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トルドー党首、選挙区で苦戦と報じられる [2015年下院選]

 CROP社が9月11日から14日の間に、新民主党の依頼で実施したパピノー選挙区有権者375人を対象とした電話世論調査が、17日にリークされた。これによるとパピノー選挙区での支持率は、自由党のトルドー党首35%に対し、新民主党のアン・ドーソン候補が46%となり、楽勝と思われていた選挙区でトルドー党首が11ポイントという途方もない差をつけられていることが示された。ケベック連合のマクシム・クラボー候補は、10%だった。
 このニュースはCTVテレビで報じられ、その後モントリオール・ガゼット、ラ・プレス、ル・デボワールなどモントリオール各紙でも報じられると、新民主党支持者などによりツイッターでも話題となった。

 だが、世論調査機関スリーハンドレッドエイト・コム社のエリック・グルニエ氏は、このデータに疑問を呈した。
 第一に、たとえ1選挙区であっても、対象者375人というのは世論調査としては異例なほど少ない。これは意志が未定でない281人の対象者にとって、プラスマイナス5.8%の誤差を生じることになり、最大で11.6%もの誤差は、両候補の差11ポイントよりも大きい。
 第二に、対象者が有権者に対し代表的でない。パピノー選挙区住民の50.1%が女性で49.9%が男性であるから、対象者はこの割合に等しく、男女がほぼ同数であるべきだが、この調査では男性対象者117人に対し女性対象者258人と、69%が女性であり著しい偏りがある。なお新民主党支持者は、女性が多いことが知られている。
 誤差が最大「プラスマイナス5.8%」とは、対象者がランダムに選ばれた場合の数字である。回答者のわずか14%が2011年連邦議会選挙で自由党に投票したと回答しているが、実際にはトルドー氏は38.4%の得票率で当選しているという事実は、対象者の抽出が代表的でなく不適切であることを示唆しており、対象者が新民主党支持者に偏っている可能性がある。
 カナダでは連邦議会選挙と州議会選挙で違う党に投票することは普通に行われており、4年前の連邦議会選挙でどこに投票したかを覚えていない人がいても不思議ではない。その後ケベックでは2度の州議会総選挙が実施されたから、混乱することはありえるが、ケベック自由党は2014年州議会選挙で勝利しているから、自由党の数字は実際より高くなることはあっても低くなることは考えにくい。パピノー選挙区は労働者が多く、住民の入れ替わりは激しいが、それを考慮してもなお、この調査の信頼性には疑問が残る。
 メインストリート・リサーチ社が17日、選挙区住民783人を対象に実施し、18日に発表した「2011年国勢調査に基づく、年齢・性別の偏りのない」世論調査は、トルドー党首41%、ドーソン候補36%、クラボー候補12%という数字を示した。この調査では、誤差は最大3.72%とされている。

 そもそも新民主党は、選挙区情勢を知るために内密に依頼した世論調査の結果を、なぜ公表する必要があったのだろうか。公表は、同日行われたグローブ&メイル紙主催の党首討論の直前に行われた。新民主党は何らかの理由で、トルドー党首が首相になれないかもしれないという情報をリークする必要があったのだろうか。新民主党は数多くの選挙区で同様の調査を行っていると考えられるが、自党に都合のいい情報だけをリークしている可能性についても考慮する必要があるだろう。
 新民主党のマルケア党首は、CROP社の調査結果についてこう述べた。
「この調査は、我々が現地で見ているものを反映しているものと考えている。我々には、本気でパピノー選挙区を獲得する意志がある。」
 同党のレベッカ・ブレイキー代表は、サポーターに「11ポイント」というタイトルの電子メールを送り、そこでこう綴った。
「世論調査は、トルドー党首の支持率が選挙区でこれほど下がっていることを示している。パピノーは自由党の鉄板選挙区だったが、流れは変わってきている。」
 いっぽうトルドー党首は、調査結果を一蹴した。
「何があろうと、私はパピノーで負けはしない。」
 メインストリート・リサーチ社のクイート・マギー社長は、パピノー選挙区での戦いの鍵となるのは、支持の強さだと指摘した。
「トルドー党首には強い支持者が82%もいて、考えを変えるかもしれない回答者は8%しかいない。いっぽうドーソン候補には強い支持者は61%で、考えを変えるかもしれない回答者は28%いる。これがトルドー支持者の特徴だ。」
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