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アルバータに吹いた「オレンジ旋風」の衝撃 [アルバータ]

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 (1) 歓喜する左派
 総選挙で圧勝したレイチェル・ノトリー党首は、興奮する群集の前でこう叫んだ。
「アルバータの皆さん、春が来ました!」
 チャーリー・アンガス下院議員は、こう言った。
「アルバータからのメッセージは『スティーブン・ハーパー、次はお前だ。』」
 それから彼は、かつてパンク・ロック・バンド「レトランジュ」の仲間だったアンドリュー・キャッシュ下院議員とステージに上がり、ギターを抱えて“Four Strong Winds”の替え歌を歌った。
“Think I'll go out to Alberta. Weather's good there in the spring.”(元歌は“fall”)
 連邦新民主党のマルケア党首は、以下のように述べた。
「これは、全国の新民主党にとっての吉兆である。レイチェル・ノトリー党首と彼女のチームがアルバータで成し遂げたことを、我々は誇りに思う。我々は今日、次のステップのバネ(spring)を得た。」
「カナダの中に、新民主党の強固な拠点が2つある。それはアルバータとケベックだ。あなたが変化を望むなら、それは新民主党にある。」
 数年前まで、アルバータとケベックは新民主党の弱点だった。そこで躍進を果たしたことが、うれしくてたまらないといった表情だった。
 連邦自由党のトルドー党首は、こうコメントした。
「これは有権者からの、毎回投票するのが当然でもなければ、過去の前例が現在の行動を決めるわけでもないというメッセージだ。」
「ノトリー党首は確実なプランを提示して、明確な選挙運動を行い、報われた。私は、それこそが全ての政治家が注意を払うべき教訓だと思う。」

 (2) 不安を煽る右派
 保守党のスティーブン・フレッチャー下院議員は、新民主党圧勝への不安を文学的に表現した。
「今朝目覚めたとき、朝日はのぼるだろうかと考えた。朝日はそのとき、オレンジ色に輝いていた。私は困惑した。」
 ロブ・アンダーズ下院議員は、新民主党政権が経済に与える影響を懸念した。
「私は今、トラックがサスカチュワンへ移ることを、資本がアメリカに逃げることを、退職者がブリティッシュコロンビアへ引っ越すことを心配している。」
 保守党内の反応について、ナノス・リサーチ社のニック・ナノス社長はこう分析した。
「保守党は、いかなる期待にもまして、新政権がミスを犯してくれるのを手ぐすね引いて待ち望んでいるのだろう。」
 今回の結果を、かつてオンタリオで誕生した新民主党政権と比較する意見は多い。1990年に成立したボブ・レイ政権は、財政を破綻させたあげく1995年の総選挙に敗れ、1期で退陣した。その間1993年の連邦議会選挙では、連邦新民主党がオンタリオ新民主党の不評を受け、オンタリオの全議席を失った。
 しかし次の連邦議会選挙は、遅くとも10月までに行われる。アルバータ新民主党政権がボロを出すには、十分な時間がない。
 新民主党政権はおそらく、前政権の腐敗を徹底的に暴くだろう。そうすれば連邦保守党にダメージを与えることができるし、自分たちへの批判の矛先をかわすことができるからだ。
 政治評論家のアリス・ファンク氏は、新民主党はアルバータ州議会選挙と連邦議会選挙(のアルバータ選挙区)で同じ候補を擁立しており、そのうち当選したアニー・マキトリック候補、マイケル・コナリー候補、ステファニー・マクリーン候補など数人の候補を失った、つまりは代わりの候補を早急に探さねばならないと指摘した。この事実は、ノトリー党首がこれらの候補の当選を期待していなかったことを意味する。

 (3) 進歩保守党はどうなる?
 アルバータの与党が政権を失うと、党が崩壊するのがこれまでの通例である。スティーブン・カーター氏は、進歩保守党は崩壊するだろうと予測する。進歩保守党はこの選挙で多額の資金を投じたにもかかわらず、政権を失ったため資金を集めることができなくなった。実質的にポリシーがなく、政権維持だけが自己目的化したこの党が、ひとたび金と権力を失えば、求心力を失って分解するのではないか。
 オンタリオ進歩保守党は1985年に政権を失ったが、1995年に新民主党政権を下し再び政権に返り咲いている。彼らは、オンタリオで唯一の右派政党だったからだ。だがアルバータ進歩保守党は、そうではない。ここで重要なのは「2位争い」である。アルバータ進歩保守党はたとえ政権を失っても、ワイルドローズ党を壊滅させる必要があった。しかし2位争いに勝ち、影の内閣を組織するのはワイルドローズ党の方だった。新民主党政権を打倒するのに、2つの右派政党は要らない。消えるのはどっちだろうか。
 ワイルドローズ党を飲み込もうとしたのは進歩保守党の方だったが、彼らは毒ガエルを飲み込んで死ぬ蛇と同じ運命を辿るのだろうか。

 (4) ダニエル・スミス、保守合同を呼びかける
 何もなければ、今スポットライトを浴びているのはこの人だったかもしれない。ダニエル・スミス氏はCTVに出演し、保守合同を呼びかけた。今回総選挙での得票率は新民主党41%に対し、進歩保守党28%・ワイルドローズ党24%だった。右派票を合わせれば新民主党より多かったにもかかわらず、新民主党に単独過半数を許してしまった原因は、右派票の分散にあると彼女は指摘し、次の総選挙では右派が政権を奪回するため、両党の合併や選挙協力が必要だと訴えた。また彼女は、仲間の議員を連れてワイルドローズ党を離党し、進歩保守党に移籍した判断は正しかったと証明されたと語った。
 予備選に敗れ政界を引退したはずの彼女が早くも政治的発言をするのは、政治的混乱に乗じて保守合同を実現させ、自らその盟主となり政界にカムバックしようという魂胆なのだろう。


図:オレンジ色に輝く朝日に恐れおののく人。
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