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カッカク議員、ジョーンズ議員を「イヌックでない」 [先住民]

 ムミラーク・カッカク議員(新民主党、ヌナブート選出)が4月16日、ツイッターにイボンヌ・ジョーンズ議員(自由党、ラブラドル選出)を「イヌック(※イヌイットの単数形)ではない」と投稿した件で、ジョーンズ議員は19日、連邦議会で謝罪を要求した。
「私は25年の議員生活を通じ、別の議員からのこれほどの侮辱を見たことがなかった。」
 もともとは、インディジェナス・ポリティックス社が2019年10月21日の総選挙時に、ジョーンズ議員の当選確実を報じたツイッター記事の中で、彼女を「イヌック」と紹介したのに対し、カッカク議員が否定したものだった。
 ジョーンズ議員は、先住民団体ヌナトゥカブート・コミュニティ会議(NCC)のメンバーである。NCCはラブラドル中部・南部の先住民を代表する団体だが、政府が公認する団体ではない。2010年までは「ラブラドル・メティス・ネイション」という名称だった。
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 1982年憲法第2章は先住民の権利について規定しており、その第35条第2項では先住民を「インディアン、イヌイット及びメティス」と定義した。そこではラブラドルの先住民インヌが認定されず、また先住民の血が何%であるかも明記されなかったため、誰が先住民であるかは自己申告に基づくと見なされた。
 「メティス」(métis)は「混血」を意味するが、大文字でMétisと書くと「カナダ先住民と白人の混血」を指す民族名となる。メティスとイヌイットは異なる概念であり、(メティスの先祖とイヌイットの先祖を持たないかぎり)メティスかつイヌイットにはなり得ない。ただし、「メティス」を「混血」の意味で用いる場合は別である。
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 掲示の地図は連邦議会の資料で、イヌイットの居住地域「ヌナンガット」(「土地と水と氷」の意)は、行政区ごとに4地域とされた。ヌナブート(「我々の土地」の意:ヌナブート準州)、イヌビアルイト(「真の人々」の意:ユーコン準州とノースウェスト準州)、ヌナビック(「生きるための場所」の意:ケベック州)、ヌナツィアブート(「我々の美しい土地」の意:ラブラドル)である。
 NCCは2019年、連邦政府が提示した先住民の権利に関する合意書に署名した。だがこれは、政府が公認するインヌ・ネイションとヌナツィアブート自治政府の反発をひき起こした。両団体は合意書に異を唱え、法廷闘争に訴えた。

 カッカク議員は22日、ツイッターに動画を投稿した。彼女はそこで謝罪を拒否し、連邦政府によってインヌは先住民として認定されていないし、ラブラドル南部もイヌイット居住地域として認定されていない事実を指摘した。また彼女自身の血統について説明した後、ジョーンズ議員も自身がイヌイットであることを証明すべきであり、さもなくばイヌイットと自称すべきでないと主張した。
「あなたの家族が何者で、そしてあなたがどこから来たのか、あなたがいかにイヌックであるか、それを私に証明するまで、あなたには自分がイヌックだと言える場所はない。自分をイヌックと言うのはやめなさい。」
 この動画は、ツイッター社によって削除された。

 ジョーンズ議員は同日、CBCテレビで語った。
「自分のアイデンティティについて彼女やほかの誰かに、ソーシャルメディアや公共の電波で証明する必要があるとは思わない。」
「私は、自分が何者なのかを知っている。私は、祖母や曾祖母が何者なのかを知っている。ラブラドルにおける当家のイヌイットの血筋について、1800年代初頭にまでさかのぼることができる。」
「母が宿泊学校で過ごした日々について、私は人々と多くを語り合ってきた。」
「私は、私の文化・私の歴史・私の家系について語り合いたい人とは、誰とでも語り合ってきた。」
「私は、ラブラドルに移住した白人と、イヌイットの血筋に誇りを抱いている。」
 彼女は、カッカク議員はヌナツィアブートとヌナトゥカブートの関係を理解しておらず、彼女の発言は「無邪気なもの」だと語った。家系図を公表するつもりはあるかと問われると、「毛頭ない」と答えた。それから「彼女のためにDNA鑑定をする用意はない」とつけ加えた。


写真上:ムミラーク・カッカク議員(左)とイボンヌ・ジョーンズ議員(右)。
図下:イヌイット居住地域「ヌナンガット」。
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