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アルバータ進歩保守党党首にケニー前国防相、保守合同に向け始動 [アルバータ]

 アルバータ進歩保守党は3月18日に党首選を行い、ジェイソン・ケニー前国防大臣が当選した。
 今回党首選は1985年以降で初めて、党員による直接選挙ではなく、代議員を選出する間接選挙となった。アルバータ州の87選挙区から15人ずつの代議員を選出するほか、前州議や党重役も代議員となり、総数1476票のうちケニー氏1113票、リチャード・スターク前観光・公園・余暇大臣323票、バイロン・ネルソン氏40票という結果で、1回目の投票で過半数に達し決着した。スターク候補とネルソン候補は、右翼の改革党出身のケニー氏による「進歩保守党乗っ取り」を警戒し、進歩保守党の伝統的な中道右派路線の維持を訴え、保守合同を否定し党改革を主張したが、大差で敗れた。
 当選したケニー新党首は、支持者に向けて演説した。
「今日は、この壊滅的な社会主義政権の終わりの始まりである。あなたたちは決めた、私たちは決めた、この増税の、雇用減らしの、借金好きで、意地悪な、役立たずの新民主党政権の敗北を確実にすることを。我々アルバータ州民は、我々の州を取り戻すために団結しつつある。」
 ケニー新党首は州議会に議席を持っていないが、自党の議員に辞職することは要請しないという。欠員が出るのを待って、補選に出馬するのだろう。

 ケニー新党首にとっては、党首選勝利は長い道中の一里塚でしかなく、これから本格的に公約の保守合同に向けて動き出すことになる。早速20日朝には進歩保守党幹部会でミーティング、昼からはワイルドローズ党のブライアン・ジーン党首と会談する。
 ケニー氏との会談について、キャサリン・オニール党理事長はうまく行ったと語ったが、トロイ・ウェイソン事務局長は辞表を提出すると発表した。これについてオニール理事長は、党重役の皆が保守合同に賛成しているわけではないと説明した。
 ケニー新党首は、この春のうちにワイルドローズ党との交渉を済ませ、初夏には党員による投票で承認され、11月までに結党大会を開催するというロードマップを明かした。
 だがジーン党首の構想は、同床異夢である。彼はあくまでも、ワイルドローズ党の枠組みの下で進歩保守党を吸収合併することしか考えていない。ワイルドローズ党はすでに「アルバータ保守党(The Conservative Party of Alberta)」という名称を登録し、自党の同意なしにはこの名称を使えないようにしている。
 アルバータ進歩保守党の元州議で、現在はカナダ保守党の下院議員を務めるロン・リーパート氏は、次の総選挙になってもまだケニー氏が進歩保守党党首のままでいることは大いにありえると語った。
「たとえば、ワイルドローズ党の党員が承認しないケースが考えられる。どちらか一方の党が、新民主党政権への現実的代替としての地位を失ったら、彼らはもはや政権奪回のため小異を捨てて大同につく意義を感じなくなるだろう。」
 なおアルバータの現行法では、政党は合併することができないため、2つの党は解党して新党結成しなければならない。
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ケニー前国防相、アルバータ進歩保守党党首選に出馬 [アルバータ]

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 カナダ保守党次期党首の有力候補だったジェイソン・ケニー前国防大臣は7月6日、アルバータ進歩保守党党首選に出馬する意向を表明した。同時に、カナダ保守党党首選が始まる10月1日をもって連邦議会議員を辞職すると述べ、不退転の決意を示した。
 彼は「新民主党政権再選は、アルバータの経済に回復不能なダメージを与える」と述べ、革新政権打倒のための保守合同を訴える「アルバータ統一」のプラカードを掲げた。
 彼の計画は基本的に、まず進歩保守党党首選に勝利し、それからワイルドローズ党に合併を申し入れることになっている。問題は、ワイルドローズ党はまだ新しいが、進歩保守党は44年の長期政権を築いた老舗であるということだ。現在はワイルドローズ党が22議席と、9議席の進歩保守党より多くの議席を持っており、ブライアン・ジーン党首は合併には反対しないものの、自分たちが進歩保守党を吸収合併するのでなければ同意しないとしている。また世論調査ではワイルドローズ党の支持率が34%もあり、新民主党の27%、進歩保守党の26%を大きく引き離している。これらの数字は、今総選挙が実施されればワイルドローズ党が過半数を獲得することを意味する。
 ワイルドローズ党は最近、ロゴを緑から青に変更した。緑は右翼の改革党が用いていた色で、青はアルバータ進歩保守党やカナダ保守党が用いている色である。ワイルドローズ党はフェイスブックで、2016年度第1四半期における各党の資金調達を比較した棒グラフに、自党を青、進歩保守党を自由党を連想させる赤で表現していた。これらの動きは、ワイルドローズ党が自党を「怒れる改革派」ではなく保守本流とみなしていると噂された。
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 アルバータ選挙法も、進歩保守党による吸収合併の障害になっている。消滅する党は、資金を選挙管理委員会に没収される決まりになっているのだ。そしてワイルドローズ党は、進歩保守党の2倍の資金を持っている。
だがケニー前国防大臣は、どちらが吸収されどちらが存続するかには興味がないという。彼は合併交渉がまとまったら両党で投票を行い、両党が解党して新党結成することも視野に入れていると述べた。

 アルバータの保守合同は、簡単なようで意外に難しいと多くの人々は懸念する。政治評論家のスティーブン・カーター氏は、アルバータ州民は連邦議会選挙ではカナダ保守党に投票し、州議会選挙では進歩保守党と新民主党という中道右派と左派に投票した事実を指摘した。
「彼らは、極右を好まない。もし好むなら、2012年にも2015年にもワイルドローズ党に投票しただろう。ジェイソン・ケニーは、彼らの多くがイデオロギー政治を好まないということを忘れている。」

 かつてハーパー前首相のブレーンを務め、現在はカルガリー大学で政治学を教えるトム・フラナガン教授は、党合併を掲げて党首選に勝った前例はないと指摘した。
 2003年の(連邦)進歩保守党党首選では、ピーター・マッケイが「カナダ同盟との合併交渉に応じない」と公約して当選したが、当選後はただちに合併交渉に応じた。同様に2002年のカナダ同盟党首選では、進歩保守党との合併を公約した候補たちは落選し、「カナダ同盟を救う」と公約したハーパーが当選したが、オンタリオ補選で失意を味わうと、翻意して合併交渉を始めた。

 スリーハンドレッドエイトコム社のエリック・グルニエ氏は、たとえ両党が合併しても、新党の支持者は単なる足し算にはならないと指摘した。
 2000年の総選挙で獲得したカナダ同盟と進歩保守党の得票率の和は、37.7%になる。だが両党合併して生まれたカナダ保守党は、4年後の総選挙で得票率29.6%しか得られなかった。また彼は、ワイルドローズ党に投票した有権者にとっての第2候補は、33%が新民主党を挙げたのに対し、進歩保守党を挙げたのは21%だったというイプソス社の世論調査を挙げた。さらに、2015年州議会選挙の争点は政権交代であり、ワイルドローズ党がもしも存在しなかったら、その支持者はおそらく新民主党に投票しただろうと語った。

 かつてワイルドローズ党の議員たちを引き連れ進歩保守党に移籍したダニエル・スミス前党首は、保守合同に期待はするが、それを成し遂げるのはケニー氏ではないと語った。
「彼は過去に、社会問題について保守的な立場をとったため、容易ならざる戦いになるだろう。」
「カルガリーとエドモントンは、社会問題に関して地方よりはるかに進歩的であるという、基本的な認識がなければならない。それが安楽死幇助であろうと、大麻合法化であろうと、妊娠中絶であろうと、LGBTQの権利であろうと。」

 政治評論家のデイブ・クーニエ氏は、社会保守主義で右翼のケニー氏が立候補すれば党内左派は黙っていないだろうと予測する。たとえば、彼のような新参者を排除するため、党則を変更し、もっと長期間党員でいることを要件とするかもしれない。もしくは、左派が対立候補を立てることも考えられる。彼は、3人の有力候補を挙げた。
 候補の一人は、サンドラ・ジャンセン州議である。彼女は、論争の的となったLGBTQの生徒を保護する10号法案を推進した。2015年の連邦議会選挙では、進歩保守党はカナダ保守党と提携しているにもかかわらず、彼女は自由党候補を支援した。
「進歩保守党は財政については保守主義だが、社会については進歩主義でもある。そしてそれらの価値は、私にとって非常に重要なものだ。」
 彼女は、ケニー氏が党首になるなら離党すると語った。
 彼女はまた、アリソン・レッドフォード元首相と非常に親しい。元首相が辞任する原因となった政府専用機に、彼女は娘とともに搭乗したことがあり、彼女が党首選に出馬するなら問題視されるだろう。
 別の一人は、トーマス・ルカスザック元副首相である。彼は雇用・移民大臣、文部大臣、副首相、事業・先進教育大臣、イノベーション・先進教育大臣、職業訓練・雇用大臣を歴任した。2014年には党首選に立候補したが、ジム・プレンティス氏に敗れている。
 彼は社会問題については穏健派とされているが、個性が強く、党内では「ファイター」と呼ばれている。彼は論争の的となった10号法案に、党内で公然と反対を唱える数少ない反対派の一人となった。
 彼はケニー氏への敵意を隠さない。ケニー氏は2012年、一人の議員に宛てた電子メールにルカスザック副首相のことを「完全な馬鹿」と書いた後、うっかり「全員に返信」ボタンを押してしまい、その内容がアルバータの保守党議員全員に送られたことがある。彼は、ケニー氏の立候補は認められるべきでないと語った。
 別の一人は、リチャード・スターク州議である。彼はレッドフォード内閣で、観光・公園・レクリェーション大臣を務めた。
 クーニエ氏は、選挙に勝つためには、エドモントン・カルガリー・地方の3つのうち2つを制する必要があるという。スターク州議は、進歩保守党では貴重な地方選挙区出身者であり、この点が非常に有利に働くとクーニエ氏は説明した。

 党首選は、2017年3月18日に実施される。


写真上:立候補を宣言したジェイソン・ケニー前国防大臣。
写真下:上はワイルドローズ党の2015年のロゴ。下は現在のロゴ。

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進歩保守党とワイルドローズ党の保守合同、困難に [アルバータ]

 3月22日に実施されたアルバータ州議会のカルガリー=グリーンウェイ選挙区補欠選挙は、進歩保守党候補が335票差の僅差で勝利した。
 進歩保守党は、先の総選挙で野党第2党に転落する惨敗を喫し、解党するのではないかとさえ噂された。だが新民主党政権の評判が芳しくなく、進歩保守党は根強い人気を持つことを示した。これで進歩保守党は、ワイルドローズ党との合併に向かわず、独力で新民主党政権打倒に向かうだろう。
 党則によれば、2015年5月に辞任したプレンティス党首の後任は、6か月以内に選出しなければならなかった。だが進歩保守党は2016年5月に党大会を開催し、そこでようやく党首選のスケジュールを決定する。事情通によると、党首選は2016年終わりか2017年に実施されるという。それまではリック・マカイバーが暫定党首を務めるが、党員による党首選で選出されていない暫定党首は、ワイルドローズ党との合併交渉を進めることはできないだろう。
 党首選も、各候補が「進歩保守党の偉大な栄光を取り戻す」と公約して争うことになるだろうから、合併を訴える候補は弱い候補とみなされ、当選することが難しい。また当選した新党首は、次の総選挙までわずか2年半しかなく、その短い期間に合併交渉をまとめあげることは困難なうえ、まとまらなかった場合はその相手と総選挙で戦う準備もする必要があり、舵取りが難しい。

 カナダ同盟と(連邦)進歩保守党が2003年に合併交渉をまとめることに成功したのは、両党党首がその重要性を理解していたからだ。当時は保守が分裂した状態で戦えば、自由党を容易に勝たせてしまうという危機感があった。
 交渉がいったん暗礁に乗り上げると、カナダ同盟のハーパー党首は進歩保守党の要求のほとんどを飲んだ。彼にとっては、一番重要なことは合併交渉をまとめることで、二番目に重要なことは新党の党首選に勝利することだった。党首になれば、新党の綱領がどうであれ、党の方針を自分の好きなように決められるからである。こうして新党の綱領は、吸収される進歩保守党の方が圧倒的に小さいにもかかわらず、そのポリシーの多くが盛り込まれることになった。そしてハーパーは新党の党首選に勝利し、総選挙にも勝利して首相の座に就き、いったん盛りこんだポリシーの多くを反故にしたのだった。

 だがアルバータの2つの保守政党は、合併しなければ生き残れないというほどの危機感を持っていない。今後合併談義は、下火に向かうことだろう。
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ドレバー州議がSNS投稿で物議、新民主党幹部会の資格を停止 [アルバータ]

drever2.jpg.size.xxlarge.letterbox.jpg アルバータ新民主党のデボラ・ドレバー州議が、プレンティス首相とリック・マカイバー公共施設大臣の写真に両者がゲイであると示唆する落書きを加えた画像を、SNSサイト「インスタグラム」に投稿していたことが5月22日に判明した。
 彼女は以前にも、ボトルで性的に陵辱される画像や、マリファナをプリントしたTシャツの隣でポーズを取る写真、さらにはカナダの国旗の前で中指を立てる写真などを掲載しており、5日の当選以降それらが次々と見つかり問題視されていた。
 次期首相となるレイチェル・ノトリー新民主党党首は22日、彼女のそれ以前の無分別について20日に本人の謝罪を受け容れたが、今回の事情に鑑み、彼女を1年間党幹部会から排除し、無所属議員として扱うと発表するとともに、党首として謝罪した。
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「我が党と我々の政権の方針に反するアンチゲイ的行動について、全てのアルバータ州民に謝罪する。彼女には女性に対する暴力と同性愛差別について説明する責務があると、今週始めの会談で述べたことが彼女の心に響いているであろうことを私は望んでいる。有権者に対する責務として彼女がそうするなら、私は来年この問題を見直して、彼女を幹部会に迎え入れるかどうか検討する。」
 ドレバー州議はマウント・ロイヤル大学に通う26歳の学生だが、性的に陵辱される画像について、若気の至りであり現在の彼女の立場を反映するものではないと今月初めに釈明した。
「私にとっての今の最大の関心事は、議員に当選し、経験を積んで学び、できるだけ早く活動できるようになることだ。」
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 新民主党は、当選困難と予測した選挙区にも若く経験のない候補を擁立したが、政権交代を熱望する有権者の追い風に乗り、それらの「捨て石候補」を数多く当選させた。新民主党のブライアン・メイソン院内幹事長は、ベテラン議員がそれらの若手議員を導く必要があることを認めつつも、有権者の判断は間違っていないと断言した。
「我々はアルバータにおける、43年間で最初の新政権である。我々には経験と学習が必要だと、人々は理解しているものと思う。私は、我々を選んでくれた有権者に信頼している。」
 アルバータ党のグレッグ・クラーク党首は、ノトリー党首の対処を評価したが、候補選定については疑問を呈した。
「ノトリー党首は取るべき行動を取った。だが我が党は、候補を綿密に調査しておりクオリティは高い。」
 ワイルドローズ党のアンジェラ・ピット州議は、新政権への懸念を口にした。
「これらの問題は、新民主党は政権に就く準備ができていないことを示している。」
 渦中のリック・マカイバー公共施設大臣は、この件についてコメントすることはなく、新民主党の問題だとそっけなく語った。
 ノトリー内閣は24日に宣誓し、正式に発足する。
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アルバータに吹いた「オレンジ旋風」の衝撃 [アルバータ]

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 (1) 歓喜する左派
 総選挙で圧勝したレイチェル・ノトリー党首は、興奮する群集の前でこう叫んだ。
「アルバータの皆さん、春が来ました!」
 チャーリー・アンガス下院議員は、こう言った。
「アルバータからのメッセージは『スティーブン・ハーパー、次はお前だ。』」
 それから彼は、かつてパンク・ロック・バンド「レトランジュ」の仲間だったアンドリュー・キャッシュ下院議員とステージに上がり、ギターを抱えて“Four Strong Winds”の替え歌を歌った。
“Think I'll go out to Alberta. Weather's good there in the spring.”(元歌は“fall”)
 連邦新民主党のマルケア党首は、以下のように述べた。
「これは、全国の新民主党にとっての吉兆である。レイチェル・ノトリー党首と彼女のチームがアルバータで成し遂げたことを、我々は誇りに思う。我々は今日、次のステップのバネ(spring)を得た。」
「カナダの中に、新民主党の強固な拠点が2つある。それはアルバータとケベックだ。あなたが変化を望むなら、それは新民主党にある。」
 数年前まで、アルバータとケベックは新民主党の弱点だった。そこで躍進を果たしたことが、うれしくてたまらないといった表情だった。
 連邦自由党のトルドー党首は、こうコメントした。
「これは有権者からの、毎回投票するのが当然でもなければ、過去の前例が現在の行動を決めるわけでもないというメッセージだ。」
「ノトリー党首は確実なプランを提示して、明確な選挙運動を行い、報われた。私は、それこそが全ての政治家が注意を払うべき教訓だと思う。」

 (2) 不安を煽る右派
 保守党のスティーブン・フレッチャー下院議員は、新民主党圧勝への不安を文学的に表現した。
「今朝目覚めたとき、朝日はのぼるだろうかと考えた。朝日はそのとき、オレンジ色に輝いていた。私は困惑した。」
 ロブ・アンダーズ下院議員は、新民主党政権が経済に与える影響を懸念した。
「私は今、トラックがサスカチュワンへ移ることを、資本がアメリカに逃げることを、退職者がブリティッシュコロンビアへ引っ越すことを心配している。」
 保守党内の反応について、ナノス・リサーチ社のニック・ナノス社長はこう分析した。
「保守党は、いかなる期待にもまして、新政権がミスを犯してくれるのを手ぐすね引いて待ち望んでいるのだろう。」
 今回の結果を、かつてオンタリオで誕生した新民主党政権と比較する意見は多い。1990年に成立したボブ・レイ政権は、財政を破綻させたあげく1995年の総選挙に敗れ、1期で退陣した。その間1993年の連邦議会選挙では、連邦新民主党がオンタリオ新民主党の不評を受け、オンタリオの全議席を失った。
 しかし次の連邦議会選挙は、遅くとも10月までに行われる。アルバータ新民主党政権がボロを出すには、十分な時間がない。
 新民主党政権はおそらく、前政権の腐敗を徹底的に暴くだろう。そうすれば連邦保守党にダメージを与えることができるし、自分たちへの批判の矛先をかわすことができるからだ。
 政治評論家のアリス・ファンク氏は、新民主党はアルバータ州議会選挙と連邦議会選挙(のアルバータ選挙区)で同じ候補を擁立しており、そのうち当選したアニー・マキトリック候補、マイケル・コナリー候補、ステファニー・マクリーン候補など数人の候補を失った、つまりは代わりの候補を早急に探さねばならないと指摘した。この事実は、ノトリー党首がこれらの候補の当選を期待していなかったことを意味する。

 (3) 進歩保守党はどうなる?
 アルバータの与党が政権を失うと、党が崩壊するのがこれまでの通例である。スティーブン・カーター氏は、進歩保守党は崩壊するだろうと予測する。進歩保守党はこの選挙で多額の資金を投じたにもかかわらず、政権を失ったため資金を集めることができなくなった。実質的にポリシーがなく、政権維持だけが自己目的化したこの党が、ひとたび金と権力を失えば、求心力を失って分解するのではないか。
 オンタリオ進歩保守党は1985年に政権を失ったが、1995年に新民主党政権を下し再び政権に返り咲いている。彼らは、オンタリオで唯一の右派政党だったからだ。だがアルバータ進歩保守党は、そうではない。ここで重要なのは「2位争い」である。アルバータ進歩保守党はたとえ政権を失っても、ワイルドローズ党を壊滅させる必要があった。しかし2位争いに勝ち、影の内閣を組織するのはワイルドローズ党の方だった。新民主党政権を打倒するのに、2つの右派政党は要らない。消えるのはどっちだろうか。
 ワイルドローズ党を飲み込もうとしたのは進歩保守党の方だったが、彼らは毒ガエルを飲み込んで死ぬ蛇と同じ運命を辿るのだろうか。

 (4) ダニエル・スミス、保守合同を呼びかける
 何もなければ、今スポットライトを浴びているのはこの人だったかもしれない。ダニエル・スミス氏はCTVに出演し、保守合同を呼びかけた。今回総選挙での得票率は新民主党41%に対し、進歩保守党28%・ワイルドローズ党24%だった。右派票を合わせれば新民主党より多かったにもかかわらず、新民主党に単独過半数を許してしまった原因は、右派票の分散にあると彼女は指摘し、次の総選挙では右派が政権を奪回するため、両党の合併や選挙協力が必要だと訴えた。また彼女は、仲間の議員を連れてワイルドローズ党を離党し、進歩保守党に移籍した判断は正しかったと証明されたと語った。
 予備選に敗れ政界を引退したはずの彼女が早くも政治的発言をするのは、政治的混乱に乗じて保守合同を実現させ、自らその盟主となり政界にカムバックしようという魂胆なのだろう。


図:オレンジ色に輝く朝日に恐れおののく人。
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保守の牙城アルバータに初の革新政権誕生、進歩保守党44年の一党支配に幕 [アルバータ]

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 5月5日に実施されたアルバータ州議会総選挙は、新民主党53議席(4)、ワイルドローズ党21議席(5)、進歩保守党10議席(70)、自由党1議席(5)、アルバータ党1議席(0)(定数87議席、カッコ内は解散時勢力)という結果となり、新民主党がアルバータ初の革新政権を樹立することになった。進歩保守党は、当選した閣僚がプレンティス首相、ウェイン・ドライスデール運輸大臣、マンミート・ブラー人的資源大臣、リック・マカイバー公共施設大臣のわずか4人という惨敗で、12期44年続いた一党支配を終える。アルバータ党は、初の議席をグレッグ・クラーク党首が獲得した。なおカルガリー=グレンモア選挙区では、新民主党と進歩保守党の二人の候補が同数となり、票の数え直しが行われる。

 山が動いた。保守の牙城アルバータで、新民主党は16より多くの議席を獲ったことはなかった。グローブ&メイル紙は、「進歩保守党政権は旧石器時代以来初めてアルバータの総選挙で敗北した」(※1971年に与党になって以来敗北していない。それ以前は野党で敗北した)と報じた。
 レッドフォード元首相の公金私用スキャンダルで、ワイルドローズ党の支持率は再び高まっていた。プレンティスが新たに首相に就任したのは、そんなときのことである。彼は政権交代の目を潰すため、露骨な陰謀を使った。ワイルドローズ党の内紛につけ込み、カリスマのスミス党首らを自党に引き抜いたのである。
 彼は、野党第一党であるワイルドローズ党の党首が決まるのを待って、しかし決まるとただちに、ワイルドローズ党の態勢が整う前に速攻で総選挙を仕掛けた。野党が反撃できないよう、選挙期間も短く設定した。プレンティス首相にとっては、何から何まで計算づくだった。だが有権者は、ワイルドローズ党に政権を渡す選択肢を首相に潰されたことに憤った。彼らはその怒りが収まらないうちに世論調査に回答し、プレンティス首相が新民主党政権への不安をしきりに訴えたにもかかわらず、有権者はそれについて考え直す時間もないまま、怒りとともに投票所に殺到したのだった。
 まさに「策士策に溺れる」である。スミスを潰すためにあらゆる陰謀を使ったプレンティスは、党首と議員を辞職し2度目の政界引退を発表した。一時は「ポスト・ハーパー」の地位すら嘱望された彼だが、チャンスは二度と巡っては来ないだろう。スミスは予備選で無名の新人に敗れ引退を表明したが、プレンティスにとっても「人を呪わば穴二つ」の結果となった。
 ワイルドローズ党は、スミスなしでも戦えることを実証した。ワイルドローズ党から進歩保守党に移籍した11人の州議は、ロブ・アンダーソン前院内幹事長、ブルース・ロウ州議、ジェイソン・ヘイル州議の3人は出馬せず引退、出馬したブルース・マカリスター州議、ジェフ・ウィルソン州議、ブレイク・ペダーセン州議、イアン・ドノバン州議、ケリー・トウル州議の5人は全員落選した。残りのダニエル・スミス前党首、ゲイリー・ビックマン州議、ロッド・フォックス州議の3人は全員予備選で敗退するなど、有権者の厳しい審判が下った。
 近年予想を外し続けた世論調査機関は、今回は正しく予想した。というより、回答者が翻意せず回答通りに投票したと言うべきだろう。


写真:オレンジ・クラッシュを掲げるレイチェル・ノトリー新民主党党首。
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進歩保守党の逆転は可能か [アルバータ]

 4月30日から5月3日の間に、7社による世論調査が発表された。その7社全ての結果が、新民主党による過半数政権誕生を示している。
 政党支持率は新民主党が37から44%、進歩保守党が20から30%、ワイルドローズ党が21から27%となっている。進歩保守党は7社のうち6社で24%を下回っており、5社でワイルドローズ党を下回っている。ワイルドローズ党は、アルバータ社会信用党が壊滅した1975年以降において、伝統的三大政党(進歩保守党・自由党・新民主党)以外のいかなる政党よりも多くの議席を取ることは確実で、かなり多くの世論調査がワイルドローズ党が野党第一党になることを示している。
 にもかかわらず、世論調査への懐疑的意見はいまだ存在する。それは、これがポピュリズムの強いアルバータの選挙だからだ。新民主党が保持している大きなリードへの疑いは、他の州ではありえない。
 2013年のブリティッシュコロンビア州議会選挙では、選挙戦最終週の世論調査で野党新民主党は平均して7ポイント与党をリードしていたが、逆転された。2012年のアルバータ州議会選挙でも、選挙戦最終週の世論調査で野党ワイルドローズ党は平均して8ポイント与党をリードしていたが、逆転された。

 新民主党の進歩保守党に対するリードは、平均して17ポイントもある。だが調査機関は、浮動票が有権者の15%、20万票もあると指摘する。
 しかしこの数字ですら、新民主党のリードを覆すには十分でない。浮動票を除くと、新民主党の進歩保守党に対するリードは14ポイントとなる。進歩保守党が新民主党を凌ぐには、浮動票の実に90%以上を獲得しなければならず、ほとんど不可能である。
 そこで進歩保守党は、他党に投票すると決めた有権者の票を奪う必要がある。最も容易に奪えそうなのは、中道左派の自由党だろう。自由党の支持率は5から10%で、1982年以降で最も低い数字となっている。自由党候補のいない選挙区には望みがあるが、同党支持者の多くは、自由党候補のいる選挙区ですら新民主党に投票すると表明している。そもそも自由党支持者の票田はさほど大きくないから、進歩保守党にとって大きな希望ではない。
 進歩保守党は、もっと大きな票田から奪う必要がある。進歩保守党支持者は、ワイルドローズ党へ移ることがありえる。ワイルドローズ党支持者も進歩保守党へ移ることがありえるが、同時に新民主党へ移ることもありえる。新民主党支持者は、自由党やワイルドローズ党に移ることがありえる。進歩保守党支持者ですら新民主党が次善の選択だと言っており、どう見ても、進歩保守党は入る票より出て行く票の方が多くなりそうだし、新民主党は出て行く票より入る票の方が多くなりそうだ。
 そもそも大番狂わせを起こした2012年州議会選挙は、右翼のワイルドローズ党を危険視した自由党や新民主党の支持者が中道右派の進歩保守党にスイッチしたのが原因であり、前回起きた左派票の進歩保守党へのスイッチは、今回は全く当てにできない。
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3党伯仲、どうなるアルバータ [アルバータ]

 イプソス=リード社による世論調査は、レッドフォード元首相による汚職や、プレンティス首相が上程した予算案、そして彼による卑劣なワイルドローズ党潰しに有権者が憤っていることを示した。
 そこでプレンティス首相は選挙戦最後の週末、新民主党政権になればパイプライン計画は頓挫し、法人税は増税され、景気は冷え込み失業者が増えると喧伝し、オンタリオ・ブリティッシュコロンビア・サスカチュワンで成立した新民主党政権がどうなったかと問いかけ、不安を露骨に煽った。それはあたかも、彼が切れる最後のカードであるかのようだ。
 だがレジェ・マーケティング社による世論調査は、経済ではなく、信用と責任を有権者の最も重大な関心事であることを示している。保守の牙城カルガリーで誕生した革新市長ナヒード・ネンシは、政府の安定性ならアルバータより中国の方が強いと語り、変化を恐れるなと訴えた。

 レジェ・マーケティング社による世論調査は、2012年州議会選挙で進歩保守党に投票した人のうちわずか50%が今回も進歩保守党に投票すると回答し、残りの50%は他党に投票すると回答した。また2012年にワイルドローズ党に投票した有権者の14%が、今回は新民主党に投票すると回答した。
 新民主党への支持の多くは、革新政党を支持しない人々から来ている。彼らは明らかに、新民主党それ自体の魅力やそれへの不安よりも、進歩保守党への怒りにとらわれている。
 EKOSリサーチ社の世論調査によると、新民主党は65歳以上を除く全ての年齢層で支持率トップに立っている。65歳未満では進歩保守党に20ポイントリードしているが、65歳以上では7ポイント劣っている。55歳以上の有権者の投票率は非常に高いことが知られているが、若い有権者は天気が良かったり、友人に誘われると投票に行かないことがしばしばあり、それが近年の世論調査が外れる原因となっていると指摘されている。イプソス=リード社による世論調査は、有権者の48%は投票先を変えるか、または投票に行かないかもしれないと回答しており、予断を許さない。これらの有権者が最終的にどういう行動を取るかを予測する方法は、現在考案されていない。
 2012年州議会選挙では、調査機関の多くはワイルドローズ党の優位を検出し、政権交代を予言した。だが蓋を開けてみれば、進歩保守党の圧勝であった。世論調査を外れさせたのは、移ろ気な有権者たちが大挙して投票日当日になって投票先を変えたことであり、ワイルドローズ党を危険視した自由党や新民主党の支持者が中道右派の進歩保守党に投票したことだった。だが前回進歩保守党を勝利させた中道連合は、今回は当てにできない。右翼のワイルドローズ党支持者ですら進歩保守党に憤り、長期一党支配にとどめを刺すべく新民主党に流れている。
 イプソス=リード社による世論調査は、自由党やアルバータ党の支持者の4分の3が行動を決めかねていることも示している。各党のなかでワイルドローズ党の支持者が、最も本来の支持政党に投票する意志が強いことが判明した。

 アルバータの歴史上、少数政権は一度も存在していない。2015年州議会選挙は、アルバータの歴史上初の3党鼎立選挙となる。
 選挙の結果として、いくつかのシナリオが考えられる。ワイルドローズ党が第一党になることは、まずありそうにない。
 次に、進歩保守党による過半数政権である。これは最も政治的に安定していると考えられる。だが新民主党の基盤であるエドモントンと、進歩保守党の基盤であるカルガリーと、ワイルドローズ党の基盤である地方との間に、アルバータは深刻は亀裂を生じることになるだろう。
 次に、新民主党による過半数政権である。43年間進歩保守党と癒着した官僚勢力との間に、深刻な摩擦を経験するだろう。進歩保守党政権は予算案を上程したものの、可決させる前に議会を解散した。酒・煙草・ガソリンへの増税を含む予算案は反故にされ、法人税増税・石油ロイヤリティを値上げした予算案に差し替えられる。それで住民の間に不満が生じても、野党は政権を倒すことはできない。
 次に、進歩保守党による少数政権である。進歩保守党が新民主党を激しく攻撃していることから、新民主党の閣外協力を得るのは困難である。ワイルドローズ党ならイデオロギー的には近いが、同党は進歩保守党を批判するのがレゾン・デートルであり、また議員を大量に引き抜かれた恨みもあり、和解は容易ではないだろう。
 次に、新民主党による少数政権である。ワイルドローズ党とはイデオロギー的にかなり遠いが、両党は進歩保守党政権打倒のためタッグを組んで戦ってきたから、相性はさほど悪くはないかもしれない。だがワイルドローズ党は、あらゆる増税に反対する。酒・煙草・ガソリンへの増税を含む進歩保守党の予算案を反故にし、法人税増税・石油ロイヤリティを値上げした予算案に差し替えることに、彼らは同意しないだろう。
 世論調査の結果にかかわらず、選挙の行方は全く見えて来ない。そしてどのような結果になったとしても、アルバータ政治には混沌が待っているということだけは確実なようだ。
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ワイルドローズ党「進歩保守党とも新民主党とも協力」 [アルバータ]

 ワイルドローズ党のブライアン・ジーン党首は5月1日、あくまでもワイルドローズ党による単独政権を目指すものの、単独過半数に達する党がない場合は、進歩保守党とも新民主党とも協力できると語った。
 彼は、これまで繰り返してきた「新民主党に経済を任せることはできない。そして進歩保守党には何も任せることができない」という発言を撤回することはなく、むしろ自党がその足りないところを補完するのだという。
「私は下院議員時代、少数与党政権下で働いた。私はそこで、多くの法案が可決されるのを見た。私は幾多の交渉を見、そして幾多の妥協を見た。妥協は時に、最善を導く。」
 だが増税など、ワイルドローズ党のアジェンダに反する政策は支持しないと付け加えた。

 現在のところ、進歩保守党と新民主党とワイルドローズ党が激しいデッドヒートを繰り広げており、実際に単独過半数に達する党がない可能性が高まっている。人々の注目が、保守の進歩保守党vs革新の新民主党の戦いに釘づけになっているとき、ワイルドローズ党の支持者が新民主党政権を阻止するため、進歩保守党に投票する「戦略的投票」によって埋没することは大いにありえる。そこで進歩保守党との連立をほのめかせば、これを阻止できる。またワイルドローズ党の政策を考えれば、革新の新民主党との連立はありえないが、進歩保守党の長期一党支配に飽きている人々(特に保守層)の票が新民主党に流れるのを阻止する意図があるのだろう。
 自由党のデビッド・スワン暫定党首は、少数政権に肯定的な意見を述べた。
「一つの党があまりに長く、あまりに強く一つの方向に人々を導いてきた。」
 支持率でトップに立っている新民主党にとって、連立できるパートナーは支持率の低い自由党くらいしかない。レイチェル・ノトリー党首は、連立について何もコメントはしない。
「この3・4年の間、我々には機能的な政府はなかった。進歩保守党劇場の回転ドアは、短期間に主役を入れ替えることで、それをよりひどいものにした。私にとって重要なことは、議会で機能的に働ける人々が選出されることだ。」
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躍進する新民主党に、批判のボルテージを上げるプレンティス首相 [アルバータ]

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 4月30日にCBCテレビが発表した、リターン・オン・インサイト社による政党党首支持率調査は、新民主党のレイチェル・ノトリー党首38%、ワイルドローズ党のブライアン・ジーン党首34%、進歩保守党のジム・プレンティス党首31%となり、当初予想された与党楽勝ムードは一変、新民主党の急上昇により3党デッドヒートの様相を呈している。
 アルバータは保守の牙城であり、連邦議会選挙ではほぼ全ての議席が保守党のものとなる。州政治においても、アルバータ進歩保守党政権が43年半も続いている。しかし保守の本拠地カルガリーで2010年、革新のナヒード・ネンシが市長選に当選するなど、都市部では革新勢力も存在する。16より多くの議席を獲ったことのないアルバータ新民主党は、テレビ討論を契機として支持率を急上昇させ、いまや政権を奪取する勢いを見せている。

 テレビ討論で法人税について議論していたプレンティス首相が、ノトリー党首に向かって「数学は難しいということを、私は知っている」と言ったことが、波紋を呼んでいる。
 マウント・ロイヤル大学で政治学を教えるデュエイン・ブラット教授は、次のように述べた。
「この発言は、尊大なエリートのプレンティスがノトリーに、自分がいかに数学が得意かを『マンスプレイニング(※女性を無知だと侮るかのように男性が得々と説明すること)』した出来事として、彼のキャリアが続くかぎり付きまとうだろう。」
 引退した進歩保守党のダグ・グリフィス元議員は、こう解説した。
「同じ発言をジーン党首に言っていたら、誰も何も言わなかっただろう。だが彼は、それをノトリー党首に言った。それは、女性を侮るように聞こえた。私は首相をよく知っているが、彼はそんな嫌味を言うような人ではない。」
 ノトリー党首自身は、首相の発言を女性蔑視や見下されていると感じたかと問われ「いいえ、全然」と答え、意に介さないそぶりを見せた。

 リターン・オン・インサイト社のブルース・キャメロン社長は、ノトリー党首をこう評した。
「レイチェル・ノトリーの選挙運動は非常に精力的で、ジャック・レイトンを髣髴させる。支持政党に関係なく、多くのアルバータ州民は、新民主党が過去最高の運動を展開していると感じている。」
 ノトリー党首は、こう演説した。
「人々は、異なった何かを求めている。彼らは、代案を求めている。彼らは、教育とヘルスケアを保護し、仕事を確保するという要望を代弁する政治を求めている。私は、今の政治家たちがこれらを成し遂げるとは思わない。」
 プレンティス首相は、世論調査についてはコメントせず、選挙戦も終わりに近づくと、新民主党に批判を集中させた。
「新民主党が与党になれば、予算は赤字になる。それから法人税を増税し、石油ロイヤリティを値上げして、景気を悪化させるだろう。」
 さらに彼は、こう演説した。
「(ケベック人の)マルケア党首によって作られたかのようなパイプライン政策は、この州では必要ない。」
 だがノトリー党首は、これを一笑に付した。
「それは完全に間違っている。私はもう何か月も、マルケア党首と話していない。私はアルバータ州民から、方針を得ている。」
 プレンティス首相はなおも新民主党への批判のボルテージを上げ、この選挙は「自由な企業活動のアルバータか、それともこの州を間違った方向に導く新民主党かの選択」であると言い、さらに「アルバータは新民主党の州ではない」と意味不明の発言まで飛び出した。
 ノトリー党首は、余裕たっぷりに反論した。
「アルバータがどんな州であるかを決めるのは、アルバータ州民だ。」
「もし彼が、自分が尊大だというイメージを忘れさせる目的のために、人々が何でありまたは何でないかについて語っているのだとしたら、彼はあまり有能ではないと思う。議論は根拠のないただの悪口に変わっている。それは、私が取るべき戦略ではない。」


図:「私にも彼女と同じものをちょうだい。」左はオンタリオ新民主党のアンドレア・ホーバス党首、右はアルバータ新民主党のレイチェル・ノトリー党首。
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アルバータ州議会選挙、世論調査で新民主党優位の怪 [アルバータ]

 世論調査機関は4月30日、次々とアルバータ州議会総選挙に関する調査結果を発表した。だがその結果は、与党進歩保守党の圧勝と言われていたにもかかわらず、どの機関も新民主党の優位を示した。
 CBCテレビが発表したリターン・オン・インサイト社による政党支持率調査は、新民主党38%、進歩保守党24%、ワイルドローズ党21%という結果になった。
 グローバル・ニュースが発表したイプソス・リード社による政党支持率調査は、新民主党37%、ワイルドローズ党26%、進歩保守党24%という結果になった。

 カルガリー・ヘラルド紙とエドモントン・ジャーナル紙が発表したレジェ・マーケティング社による「最善の首相」の世論調査は、新民主党のレイチェル・ノトリー党首28%、進歩保守党のジム・プレンティス党首24%という結果になった。だが4か月前には、プレンティス首相の支持率は50%あった。
 これはエドモントンとカルガリーの票が多く入ったために起きた現象であり、実際の選挙結果はこうはならないという冷静な意見もある。
 2012年総選挙では世論調査の結果がことごとく外れたのを、多くの人が覚えている。投票日直前まで与党進歩保守党の支持率は36%しかなく、ワイルドローズ党の支持率は43%もあり、各調査機関は政権交代を予言したが、実際の結果は与党過半数であった。
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【2位争い】アルバータ州議会が解散、総選挙へ [アルバータ]

 アルバータ州のジム・プレンティス首相は4月7日、ドン・エセル副総督に州議会の解散を奏上した。副総督はこれに同意し、5月5日の総選挙を公示した。
 アルバータ州はカナダ屈指の産油州だが、原油価格が下落しているため、アルバータ州の歳入は落ち込んでいる。プレンティス首相は赤字予算の上程を余儀なくされているが、各方面からの反発を封じるため、野党が壊滅しているこの機に抜き打ち解散・総選挙に打って出た。表向きは、最大野党ワイルドローズ党の党首が決まるのを待っていたかのように見えるが、その実は敵の基盤が整わないうちに速攻を仕掛けてきたのである。
 解散にあたり、プレンティス首相は記者会見で次のように述べた。
「厳しい選択が成される必要がある。我々が直面する今の挑戦に対し、現実的なプランが必要だ。私はこの州が必要とする変革を実行するための委任を、アルバータ州民にお願いしている。」
「我々は、現実的な選択をした。原油価格が回復するかどうかにかかわらず、我々は3年で均衡財政に戻る予算を上程した。」
 首相はさらに、「罪悪税」と累進課税制度に重点を置くと語った。
 原油価格の崩壊は、今年アルバータ州に50億ドルもの赤字をひきおこすことになっている。プレンティス首相は3月下旬、「痛みを分かち合う予算案」を上程したが、酒・煙草・ガソリンへの課税が強化されたため、価格は急速にはね上がった。しかしその一方で彼は、石油ロイヤリティの値上げや法人税増税は景気に悪影響をもたらすとして、これらを否定した。

 選挙戦の開始を受けて新民主党のレイチェル・ノトリー党首は、アルバータ州民は進歩保守党によって誤ったリーダーシップに導かれていると語った。
 ワイルドローズ党のブライアン・ジーン党首は、プレンティス首相は固定された選挙日程を守らなかったと非難した。
 自由党のデビッド・スワン暫定党首は、この選挙はアルバータ州次世代の信頼を構築するものになると述べた。
 アルバータ党のグレッグ・クラーク党首は、この選挙を「進歩保守党のいつもの日和見主義以外の何ものでもない」と評した。
 アルバータ進歩保守党政権は12期43年半にも及び、カナダ史上最長政権となっている。かつてワイルドローズ党は支持率で進歩保守党を上回ったが、2014年暮れに分裂してしまい、その後は与党を脅かす存在がない。多くの批評家は、今回の総選挙を「2位争い」と評している。
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ダニエル・スミスが引退表明、記者に暴言 [アルバータ]

 進歩保守党の予備選で敗れたダニエル・スミス州議は、3月29日ツイッターで政界引退を表明した。その際、記者にPワードを使い、謝罪した。

 28日に予備選で敗れ、立候補の途を絶たれたスミス州議は、その日は対戦相手のフィッシャー町議を称え、今後については夫と相談すると述べた。ところが翌日、グローバル・ニュースのバシー・カペロス(Vassy Kapelos)記者がツイッターで今後について問うと、彼女は暴言を吐いた。
スミス州議「私は、公生活から身を引きます。」
カペロス記者「それは、いかなる公職にも就かないということですか?」
スミス州議「バシー、失せろ。(“Piss off Vashy.”)」
カペロス記者「何ですって?」
スミス州議「放っといてよ。」
スミス州議「ごめんなさい。不適切でした。あやまります。私は、まだコメントする心の準備ができていません。」

 ほんの1年前まで、スミスは総理の椅子に手が届く位置にいた。進歩保守党政権は腐敗し、財政赤字を増大させ、そのリーダーシップは迷走し、ワイルドローズ党は支持率で与党を凌いでいた。
 彼女は若くチャーミングで、弁が立ち、政治に関する見識もあり、政治家になるべくして生まれたプリンセスである。彼女はカルガリー大学で政治学と経済学を修め、フレーザー研究所のインターンを務めた。その後はカルガリー・ヘラルド紙のコラムや、グローバル・テレビジョンのホストとして活躍したが、2009年にワイルドローズ党にスカウトされ、党首選に出馬して勝利した。その裏には、進歩保守党政権による石油ロイヤリティ引き上げに反発したジョン・マードック氏らオイルメジャーの資金援助があったと言われている。
 資産家が政界に進出しようとするとき、乗っ取りやすい泡沫政党に目をつけるのはカナダではよくあることだ。ワイルドローズ党は、オイルメジャーから金とカリスマのスミスを送り込まれたことで、一躍有力政党にのし上がった。スミスは党内抗争を抱える進歩保守党から、ロブ・アンダーソン州議とヒース・フォーサイス州議の2人を引き抜き、支持率を急上昇させ、政権奪取する勢いを示した。
 しかし選挙期間中に候補者が、同性愛批判や人種差別発言を繰り返し、新党ならではの基盤の弱さを露呈した。スミス党首自身も、地球温暖化に懐疑的な発言をした。新党ワイルドローズ党にはもともと政策などなく、オイルメジャーが自分たちに都合のいいことを代弁させるために、政策も機構も基盤もない党を乗っ取り、見栄えの良いスミスを看板に立てたに過ぎなかった。
 政権奪取はならなかったものの、ワイルドローズ党は17議席を獲得し、ここ40年間で最強の野党となった。レッドフォード首相の不祥事が発覚すると、ワイルドローズ党は再び支持率トップの座を取り戻し、再び政権を奪取する勢いを示した。
 だが彼女の勢いも、ここまでであった。稀代の策士プレンティスが進歩保守党党首になると、財政に強いワイルドローズ党の政策を丸呑みし、批判を封じた。そして、2014年10月の補選で全敗したスミス党首は追い詰められ、議員8人とともにかつての敵中に飛び込んだ。
 彼女の側近だったビトー・マルシアノ氏は、彼女をこう評した。
「ダニエル・スミスには非凡な政治的才能がある。だが彼女は、有権者とふれ合い理解することを怠った。彼女がしてきたことは自分のための政治だったと、有権者が見抜けないとでも考えたのだろうか。」
 ワイルドローズ党のパット・スティア州議は、こう述べた。
「彼女は魅力的なカリスマであり、アルバータ政界のプリンセスだった。それゆえ彼女の裏切りと迷走は、人々にショックを与えた。彼らは、自分が恋人に捨てられたように感じただろう。」
 スミスは党移籍の後、しばらくは静かになりをひそめていた。おそらく、しばらくすれば人々は忘れてくれると考えたのだろう。だがそうはならなかった。草の根から政界に身を投じ、泡沫政党の党首となり、それを政権奪取の一歩手前にまで引き上げたスミスは、一時は連邦首相の座すら嘱望されたが、無名の新人に予備選で敗れ、まもなく政界を去ろうとしている。
 ワイルドローズ党から進歩保守党に移籍した9人の議員たちは、3人が不出馬を表明し、3人が予備選を勝ち上がり、3人が敗退した。
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スミス州議が予備選敗退:裏切り者に鉄槌 [アルバータ]

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 3月28日に実施された進歩保守党ハイウッド選挙区予備選で、現職でワイルドローズ党前党首のダニエル・スミス州議がキャリー・フィッシャー町議に敗れた。
 フィッシャー町議は、こう語った。
「私はここ数年選挙区で活動し、人々は私が懸命に働いてきたことを見ている。彼らは私を知っているし、私も彼らを信用している。それが今日の結果につながったと思う。」
 スミス州議については「ダニエルがフェアな選挙をしてくれたことに感謝している」と述べたが、次の総選挙で彼女に応援を求めるかと問われると「少し時間を下さい」と答えた。
 スミス州議は、以下のように述べた。
「私にとっては、複雑な心境だ。私は選挙区の候補に擁立されたかったが、有権者の考えはもちろんそうではなかったということだ。ハイウッドの有権者には感謝している。さわやかな選挙だった。党にとっては良かったと思う。私は党のため、キャリーを勝たせるようサポートしていく。」
 党移籍は間違っていたと思うかと問われると、彼女はきっぱりと否定した。
「いいえ、全然。ジム・プレンティス首相こそ、我々が今必要とするリーダーだと考えている。彼のリーダーシップの下で保守が一つに結集することが重要だ。」
 彼女は今後について、夫と協議したいと語った。


写真:勝利したキャリー・フィッシャー町議(右端)と、敗れたダニエル・スミス州議(その隣)。
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ワイルドローズ党党首にジーン元下院議員 [アルバータ]

wildrose2.jpg 3月28日に実施されたワイルドローズ党党首選で、ブライアン・ジーン元下院議員が当選した。投票資格を持つ党員は2万5000人で、ブライアン・ジーン元下院議員4792票、ドリュー・バーンズ州議3502票、ストラスコーナ郡のリンダ・オシンチャック元市長444票という結果となった。投票率は、35%という異例の低さとなった。
 オシンチャック元市長は、同性愛者と異性愛者の連帯を訴えるという、およそ保守政党とは思えない政策を掲げ当初注目を集めたものの、3人の候補には目立った政策的差は見られなかった。2014年進歩保守党党首選のとき、ジーン元議員がプレンティス候補に1万ドル献金した事実に言及したロボコールは、バーンズ陣営によって選挙期間外に行われたもので、ジーン陣営の強い反発を買い、バーンズ州議は党から罰金を科せられた。ジーン元議員はお返しにバーンズ州議を、昨年の党分裂の際、離党する議員たちを説得しなかったと非難した。
 ジーン新党首は、2004年カナダ保守党から連邦議会選挙に初当選し、連続4回当選。2014年「家庭内の事情」により政界を引退していた。彼の息子マイケルはリンパ腫を患い、先週他界した。

 政治評論家のファロン・エリス氏は、党首選の低投票率は、ワイルドローズ党がもはや与党進歩保守党にとって脅威ではないことを示していると語った。
「これは、最大野党の党首選とは思えない。人々は、これを話題にしていない。」
 州議会の任期は2016年6月までだが、ワイルドローズ党を解体したプレンティス首相は、同党に立ち直る時間的猶予を与えず、早めに総選挙を仕掛けて来るものと予想されている。ワイルドローズ党は次の総選挙を、当初フォーサイス暫定党首で戦うことにしていたが、正式な党首を選出することに方針変更した。エリス氏は、次回立候補しないフォーサイス暫定党首の下では総選挙を戦えないのだろうと説明した。
 公式野党であるワイルドローズ党は、現在議員はわずか5人で、次の総選挙に出馬を表明しているのはそのうち3人である。
 皮肉なことに、同日進歩保守党でハイウッド選挙区の予備選が実施され、現職でワイルドローズ党前党首のダニエル・スミス州議が落選した。
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ワイルドローズ党暫定党首にフォーサイス [アルバータ]

 ワイルドローズ党は12月22日、ヘザー・フォーサイス議員を暫定党首に指名した。任期は、2015年に行われる党首選までとなる。
 フォーサイス暫定党首は、党本部でこう演説した。
「今はアルバータにとって、重要なときです。権力の追求において、民主主義は一蹴されました。圧倒的数のアルバータ州民が、最も大切なものを粉砕されたと感じていることに疑いはありません。しかし皆さん、疑いなく、アルバータの野党は生きています。」
 フォーサイス議員は今年初め、家庭内の事情により次の総選挙に出馬しないと表明した。しかし彼女は、2016年までに行われる次の総選挙までは議員を続けると語った。

 アルバータ州議会のジーン・ツォーツデスキー議長は23日、ワイルドローズ党と自由党に手紙を送り、ワイルドローズ党を公式野党とする決定を伝えた。
 ワイルドローズ党のシェイン・サスキュー院内幹事長は、前回総選挙で自由党を圧倒的に上回る44万票を獲得し、有権者の強い支持を受けた以上は当然だと語った。
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一将功なりて万骨枯る [アルバータ]

 ワイルドローズ党による政権交代の可能性を秘めた2012年アルバータ州総選挙は、ここ15年間で最も高い得票率を記録した。逆に言うと、進歩保守党は低投票率の倦怠感の中で40年の一党支配を維持してきたことになる。
 だがアルバータ州を熱狂させた二大政党制は、主演女優によって唐突に幕を下ろされた。それは、カナダの政治史上まれに見る背信であった。
 ダニエル・スミス前党首は11月24日、先に進歩保守党に移籍したケリー・トウル議員について「権力の誘惑に負けた」「このような厚顔無恥なやり方で党を売った裏切り者とは、もはやどんな友情もない」と、口を極めて非難した。
 ところが彼女は12月17日、その舌の根も乾かないうちに「移籍に関する協議は、何か月も前からあった」と臆面もなく述べた。チャーミングな笑みを浮かべ、自信に満ちた態度で話すいつもの彼女と、何の変わりもなかった。
 果たして彼女は、進歩保守党幹部会でトウル議員と再会するとき、どう言うつもりなのだろうか。かつて進歩保守党からワイルドローズ党に移籍(英語では“floor-crossing”)したロブ・アンダーソン議員が、再び進歩保守党にすごすごと出戻るとき、進歩保守党議員たちは何と言えばいいのだろうか。“double-crosser”(言うこととやることが違う人)とでも言うのだろうか。
 ワイルドローズ党に献金した人々や、党のために無償で働いてくれた人々に、何の相談もなしに移籍や合併を切り出したことをどう説明するのかと記者に問われると、スミス前党首はきっぱりと答えた。
「我々は勝利した。」
 いったい誰が、誰に勝利したと言うのか。ジム・プレンティス首相は「近い将来の」内閣改造を否定したが、スミス前党首はいずれは閣僚ポストを手に入れるだろう。それは進歩保守党が政権を奪われる可能性を、彼女が潰したことへの報酬である。そして、既成政党とは縁のない新星ワイルドローズ党とスミス党首のために、金と時間を提供してきた草の根の支持者は、全てを失った。彼らは党利党略の前に敗北したのだった。

 もしもレッドフォード首相がまだその地位にしがみついていたら、プレンティス氏はおそらくまだ銀行の役員室にいて、スミス党首は次の総選挙で、草の根から頂点に駆け上がった立志伝中の人として歴史に名を残しただろう。だが事情通によると、スミス党首は追い詰められていたという。
 プレンティス氏が9月に首相に就任し、10月27日の補選でワイルドローズ党は4選挙区全てに敗れた。スミス党首は八つ当たりとも思えるマスコミ批判を繰り返し、選挙スタッフを解任し、次の総選挙に敗れたら辞任すると宣言した。これに失望した議員3人が、離党した。さらに、1年前に採択された同性愛者や少数民族の権利を尊重する動議を、スミス党首不在の場でマニフェストに載せない決議を可決させた。すると、ワイルドローズ党の支持率低下を見たプレンティス首相は、12月15日に「全ての保守政治家を歓迎する」と、意味深長な声明を発表した。
 スミス党首に「幹部会の内容を密かに録音し、議員たちを脅そうとした」と非難され離党したジョー・アングリン議員(無所属)は、ワイルドローズ党の事情をこう説明した。
「党内に、スミス党首を追放する動きがあった。今回の動きは、それに対する彼女の答えだ。」
 党から追放され、政治的敗者になる前に、自分を高く売れるうちに敵の懐に飛び込んだということだろうか。自分に付くのと造反議員に付くのとどちらが得か議員たちに迫り、8人の議員を引き抜いてワイルドローズ党に壊滅的打撃を与える、これが彼女の「勝利」ということか。

 ジェフ・キャラウェイ副代表は、驚きを隠さなかった。
「これは、党首による反乱だ。私は、これをどう説明すればいいかわからない。」
 彼は前日スミス前党首に電子メールを送ったが、返信はなかったという。
「彼女が党首選に出馬したとき、私が代表だった。私が、彼女に入党するよう誘った。私こそ、彼女を最も熱心に支えてきた人だ。驚くほかはない。」
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歴史は繰り返す:野党なきアルバータ政治は堕落する [アルバータ]

 強い野党を持たない政権は、必ず堕落する。アルバータはまたしても、同じ歴史を繰り返すのだろうか。
 ドン・ゲッティー首相は、アルバータ州の財政は天然資源に大きく依存しており、原油価格が安くなると州財政の均衡を保つことができなくなると気づいた。財政赤字は増大し、そしてアルバータはまたたく間に債務州になった。
 自由党のローレンス・デコア党首は、財政赤字特に政府からの融資を返済できない民間部門への介入を批判した。自由党の支持率は急上昇し、このままでは総選挙を戦えないと判断した進歩保守党は、ゲッティーを総理・総裁の地位から引きずり下ろした。そしてラルフ・クレインは、自由党の主張をほぼ丸飲みすることで党首選に勝利した。
 新たに首相となったクレインは、芸術と健康保険への補助金削減、市民病院の閉鎖と看護士の大量解雇、電話会社の民間への売却、酒類販売の民営化などを断行し、予算の均衡に努めた。これらの政策は、自由党による政権奪取の脅威なくしては起こり得なかった。
 だがクレイン首相が「大規模な」削減を実施したことに対し、自由党のデコア党首は「残酷な」削減を主張して総選挙に挑んだ。本来中道の自由党が、中道右派の進歩保守党のさらに右のポジションを志向したのである。カルガリー元市長のクレイン首相に、エドモントン元市長のデコア党首が挑んだ1993年総選挙は、いやがおうにも盛り上がった。そして自由党は、1917年に政権を失って以来最大の得票率39.7%を獲得し、進歩保守党の44.5%に肉薄したが、議席は進歩保守党の51議席に遠く及ばず、32議席に終わった。自由党は議会から新民主党を一掃し、26年ぶりに野党第一党に返り咲いたが、総選挙敗北の失意は大きく、デコアは翌年党首辞任を余儀なくされた。彼は5年後、癌のため59歳の若さで亡くなった。

 クレイン政権は十数年間、安定的に続いた。だが政権交代の脅威がなくなると、進歩保守党政権は迷走を始める。支出は増大したが、原油価格も高騰したため、問題はないように見えた。
 2006年に首相に就任したエド・ステルマックは、歳入増大を図り石油と天然ガスのロイヤルティを上げようとした。だがそれは石油メジャーの不評を買い、泡沫右翼政党ワイルドローズ党への支援につながった。すると進歩保守党の伝統にのっとり、ステルマックは党内抗争で引きずり降ろされ、党内左派のアリソン・レッドフォードに取って代わられた。そしてレッドフォード首相は、2012年総選挙で右翼のワイルドローズ党は危険だと訴え、勝利した。しかし彼女は、公金を私的に支出した件でワイルドローズ党の集中砲火を浴び、辞任に追い込まれた。
現在の首相ジム・プレンティスは、ワイルドローズ党の主張するあらゆる政策を丸飲みすることで、ワイルドローズ党それ自体をも丸飲みし、アルバータ政界から反対勢力の一掃に成功している。もしもワイルドローズ党が強力な野党でなかったら、この現象は起こらなかっただろう。

 アルバータ進歩保守党は日本の自民党のように、ニューライトから中道右派まで政策の幅が極端に広く、党首の評判が悪くなると党内抗争を起こして引きずり降ろし、別の党首を立ててその都度マイナーチェンジを行うことを繰り返して、長期単独政権を40年以上も続けている。いっぽうカリスマを失ったワイルドローズ党は泡沫政党に先祖返りし、自由党は終わりの見えない長期低落の泥沼にはまり、新民主党はこの保守的な州で労組と強く結びついている。
 政権交代の脅威が消えれば、進歩保守党は再び利益誘導と巨額の財政支出という悪しき風習に回帰することになるのだろうか。
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ワイルドローズ党のスミス党首ら進歩保守党に移籍、二大政党制に幕 [アルバータ]

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 日本に「きのうの敵は今日の友」という諺があることを、二人はおそらく知らなかっただろう。アルバータ進歩保守党のジム・プレンティス党首とワイルドローズ党のダニエル・スミス党首は、12月17日に共同記者会見を行い、ワイルドローズ党の議員9人が進歩保守党に入党したと発表した。
 移籍したのは、ダニエル・スミス党首、ロブ・アンダーソン院内幹事長、ゲイリー・ビックマン議員、ロッド・フォックス議員、ジェイソン・ヘイル議員、ブルース・マカリスター議員、ブレイク・ペダーセン議員、ブルース・ロウ議員、ジェフ・ウィルソン議員の9人である。これによりアルバータ州議会の勢力は、進歩保守党72、自由党5、ワイルドローズ党5、新民主党4、無所属1(定数87議席)となった。
 プレンティス首相は、次のように説明した。
「はっきりさせておきたいのだが、これは党の合併ではない。これは、進歩保守党による保守糾合である。」
 スミス前党首がプレンティス内閣で何らかの閣僚ポストに就くと多くの人々が予想するなか、首相は近い将来の内閣改造を否定した。
 スミス前党首は、プレンティス首相の政策がワイルドローズ党に非常に近いので、移籍することにしたと説明した。またほかの8人の議員は、「調整された政策と主張」に合意した後に移籍を決めたと語った。移籍に関する協定の中には、州消費税は導入しない、均衡予算、患者が選択する健康保険など、ワイルドローズ党が選挙で主張してきたいくつかの方針が採用されている。
 記者から、移籍を支持者にどう説明するのかと尋ねられると、スミス前党首は「勝利」をことさらに強調した。
「我々は勝利した。我々はワイルドローズ党を政治の主流に動かし、アルバータ州を動かす肯定的な力とした。」
 彼女は2009年10月にワイルドローズ党党首に就任してから、4人の州首相と関わってきた。エド・ステルマック、アリソン・レッドフォード、デーブ・ハンコック、そしてジム・プレンティスである。だが彼女は、実際に会って話したのはプレンティス首相だけだったと語った。
「それ以前の州首相は、単に社交辞令を言うだけだった。正しいことを口にして、それからその正反対のことをした。」
 彼女はプレンティス氏が9月に党首に就任したときから、進歩保守党への移籍について話し合っていたと明らかにした。そしてその動きは、ここ2週間で激化したという。
 プレンティス首相は、スミス党首ら数人の議員を受け入れることについて17日に会議で検討したが、長い議論の末の決定は全会一致でなかったと明かした。というのは、ほんの数週間前にプレンティス首相が補選に出馬したとき、ワイルドローズ党は激しいネガティブ広告を流したからである。
 しかしアリソン・レッドフォード前首相の辞任以降、両党は急速に接近した。党内左派のレッドフォード氏は、首相に就任すると中道寄りの政策を志向し、右翼のワイルドローズ党は危険だと有権者に訴え続けてきたからである。
 プレンティス首相は、ワイルドローズ党議員たちを受け入れることで党を右傾化しようとしているという憶測を否定した。
「我々は進歩保守党を、これら9人の議員を収容できる幅広い勢力として維持していく。」
 いっぽうレッドフォード前首相の側近スティーブン・カーター氏は、今回の動きについて、ローヒード元首相がもたらした進歩保守党の価値の終焉だと非難した。

 プレンティス首相は、合併またはそれに類する事案について幹部会で投票を行うと語った。またスミス党首は、党に提出した辞表の中で、党員による会議を開催し、合併について協議するよう依頼したと明かした。
 カリスマのスミス党首を失い、わずか5議席に転落したワイルドローズ党は、いまやただの時代遅れの田舎者政党であり、元の木阿弥の泡沫政党である。だがワイルドローズ党のデーブ・イェーガー代表は、党は野党として存続すると明言した。彼は「進歩保守党には、一つのことを言ってから違うことを行う伝統がある」と述べ、進歩保守党の今後の動きに懐疑的な態度を示した。
 ワイルドローズ党議員の1人は、2015年に引退することを表明している。いっぽうアルバータ自由党議員の2人は、2015年に実施される下院選挙で連邦自由党から立候補するため、州会議員を辞職する意向を述べている。わずか5人となったワイルドローズ党は、院内活動のためアルバータ自由党との連携を模索している。アルバータ自由党のラジ・シャーマン党首は、州議会議長に自由党を公式野党にするよう要請した。

 マキュワン大学で政治学を教えるジョン・ソロスキー教授は、今回の動きをカナダの政治史上前例がないと評した。
「私は、政治家によるこれほどの完全勝利を、いまだかつて見たことがない。我々はこのアルバータで、ここ40年間における最強の野党を持ったが、今回の決定でそれも潰されてしまった。今では巨大与党の前に、非常に小さな野党が存在するのを見るのみである。」
 アルバータ州は選挙で極端な結果が出やすく、連邦議会選挙でも2004年は2議席を除く全議席、2006年は全議席、2008年と2011年は1議席を除く全議席を保守党が獲得しており、このような状況が50年以上続いている。アルバータ州政治においても、進歩保守党が40年以上政権を握り続けているのみならず、与野党伯仲をここ100年間経験していない。
 スミス氏は党首に就任して瞬く間に、石油メジャーの資金援助も得て、泡沫政党を一躍有力政党の地位に引き上げた。この夏、進歩保守党党首選の前に実施された多くの世論調査でも、ワイルドローズ党はトップに立っていた。進歩保守党は相次ぐ不祥事で3人の首相が次々と辞任し、40年にわたる長期独裁政権の弊害が叫ばれてきた。だが10月の補選で全敗したとき、彼女はワイルドローズ党にいては未来はないと悟ったのだろう。彼女の野心はアルバータ州首相の地位のみならず、連邦保守党党首はては連邦首相まで目指しているとはよく指摘されることであるが、ワイルドローズ党はアンチゲイと人種差別に凝り固まり、都市部に支持を拡大できず、このままではアルバータ州政治を掌握することもおぼつかない。ここできっぱり党に見切りをつけ、進歩保守党政権のナンバー2に収まり、次の州首相の地位を手に入れてからさらに上を狙う方が賢いと、気づいたのだろう。だがアルバータの有権者が、この史上まれに見る変節を許容するかどうかは、定かではない。

 スミス前党首は11月24日、先に進歩保守党に移籍した2人の議員について、かつて進歩保守党から移籍して来たロブ・アンダーソン議員とヘザー・フォーサイス議員と比較し「ロブとヘザーは信念のゆえに、与党から野党に移った。2人は私利私欲からではなく、アルバータ州民に奉仕するため、権力の旨みを放棄したのだ。だが我々は今日、その正反対を見た」と痛烈に批判した。だがスミス前党首も結局与党に移籍したことで、彼女のfacebookは批判の声で埋めつくされた。
「あなたも結局は、有権者ではなく自分自身の利益を心配するもう一人のただの政治家にすぎなかった。」
「非常に恥ずべきことだ。あなたは辞職すべきだ。」
「あなたをこれまで支持してきたことを、後悔している。」
「あなたは勘違いしている。進歩保守党は、あなたを歓迎していない。彼らは、あなたを巧妙に黙らせたのだ。恥を知れ。」


写真:記者会見前に手を取り合うジム・プレンティス首相(右)とダニエル・スミス前党首(左)。
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ワイルドローズ党消滅か、スミス党首ら進歩保守党に移籍を模索 [アルバータ]

 ワイルドローズ党のダニエル・スミス党首を含む数人の議員が、アルバータ進歩保守党への移籍を申し出ていることがわかった。これを受けて進歩保守党は、ワイルドローズ党の吸収合併を申し入れたと複数のメディアが報じた。
 いまやワイルドローズ党と進歩保守党の双方が、メディアを巻き込んだリーク合戦を始め、双方の文書がメディアに流出している。CBCはダニエル・スミス党首、ロブ・アンダーソン院内幹事長、ジェフ・ウィルソン議員、ゲイリー・ビックマン議員、パット・スティア議員、ブレイク・ペダーソン議員、ジェイソン・ヘイル議員の7人が移籍を模索していると報じた。
 11月2日にワイルドローズ党をすでに離党したジョー・アングリン議員(無所属)は、7人から9人が移籍すると予想した。
 だがジェフ・キャラウェイ副代表は、スミス党首、ロブ・アンダーソン院内幹事長、ジェイソン・ヘイル議員、ブルース・マカリスター議員の4人が移籍するという見通しを述べた。
 ワイルドローズ党の14人の議員は、進歩保守党からの申し込みについて話し合うため、12月16日午後に会議を開催した。党執行部は、党の今後について話し合うため、同日夜、電子会議を開催する。

 いっぽう進歩保守党は、12月17日に幹部会を開催する。ジム・プレンティス首相は、移籍問題の詳細について明言することを避けた。
「我々は、向こうで何が起こるか見守る。」
「これらの問題は、我々の幹部会で議論されることだ。そして確かに我々は、明日それに対処する。」
 リークされた文書は、移籍したワイルドローズ党現職議員には、2016年6月までに実施される次の総選挙において、党が擁立することを保障し、もし党員の誰かが立候補しようした場合は首相が警告することを約束している。

 ワイルドローズ党のジェフ・キャラウェイ副代表は、議員たちの動向に関係なく党は存続すると語った。
「議員たちが自分の生き残りのために党を移籍することは、非常に残念である。」
「だが事実は、党は存続する。我々の資金調達力は強固である。我々には、有権者名簿がある。我々には次の総選挙のための、候補者リストがある。」
 ドリュー・バーンズ議員は、ワイルドローズ党議員には、その支持者に忠実であり続け、政府を監視し続ける責任があると述べた。
「この合併がどんなものであれ、私は幹部会の仲間たちが同意をしないことを望む。」
「私は、我々が選ばれた政策と原則に拠って立つことを望んでいる。」
「私は、ワイルドローズ党議員に留まることを約束する。」
 シェイン・サスキュー議員とリック・ストランクマン議員も、ウェブサイトでワイルドローズ党に留まると表明した。
 ポール・ヒンマン前党首は、失望はするが驚かないという。
「我が党は、合併する必要はない。進歩保守党に入りたい人は、自由にそうしてもらって結構だ。」
 だが彼は、党員の資格が、移籍する議員たちに続き自動的に与えられるとは考えていない。
 党創立時からの党員であるコリー・モーガン氏は、党員資格について話し合われなかったことに怒りをあらわにした。
「我々党員たちは、様子を見守っているだけだ。党員たちはいまだに、この重要な問題について何も知らされていない。我々党員は、何の相談も受けていない。党員そして支持者として、私は怒り、傷ついている。」
 彼はプレンティス首相を「有能なマキャベリスト」と呼んだ。
「彼は野党の価値を下げるあらゆる方法を見つけ、それを見事にやってのけた。」
 ワイルドローズ党の主張する財政政策を、プレンティス首相は次々と丸飲みすることで、ワイルドローズ党の存在意義を失わせ、2つの右派政党合併を現実のものにしたのだ。

 アルバータ新民主党のレイチェル・ノトリー党首は、両党ともに政策ではなく権力にしがみつくことにしか関心がないと斬り捨てた。
「リークされた文書は、草の根民主主義に基づくものではない。それはあたかも、権力にしがみつくためのガイドである。」
 そしてプレンティス首相については、「彼はワイルドローズ党のマニフェストに則り統治しようとしていた」と評した。
 アルバータ自由党のラジ・シャーマン党首は、強い政府には強い野党が必要だが、プレンティス首相率いる中道右派の進歩保守党は、右翼のワイルドローズ党と区別がつかないほど右にシフトしたと説明した。
「我々が保守の与党を持ち、そして保守の野党を持つことは、無意味である。」

 マウント・ロイヤル大学で政治学を教えるデュエイン・ブラット教授は、合併問題を「非常に奇怪」と評した。
「ワイルドローズ党は、アルバータ州政治の歴史上最も強力な野党であった。プレンティス首相の政策の多くは、ワイルドローズ党が主張したものをただ採用しただけである。だがもしアルバータ州で財政問題が起これば、ワイルドローズ党は財政問題に強みを持っているので、壊滅的転落の後も生き残れたと私は考えている。」
 そしてブラット教授は、合併は民主主義にとっての悲劇であると述べた。
「我々はここ数年の間、この州において2つの政党がしのぎを削る状況を手に入れていた。ひとたび合併が実現したら、もうそれを見ることはないだろう。」

 ワイルドローズ党は、2003年創立のアルバータ同盟党と2007年創立の(旧)ワイルドローズ党が源流である。アルバータ同盟党はカナダ同盟の支持者が創設した州組織だが、カナダ同盟はアルバータ進歩保守党と提携したので、ただ一度の総選挙で一人しか当選させられなかった。(旧)ワイルドローズ党は党員わずか76人の泡沫政党で、政党登録されず、総選挙に出馬できなかった。両党は2008年に合併して「ワイルドローズ同盟党」となり、後に党名変更してワイルドローズ党となった。
 2009年、美人で弁の立つダニエル・スミスが党首に就任すると、支持率は急上昇したが、2012年総選挙では世論調査で強い支持を受けていたにもかかわらず、候補者が人種差別・アンチゲイ・地球温暖化否定などの発言を繰り返し、新党ならではの組織の弱さと、候補者選定のいいかげんさを露呈し、17議席と完敗を喫した。
 10月27日に4つの補選で全敗すると、スミス党首は己の責任を問うどころかマスコミの報道を批判し、選挙スタッフを解任、ついには側近のジョー・アングリン議員が秘密裏に幹部会の内容を録音していたと根拠なしに主張するに至り、議員たちが続々と離党する事態を招いた。
 ワイルドローズ党はカルガリーに2議席、エドモントンに0議席と、典型的な田舎政党であり、強い宗教的背景を持っている。昨年同性愛者の権利を尊重する決議を採択したにもかかわらず、今年11月にスミス党首不在の場で党員が、これをマニフェストに載せない決議を可決したため、党内の緊張が高まっていた。
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