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解散の 秋風誘う 補選かな [2008年下院選]

 スティーブン・ハーパー首相は8月中旬のニューファンドランド&ラブラドル訪問の際、「下院は機能不全に陥りつつある。私は下院が機能するかどうかについて、近いうち審判を下さなくてはならない」とコメントしたため、オタワは一気に解散風が吹き荒れる展開となった。ハーパー首相は、下院で与党過半数割れの状態に2年半も耐えてきたが、安定政権樹立のため総選挙に打って出ようというのである。首相は野党3党の内閣不信任で総選挙を強制されるくらいなら、自ら解散権を行使するのではないかという憶測が飛び交っている。首相は近く野党各党党首と、下院が機能するかどうかについて個別に会談すると明らかにした。

2050163 来る9月、オンタリオとケベックで4つの補欠選挙が行われる。この補選は総選挙の前哨戦と見られており、主要4党がそれぞれ何議席獲得するかがその後の政局を大きく左右するものと見られている。
 オンタリオ州ゲルフ選挙区は、自由党のブレンダ・チャンバーレイン議員の辞職に伴う補選である。保守党は2007年3月にブレント・バーを候補に公認し、ゲルフ市会議員でカナダ地方自治体連盟代表のグロリア・コバックは公認に漏れたが、その後彼女がカナダ地方自治体連盟代表を更迭されたことへの抗議が殺到し、保守党はバーの公認を取り消しコバックを公認した。自由党候補の弁護士フランク・バレリオットは苦しい戦いになりそう。
2050168 ケベック州サン=ランベール選挙区は、ケベック連合のマカ・コット議員の辞職に伴う補選である。この選挙区は自由党とケベック連合が接戦を繰り広げて来た。自由党は元検事総長のロクセーヌ・スタナーズを候補に立てて必勝の構え。
 モントリオールのウェストマウント=ビル・マリー選挙区は、自由党の前副党首ルシエンヌ・ロビヤール議員の辞職に伴う補選である。この選挙区創設以来、彼女が10年以上4期にわたり独占してきた鉄板選挙区であり、カナダ初の宇宙飛行士である自由党のマルク・ガモー候補の優位は動かないだろう。
 トロントのドンバレー・ウェスト選挙区は、自由党のジョン・ゴッドフリー議員の辞職に伴う補選である。彼が1993年から独占してきた選挙区だが、保守党の支持も一定数あり侮れない。この選挙区だけ投票日が9月22日となっているのは、保守党は4つのうち1議席取れればいいのに対し、自由党は4選挙区全てを戦うことになるため、選挙法で補選は欠員が生じてから47営業日以降でないと行えない規定を利用して、ゴッドフリー議員の辞職を8月1日まで先送りし、この選挙区だけ遅らせたのである。
 新民主党は俳優デビッド・スパローを候補に立てているが、投票日が9月22日となっているため、補選は実際には行われないものと思われる。

2050162 4つの選挙区のうち3つは自由党の選挙区だが、新民主党はどの選挙区も苦しく、1勝すれば大勝利である。ケベック連合はケベック州の2選挙区にしか候補を立てないから、1勝すれば勝利と見なすだろう。保守党は現有1議席もないのだから、やはり1勝以上で勝利と見なすはずだ。自由党は難しい立場だが、全勝も夢ではなく、その場合は一気に解散に打って出ることも考えられる。ウェストマウント=ビル・マリー選挙区は鉄板で、ゲルフ選挙区は苦戦、ほかの2選挙区は接戦となるだろうが、3勝なら勝利、2勝なら敗北だろうか。自由党の敗北は即ち保守党の勝利であり、やはりどう転んでも総選挙突入は避けられそうにない。何しろ野党は過半数だから、与野党双方から解散・総選挙を仕掛けられるのである。

 だがここへ来て、9月冒頭の解散説もにわかに信憑性を増して来た。補欠選挙で有権者の動向を見てから解散・総選挙に打って出るのでは、補選が当選者にとっても選挙民にとっても無意味となるからであり、補選を待たずして解散・総選挙に打って出る可能性を、ハーパー首相は否定はしていない。
 ミカエル・ジャン総督は北京パラリンピックのため、中国に9月6日から10日まで滞在する。そのため、この間に総督官邸を訪れ解散の勅許を得ることはできない。解散は早くてもレイバーデーの後で、遅くともアメリカ大統領選の前になるというのが事情通の見方である。大統領選でオバマが勝利すれば、「チェンジ」旋風が吹き荒れ自由党にとって大きな追い風となるからである。
 ここへ来てハーパー内閣の閣僚たちが、秋の予定をキャンセルしているという情報がオタワを駆け巡った。ジャン=ピエール・ブラックバーン労働大臣は、緊急の閣議があると告げられたため来週の英会話レッスンの予定をキャンセルしたと口をすべらせた。

 ケベック連合のジル・デュセップ党首は「すでに始まっている補選に先んじて解散するのは失礼で無責任だ」と吐き捨てた。
 自由党のステファン・ディオン党首は「議会が機能していないという総理の言い訳は嘘である。真相は、ハーパー政権がいくつかの倫理問題を抱えていることや、我々が景気後退に直面しているということに国民の目が向くことを総理が望んでいないということだ」と語った。
 新民主党のジャック・レイトン党首は、「総理は議会の召集に応じる義務がある。もしも総理が、議会の召集に応じ議会に何ができるかを見ることもなく解散の大権を行使するなら、総理は民主主義と、少数政権を与えられたという民意を侮辱することになるのだ。」とコメントした。

 総選挙の焦点は、与党が単独過半数を取れるかどうかである。そこで議席の27%を占めるケベック州において、ケベック連合が何議席獲得するかが重要となる。もしもケベック連合が40議席以上取るようだと、保守党・自由党いずれが勝利しても過半数割れとなろう。保守党はケベック州ではこれまでケベック自由党を支援してきたが、昨年の州議会選挙で保守系の民主行動党が躍進したため、次の総選挙では保守党は民主行動党を足がかりとして攻めて来るに違いない。前回総選挙で保守党はケベックで10議席と食い込んで健闘したが、次回もケベックが重要な鍵となるだろう。


写真上:グロリア・コバック候補。
写真中:マルク・ガモー候補。
写真下:ドンバレー・ウェスト選挙区にて、自由党のロブ・オライファント候補(左の男性)とステファン・ディオン党首(右の男性)。
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