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ウィルソン=レイボールド氏とフィルポット氏、自由党幹部会を除名 [自由党]

 自由党は4月2日の幹部会で、ジョディ・ウィルソン=レイボールド議員(前復員軍人大臣)とジェーン・フィルポット議員(前予算庁長官)を除名したと発表した。両議員は無所属となり、次回総選挙の公認も取り消される。これにより下院勢力は、自由党177、保守党97、新民主党41、ケベック連合10、緑の党1、人民党1、CCF1、無所属7、欠員3(定数338議席)となった。

 この日召集された幹部会で、トルドー首相は語った。
「これら2名と我々との間にかつてあった信頼は、すでに破壊された。」
「ウィルソン=レイボールド氏とフィルポット氏が、もはや我々自由党の一員ではありえないことが明白になった。」
 両名が2月と3月、相次いで大臣を辞任して以来、自由党内では両名を除名すべきかどうかという論争が続いていた。特にウィルソン=レイボールド氏は、SNC-ラバラン問題に関する情報を長期間かけて小出しにし、この話題を引っ張り続けることで自由党の信用に打撃を与え、議員全員の再選を危険にさらしたことで、強く非難された。
 トルドー首相自身は当初「考慮中である」と語り、両名が幹部会にとどまる道を模索していたふしがあった。ウィルソン=レイボールド氏を追い詰めれば、事件の全容を暴露されかねない。
 だが彼女は無断で、枢密院職員マイケル・ワーニック氏との12月19日の電話を録音し、電子メールを記した文書とともに下院法務委員会に提出し、3月29日に公表した。これで自由党内の大勢は、両名除名に一気に傾いた。

 トルドー首相は名指しは避けたものの、電話を密かに録音したウィルソン=レイボールド氏を明確に非難した。
「我々は両名の懸念に対処するため、あらゆる努力を払ってきた。そして最終的に、両名がこのチームを信頼すると真摯に言うことができないなら、このチームの一員であるはずがない。」
「誰とのものであれ、政治家が会話を密かに録音するのは間違っている。その政治家が、公務員との会話を密かに録音している大臣であるなら、それは間違っている。その大臣が、枢密院職員との会話を密かに録音している司法長官であるなら、それは非良心的である。」
 閣僚たちからも、トルドー首相に同調する声が相次いだ。メラニー・ジョリー観光大臣は、会話の録音を「根本的に間違っている」と批判した。
 パティ・ハイドゥ労働大臣は、これまで密かに同僚議員の電話を録音したことはなく、これからも絶対にしないと断言した。
「私は、それは非倫理的であると思う。それは詐術だ。」
「もし会話を録音するなら、そしてそれが同僚との間のものなら、電話の相手に予告する責務があり、それが倫理的行動だと私は思う。」
 彼女は、両名が幹部会に残るかどうかについては首相と同僚議員たちに従うと語ったが、会話を密かに録音したかもしれない人と幹部会に同席する不快感を隠さなかった。
 フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ基幹大臣は、(ウィルソン=レイボールド氏も弁護士だが)自分が弁護士として働いていたとき、会話を録音したことは一切なかったと述べた。
 マルク・ガルノー運輸大臣は、重要な問題に関する大臣と政府高官の会話を密かに録音するのは「完全に不適切」で「不名誉な行為」だと批判した。
 キャロリン・ベネット政府=先住民関係大臣は、首相の下での一致を控えめに述べた。
「私は、チームは首相を支えていなければならない、それがここ数週の間に失われた要素だと思う。」
 自由党議員たちも、批判の声をあらわにした。ロブ・オライファント議員は、大臣が政府高官との会話を密かに録音するのは「不穏当」であり、ウィルソン=レイボールド氏の言葉は「筋書き通り」で「芝居がかった」、「職員を罠にかけた」ようなものだと吐き捨てた。
「私の望みは、政府を信頼しない人々は幹部会には要らないという気持ちで我々が一つにまとまり、幹部会が迅速に動くことだ。」
 そして、ウィルソン=レイボールド氏はトルドー首相に対する信頼を直截に示さないかぎり、幹部会から出て行くのが当然だと付け加えた。
 ウェイン・イースター議員は、ウィルソン=レイボールド氏は幹部会から出て行くべきであり、また彼女とワーニック氏との会話を「まるで台本を読んでいるようだ」と評した。
「このようなゲームを仕掛け、枢密院職員をほとんど陥れるような人に、私は敬意を払わない。」
 ニック・ホエーレン議員は、大臣が、枢密院職員から不当な圧力を受けたことを首相と共有するのではなく、それを録音し密かに保管していたことに衝撃を受けたと語った。
「それは本当に、不適切でいかがわしい。」
 彼は、トルドー首相と2人の女性たちが演じるドラマに、国民が必要以上に夢中になっていることを懸念した。
 ウェイン・ロング議員は、電話の録音を「驚いた」と語ったが、それがウィルソン=レイボールド氏への圧力を示していると語り、彼女に理解を示した。そのうえで、毎日のニュースのネタになるのを止めるには透明性がなければならない、それでこそ自由党は団結し、次の総選挙に勝つことに集中できると語った。

 ウィルソン=レイボールド氏自身も、会話記録とともに提出した書類に、電話を録音する行為は「尋常ならぬ、さもなくば不適切」と記し、認めている。ただし彼女は、そのとき「不適切な話題」が予想され、話された正確な記録が必要だと感じたが、記録する秘書が不在だったと弁明した。
「私がした会話だが・・・彼は自由党幹部会のメンバーではなく・・・私の依頼人でもない。私は、それが尋常ならぬ状況だったということを知っている。私は信頼できるアドバイザーに尋ねてみた。そして彼らの答えは、不適切で不合理な状況における適切で合理的な行動だというものだった。」
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 トルドー首相は、問題を「コミュニケーションの失敗」と語っていた。政府が一企業を贔屓して起訴されないよう司法に圧力をかけたり、罰金だけで済むよう法改正をするなど、国民にとってはその程度の問題ではないが、メインキャストの二人にとっては実際そうなのかもしれない。要請を拒否したウィルソン=レイボールド氏を、首相が司法長官のポストから外したうえで閑職に追いやったのは、徹底的に追い詰める意図はなかったことを示している。
 だが首相は、先住民だが弁護士資格を持つ彼女に、法務大臣から先住民サービス大臣への異動を提示して感情を逆撫でした。さらに「年輩の議員を平気で叱りつける」「政界に友だちもいない」などの出所不明な噂が流れ、首相はこれをすぐ非難せず、非難したのは1か月もあとだった。さらに「彼女が司法長官として行った任務の全ては、彼女一人の判断であり彼女の責任である」と述べて、彼女を決定的に怒らせた。守秘義務があるのをいいことに、責任を押しつけようとしたのだ。彼女は翌日大臣を辞任、さらに新聞がSNC-ラバラン疑惑を暴露し、野党もこれに乗じ議会で証言させたため、関係は一気に悪化する。この時点でもまだ首相は「幹部会から除名するかは考慮中」、彼女も「不適切だが違法な行為はなかった」と手加減しており、両者歩み寄る余地は残っていた。
 だがこの問題は、あまりにも長くメディアの注目を浴びすぎた。先住民との和解とフェミニズムはトルドー政権の車の両輪だったにもかかわらず、彼女は首相のイメージを深く傷つけた。自由党の支持率は保守党を下回り、議員たちは選挙の心配をしなければならなくなったのだ。
 ウィルソン=レイボールド氏には無所属で出馬する道が残されてはいるが、組織も運動員もなく、容易ではない。トルドー首相が非常に若いことを考えると、自由党への復帰はほぼ不可能だろう。引き際を誤ったため、議員たちをも怒らせてしまった。政治を続けたければ、別の党に移籍するしか方法はなさそうだ。


図:「もしもしジェーン、ジョディです。あなたも聞こえる?ノイズのような音・・・」
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