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自由党の支持率急増 [2025年下院選]

 2月23日にリット社が実施した政党支持率調査は、保守党40.2%、自由党30.8%、新民主党14.4%、ケベック連合6.9%、緑の党4.0%、人民党2.8%、その他0.9%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、保守党171(129~217)、自由党125(73~126)、ケベック連合31(21~43)、新民主党14(3~32)、緑の党2(0~3)、人民党0(0~0)、その他0(0~0)(定数343議席、括弧内は最小~最大)となる。

 自由党は1月6日のトルドー首相退陣表明以降、支持率を急増させている。保守党の過半数は微妙で、自由党にはわずかに勝つチャンスがあり、3桁議席獲得の可能性が高い。
 2月21日から24日にかけて実施されたイプソス社の世論調査では、自由党の38%が保守党の36%を上回っている。自由党が首位に立つのは2022年10月以来初めてで、退陣表明前の2025年1月6日には最大の24ポイント差をつけられていた。
 政治評論家のエリック・グルニエ氏は、驚きを隠さない。
「それは非常にドラマチックな変動で、よくあることではない。選挙期間中でさえ稀に見るもので、選挙期間外に見るのは驚くべきことだ。」
 彼は、カナダを「アメリカの51番目の州」「カナダ州のトルドー知事」と嘲るトランプ大統領から自由党が利益を得ていると指摘した。
「『旗効果』による反発がある。自由党は、トランプによるカナダへの攻撃から利益を得ており、この一年半よりはるかに良くなっている。」
 338カナダ・コムのフィリップ・フルニエ氏は、自由党の支持率急増には3つの理由があるという。それはトルドー首相退陣、党首選への関心、そしてトランプ大統領の圧力である。
「新民主党は厳しい状況に置かれている。支持は全く増えていないことから、我々が見ているものはおそらく、戦略的投票(※左派が保守党勝利を阻止するため自由党に投票する)だろう。」
 新民主党はデンタルケアやファーマケア実現のため、ずっと自由党政権を支えてきたにもかかわらず、支持率上昇に結びついてなく、1桁議席もありえる。シン党首は26日、支持率について問われこう答えた。
「あなたと家族を守ってくれる人が欲しいなら、それは我々である。」
 自由党の支持率急増で、最もあおりを受けたのが新民主党なのは明らかだ。グルニエ氏は指摘する。
「彼らは支持者の半数を失った。彼らは深刻なトラブルの中にいる。」

 ケベックでの政党支持率は、自由党31.8%、ケベック連合29.5%、保守党24.5%、新民主党8.0%、緑の党3.0%、人民党2.1%、その他1.1%という結果となった。自由党は、党首がケベック人のトルドーから非ケベック人に代わることが確実だが、2023年5月以来の首位を回復した。いっぽうケベック連合は、最高で36.6%あったのに支持率を急落させている。全国では新民主党、ケベックではケベック連合の左派2党が支持率を急落させ、そこから自由党が利益を得ていることは明らかだ。

 2月21日から23日にかけて実施されたレジェ社の世論調査は、カナダ人の10%は投票先を決めていないことを示している。この数字は非常に高く、最終的な帰趨を決める決定的要因になる可能性はあるが、フルニエ氏は、彼らの多くは投票しないので重要ではないと語った。
 自由党党首選の結果は見えてきたが、新党首がどういう選挙戦を行うかまでは見えていない。世論調査は、誰がどういう選挙を行うか不確定な状態で実施されている。グルニエ氏は、人気のない与党が党首を代えて総選挙に挑んだ2つの例を挙げた。1984年のジョン・ターナー首相(自由党)と、1993年のキム・キャンベル首相(進歩保守党)である。どちらも、就任直後のご祝儀相場で支持率を持ち直したが、最終的に悲惨な大敗を喫した。ターナー首相はテレビ討論で言い負かされ、40議席という結党以来最悪の敗北を喫した。キャンベル首相はクレチエン党首の病気と外見を過度に攻撃し、2議席という壊滅的敗北を喫した。
「新しいリーダーのために、ハネムーンと風船があった。それらはパーンと弾け、悲惨な結末を迎えた。」
 グルニエ氏もフルニエ氏も、2人が破滅したのは選挙のやり方がまずかったからだと口を揃えた。
 新しい党首が人気のない与党を再生させた例も、むろんある。州レベルだが、2013年のブリティッシュコロンビア州総選挙で、クリスティ・クラーク首相は世論調査の不利を跳ね返し、奇跡的逆転勝利を飾った。2014年オンタリオ州総選挙でも、キャスリン・ウィン首相が僅差を制した。なお人気のない首相が辞任し、後任に女性を立てるのはカナダではときおり見られる。
 フルニエ氏は語る。
「あちらこちらでの悪いインタビュー、馬鹿な発言はすぐにそれを後ろに戻すことになる。これは、自由党に戻っている非常に緩やかな支持である。」
「私は、拳を宙に突き出して言うだろう。『私は何が起きそうかを言える』と。だが本当に何が起きるかを知らない。」
 グルニエ氏も、次のように述べた。
「日は昇り、日は沈む。彼らのためのポジティブな数週があったが、突如再びネガティブな数週になることがありえる。」
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