彼は実の両親を知らずに育ち、幼少期より英仏2か国語を流暢に話した。新聞配達しながら高校に通い、カルガリー大学の学生時代に「総理になったらこうする」小論文コンテストで入選し、賞金1万ドルを獲得した。
 カルガリー大学保守党青年会の委員長を務めたが、ジョー・クラーク党首への支持を巡り、全国保守党青年同盟のパトリック・ブラウン代表と激しく対立した。この2人が2022年の保守党党首選で激しい舌戦を繰り広げたことは、因縁めいている。
 ポワリエーブル氏はその後改革党に入り、2004年総選挙で初当選。25歳の下院議員は、当時の議会で最年少だった。

 ポワリエーブル氏は、近年のポピュリストでは珍しく移民を敵視せず、市民を人種で分けて論じることはなかったが、全ての人を自分の敵か味方に分別する態度は若いころから一貫している。彼は自身をブルーカラーの味方と位置づけ、「オタワのエリート」「裕福なエリート」「支配するエリート」と「ウォーク(覚醒した人々)」を敵視する。
 今回の党首選では、インフレ抑制に失敗したとしてカナダ銀行総裁を解任すると公約した。そして「カナダを世界で最も自由な国にする」として、インターネットにおける発言を規制するC-11号法案に反対し、CBC(カナダ放送協会)への出資停止を公約した。また「フリーダム・コンボイ」を支持し、マスク着用義務とワクチン摂取義務に反対し、カナダ人を「監視(spying)」するアプリを広めた公衆衛生局を非難した。
 さらに、炭素税を廃止しパイプライン計画を推進する。そのうえ世界経済フォーラムを「億万長者の集会」「陰のグローバル・エリートたちが西洋世界を支配しようとするあらゆる陰謀論の根源」だとして、自分の組織する内閣では閣僚は出席しない(※保守党政権のベアード外相は出席した)と明言し、「カナダを支配から取り戻す」と誓った。彼はツイッターに、自分が政権を握れば「リベラルの門番と企業のオルガリヒたちは『サヨク泣き』するだろう」とさえ綴った。彼は、大学時代に小論文コンテストで「政府による規制を制限する」と書いたころと、変わっていない。

 トロント大学で政治学を教えるクリストファー・コックレイン准教授は、ポワリエーブル氏がフリーダム・コンボイを明確に支持することには驚かされるが、それは党首選に悪影響を与えていないようだと語った。
「選挙戦略の観点から見ると、彼らは自由党にリベラルな票を奪われる脅威より、人民党に票を奪われる脅威の方を重大に感じているようだ。」
「彼のメッセージは、彼が保守派以外の何者でもないことを示している。それらのメッセージは選挙において有利にも不利にも作用するはずだが、保守党の強固な支持者には響いているのだろう。」
 カルガリー大学で政治学を教えるジャン=クリストフ・ブシェ准教授は、保守党員たちはポワリエーブル氏の好戦性に魅かれたのだろうと語った。
「彼は『謝罪しない保守派』である。保守党員たちはこの人に、慰めを見出した。彼は誰かさんとは違うから。彼らは、彼が何のために立つのかを理解している。」
「保守党員がポワリエーブルを好む理由は、彼が立候補したときから変わらなかったからだ。」
 彼はまた、ポワリエーブルの語る経済的不満は、保守主義者よりむしろ左派に共鳴するのではないかと予測した。
「彼が保守党員の興味を魅くとは、私は思わない。実際は反エリートのメッセージを、ある種の左派の人々が受け容れると、私は考える。」
「ポワリエーブルは、不満を抱く左の有権者を魅了する可能性がある。インフレがそこにある理由、あなたが食料の代金を支払えない理由、インフレが進行する理由、あなたが裕福でない理由は、エリートたちのせいだと。」
 同じくカルガリー大学で政治学を教えるバリー・クーパー教授は、80年代に(史上最年少の28歳で)進歩保守党内閣の閣僚を務めていたシャレー氏の出馬に驚嘆した。
「彼は、きのうの人ではない。おとといの人である。」
「彼は魅力的な人物だが・・・(ケベック人の)シャレー率いる保守党が(筆者注※かつて実際そうだったように)アルバータとサスカチュワンで、そしてたぶんBCにおいて支持を大きく減らすことになるだろう。」
 コックレイン准教授も、シャレー氏の勇気を好意的に評価した。
「シャレーの出馬には、全く驚かされた。」
「進歩保守党候補が今回の選挙に出馬するのは、見込みがない。」
「彼の出馬によって、党首選で党に強い影響を与えたことは賞賛に値する。だが彼が、勝つ見込みがあると本気で最初から考えていたとしたら、私は非常に驚くだろう。」
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