SSブログ

白人優位主義をめぐり党首選候補者たちが論戦 [保守党]

 ニューヨーク州バッファローで5月14日に起きた銃乱射事件は、ホワイト・リプレイスメント理論(白人を有色人種に置き換えて優位を奪おうとする陰謀論)に基づくヘイトクライムであり、黒人の多い地区を狙ったもので、被害者13人のうち11人が黒人だった。カナダ保守党は党首選の最中だが、本命視されているピエール・ポワリエーブル議員が右派に属し、その支持者には人種差別主義者がいると見られるため、この事件を巡り候補者どうしの非難合戦が激化している。

 党内左派のパトリック・ブラウン候補(ブランプトン市長)は15日、ツイッターにパット・キング氏の動画を掲示し、ポワリエーブル議員を挑発した。
「これが、ピエール・ポワリエーブルが支持したフリーダム・コンボイのリーダーで、バッファロー銃撃犯のマニフェストである危険な白人至上主義『ホワイト・リプレイスメント』陰謀論を広めたパット・キングである。私はこれを非難し、ピエールにも同じことをするよう呼びかける。」
 ポワリエーブル議員は16日、バッファローの事件とキング氏を非難する声明を発表した。
「全てのいかなる人種差別も邪悪で、止められなければならない。いわゆるホワイト・リプレイスメント理論を、醜悪で胸糞悪いヘイトを利用するものと私も非難する。私も、パット・キングと彼の醜悪な意見を非難する。」
 さらに、彼が以前フリーダム・コンボイ支持を表明したことについて弁明した。
「私は、生活のために抗議する平和的で法を遵守するトラック運転手を支持すると言った。法を破り、悪い行為にふけり、主要なインフラを封鎖した人々は非難する。」。

 ポワリエーブル議員はその後インタビューで、人々に訴えるため「単純な、アングロ・サクソンの言葉を使う」と語った。するとブラウン候補は18日、ポワリエーブル氏の真意を疑う電子メールを党員に送った。そこには次のように書かれていた。
「個人的には、ピエール・ポワリエーブルが人種差別的な見解を持つとは思っていない。だが彼が『単純なアングロ・サクソンの言葉を使う』と言うとき、彼は誰にアピールしているのか?彼は、誰を保守党に連れて来るつもりなのか?」
 それから彼は、ポワリエーブル議員の支持者が「ブラウンが勝つための戦略は、党員を民族的・宗教的少数派と入れ替える(replace)ことだ」と言ったと述べた。
 ところがメールを読んだ党員が同日、ブラウン陣営に驚くべきメールを返信した。
「あんたたちはメールを送る相手を間違えている。私はナチズムを信奉しているし、もし第二次大戦でアドルフ・ヒトラーが勝っていたら、中国人・韓国人などのアジア人、アフリカ人、ジャマイカ人などの糞野郎(Bullshit)を我らの偉大な国に入れることはなかった。奴らは存在していなかった。私はピエール・ポワリエーブルを支持する。」
 ブラウン陣営の参謀を務めるミシェル・レンペル・ガーナー議員は同日、このメールをツイッターで公表し、保守党に対しこの党員の除名を要求した。
 するとポワリエーブル議員は、人種差別を明確に非難し、差別主義者との関わりを否定した。
「私は全ての人種差別を拒否する。もしあなたが人種差別主義者なら、私はあなたの票が欲しくない。人種差別を促進する者は、我が党に居場所はなく、党員資格を失うべきである。」
 こうして彼は、自分が差別主義者だという疑惑を明確に否定したが、彼の支持者には差別主義者がいることは明白で、彼にとってはダメージになっただろう。
 保守党は22日、問題の党員が離党したため、調査は終了したと発表した。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:地域

ケニー首相、辞意を表明 [アルバータ]

 アルバータ州の与党連合保守党は、ジェイソン・ケニー党首(州首相)の信任投票を5月11日までに郵便で実施した。その集計結果が18日に発表され、信任51.4%・不信任48.6%で信任した。だがケニー党首は同日、信任が少なすぎるとして辞意を表明した。
「51%の信任票は党則上は過半数に達しているが、党首を続けるには明らかに十分な支持ではない。」
 実はケニー党首は事前に「50%プラス1票に従う」と述べ、過半数なら留任する意向を示していた。ケニー党首を批判し続けていた党役員のロブ・スミス氏は、ケニー党首の辞任に驚いたものの、彼の決断は当然であり、歓迎すると語った。
「今日は、アルバータのための素晴らしい夜だ。」
「もしも党員が48.6%あるいは50%近くも反対するなら、それは党を率いるに十分ではない。」
 ワイルドローズ党党首だったブライアン・ジーン州議は、ケニー党首が辞意表明する前から党首選出馬を公言していたが、改めて出馬する意向を強調した。
「連合保守党員は、分断的で独裁的なリーダーシップを拒否することを明らかにした。」
「彼らは、耳を傾け、相談し、効果的な保守政治を思慮深く実行する連合保守党を望む。」

 だがケニー党首は19日、次の党首が選出されるまで党首と首相に留まる意向を表明した。党内からは、一刻も早く暫定党首を指名し、ケニー党首に辞職してもらわなければならないという声が挙がっている。ジーン州議は、即時の辞任を求めた。
「ジェイソン・ケニーが去るまで、治療プロセスは始めることができない。」
 以前からケニー党首に辞任を要求していたピーター・ガスリー州議も、次のように述べた。
「我々はアルバータ州民と信頼を建て直す必要がある。そして、今日はその第一歩になる。」

 閣僚からはトラビス・テーブス財務大臣、ダグ・シュバイツァー雇用・経済・イノベーション大臣、ソーニャ・サベージ エネルギー大臣、ジェイソン・ニクソン環境・公園大臣、ラジャン・ソーニー運輸大臣らが党首選出馬を噂されている。ケニー党首も党則上、出馬できる。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:地域

カナダの中絶事情 [人権]

 アメリカで連邦最高裁が、1973年に妊娠中絶を合法化した「ロー対ウェイド」判決を覆す原案を起草していることが5月2日にリークされ、カナダ政界にも影響を与えている。
 カリナ・グールド家庭・子供・社会開発大臣は3日、CBCテレビで「もしアメリカがロー対ウェイド判決を覆したら、アメリカの女性はカナダで中絶することができる」と語った。トルドー首相も同日「カナダではあらゆる女性に、安全で合法な妊娠中絶を受ける権利がある」と語った。
 だがオタワ大学で法学を教えるダフニ・ギルバート教授は、首相の発言を批判する。カナダにおける最近の判例は、1988年のモーゲンテイラー裁判で、連邦最高裁は中絶を規制する全ての法律は違憲と判断したが、これまで最高裁は「中絶する権利」について言及したことはないからである。
 トロント大学のバーナード・ディケンズ名誉教授も、これに同意する。
「それは、中絶権を真に確立するものではなかった。それは単に、刑事罰を廃止したに過ぎない。」
 だがギルバート教授は、88年以降の判例は、中絶する権利を事実上支持していると考えることができると指摘する。彼女は安楽死幇助を例に挙げ、「意思決定、管理、身体の自治、良心の自由」を中絶に当てはめれば、同じ結論になるだろうと言う。また保健は州の管轄であるから、連邦政府が刑法によって妊娠中絶を管理する試みは、違憲立法となる疑いがある。
 保守党のキャンディス・バーゲン党首は10日、連邦議会で「妊娠中絶を受ける機会は(保守党の)ハーパー政権で制限されなかった。保守党は妊娠中絶について、法案を提出しないし、議論を再燃させない」と述べ、「議論を再開しているのは自由党だけ」と批判した。
 だが彼女は知らなかったが、それより2時間早く議事堂で保守党のアーノルド・ビアセン議員が、記者たちによる囲み取材で「私は、議論は終わっていないと考えている」と語っている。
 カナダの二大政党である自由党と保守党には、伝統的に中絶賛成派と反対派が混在しており、自由党には賛成派が、保守党には反対派が多いと考えられてきた。だが自由党は、2013年にジャスティン・トルドーが党首に就任したとき「中絶反対派は公認しない」と公言したため、今では反対派はいないと思われる。
 それに対し、保守党の立場はいくぶん複雑である。カナダ保守党は、2003年に右翼のカナダ同盟と中道右派の進歩保守党が合併して成立したことから、初代党首のハーパーは分裂を回避するため、個人的信条とはうらはらに「保守党政権は、妊娠中絶を規制するいかなる法律も支持しない」という綱領を採択した。保守党は現在党首選の最中だが、本命視されているピエール・ポワリエーブル議員も対抗馬と見られるジャン・シャレー元州首相も、同様のコメントをしている。だがそのいっぽうで保守党は「医師・看護士・その他の医療従事者が妊娠中絶、自殺幇助または安楽死に加担し、あるいはそれらに彼らの患者を照会することを拒否する良心の権利を支持する」「妊娠中絶は、カナダの母子保健プログラムから明確に除外されなければならない」とも盛り込んだ。
 幹部会で採択された議案には党議拘束がかかるので、違反すると党から罰せられる。だが個々の議員は中絶を規制する法案を個人提出でき、この場合党議拘束はなく自由投票となる。最近の例では2021年、保守党のキャセイ・ウェイゲントール議員が性選択的中絶を禁止する法案を提出したが、保守党議員81名と元保守党議員1名の賛成のみで、否決された。

nice!(0)  コメント(0) 

保守党党首選、6人が立候補 [保守党]

 保守党党首選の立候補者は、4月29日までに登録料15万ドル・保証金15万ドルと7以上の州・30以上の選挙区における推薦人500人分の署名を集めて提出しなければならない。同党は5月2日、スコット・エチソン下院議員、レスリン・ルイス下院議員、ピエール・ポワリエーブル下院議員、パトリック・ブラウン市長、ジャン・シャレー元州首相、ローマン・バーバー州議の6人の立候補を承認したと発表した。
FRwaVKFWQAIHC2F.jpg

 リオナ・アレスレフ元副党首は出馬を表明していたが、締切までに資金を集められず撤退した。ジョゼフ・ブルゴー氏(実業家)、グラント・エブラハム弁護士、ジョエル・エティエンヌ弁護士の3名は、資金と署名を提出したにもかかわらず、失格と判定された。これら3名はいずれも社会保守主義者だったため、疑惑を招いている。
 ブルゴー氏は会社経営者だが、妊娠中絶に反対する圧力団体「キャンペーン・ライフ連合」に支援されていた。彼はまたワクチン義務化に反対し、フリーダム・コンボイにも参加していた。エブラハム氏は、自由党政権が提出した転換療法を禁止するC-4号法案を阻止できなかったことで、保守党を非難した。また彼は、ユダヤ=キリスト教の枠組みへの回帰と、世俗主義の終焉を呼びかけた。
 キャンペーン・ライフ連合のジャック・フォンセカ理事長は、党内左派が社会保守主義者を排除しようとしていると主張する。
「彼らは我々を排除しようとしている。これはレッド・トーリーがすることだ。レッド・トーリーは汚い。彼らは嘘つきで、フェアプレーを嫌っている。彼らは腐敗している。」
「それはただ、人々をマクシム・ベルニエと人民党の手中に追いやるだけだ。」
 立候補できた6人の中ではルイス議員が唯一の社会保守主義者で、性選択的中絶の禁止と中絶の犯罪化を主張している。フォンセカ氏は、彼女が唯一の望みだと語った。
「レスリン・ルイスを排除できるなら、彼らはそうするだろう。だが彼女はあまりに有名で、人気がありすぎる。彼女は、我々が信頼できるただ一人の候補だ。」
 エティエンヌ弁護士は、党から資金の支払いについてクレジットカードは認めない、また署名のいくつかは無効だと言われたと語った。だが無効と判断した理由については、説明されなかったという。
 選挙管理委員会のウェイン・ベンソン氏は、失格の判定は規則に基づくものであり、特定の信条によるものではないと説明した。
「いかなる候補についても、失格の理由について説明している。」
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:地域