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ケベック州議会総選挙へ、ケベック党過半数の見込み [ケベック]

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 ケベック州のポリーヌ・マロワ首相は3月5日、ピエール・デュシェーヌ副総督に州議会の解散を要請し、承認された。州議会総選挙は4月7日に実施される。解散時勢力はケベック党54、自由党49、ケベック未来連合18、ケベック連帯2、無所属2(定数125議席)。

 過半数割れのマロワ政権は、予想通り2年と続かなかった。マロワ政権は2月20日に予算案を上程したが、野党が過半数を占める状況では前途多難である。いっぽう世論調査では、ケベック独立への支持が1980年・1995年住民投票実施時に迫る40%にも達した。政党支持率でも、与党ケベック党は今年に入ってトップを奪った。2月16日に実施されたCROP社の政党支持率調査は、ケベック党40%、自由党34%、ケベック未来連合16%、ケベック連帯7%となり、今総選挙を実施すれば、ケベック党が過半数を獲得することも夢ではない。

 マロワ首相はこの総選挙を、雇用・経済とケベック価値憲章を争点に戦うつもりであり、独立については言葉を濁している。
「住民投票が必要なら、我々は立ち止まって住民の意見を聞く機会を持つ。そして住民がその必要がないと判断するなら、我々もそれをしない。」
 だが首相は、何を基準に公聴会を開催するかについて明言することは拒否した。
「我々は、非公開のドアの内側で何かをするつもりはない。我々が、闇の中で行うことはない。我々は、コンセンサスを必要とする。住民投票を実施するとは約束しないが、実施しないとも約束しない。」

 ケベック党は、1968年に結成された。日本で学園紛争が盛り上がっていたころ、ケベックでも民族主義が沸き上がり、若者たちはケベック党を通して活動した。同党は1976年に初めて政権を獲得し、以後二大政党の一角として、常に与党か野党第一党であり続けた。
 だが独立運動の情熱は、1980年と95年の住民投票における二度の敗北で燃え尽きた。かつての独立の闘士たちは初老にさしかかり、独立への支持は年々減少し、党員も減り続けた。そして2007年州議会選挙で、ケベック党はついに野党第二党に転落する。
 この苦境の中、マロワ夫人がケベック党初の女性党首に就任する。彼女は、住民投票で独立を問う手法は結論が出たものとして、独立を前面に押し出さず、もっぱら社会保障制度を争点とした。するとパリゾー元党首らハードコア独立派は、ケベック党が独立を訴えないのは結党精神の否定だとして、しばしばマロワ降ろしを画策した。
 しかしマロワ党首は、2008年州議会選挙で議席を上積みし、野党第一党に復帰した。2012年州議会選挙ではついに政権を奪回し、パリゾー元党首らのうるさ型を黙らせた。そして首相に就任すると、独立を訴えるのではなく、ケベック価値憲章を発表し、フレンチ民族主義に訴えたのである。これはいかにも、独立論争を避け続けてきた彼女らしい政策だった。(奇妙なことに、パリゾー元党首らは価値憲章に反対している)
 フランコフォン人口は減り続けているが、彼女はケベック党の支持基盤であるその中で、支持を2倍にしようと努めた。そのいっぽうで、独立を否定も肯定もしないという巧妙な戦術を用いることで、ケベック党支持者を失望させることなく、ケベック未来連合支持者の取り込みを図ったのだ。価値憲章は、55歳以上の有権者の間では66%もの支持を受けている。

 イブ=フランソワ・ブランシュ環境大臣は、ケベック党が1976年に初めて政権を獲得したときから、政権奪取するたびに必ず住民投票を実施してきたと指摘し、次のように述べた。
「ケベック党が4月に勝利すれば、この伝統に従うようマロワ首相への圧力は強まるだろう。ケベック党を設立した世代の者たちは、バケツを蹴る(「死ぬ」のスラング)前に最後の缶を蹴ることを望むに違いない。」
 マロワ首相が独立への態度を曖昧にしているのに対し、自由党のフィリップ・クイヤール党首は、露骨に警告した。
「彼らは、住民投票を行うためにケベック党に加わった。彼らは、ケベックをカナダから切り離そうとしている。考え違いはやめよう。現実を直視しようではないか。」
 そして経済こそが真の争点だとして、カナダ銀行エコノミストのマルタン・コワチュー氏が自由党のスタッフに加わったことを発表し、こう述べた。
「投資家がケベックに投資するかどうかを考慮するとき、政情安定は非常に重要な要因である。」
 かつてシャレー前首相が、選挙に勝つために州議会を解散し予定されていた総選挙を前倒ししたことについて、マロワ党首は批判した。そしてマロワ首相は2013年に、選挙日固定法を成立させたが、彼女自身が選挙に勝つために州議会を解散したのは、公約違反であると、ケベック未来連合のフランソワ・ルゴー党首は主張した。
「私は、その法の精神に何も優先されるべきだとは思わない。」
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図上:「アルコールのないビール・・・」「砂糖のないキャンディー・・・」「独立を訴えないケベック党マニフェスト!」
図下:スイスのダボス会議に出席した後、土産店で「宗教的シンボルを表示しない土産はないの?」と無理を言うマロワ首相。
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