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安楽死幇助法案、期限内の成立は絶望的:明日からグレーゾーンに [人権]

 カナダは現在、6月6日の夕刻である。連邦最高裁は2015年2月6日、医師の幇助による安楽死を禁止した刑法を違憲と判断して、1年以内の法制化を要請し、後に期限を6月6日に延長した。だがC-14号法案は、「エルボーゲート事件」など野党の妨害や首相のサミット出席などにより滞り、下院を5月31日にようやく通過し上院に回付されたばかりであり、期限内の成立は絶望視されている。
 ジェーン・フィルポット厚生大臣は先週、「我々は、6月6日の最終期限に間に合わない危機にさらされている」と述べ、すみやかな法案成立を要請した。だが法案は、期限内の成立を急いだせいか、下院では十分審議されず、修正もされなかった。しかし上院では「法案は憲法に則っていない」、「苦しんではいるが病状が終末期でない人々が除外されている」、「安楽死にはより厳格な基準が必要だ」、「安楽死幇助を望まない医師への保護が盛り込まれていない」などの異論が噴出し、すみやかな可決は望むべくもない。
 「無所属自由党」のジム・カウアン上院幹事長は、今こそ上院の必要性をアピールするときであり、遅延戦術や議事妨害はせずまじめに取り組むと語った。
「もしも我々が、政府が6日までの成立を望んでいるから、ただ可決して通過させればいいのだと言うなら、人々は何のために上院があるのだと言うだろう。我々は我々の仕事をする必要がある。」

 法案は、上院の憲法問題委員会で審議された。だが委員の内わけは保守党7、無所属自由党4、無所属1となっており、下院を通過した法案をただ通過させるだけの無意味な存在と考えられている上院には珍しく、激しい議論を巻き起こした。さらに本会議は、保守党42、無所属自由党21、無所属23、欠員19(定数105)という構成になっており、各党が「良心の問題」だとして党議拘束をかけていないことから、結果は予想ができない。自由党は2014年1月、幹部会から全ての上院議員を除名し無所属としたから、ピーター・ハーダー上院院内総務を別にすれば自由党政権とはつながりがない。さらにこのとき、数名の保守党上院議員が離党し無所属となっている。
 法案は、理論的には今週上院を通過し成立できるが、修正された場合は、下院に返付される。上院は内閣不信任と予算関連法案を取り扱わないことを別にすれば、建前上は下院と同等の権限を有することになっているものの、実際には下院の決議を覆すことは稀で、ここ70年間でわずか8度しかない。下院への返付は2012年以降はなく、2009年の例では、下院は修正に単に同意しただけだった。下院が上院の修正に同意しない場合は、両院協議会で協議されることになるが、1940年代を最後に行われていない。ここでも合意されない場合、カナダには行き詰まりを打開する規定がない。日本なら衆議院の優越が憲法に明記され、出席議員の3分の2で再可決・成立できるが、英連邦諸国は慣習法で規定がないため、法案が上下両院へ何度も回付されたり返付されたりを、両院が納得するまで繰り返すことになる。
 カウアン上院幹事長は、C-14号法案には瑕疵があると考えており、悪法を作るより法がない方がましだという信念に基づき、政府が期限内成立を要請しているにもかかわらず、十分な審議と修正が必要と確信している。
「法案が修正されないかぎり、私は賛成票を投じない。」

 法案が期限内に成立しなければ、終末期医療にたずさわる医師たちは、7日以降は禁止も合法化もされていないグレーゾーンに突入する。治療法がなく苦痛にあえいでいる終末期の患者から、安楽死幇助を求められたらどうするのかという難問を突きつけられることになりかねない。だがトロントのマイケル・ガロン病院に勤めるケビン・ワーケンティン医師は、終末期医療に14年間従事して、安楽死幇助を求められたことは5回しかなかったと語り、安楽死幇助を求める患者が7日以降に殺到するわけではないだろうと予測した。
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