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エアバス疑惑 [保守党]


 カナダ連邦警察は1995年、首相任期中に政府が購入するエアバス機の販売に関しカールハインツ・シュライバー氏から不当な報酬を受け取ったとして、マルローニ元首相とフランク・ムーアス氏を告発した。だがマルローニ元首相は疑惑を否定し、自由党政権のジャン・クレチエン首相が前職の名誉を傷つける政治工作を行っているとして、カナダ政府に5000万ドルの賠償を求める裁判を起こした。政府は、マルローニ元首相に200万ドルを支払い公式に謝罪することを条件に示談に応じた。
 マルローニが首相在任中に賄賂を受け取ったとする証拠はなかったが、1993年の首相退任直後、彼がシュライバー氏から30万ドルを受け取っていたことが2003年に発覚した。マルローニ元首相は、このお金はシュライバー氏が新しいパスタ事業を推進するにあたってのコンサルティングへの謝礼として支払われたものだ、と主張した。なおシュライバー氏は、マルローニが勝利した1983年の進歩保守党党首選のときも、マルローニに献金している。
 ハーパー首相は自由党の公開審問要求に対し「そんなことをすれば自由党の元首相への別の疑惑についても同様にすることになる」という理由で拒否していたが、マルローニ元首相が、この疑惑の件でハーパー首相と話をするとシュライバー氏に語ったと2006年に証言すると、ハーパー首相は態度を一変させ「独立した第三者を任命し調査させる」と宣言した。さらに彼は「私の方から招待状を出して、2006年8月にハリントン湖でマルローニ元首相と家族をもてなした。マルローニ氏とはそのとき、シュライバー氏の話はしていない」と弁明した。
 シュライバー氏は、ドイツでも贈賄・詐欺・脱税の容疑に問われており、身柄引き渡しを求められている。ハーパー首相はそれを認める方向のようだが、野党は送還すればエアバス疑惑の真相が藪の中になってしまうと批判を強めている。

 保守合同から4年しか経っておらず、旧カナダ同盟グループと旧進歩保守党グループの間には温度差があり、両者はまだ完全に一体化したと言える状況ではない。マルローニ子飼いの議員はピーター・マッケイ外相、ロブ・ニコルソン法相などまだ党内に勢力を持っている以上、カナダ同盟系のハーパー首相にとってマルローニ元首相は縁遠い人物だとしても、これを冷遇することは党内抗争を引き起こすきっかけにもなりかねない。
 進歩保守党党首だったマルローニは、改革党中心の保守再編を「パンティストキングの中の改革」と酷評したが、2003年のカナダ同盟と進歩保守党による保守合同を成立させるため尽力し、新保守党において進歩保守党議員が冷遇されることがないよう手を打った。それで進歩保守党出身議員は、マルローニに借りがあることになる。
 政治評論家のフェーロン・エリスは、
 「進歩保守党出身議員たちは馬鹿ではない。彼らは、マルローニがトラブルメーカーで、1993年にわずか2議席しか獲得できず、党を破滅させた張本人だということを忘れてはいないだろう。彼はもはや前世紀の人だ」
と語った。

図左:口を開くのも閉ざすのもマルローニ元首相と一心同体のハーパー首相。
写真:カールハインツ・シュライバー氏。


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