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緑の党のアトウィン議員、自由党に移籍 [緑の党]

 緑の党のジェニカ・アトウィン議員は6月10日、ドミニク・ルブラン政府間関係大臣と共同記者会見を行い、自由党に移籍したと発表した。これにより下院勢力は、自由党155、保守党119、ケベック連合32、新民主党24、緑の党2、無所属5、欠員1(定数338議席)となった。
 緑の党は、前回総選挙で初めて複数議席を獲得した。特にアトウィン議員は、ブリティッシュコロンビア以外で唯一の議員であり、同党が東部に築いた拠点でもあった。
 アトウィン議員は記者会見で、気が散るような問題が党内であまりにも多く、自分と有権者が真に求める問題に専念できる状況にないと語った。
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 イスラエルは5月10日、パレスチナ自治区のガザを空爆し、東エルサレムからパレスチナ人を追放した。アナミー・ポール党首は、イスラエルとパレスチナ双方に対話を呼びかけ、軍事行動の激化を憂慮する発言を行った。だがアトウィン議員は、党首の発言を「全く不十分」だと一蹴した。アトウィン議員は11日、ツイッターに「私はパレスチナとともにあり、ありえない空爆を非難する。アパルトヘイトはやめろ!」と綴った。緑の党のポール・マンリー議員も同日、ツイッターで「東エルサレムからの追放は、民族浄化だ」と語った。
 するとポール党首の相談役ノア・ザッツマン氏は14日、「緑の党の議員たち(筆者注※緑の党の議員はアトウィン氏、マンリー氏、メイ前党首の3人)の中には、反ユダヤ主義や人種差別がある」「緑の党はお前たちを倒し、アンティファ・親LGBT・先住民独立派・シオニストを引き入れる!!!!!(筆者注※感嘆符が5つ)」とフェイスブックに投稿した。
 緑の党には、ザッツマン相談役を解任しろと要求する手紙と電子メールが殺到した。そして緑の党ケベック支部は6月5日、「ザッツマン氏が謝罪せずその地位に留まるかぎり、ポール党首に全面的に協力するのは難しい」「党首によるここ3週間の沈黙と怠慢は、全国の党員と支持者に衝撃を与え、党を指揮する能力に疑問を抱かせた」という声明を発表するに至った。緑の党は9日、ザッツマン氏を解任した。

 緑の党は、政策的には新民主党に非常に近いとされる。だが新民主党は東部で支持が弱く、彼女のニューブランズウィック州フレデリクトン選挙区では前回、得票率わずか5.96%に終わっており、彼女の自由党移籍は選挙を意識したものと思われる。ニューブランズウィック緑の党のデビッド・クーン党首は「アトウィン議員は、ポール党首に見捨てられたと感じたのだろう」「彼女は、自由党には自分の信条の居場所がないと気づくだろう」と語った。
 アトウィン議員は記者会見で、今後も地球温暖化への積極的な戦いを続け、水圧破砕やパイプライン延伸にも反対し続けると述べた。なお自由党政権は、パイプライン延伸を推進している。
「私は、意見を変えていない。」
「私は、私のままである。」
 彼女はさらに、移籍と引きかえに閣僚ポストもほかの何も提供されていないとつけ加えた。
 彼女はこれまで野党議員として、与党自由党を批判してきた。トルドー首相が公約した選挙制度改革を断念したとき、「有権者への裏切り」「有権者は我々こそが真の進歩勢力であると見直すだろう」と批判した。また裁判所が未譲渡の土地の差し止め命令を下したことで「先住民との和解は意味を失った」と酷評した。
 ルブラン大臣は、自由党は異なる意見も受け容れると明言した。
「自由党幹部会には、異なる意見のための巨大な部屋がある。」
「我々幹部会の議論は、それほど豊かなのだ。」

 緑の党のマンリー議員とメイ前党首は、共同声明を発表した。
「残念なことに、党首相談役による5月14日のアトウィン氏への攻撃が、この危機を導いた。」
 彼らはさらに「カナダ緑の党を去る意図はない」とつけ加えた。
 ポール党首は、有権者は緑の党の候補に投票したのだから補選を行うべきであり、またアトウィン議員はかなり前から自由党と交渉していたので、中東問題は原因ではないと思うと語った。


写真:東部初の下院議員に当選したジェニカ・アトウィン候補(中央)。右はエリザベス・メイ党首(当時)、左はポール・マンリー議員(2019年10月)。
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