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ケニー前国防相、アルバータ進歩保守党党首選に出馬 [アルバータ]

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 カナダ保守党次期党首の有力候補だったジェイソン・ケニー前国防大臣は7月6日、アルバータ進歩保守党党首選に出馬する意向を表明した。同時に、カナダ保守党党首選が始まる10月1日をもって連邦議会議員を辞職すると述べ、不退転の決意を示した。
 彼は「新民主党政権再選は、アルバータの経済に回復不能なダメージを与える」と述べ、革新政権打倒のための保守合同を訴える「アルバータ統一」のプラカードを掲げた。
 彼の計画は基本的に、まず進歩保守党党首選に勝利し、それからワイルドローズ党に合併を申し入れることになっている。問題は、ワイルドローズ党はまだ新しいが、進歩保守党は44年の長期政権を築いた老舗であるということだ。現在はワイルドローズ党が22議席と、9議席の進歩保守党より多くの議席を持っており、ブライアン・ジーン党首は合併には反対しないものの、自分たちが進歩保守党を吸収合併するのでなければ同意しないとしている。また世論調査ではワイルドローズ党の支持率が34%もあり、新民主党の27%、進歩保守党の26%を大きく引き離している。これらの数字は、今総選挙が実施されればワイルドローズ党が過半数を獲得することを意味する。
 ワイルドローズ党は最近、ロゴを緑から青に変更した。緑は右翼の改革党が用いていた色で、青はアルバータ進歩保守党やカナダ保守党が用いている色である。ワイルドローズ党はフェイスブックで、2016年度第1四半期における各党の資金調達を比較した棒グラフに、自党を青、進歩保守党を自由党を連想させる赤で表現していた。これらの動きは、ワイルドローズ党が自党を「怒れる改革派」ではなく保守本流とみなしていると噂された。
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 アルバータ選挙法も、進歩保守党による吸収合併の障害になっている。消滅する党は、資金を選挙管理委員会に没収される決まりになっているのだ。そしてワイルドローズ党は、進歩保守党の2倍の資金を持っている。
だがケニー前国防大臣は、どちらが吸収されどちらが存続するかには興味がないという。彼は合併交渉がまとまったら両党で投票を行い、両党が解党して新党結成することも視野に入れていると述べた。

 アルバータの保守合同は、簡単なようで意外に難しいと多くの人々は懸念する。政治評論家のスティーブン・カーター氏は、アルバータ州民は連邦議会選挙ではカナダ保守党に投票し、州議会選挙では進歩保守党と新民主党という中道右派と左派に投票した事実を指摘した。
「彼らは、極右を好まない。もし好むなら、2012年にも2015年にもワイルドローズ党に投票しただろう。ジェイソン・ケニーは、彼らの多くがイデオロギー政治を好まないということを忘れている。」

 かつてハーパー前首相のブレーンを務め、現在はカルガリー大学で政治学を教えるトム・フラナガン教授は、党合併を掲げて党首選に勝った前例はないと指摘した。
 2003年の(連邦)進歩保守党党首選では、ピーター・マッケイが「カナダ同盟との合併交渉に応じない」と公約して当選したが、当選後はただちに合併交渉に応じた。同様に2002年のカナダ同盟党首選では、進歩保守党との合併を公約した候補たちは落選し、「カナダ同盟を救う」と公約したハーパーが当選したが、オンタリオ補選で失意を味わうと、翻意して合併交渉を始めた。

 スリーハンドレッドエイトコム社のエリック・グルニエ氏は、たとえ両党が合併しても、新党の支持者は単なる足し算にはならないと指摘した。
 2000年の総選挙で獲得したカナダ同盟と進歩保守党の得票率の和は、37.7%になる。だが両党合併して生まれたカナダ保守党は、4年後の総選挙で得票率29.6%しか得られなかった。また彼は、ワイルドローズ党に投票した有権者にとっての第2候補は、33%が新民主党を挙げたのに対し、進歩保守党を挙げたのは21%だったというイプソス社の世論調査を挙げた。さらに、2015年州議会選挙の争点は政権交代であり、ワイルドローズ党がもしも存在しなかったら、その支持者はおそらく新民主党に投票しただろうと語った。

 かつてワイルドローズ党の議員たちを引き連れ進歩保守党に移籍したダニエル・スミス前党首は、保守合同に期待はするが、それを成し遂げるのはケニー氏ではないと語った。
「彼は過去に、社会問題について保守的な立場をとったため、容易ならざる戦いになるだろう。」
「カルガリーとエドモントンは、社会問題に関して地方よりはるかに進歩的であるという、基本的な認識がなければならない。それが安楽死幇助であろうと、大麻合法化であろうと、妊娠中絶であろうと、LGBTQの権利であろうと。」

 政治評論家のデイブ・クーニエ氏は、社会保守主義で右翼のケニー氏が立候補すれば党内左派は黙っていないだろうと予測する。たとえば、彼のような新参者を排除するため、党則を変更し、もっと長期間党員でいることを要件とするかもしれない。もしくは、左派が対立候補を立てることも考えられる。彼は、3人の有力候補を挙げた。
 候補の一人は、サンドラ・ジャンセン州議である。彼女は、論争の的となったLGBTQの生徒を保護する10号法案を推進した。2015年の連邦議会選挙では、進歩保守党はカナダ保守党と提携しているにもかかわらず、彼女は自由党候補を支援した。
「進歩保守党は財政については保守主義だが、社会については進歩主義でもある。そしてそれらの価値は、私にとって非常に重要なものだ。」
 彼女は、ケニー氏が党首になるなら離党すると語った。
 彼女はまた、アリソン・レッドフォード元首相と非常に親しい。元首相が辞任する原因となった政府専用機に、彼女は娘とともに搭乗したことがあり、彼女が党首選に出馬するなら問題視されるだろう。
 別の一人は、トーマス・ルカスザック元副首相である。彼は雇用・移民大臣、文部大臣、副首相、事業・先進教育大臣、イノベーション・先進教育大臣、職業訓練・雇用大臣を歴任した。2014年には党首選に立候補したが、ジム・プレンティス氏に敗れている。
 彼は社会問題については穏健派とされているが、個性が強く、党内では「ファイター」と呼ばれている。彼は論争の的となった10号法案に、党内で公然と反対を唱える数少ない反対派の一人となった。
 彼はケニー氏への敵意を隠さない。ケニー氏は2012年、一人の議員に宛てた電子メールにルカスザック副首相のことを「完全な馬鹿」と書いた後、うっかり「全員に返信」ボタンを押してしまい、その内容がアルバータの保守党議員全員に送られたことがある。彼は、ケニー氏の立候補は認められるべきでないと語った。
 別の一人は、リチャード・スターク州議である。彼はレッドフォード内閣で、観光・公園・レクリェーション大臣を務めた。
 クーニエ氏は、選挙に勝つためには、エドモントン・カルガリー・地方の3つのうち2つを制する必要があるという。スターク州議は、進歩保守党では貴重な地方選挙区出身者であり、この点が非常に有利に働くとクーニエ氏は説明した。

 党首選は、2017年3月18日に実施される。


写真上:立候補を宣言したジェイソン・ケニー前国防大臣。
写真下:上はワイルドローズ党の2015年のロゴ。下は現在のロゴ。

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