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ナショナリスト党党首、ヘイトスピーチで逮捕 [人権]

602dcab1240000bc02cbc366.jpg カナダ・ナショナリスト党(Canadian Nationalist Party/Parti Nationaliste Canadien)(※Nationalist Party of Canadaとは別)のトラビス・パトロン党首(29歳)が2月15日、ヘイトスピーチ容疑で逮捕された。
 パトロン党首は2019年にyoutubeに公開した動画において、彼自身がユダヤ人について「金融やマスコミを操る『内部の操作者』は国から追い出されるべき」「寄生種族に警戒せよ」「詐欺師」「蛇」「サタンの教会」などと語っていた。

 パトロン党首はサスカチュワン大学を卒業し、2017年にカナダ・ナショナリスト党を結成した。その目的は「有色人種に対し、白人カナダ人の多数を維持することで彼らの社会的・経済的状況を促進する」ことで、政策は移民の制限、ヨーロッパとキリスト教の価値に基づく国家的義務教育の導入(筆者注※教育は州が行うと憲法に規定されており、国は行わない)、多文化主義法の廃止、プライド・パレードへの公金援助中止、妊娠中絶の制限などである。2019年9月に政党登録された。
 パトロン党首は2018年9月、人民党のベルニエ党首と会談し、近いうち実施される総選挙において何らかの協力・提携ができないかと打診したが、一切の提携を拒否された。2019年総選挙でパトロン党首は、在住するサスカチュワン州ソウリス-ムースマウンテン選挙区に出馬したものの、得票率0.4%で最下位に敗れている。ほかに二人の候補が同党から出馬したが、ケベック州の候補は得票率0.05%、オンタリオ州の候補は0.2%で落選した。

 フレンズ・オブ・サイモン・ウィーゼンタール・センターのジェイム・カーズナー=ロバーツ理事は、次のように述べた。
「彼は、ユダヤ人のカナダからの除去を呼びかけた。これは民族浄化であり、人道に反する罪である。」
 カナダ・アンチ・ヘイト・ネットワークのイバン・バルゴード事務局長は、起訴はもっと早くされなければならなかったと述べた。
「この罪のための起訴が601日・・・あまりにも長い。彼が独房で腐敗していてもいいころだろう。」
Canadian_Nationalist_Party_ensign.jpg 彼は同党を「カナダ初のネオナチ政党」と言い、政党登録されたことでパトロン容疑者が特権を得たことを問題視した。
「それは、連邦政府が公金で彼の党を補助したことを意味する。そしてもう一つは、選挙管理委員会がパトロン氏に有権者名簿の写しを渡したことを意味する。彼は、あらゆるカナダ人の氏名・住所・生年月日を知り得たのだ。」

 法律上、党首の逮捕あるいは投獄は党の活動に影響しないが、獄中にいる人は立候補はできない。パトロン容疑者は2019年、リジャイナで二人の女性に暴行した容疑で起訴されている。


写真上:youtubeに出演するトラビス・パトロン党首。
図下:カナダ・ナショナリスト党のロゴ。ケルト十字に似ている。
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【世論調査】自由党のリード、安泰ではない [2021年下院選]

 与党自由党は、過半数割れの状態で予算審議に入る。三大野党が予算案を不信任すれば解散・総選挙がひき起こされるため、各党は総選挙モードに突入している。
 CBCが2月2日に発表した政党支持率調査は、自由党35.7%、保守党30.2%、新民主党18.4%、ケベック連合6.4%、緑の党6.3%、その他3.1%となった。そこから導き出される予想獲得議席は、自由党171(119~212)、保守党107(81~143)、新民主党27(13~53)、ケベック連合31(18~40)、緑の党2(0~8)、その他0(0~2)(定数338議席、括弧内は最小~最大)となる。

 新型コロナ流行以降、連邦でもいずれの州でも与党の支持率は高く、過半数割れの自由党政権が抜き打ち解散・総選挙を行うという推測は、常にあった。だがレジェ社が2月1日に実施した世論調査によると、政府のコロナ対策に満足している人は54%で、最も低い数字となった。またアンガス・リード研究所が1月下旬に実施した世論調査は、政府のワクチン確保を評価しない人が44%と、12月上旬の23%より激増している。
 与党自由党が2位の保守党に持つ5.5ポイントのリードは、勝利を確信するには小さすぎる。経験的に、勝利を確信できるのは9ポイント以上のリードとされる。世論調査が始まって以来、9ポイント以上のリードを持った党は14あり、うち13が最多議席を獲得した。例外は1957年の自由党(サン=ローラン首相)で、総選挙直前で15ポイントのリードがあったが、投票日までに2ポイントのリードになり、進歩保守党(ディーフェンベーカー党首)が過半数割れながら政権奪取した。
 首位の党が2位の党に9ポイント以下のリードを持ったのは10回で、そのうち4党だけが逃げ切って勝った。1945年の自由党(キング首相)、1974年の自由党(ピエール・トルドー首相)、1988年の進歩保守党(マルローニ党首)、1993年の自由党(クレチエン党首)だ。負けた6例のうち2つは、得票率で上回りながら議席数で敗北しており、それは1979年の自由党(ピエール・トルドー首相)と2019年の保守党(シーア党首)である。

 カナダの選挙は、無党派が多いため支持率が大きく変わりやすい。1993年には与党進歩保守党(キャンベル首相)が総選挙前、自由党(クレチエン党首)に22ポイントリードしていたが、投票日の得票率では25.2ポイント下回り、わずか2議席の大敗を喫した。同様に、リードを10ポイント以上詰められた例が、自由党で1957年、1965年、1984年、1988年、2006年にあり、1965年以外は敗北した。新民主党は2015年(マルケア党首)、2位の保守党(ハーパー首相)に一時10ポイントリードしたが、投票日の得票率では自由党を19.8ポイント下回り、3位に敗れた。

 新型コロナ流行以降、ニューブランズウィック、ブリティッシュコロンビア、サスカチュワンで総選挙があり、いずれも与党が勝った。解散直前の世論調査では与党が大きくリードしており、ニューブランズウィック進歩保守党は18ポイント、ブリティッシュコロンビア新民主党は19ポイント、サスカチュワン党は43ポイントだった。2月13日にはニューファンドランド&ラブラドル州で総選挙が実施されるが、与党ニューファンドランド&ラブラドル自由党が今年の調査で40ポイント近い大差をつけていて、圧勝する見込みだ。しかしこれら地方の例は、わずか5.5ポイントのリードを持つ連邦自由党にとって、ほとんど参考にならない。

 現在は、与党からも野党からも解散・総選挙に打って出ることができる。だがその選択は、与野党双方にとってリスクがある。
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