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刑法の「ゾンビ条項」削除へ [犯罪・事件]

 ジョディ・ウィルソン=レイボールド法務大臣は3月8日、裁判所で無効と判断されたにもかかわらず刑法に残っている「ゾンビ条項」を整理する意向を述べた。
 大臣は連邦議会議事堂での記者会見で、死文化しているいくつかの条項のうち、妊娠中絶の禁止を強調したため、かつての中絶論争を蒸し返すつもりかと問われたが、その意図はなく、この日が国際女性デーだったからと答えた。
 アルバータ大学で法学を教えるピーター・サンコフ教授も、指摘する。
「六法全書を開くと、刑法のあちこちに30から50個の死文が、まだ存在する。我々が要請しているにもかかわらず、議会は一向に削除に手が回らない。」
 1892年に制定された刑法は、1950年代と70年代に大きな改正があっただけで、今も通用している。刑法のゾンビ条項はほかに、誤ったニュースの伝播、魔法を使えると偽装する行為、夜間の水上スキー、放浪、決闘、犯罪コミック、商品引換えスタンプの発行などの禁止が残っている。政府は2016年11月、18歳未満もしくは3人以上のアナルセックスを禁止する条項を削除する法案を提出したばかりである。
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●マッキャン夫妻殺害事件
 2010年にマッキャン夫妻が消息を絶った事件は、遺体が発見されていないにもかかわらず夫妻の死亡が宣告された。2016年の公判でデニー・トーマス判事は、刑法第230条を適用し、トラビス・ベイダー被告に謀殺罪(murder)で有罪と宣告した。
 この判決は、ただちに法学者たちに批判された。というのはこの条項は、1990年のマクリーン夫妻殺害事件の公判で違憲と判断されたゾンビ条項だったからである。第230条は「建設的殺人条項」と言われ、被害者の死を意図していたかどうか、また死に至ることを知っていたかどうかに拘らず、大逆罪、反逆罪、破壊活動、海賊行為、ハイジャック、刑務所あるいは合法的親権者からの脱出または救出、保安官襲撃、性的暴行、誘拐・監禁、人質拘束、強盗、家宅侵入、放火を遂行あるいは遂行しようとするとき、過失で人を死に至らしめた場合は謀殺罪(murder)とすると規定し、(a)では、(i)犯罪遂行を容易にするため、または(ii)犯罪遂行後に逃亡を容易にするため、被害者の身体に危害を加え、それが原因で死に至らしめた場合と定めている。
 トーマス判事は10月、判決を覆し、過失致死罪(manslaughter)で有罪と宣告した。

●マクリーン夫妻殺害事件
 1985年にマクリーン夫妻が自宅で殺害された事件で、17歳のパトリック・トランブレー被告と15歳のロデリック・ラッセル・マーティノー被告が起訴された。
 トランブレー被告は盗みを働くつもりで、銃を持ってはいたが殺す意図はなく、被害者に顔を見られたため射殺したと主張した。ところがマーティノー被告は、マスクで顔を覆っていたので殺す必要はなかったと供述した。二人の主張は食い違っていたが、殺す意図がなかった点では一致していた。二人は1987年、謀殺罪(murder)で有罪と宣告された。
 だがマーティノー被告は、刑法第230条(a)(当時は第213条(a))は1982年憲法第7条および第11条(d)に反するとして、控訴した。そして連邦最高裁は1990年、被告に殺意がなかったという合理的疑いを超えて検察が殺意を証明しないかぎり謀殺罪は適用できないとして、刑法第230条(a)を違憲につき無効と判断した。マーティノー被告は、過失致死罪(manslaughter)で有罪と宣告された。


写真左:犯罪コミック。
写真右:商品引換えスタンプ。
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