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総選挙、各州それぞれの攻防 [2015年下院選]

 10月19日に実施された連邦議会総選挙は、自由党184、保守党99、新民主党44、ケベック連合10、緑の党1(定数338議席)という結果となり、自由党のジャスティン・トルドー党首が、43歳という史上2番目の若さ(最年少はジョー・クラークの39歳)で首相に就任することが決まった。
 大多数の調査機関は、自由党の少数政権を予測した。スリーハンドレッドエイト・コム社は、自由党の最大限度を161、保守党の最少限度を99、新民主党の最少限度を58としていたが、結果はそれらの限度を超えたものとなった。このようなギャップを説明するには、有権者が投票日の2・3日前に、新民主党から自由党に雪崩をうってスイッチしたと考えるしかない。事実、セントジョンズ・イースト選挙区(ジャック・ハリス議員)、ハリファックス選挙区(ミーガン・レスリー議員)、ガティノー選挙区(フランソワーズ・ボワバン議員)、オタワ・センター選挙区(ポール・デュワー議員)、トロント-ダンフォース選挙区(クレイグ・スコット議員)、ウィニペグ・センター選挙区(パット・マーチン議員)など、新民主党は安全と思われていた選挙区を数多く失っている。

 オンタリオの投票が終わらないうちに東部で開票が始まると、自由党の「赤潮」が東部を席捲し、早くも自由党勝利が報じられた。低成長・高失業率のこの地域では政府の財政出動が求められているが、保守党政権は財政規律を重んじ、雇用保険を削減した。それは、景気刺激のために赤字財政に甘んじるとするトルドー党首とは、対照的だった。
 ニューファンドランド&ラブラドル州のダニー・ウィリアムズ元首相(ニューファンドランド&ラブラドル進歩保守党)は、ABC(Anybody But Conservative/保守党以外誰でも)運動で公然と保守党に叛旗を翻した。「最後の進歩保守党」ピーター・マッケイ氏の引退や、プリンスエドワード島に居住実態のなかったマイク・ダフィー上院議員の任命などは、この地域の人々を怒らせた。結果は、東部の全議席が自由党一色に塗りつぶされることになった。

 ケベックでは、選挙戦序盤をリードした新民主党が16議席の惨敗を喫し、ケベック出身のマルケア党首をリーダーに据えたにもかかわらず、ケベックの地盤を一瞬のうちに失った。自由党は40議席と、1980年のピエール・トルドー首相以来35年ぶりにケベックの第一党に返り咲いた。これは同時に、ケベック連合を支持し続け「万年野党」化したケベックが、27年ぶりに「キングメーカー」の地位に返り咲いたことをも意味する。
 保守党のクロード・カリニャン上院議員は、ケベック州民はニカブ問題を通して、新民主党は自分たちとは考えが違うと感じたと説明する。
「人々はレイトン党首の人柄に1票を投じ、その政策について注意を払わなかった。今回総選挙では、人々は新民主党が何を訴えているのかわからなかったのだろう。」

 オンタリオでは、保守党が反移民と思われる政策を採ったことが裏目に出た。重罪を犯した外来系市民から市民権を剥奪するC-24号法案の導入や、シリア難民受け容れの制限などである。選挙戦最終週には、ハーパー首相がロブ・フォード前市長とともに遊説するという致命的過ちを犯した。
 2011年総選挙では、保守党が得票率44%で73議席を獲得したのに対し、新民主党と自由党は得票率25%でそれぞれ22議席と11議席しか獲得できなかった。今回総選挙では、自由党は得票率45%で80議席を獲得している。保守党は今回、苦戦している選挙区でことごとく敗北した。彼らが2011年に過半数を獲得したとき、オンタリオで僅差で勝利した選挙区はことごとく失った。

 中西部では、保守党が相変わらずの強さを見せたものの、エドモントンの3議席・カルガリーの2議席・ウィニペグの8議席を自由党と新民主党に奪われた。

 ブリティッシュコロンビアでは、自由党は17議席を獲得し、1968年にピエール・トルドー首相が16議席を獲得した記録を上回り、47年ぶりに第一党となった。保守党は事前の予想通り得票率30.0%を記録したが、10議席しか獲得できず、得票率25.9%で14議席を獲得した新民主党をも下回った。
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