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「バリ・ロードマップ」を採択しCOP13が閉幕 [環境]

 京都議定書後の温室効果ガス削減策を話し合う国連の「気候変動枠組み条約締約国会議」バリ会議(COP13)が12月3日、インドネシアのバリ島で開催された。国連の合意をアメリカが拒否する意向を見せ、物別れに終わりそうな気配を見せたが、瀬戸際の12月15日、中国に先導された発展途上国の反抗により、妥協案として以下のような「バリ・ロードマップ」の採択を決定した。

●国連の気候変動に関する政府間パネルの「温暖化は疑いの余地がない。排出削減の遅れは、気候変動に伴う危険性を高める」との指摘に対処する
●温室効果ガス排出量の大幅削減が必要だと認識する
●京都議定書後の枠組みは第15回締約国会議(2009年)で合意する
●すべての先進国による検証可能な排出の削減か抑制が重要である
●途上国は持続可能な発展を前提に、技術や財政支援を受けた検証可能な方法で対応をする
●気候変動枠組み条約の下に特別作業部会を新設し、交渉を始める

 カナダや日本などの少数派は、先進国が温室効果ガス排出を2020年までに、1990年の水準の25から45パーセントを削減するという具体的数値目標を掲げることに反対し、批判のターゲットとなった。ジョン・ベアード環境大臣は、カナダがその目標を達成するには、排出量を12年間で38から53パーセントまで削減する必要があり、不可能だと表明した。

 バリ会議の最終局面では、アメリカ代表のポーラ・ドブリアンスキー国務次官が、最終文書の中で発展途上国の約束を明確に盛り込むべきだと強く主張し、さらに先進国が発展途上国に与える支援について「測定可能な、報告可能な、検証可能な」の文言を容認できないと発言するに至り、途上国の非難が噴出した。パプアニューギニアのケビン・コンラッド大使が「アメリカがリードすることを期待している。もし何らかの理由でその意思がないのなら、残りの我々に任せて欲しい。邪魔するだけなら、この会場から早く出て行って欲しい」と発言すると、会場は騒然となった。進展を妨げないとブッシュ大統領が明言したにもかかわらず、ことごとく反対にまわるアメリカに対し、腹に据えかねた各国代表の不満が表面化した瞬間だった。中国代表は机を拳で叩いて怒りをあらわにし、他の発展途上国の歓声を呼んだ。
 ところが、ドブリアンスキー次官が「我々は新しい枠組みを更に進展させるためにバリに来た。我々はビジョンを共有し、前進したいと思う。我々はこのバリにおいて成功を勝ち得たい。一致協力して前進しようではないか」と妥協案を受け容れる劇的な転換を見せるや、ブーイングは歓声に変わった。

 各国代表の中には、温室効果ガス削減について具体的数値目標の設定が回避され、あいまいな表現に差し替えられたことに失望の色を隠せない者も多い。だがベアード環境大臣はこの会議を、効果的な地球的気候条約に向けての前向きな最初の一歩として評価した。
 「我々は、弱められトーンダウンされた合意に失望している。だが合意が成立しないよりは良かった。」
 自由党のディオン党首は、今回の合意を気候変動への戦いの進展として評価したが、カナダ政府の演じた役割について遺憾の意を表明した。
 「カナダがより大きなリーダーシップを見せていたら、事態はもっと良くなっていただろう。もしカナダがブッシュ大統領ではなくヨーロッパと同じ側にあったら、事態はもっと良くなっていただろう。」

 京都議定書に規定のない2013年以降について、日本政府は「全世界が道のりを共有しない限り、削減目標の変更は議論すべきではない」と発言して議定書の延長に反対し、目標引き上げの議論には加わらない意向を表明し、また法的義務のない各国の自主目標設定を提案した。これは、アメリカや中国など削減義務を免れている大量排出国の参加を促す狙いもあるが、経団連を筆頭に財界から削減目標設定など地球温暖化対策に対し強い抵抗があるのも事実である。財界筋では、温室効果ガス削減の具体的数値目標をロードマップに盛り込むことを阻止できただけでも十分な成果だと評価する向きもある。日本は、京都議定書で世界に約束した温室効果ガスの1990年比での6%削減という目標を達成するどころか、逆に6.4%も増やしているのが現状である。


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