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少数政権のシナリオ [2015年下院選]

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 総選挙の結果、自由党か保守党による少数政権が誕生する可能性が非常に強くなった。ケベック連合のデュセップ党首は、こう述べた。
「たとえハーパー氏が議会で最も多くの議席を得たとしても、彼は首相ではない。」
 首相の指名は、日本のように議会で首班指名選挙を行うのではなく、カナダでは総督の判断で行われる。第一党が過半数を獲得した場合は問題ないが、そうでない場合は規定がなく、慣習法の世界なので対応が非常に難しいことになる。以下は、考えられるいくつかのシナリオである。

●シナリオ1:自由党少数政権
 ハーパー首相は、最も多くの議席を得た党が政権に就くべきだとつねづね述べている。それは必ずしも正しいとは言えないが、保守党が第一党になれなかった場合、ハーパー首相は辞職するだろう。それからトルドー党首が総督公邸に招待され、組閣の大命が降下する。
 自由党が過半数に少し足りない強い少数政権を築く場合、緑の党との閣外協力に入ることが考えられる。そして過半数に大きく足りない弱い少数政権を築く場合、新民主党との閣外協力に入ることが考えられる。

●シナリオ2:保守党少数政権→内閣総辞職
 保守党が第一党になった場合、政権を続行できる。ところが自由党・新民主党・ケベック連合は、保守党政権を支持しないと明言している。そこで連邦議会が召集され、スローン・スピーチ(施政方針演説)が行われるが、その信任投票は否決される。これは内閣不信任と見なされるので、内閣総辞職か議会の解散・総選挙のどちらかになる。
 内閣総辞職になった場合、野党第一党の党首が総督公邸に招待され、組閣の大命が降下する。

●シナリオ3:保守党少数政権→憲法危機
 保守党は第一党となり政権を維持するが、連邦議会で内閣不信任される。そこでハーパー首相は総督に議会の解散・総選挙を上奏する。しかし前回総選挙から日が浅く、同じ結果に終わる可能性が高いと総督が判断した場合、これを拒否することは大いにありえる。そしてこれを拒否して野党第一党党首に組閣を命じた場合は、「憲法危機」となる。1926年、総選挙直後に進歩党の支持を失い少数政権となったキング首相が、ビング総督に解散・総選挙を拒否され、総辞職してミーエンが首相に指名されたかの事件の再来である。
 その結果、ビング総督は政治に干渉したと非難され、ミーエン首相も内閣不信任され、キングの自由党が総選挙に圧勝する。だが政治学者のかなり多くは、ビング総督の判断を英断だと評価している。
 ブリティッシュコロンビア大学で政治学を教えるマックス・キャメロン教授は、こう指摘した。
「カナダ国民が歴史上最も長く最も高額な選挙を経験した後ということを考慮すると、国民感情はそれを支持すると思う。」

●シナリオ4:保守党少数政権→時間稼ぎ
 保守党が少数政権を築く場合、連邦議会で即座に内閣不信任されるリスクがある。そこで時間稼ぎとして、ハーパー首相が党首と首相を辞任し、党首選を開催し新党首を選出するため、議会の開会を数か月遅らせることができる。
 議会の召集は6月までに行えばいいので、このシナリオは法律上は可能だとキャメロン教授は指摘した。議会の召集は通常は総選挙の直後に行われるが、彼は、ハーパー首相は過去に何度も慣例に反することをしてきたと強調した。
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