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カナダ最高裁が安楽死を容認、21年前の判決覆す [人権]

 連邦最高裁は2月6日、治療法がなく苦しんでいる成人の患者について、医師の幇助による安楽死を認める判決を下すとともに、連邦政府と州政府に12か月以内の法制化を命じた。脊柱管狭窄症を患ったケイ・カーターさん(2010年スイスで安楽死)の遺族と、筋萎縮性側索硬化症(ALS/ルー・ゲーリック病ともいう)を患ったグロリア・テイラーさん(2012年病死)の遺族およびブリティッシュコロンビア市民自由協会が提訴していた。

 ALSを患い余命2年と宣告されたスー・ロドリゲスさんは、医師に致死性の薬物を用意してもらい、自分で注射できる力が残っている間に自殺したいとして、1992年自殺幇助を認める訴えを起こした。だが刑法第224条(b)は「人を幇助して自殺させた者は、14年以下の拘禁刑に処す」と規定しており、連邦最高裁は翌年、訴えを5対4で退けた。その後彼女の病状は自殺不能なまでに悪化したが、匿名の医師の幇助により1994年に安楽死した。その医師は起訴を免れた。

 連邦最高裁はこの日、9対0の全員一致で21年前の判決を覆した。
「刑法が定めた全面的禁止は、弱者の命を保護するためという理由で、重篤かつ医学的に回復不能な状態に苦しんでいる、判断力がありかつ同意のある成人が、いかに生きあるいは死ぬかという重大な決定をすることを阻止しており、行き過ぎであった。」
「刑法第224条(b)は、1982年憲法第7条が規定する『生命、自由及び身体の安全の権利』の3つの基本的人権に対する侵害であり、自由で民主的な社会において正当化できない。」
「生命の権利は、『死なない権利』に限定されるものではない。」

 ブリティッシュコロンビア市民自由協会の訴訟責任者グレイス・パスティーンさんは、喜びのコメントを発表した。
「これは人権の、そして人生の終わりに対する思いやりの勝利である。この判決が意味するものは、人生の終わりにおいて耐えられないほど苦しんでいるカナダ人には選択肢があるということである。カナダは今日、医師の幇助によって合法的に安楽死できる国のリストに加わった。現在ベルギー、ルクセンブルク、スイス、オランダ、オレゴン州、ワシントン州、ニューメキシコ州、モンタナ州、バーモント州が、これを認めている。」
 スー・ロドリゲスさんを支援した、新民主党のスベンド・ロビンソン元下院議員は、こう述懐した。
「スーはきっと喜んでいるだろう。彼女は残酷な法を変えるため、勇気と尊厳をもって戦った。裁判所に行ったとき、我々はこれが長い旅の最初の一歩だと思った。まさか20年以上もかかるとは思わなかった。しかし我々は今日、ようやくここに辿り着いた。」
 カナダの価値研究所のチャールズ・マクベティ理事長は、医療の立場から懸念を表明した。
「生命は、それを殺す医師を許すにはあまりに貴い。これは、医師が誓う『依頼されても人を殺す薬を与えない』とする『ヒポクラテスの誓い』に反している。人々が生きるために戦うよりも、人生を終わらせることに同意させる圧力と戦わなければならなくなると思うのは、悲しいことだ。」
 キャンペーン・ライフ連合のジム・ヒューズ理事長は、判決を批判した。
「どんな生きざまであれ、他者を殺す法的権利を人に与えることは、決して許してはならない。この判決は、障害者・高齢者や末期的病状の患者たちが、『尊厳死』の大義の旗の下で虐待され殺されるリスクに潜在的に晒されることを意味する。これは容認できない。」
 政治改革行動協会のマーク・ペニンガ副理事は、判決が後世に与える影響について語った。
「今回の判決により、自主的な選択権は、人命それ自体より価値があることになった。これは社会的弱者にとって、破壊的な結果をもたらすだろう。」
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