「オカ事件」批判で立候補辞退

　９月11日、自由党候補のシモン・ベダールが、予定していたケベック市からの出馬を辞退した。
　彼は1990年、CJRPラジオの番組「アクション・リアクション」において、当時起こっていたモホーク・インディアンによる交通封鎖「オカ事件」について、「軍隊を派遣して一掃すればいいんだ。50人、100人、125人殺せば、それでおしまいだ」と語っていた。
　ところが今回の立候補にあたり彼は、先週初めにケベックの新聞「ル・ソレイユ」紙のインタビューを受けていたが、その席で「軍隊導入が危機を解消した」「もし当選したら、カネサタケの地下マフィア一掃のため尽力したい」と語ったことが世論の反発を買った。
　10日には発言の訂正を余儀なくされたが、「立候補を辞退するつもりはない」と表明し、11日にはヒューロン族酋長とともに謝罪記者会見を予定していた。しかし事態を重視したディオン党首が出馬辞退を強く要請し、やむなく了承に至った。ディオン党首は自由党ホームページにおいて「ベダール氏は、先住民に関する自身の意見について、自由党の政策・理念と合致しないと認めた」とコメントした。


写真：オカで睨み合うパトリック・クルティエ上等兵とモホーク兵士のブラッド・ラロック。

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●オカ事件

　オカ事件の原因となった土地は、かつてはカネサタケ・モホーク族の墓地を含む聖地であったが、カトリック教会は1717年、仏領カナダ総督よりこの土地を与えられた。カネサタケ・モホーク族もカトリック教会の土地使用を認めたが、彼らはそれを私有したと考えた。オカに住むモホーク族酋長ジョセフ・オナサケンラトは1868年、教会に土地の返還を要求したが、拒否されたため武装して教会を襲い、鎮圧された。
　モホーク族が抗議するなか1936年、教会は土地を売却し、1961年土地の一部は９ホールのオカ・ゴルフクラブとなった。モホーク族の墓地は更地にされ、ゴルフコースと駐車場に変えられた。
　モホーク族は1977年にも土地返還を先住民権利局に訴えたが、1986年に却下された。
　そしてついに1989年、オカ市長ジャン・ウェレットがゴルフコースを18ホールに拡張し、60のコンドミニアム建設のため土地の全てが更地になると公表すると、憤ったモホーク族は彼らの居住区にバリケードを築き、交通を遮断した。ウェレット市長は州警察を導入し、緊張は一気に高まった。モホーク族はイロコイ連邦憲法に則り、武器を使用すべきかどうかを女たちに諮った。女たちは、警察が先に発砲した場合に限り武器を使用してもいいと決定した。
　警察は７月11日、バリケードを混乱させる目的で催涙ガス弾と照明弾を発射し、銃撃戦が始まった。警察はマルセル・ルメーが死亡し、６台のクルーザーとブルドーザーを遺棄し退却した。警察とモホーク族は双方とも、相手が先に発砲したと主張した。
　やがて、オカのモホーク族を支持するインディアンがカナダとアメリカ各地から集まり、危機はエスカレートした。ブリテュッシュコロンビア州シートン・レイクのインディアンは、BCレールの鉄道を封鎖した。警察もオカを封鎖するためバリケードを築き、そしてモントリオールの南に住むカーナワケ・モホーク族も、カネサタケ・モホーク族に同調し、自分たちの居住区にバリケードを築いたため、モントリオール島とその南側の交通が遮断された。こうしてメルシエル橋と国道132・138・207号線が封鎖され、モントリオールでは渋滞が日常化し、インディアンに対する嫌悪感がピークに達した。ケベックのある下院議員は「土地を欲しがっている先住民は、みんなラブラドルにでも移送すればいいんだ」と語った。
　その後連邦警察も導入されたが、10人の負傷者を出して撤退した。そこでケベック州のロベール・ブラサ首相は８月14日、軍隊の導入を可能にすべく、十月危機に続いて戦時措置法の施行を要請した。2500人からなる軍隊は、発砲することなくオカの３個所にあるバリケードを撤去した。
　メルシエル橋のバリケードで８月29日、モホーク族はロビン・ガニョン中佐と停戦について交渉し、モホーク族はバリケードの撤去と武装解除に応じた。だがひとたびメルシエル橋の交通が回復されると、モホーク族は切り札を失い、ケベック州政府はその後いかなる交渉をも拒絶した。
　オカ事件は９月26日までに34人の逮捕者を出し、また催涙ガスが原因で１名、71歳の退役軍人ジョー・アームストロングがストレス性の心臓発作で死亡した。 ゴルフコース拡張は中止された。

・CBCアーカイブ
http://archives.cbc.ca/politics/civil_unrest/topics/99/
by ハーバーセンターくん (2008-09-20 11:50)