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トランプ大統領「ホワイトハウスを焼き払ったカナダは『安全保障上の脅威』」 [経済]

 5月25日にトルドー首相がトランプ大統領と交わした電話会談で、両者が激しく言い争い、1812年戦争でのホワイトハウス焼き討ちにまで言及したと、CNNが6月6日に報じた。
 アメリカは5月、カナダの鉄鋼・アルミ製品に「安全保障上の理由」で関税を課した。これに対しトルドー首相が、同盟国カナダに関税を課すのにどのような「安全保障上の理由」があるのかと問いただしたところ、トランプ大統領はこう答えたという。
「あなたたちは、ホワイトハウスを焼き払いませんでしたか?」
 1812年戦争で、カナダ(当時はアッパー・カナダ植民地)に侵攻したアメリカ軍は1813年4月、首都トロントを焼き払い議会議事堂を焼失させた。イギリス=カナダ軍はその報復として、1814年8月にワシントンのホワイトハウスを焼き払っている。
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 大統領の発言についてトルドー首相は、次のように述べた。
「私は『軽口』にはさほど注意を払わなかった。」
「我々がアメリカに対する安全保障上の脅威であるという考えは、率直に言って、侮辱的で受け入れがたい。」
 トランプ政権の国家経済会議委員長を務めているラリー・カドロー氏は、多少の緊張は認めたが、両国の関係は非常に良好なままだと考えていると語った。
「短期的には意見の相違が起きることはあっても、アメリカとカナダが確かな友人であり、同盟国のままであることへの疑いは、私にはない。」
 カナダのクリスティア・フリーランド外務大臣は、CNNの番組で次のように問いかけた。
「カナダに大勢いるアメリカ人の友だち全員に、私は大真面目にききたい。NATO同盟国であるカナダが、あなたにとって安全保障上の脅威だと本気で信じますか?」
 アメリカのボブ・コーカー上院外交委員長は、大統領の「安全保障上の理由」発言に疑問を呈した。
「自動車産業に関税を課すために、この条項を使う理由がない。これは選挙に先立ち内政への影響を意識したものか、あるいは貿易交渉に関するほかの処理のためにやっているのではないか。」

 最初にアメリカは、カナダ・メキシコ・EUに鉄鋼とアルミニウムの関税を免除したが、後に取り消した。アメリカは現在、カナダの鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課している。これに対しカナダは、アメリカの芝刈機やトランプやフェルトペンに至るまで、165億ドル相当の新しい関税を課した。
 トルドー首相は4月、大統領は中国から輸入した安価な鉄鋼とアルミニウムを安価にアメリカに輸出されることを懸念しているのではないかと考え、国境警備の厳重化を発表している。大統領はこれに満足し、カナダに永続的に関税を免除するのではないかと、首相は考えたようだ。しかし大統領は、アメリカの鉄鋼業が国防総省に納入する体制に深刻な脅威を与えていると考えたかもしれない。
 関税は、1962年通商拡大法232条に基づいている。これは大統領が「安全保障上の脅威」と認定すれば、関税率の引き上げや輸入割当枠の導入など幅広い制裁措置を発動できるものであり、アメリカ史上、1979年のイラン産原油と1982年のリビア産原油の輸入禁止の2度のみ発動されている。
 トルドー首相は、232条発動は「アメリカ軍とともに戦って死んだ、幾千人ものカナダ兵に対する侮辱だ」と指摘した。


図:アメリカに突撃を命じるカナダの指揮官。服装が1812年戦争。
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高橋幸二

https://www.sankei.com/world/news/180607/wor1806070020-n1.html
>トランプ氏はカナダ軍が“主犯”だと言いたかったようだが、実際には、米英戦争の渦中に、英軍が建物に火をつけたのが歴史的事実。トランプ氏は「誤って歴史を引用した」(CNN)

当時のカナダはイギリスと同じ国で、カナダ人も戦争に参加しているので、誤ってはいない。

https://edition.cnn.com/2018/06/06/politics/war-of-1812-donald-trump-justin-trudeau-tariff/index.html
>Trump made an erroneous historical reference

CNN日本語版では、なぜかこの部分が抜けている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180607-35120467-cnn-int
>英国によるワシントンへの攻撃は、後のカナダ領であるオンタリオ州ヨークを米国が攻撃したことに対する報復とされる

「オンタリオ州ヨーク」は、現在で言うトロントのこと。私は1993年、トロント市の隣のCity of Yorkに住んでいたが、この市は後にトロントに吸収された。19世紀のヨークと20世紀のヨークは、意味が異なる。

>後のカナダ領

カナダ連邦が成立するのは1867年だが、1812年戦争の時点ですでに「アッパー・カナダ植民地」になっていて、ヨークはその首都である。「連合カナダ植民地」が成立するのは、1841年。

>ワシントン焼き打ちをめぐっては、当時の大統領夫人だったドリー・マディソンがジョージ・ワシントン初代大統領の肖像画を避難させたとする逸話も有名だ

1849年4月25日、カナダ植民地の首都モントリオールで暴徒が議会議事堂に放火したとき、サンドフォード・フレミング(世界標準時の考案者)がビクトリア女王の肖像画を避難させたエピソードも、たまには思い出してやって下さい。これが原因で首都がトロントに移転します。
by 高橋幸二 (2018-06-09 12:12)