SSブログ

オンタリオ総選挙でフォード保守党圧勝 [オンタリオ]

 6月2日に実施されたオンタリオ州議会総選挙は、進歩保守党83(67)、新民主党31(38)、自由党8(7)、緑の党1(1)、ニュー・ブルー党0(1)、オンタリオ党0(1)(定数124議席、括弧内は解散時勢力)という結果となり、与党進歩保守党が再選を果たした。得票率は進歩保守党40.8%、新民主党23.7%、自由党23.9%、緑の党6.0%、ニュー・ブルー党2.7%、オンタリオ党1.8%で、投票率43.5%は過去最低となった。
 今回の結果はおおむね前回2018年と変わらない結果となったが、注目すべき点はいくつかある。一つは、与党進歩保守党が2期目に議席を増やしたことだ。カナダ政治史において、野党が政権奪取した1期目は有権者に期待され圧勝できても、2期目は失望され議席を減らすのがほとんどだ。オンタリオでは1955年、進歩保守党のレスリー・フロスト政権が2期目に4議席増やしたのが唯一の例外だが、このときは定数が8議席増えている。
 前回圧勝したダグ・フォード首相は、所詮はキワモノであり1期限りと見られていた。彼の最初の1年半は、縁故採用スキャンダルによって人気を大きく落とした。だが政権はその後、新型コロナ禍に見舞われる。フォード首相は最初の1年で200回以上の記者会見を行い、その最後を「神よオンタリオの人々を祝福したまえ」で締めくくった。縁故スキャンダルは話題に上らなくなり、彼の支持率は上昇した。
 オンタリオでは1万3000人が死亡し、北米のどの地域より学校が長期間閉鎖された。フォード首相の対策が優れていたことを示す根拠は、何もない。にもかかわらず世論調査は、多くの有権者が、フォード政権の新型コロナ対策は投票先を決める要因ではなく、また政権交代の必要を感じていないことを示した。
 ミシサウガ・バーン・スカボローなど連邦レベルでは自由党の強固な基盤も、今回は進歩保守党に獲得されている。明らかに、2021年9月の連邦議会総選挙では自由党に投票した人が、今回進歩保守党に投票していると考えられる。前回とあまり変わらない結果となった今回総選挙で、進歩保守党が議席を増やせたのも、新民主党から奪った分である。
 進歩保守党の得票は、前回にくらべ41万4000票減っている。だが投票率が下がっているため、得票率だと前回の40.5%より増加している。いっぽう二大野党の新民主党と自由党は、合わせると47.6%となり進歩保守党を上回るが、左派票の分散が起き与党圧勝を許した。特に自由党は1桁議席しか取れず、大量の死票を生んだ。
1_5930926.jpg

 新民主党は、政権奪取した1990年総選挙を除くと、前回2018年が過去最高の成績で、野党第一党となった。アンドレア・ホーバス党首は「政権奪取にはあと10議席が必要だ」と強調したが、その10議席はどこにもなかった。それどころか、自動車の町ウィンザー-テクムセ選挙区やエセックス選挙区、鉄鋼の町ハミルトン・イースト-ストーニークリーク選挙区、鉱業の町ティミンズ選挙区を進歩保守党に奪われ、ホーバス党首は13年間務めた党首を辞任すると発表した。46歳で党首に就任したときはブロンドの髪の若手だったが、今では白髪に変わっていた。
 彼女は三大政党党首として、常にオンタリオ政界で注目されてきた。最初に挑んだ2011年総選挙では、与党自由党に過半数を許さず、17議席ながらキャスティングボートを握った。政敵たちは、ボブ・レイ新民主党政権が財政を破綻させた過去を挙げ、新民主党への警戒を訴えたが、彼女はレイが自由党党首となった事実を挙げ、レイの悪評からの脱却に成功した。個人攻撃を控えた彼女のスタイルは、2014年・2018年と議席を増やし続け、野党第一党にまでのし上がったが、総理の椅子にあと一歩及ばず、4度の総選挙の全てに敗れ、政治的敗者として表舞台を去ることになった。
1024px-Andrea_Horwath_2009.jpg

 自由党は、得票率23.9%の2位になりながら、獲得わずか8議席に終わった。公式政党資格すら獲得できず、経費すら支給されない。選挙戦略の失敗は明らかで、新民主党との2位争いにも大敗し、スティーブン・デルドカ党首も落選し、開票からわずか1時間後に辞任を表明した。

 緑の党は2議席獲得を予想されたが、結果は1議席の現状維持に終わった。今回も124選挙区の全てに候補を擁立したが、時間と労力の多くをパリーサウンド-ムスコカ選挙区に注いだ。そして得票率40.7%を記録したものの、2位で敗れた。


写真上:涙ながらに辞任を表明するアンドレア・ホーバス党首。
写真下:2009年党首選で演説するアンドレア・ホーバス候補。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:地域