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ケベック連合議員7人が離党 [ケベック]

 ケベック連合(10議席)の議員7人が2月28日、マルティーヌ・ウェレ党首に造反し、離党して新会派を結成した。
 新会派「ケベック議会派」(Groupe parlementaire québécois/Quebec parliamentary group)に移籍したのは、レアル・フォルタン議員(前暫定党首)、ガブリエル・サン=マリー議員(前下院幹事長)、ルイ・プラモンドン議員(元下院幹事長)、リュック・テリオー議員、ミシェル・ブドリア議員、シモン・マルシル議員、モニク・ポーズ議員の7人。残ったのはマリオ・ボリュー議員(党代表・元党首)、ザビエル・バルサル=デュバル議員、マリレーヌ・ジル議員の3人。これにより下院勢力は、自由党183、保守党97、新民主党44、ケベック議会派7、ケベック連合3、緑の党1、無所属2、欠員1(定数338)となった。
 1984年に進歩保守党議員としてそのキャリアを始め、1990年のケベック連合旗揚げに参加し、ケベック連合議員として28年間務めた最古参のプラモンドン議員は、次のように述べた。
「私はケベック連合で多くの危機を見てきたが、これは間違いなく最も深刻なものだ。」
 彼は、自分たち7人はまだケベック独立を信じていると述べたが、分裂の事情についてこう説明した。
「ウェレ党首はあらゆる機会において、独立を語りたいし、我々にも語って欲しがっている。」
 いっぽうウェレ党首は、党はケベック共和国実現のために戦い続けると語った。
「ケベックの利益を擁護する最善の方法は、独立の向こう側にある。」
「『私たちが独立国だったらもっと多くのことが良くなるのに、今はカナダの枠に捕われているからできない』と言う人が、非常に多い。」

 ケベック連合はもともと、ケベック独立を期して結成された。それから28年が経ち、独立はいまだ実現していないが、それでも結党から21年間ケベックの最大勢力でいられたのは、ジル・デュセップ元党首がケベックの利益のために働いたからだ。ケベック連合には歴史的に、あくまでも独立を志向するハードコア独立派と、ケベックの利益を優先するソフトな民族主義者の間に対立があった。だが、初めて挑んだ1993年総選挙でいきなり野党第一党に躍り出たのは遠い昔のこと、2011年総選挙にはわずか4議席の泡沫政党に転落し、それどころではなくなった。2015年総選挙では苦戦を伝えられたが、ニカブ論争の追い風に乗じ10議席を獲得。しかし2017年3月、ケベック州議で連邦議会に議席を持たないウェレ氏が党首に就任すると、独立路線を邁進する彼女と議員たちとの間に再び路線対立が始まった。
 彼女の側近ルイ=フィリップ・デュボワ氏が6月、フォルタン議員の悪評をリークしニュースになると、議員たちは一斉に反発した。彼女はデュボア氏を解任し謝罪したが、議員たちはリークは彼女の指示によるものと疑った。
 党役員会はウェレ党首に、連邦議会の議席がなく議院活動の実態がないのに9万5000ドルの給与を支払い、そのうえ州議(無所属)でもあるので20万ドルの手当ても支払うことを決定した。
 ウェレ党首は役員会を召集し、ケベック連合はソフト路線ではなく独立を強調すべきだ、また党首就任以来議員たちが自分に従ってくれないと演説した。だがフォルタン議員は「役員会を召集し、自分は犠牲者だと訴える。そのような演説はリーダーがするものではない」と厳しく批判した。他の議員たちもウェレ党首への不満を公言し、議会での質問をボイコット(ウェレ党首は質問できない)した。
 2月26日、ガブリエル・サン=マリー下院幹事長がついに辞任。2日後には議員たちの大量離党に至った。

 2011年総選挙とは異なり、ケベック連合の票が分散するなら、その最大の受益者は自由党だ。
 CBCによる2月27日の世論調査によると、ケベックでのケベック連合支持率は17.2%で、2015年総選挙の得票率より2ポイント低く、自由党より26ポイント低い。もしも総選挙が今実施されたら、獲得できる議席はわずか3となる。
 ケベック連合が勝利した10選挙区のうち8つで、自由党は2位か強い3位に着けた。自由党がケベックで支持率を上げていることを考慮すると、次の総選挙では、10選挙区の全てを自由党が獲得する見込みが大きい。
 キャンペーン・リサーチ社の世論調査で、ケベック連合支持者のうち、最善の首相は自由党のトルドー党首だと答えた人は15%で、保守党のシーア党首と新民主党のシン党首の4%よりかなり大きい。また、ケベック連合支持者によるトルドー党首支持率も27%で、シーア党首の14%、シン党首の10%を大きく引き離している。
 ケベック連合がかつてケベックで保持していた支持基盤が崩壊したとき、新民主党は2011年総選挙でその大部分を取り込むことに成功したが、宗教的シンボルであるターバンを着用する人物を党首に選んだ時点で、その目論見は潰えた。保守党はケベックに浸透するため、キリスト教を擁護しそれ以外の宗教に冷淡にすることもできるが、ケベック民族主義に近づきすぎると、残りのカナダで支持を失うおそれもある。
 次の総選挙でケベック連合支持者が棄権するなら、すでにリードしている自由党の利益となる。もし彼らが他党に投票しようと思うなら、選ぶのはおそらく自由党だろう。
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